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雪消しの雨【3月短編】
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山道を抜けると、おみが修行するための滝がある。そこは他の場所よりも神聖で清められた領域だ。そこで毎朝おみは滝行を、俺は結界を張る修行をしている。
しかしそんなサンクチュアリも今は山菜の宝庫。小川の傍にはたくさんのふきのとうが生えていた。
「りょーた! あったよー!」
「すごい、大量だな」
「まんまるまるまる」
おみの手のひらに収まるくらいのふきのとうが至る所に生えている。大きすぎないものが美味しいと本に書いてあったので、そういうのを探してうろうろと歩き回った。
お店でたまに見かけたことはあるが、こうして自然に生えているのは初めて見た。本当に丸くて可愛らしい。一つずつ丁寧に採っていき、おみのカゴに入れていく。貰ったタラの芽と合わせると、今日はとても豪華な晩ご飯になりそうだ。
「あ、あれもたべられるよ」
「菜の花か」
「おはなが黄色でかわいーの」
「これも少し採っていくか」
「むふふん」
さすが食いしん坊、どれが食べられる植物かよく知っている。それから両手いっぱいのツクシと、ワラビを少し収穫して家に帰ることにした。
おみのカゴはいっぱいになっていて、歩く度にカサカサコロコロ心地よい音がする。
「たのしみだねー」
「そうだな、天ぷらも久しぶりだ」
「おみ、粉作るね」
「じゃあ任せようかな」
「うぃ!」
さすがに油は危険だからさせられないが、粉を作ったりまぶしたりはできるだろう。最近のおみは何かとよく手伝ってくれる。
普段より早足で家に向かいながら、ご機嫌な尻尾を追いかけた。
「よし、これで終わり!」
「すごいー!」
下処理も含めて、約一時間近く台所で料理をした。ぱちぱちと油の跳ねる音と、じゅわりという揚げた時の音がまるでオーケストラのようだった。そこに素晴らしいアクセントを加えてくれたのは、我が家の食いしん坊大魔神、おみのお腹だったのだけれど。
ふきのとうとタラの芽の天ぷら、菜の花のおひたし、そして炊きたてのワラビご飯。これは最高の夕飯だ。
「じゅるり」
「早く食べような」
「おみ、ごはんはこぶー!」
二人で大きなお皿を運び、机に広げる。全てこの山で採れたものだと思うと、なんだか感動すら覚えそうだ。
今日はお留守番だったしらたきも定位置について、楽しい食事の始まりだ。
「いっただっきまーす!」
「いただきます」
さっそく揚げたての天ぷらに塩をつけて、ガブリと頬張る。ふきのとうの甘さと僅かな苦味が口いっぱいに広がって、そのまま鼻に抜けていく。
甘いだけでは無い、どこか苦味のあるところがまさしく春といったところか。
「あちゅ、うま、うまま」
「あー、春って感じがする」
「はる、たのしいね!」
「楽しいなぁ」
「らいねんも、またとろうね」
「そうだな」
来年のおみは、今よりも少し大きくなっているだろうか。それともあんまり変わらず、泣き虫のままなんだろうか。
どちらにしてもまた二人で春を迎えられたら、同じようにたくさん美味しいご飯を食べたいな。そう考えると、春もいいなぁ、としみじみ感じ入るのだった。
しかしそんなサンクチュアリも今は山菜の宝庫。小川の傍にはたくさんのふきのとうが生えていた。
「りょーた! あったよー!」
「すごい、大量だな」
「まんまるまるまる」
おみの手のひらに収まるくらいのふきのとうが至る所に生えている。大きすぎないものが美味しいと本に書いてあったので、そういうのを探してうろうろと歩き回った。
お店でたまに見かけたことはあるが、こうして自然に生えているのは初めて見た。本当に丸くて可愛らしい。一つずつ丁寧に採っていき、おみのカゴに入れていく。貰ったタラの芽と合わせると、今日はとても豪華な晩ご飯になりそうだ。
「あ、あれもたべられるよ」
「菜の花か」
「おはなが黄色でかわいーの」
「これも少し採っていくか」
「むふふん」
さすが食いしん坊、どれが食べられる植物かよく知っている。それから両手いっぱいのツクシと、ワラビを少し収穫して家に帰ることにした。
おみのカゴはいっぱいになっていて、歩く度にカサカサコロコロ心地よい音がする。
「たのしみだねー」
「そうだな、天ぷらも久しぶりだ」
「おみ、粉作るね」
「じゃあ任せようかな」
「うぃ!」
さすがに油は危険だからさせられないが、粉を作ったりまぶしたりはできるだろう。最近のおみは何かとよく手伝ってくれる。
普段より早足で家に向かいながら、ご機嫌な尻尾を追いかけた。
「よし、これで終わり!」
「すごいー!」
下処理も含めて、約一時間近く台所で料理をした。ぱちぱちと油の跳ねる音と、じゅわりという揚げた時の音がまるでオーケストラのようだった。そこに素晴らしいアクセントを加えてくれたのは、我が家の食いしん坊大魔神、おみのお腹だったのだけれど。
ふきのとうとタラの芽の天ぷら、菜の花のおひたし、そして炊きたてのワラビご飯。これは最高の夕飯だ。
「じゅるり」
「早く食べような」
「おみ、ごはんはこぶー!」
二人で大きなお皿を運び、机に広げる。全てこの山で採れたものだと思うと、なんだか感動すら覚えそうだ。
今日はお留守番だったしらたきも定位置について、楽しい食事の始まりだ。
「いっただっきまーす!」
「いただきます」
さっそく揚げたての天ぷらに塩をつけて、ガブリと頬張る。ふきのとうの甘さと僅かな苦味が口いっぱいに広がって、そのまま鼻に抜けていく。
甘いだけでは無い、どこか苦味のあるところがまさしく春といったところか。
「あちゅ、うま、うまま」
「あー、春って感じがする」
「はる、たのしいね!」
「楽しいなぁ」
「らいねんも、またとろうね」
「そうだな」
来年のおみは、今よりも少し大きくなっているだろうか。それともあんまり変わらず、泣き虫のままなんだろうか。
どちらにしてもまた二人で春を迎えられたら、同じようにたくさん美味しいご飯を食べたいな。そう考えると、春もいいなぁ、としみじみ感じ入るのだった。
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