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藤の雨【5月短編】
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ちびすけが我が家に住みつき始めて、明らかに縁側を掃除する機会が増えたように思う。それまでも毎朝履いてはいたが、最近はそれだけでは追いつかなくなってしまったのだ。
特にちびすけとおみが昼寝をした後は、おみの服に大量の毛がついてしまっている。織田さんに頼んで汚れにくい素材を使ってもらってはいるけれど、あれほど抱きついたり飛びついたり、一緒になって走り回ったりしていると素材だけではどうしようもないのである。
「毎回ぞうきんで拭くのは大変だしなぁ」
「おみ、ころころしようか?」
「それだとせっかくの水干が汚れちゃうけど」
「それはいやだ……」
織田さんお手製の水干を大層気に入っているようで、最近は毎日選ぶのは水干だ。それが汚れてしまうとなれば、おみも迂闊なことはできないのだろう。ううん、しかし、困ったな。
使い捨てのモップを実家に頼むかと悩んでいると、ふと、中学生の頃に習ったとあることを思い出した。まさか半分寝ながら聞いていたあの授業がこんな時に役立つなんて。
「おみ、ぞうりは好きか?」
「ぞーり、すきだよ」
「俺が作ってやるから、それでここを歩き回って欲しいんだ」
「みぃ?」
すぐには作れないだろうけれど、もしかしたら掃除が楽になるかもしれない。そう思い、もう着なくなった古いシャツを探しに自室へと向かった。
「できた!」
「おおー!」
約二時間かけて、ようやくぞうりが完成した。水色と白の手作りぞうりは、おみの小さな足にぴったりの大きさだ。
指が痛くならないよう調整して履かせてやる。久しぶりに作ったけれどなかなかの出来だ。
「かわいー!」
「よかった。これで縁側を歩くと、ちびすけの毛とか小さなホコリがくっつくんだ」
「ほうほう」
さっさく縁側を歩かせてみる。ぺたぺた、ぱたぱた、なんとも楽しそうな足音が聞こえてくる。
「あるきやすいねー」
「だからって走るなよ、転ぶから」
「うぃ」
返事は立派だが、尻尾は「あそびたい!」と言わんばかりにぶんぶん振っている。いったいどれくらい我慢できるかな、と思っていると、タイミングよくちびすけが縁側を訪れた。
それを見つけて、おみは「ちびちゃー!」と駆け寄っていく。
「にゃー!」
「ちびちゃ、おみのぞーり、かわいーでしょ」
「にあああ」
「まってー!」
気まぐれなちびすけは、とてとて縁側を走っていく。それを追いかけるおみのおかげで毛が掃除できるけれど、そんなに追いかけていたらますますちびすけが逃げて毛が散ってしまう。
うーん。これはイタチごっこだなぁ。
「ちびちゃー!」
「にゃーん!」
「楽しそうだから、まあいいか」
その後、俺の心配が的中し、おみは廊下で盛大に転んでしまうが。みええ、と泣くおみの隣にちびすけがずっと寄り添っていた。
特にちびすけとおみが昼寝をした後は、おみの服に大量の毛がついてしまっている。織田さんに頼んで汚れにくい素材を使ってもらってはいるけれど、あれほど抱きついたり飛びついたり、一緒になって走り回ったりしていると素材だけではどうしようもないのである。
「毎回ぞうきんで拭くのは大変だしなぁ」
「おみ、ころころしようか?」
「それだとせっかくの水干が汚れちゃうけど」
「それはいやだ……」
織田さんお手製の水干を大層気に入っているようで、最近は毎日選ぶのは水干だ。それが汚れてしまうとなれば、おみも迂闊なことはできないのだろう。ううん、しかし、困ったな。
使い捨てのモップを実家に頼むかと悩んでいると、ふと、中学生の頃に習ったとあることを思い出した。まさか半分寝ながら聞いていたあの授業がこんな時に役立つなんて。
「おみ、ぞうりは好きか?」
「ぞーり、すきだよ」
「俺が作ってやるから、それでここを歩き回って欲しいんだ」
「みぃ?」
すぐには作れないだろうけれど、もしかしたら掃除が楽になるかもしれない。そう思い、もう着なくなった古いシャツを探しに自室へと向かった。
「できた!」
「おおー!」
約二時間かけて、ようやくぞうりが完成した。水色と白の手作りぞうりは、おみの小さな足にぴったりの大きさだ。
指が痛くならないよう調整して履かせてやる。久しぶりに作ったけれどなかなかの出来だ。
「かわいー!」
「よかった。これで縁側を歩くと、ちびすけの毛とか小さなホコリがくっつくんだ」
「ほうほう」
さっさく縁側を歩かせてみる。ぺたぺた、ぱたぱた、なんとも楽しそうな足音が聞こえてくる。
「あるきやすいねー」
「だからって走るなよ、転ぶから」
「うぃ」
返事は立派だが、尻尾は「あそびたい!」と言わんばかりにぶんぶん振っている。いったいどれくらい我慢できるかな、と思っていると、タイミングよくちびすけが縁側を訪れた。
それを見つけて、おみは「ちびちゃー!」と駆け寄っていく。
「にゃー!」
「ちびちゃ、おみのぞーり、かわいーでしょ」
「にあああ」
「まってー!」
気まぐれなちびすけは、とてとて縁側を走っていく。それを追いかけるおみのおかげで毛が掃除できるけれど、そんなに追いかけていたらますますちびすけが逃げて毛が散ってしまう。
うーん。これはイタチごっこだなぁ。
「ちびちゃー!」
「にゃーん!」
「楽しそうだから、まあいいか」
その後、俺の心配が的中し、おみは廊下で盛大に転んでしまうが。みええ、と泣くおみの隣にちびすけがずっと寄り添っていた。
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