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雪消しの雨【3月短編】
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「へっくし!」
「みっ!?」
むず、と鼻がくすぐったくなったあと、思い切りくしゃみが出た。心なしか目も痒い。鼻水が詰まっておかしな声になっているし、もしかして風邪でもひいたかな。
最近、朝と昼の気温差が大きいし。油断したのかもしれない。
「ぐしゅっ!」
「みー……りょーた、かぜ?」
「どうだろ、へしゅっ、なんか、ぐしゅっ、わかんない」
「あわわわわ」
目が痒くてゴシゴシ擦ってしまう。うーん、これってもしかして。
「花粉症、かも」
「かふんしょー?」
「そう。ほら、今日はお空がちょっとぼんやりしてるだろ?」
「ふむふむ」
ここ数日、太陽は出ていてよく晴れているにも関わらず空が薄ぼんやりとしていた。変な天気だなぁと思っていたが、今朝のニュースで特集されていたことを思い出した。
今年は過去最大の花粉量だ、と。
「杉とかヒノキとか、花粉が飛ぶだろ?」
「むん」
「それが多いとこんな風にくしゃみが出たり、目が痒くなったりするんだ」
「ほほー」
ここ数年は花粉症と無縁だったのに。今年になって久しぶりに発症した。一度くしゃみが出るとしばらく止まらないし、とにかく目は痒い。鼻水も垂れ流し状態だから寝る時に苦しいなぁと感じている。
雨の降った次の日は特に花粉が多いというが。それならばこの山はどこよりも花粉量が多いだろう。なんたって毎日「雨が降った次の日」なんだから。
「ううー、鼻がむずむずする……」
「ちーんして、ちーん」
居間からボックスティッシュを持ってきたり、タオルを取ってきたりと、おみがジタバタ走り回っている。病気とかではないから、そんなに慌てなくていいのに。
俺は数年ぶりに花粉症が発症したというのに。おみは平然としているのが不思議でならない。やっぱり神様だから花粉症とは無縁何だろうか。だとした、花粉症で苦しんでいるのはこの山だと俺だけか。
「おみは何ともないのか」
「げんき!」
「それはよかった」
「あ、おはなぐじゅぐじゅに効くおくすりあるよ!」
元気いっぱいなおみが、薬草の入った戸棚にかけて行く。そこには乾燥させた様々なハーブや薬草が入っていて、体調が悪い時に必要なものを選んでいる。
大きな瓶がずらりと並べられた薬棚の中に潜り込むような勢いで、おみが何かしらを探している。一人じゃ危ないだろうと思い手伝いに行くが、少しするともうくしゃみが出る。うーん、今日は特にひどいな。
「むー、どれかな……」
「何が欲しいんだ?」
「よもぎ!」
よもぎが。確か瓶にラベルがはってあったな。でもよもぎって花粉症に効くのか?
「あったー! これ、よもぎ!」
「あ、ほんとだ」
「これね、おちゃにするの」
「へぇ」
「あと、おめめ洗うといいの」
「そうなんだ」
「むん」
おみがそう言うならきっと効くのだろう。得意げに鼻高々なおみにお礼を言って、さっそくよもぎを煮出すことにする。
これで少しは楽になるだろうか。それなら嬉しいな。でも、おみが俺のために頑張ってくれたことが何よりも嬉しい。
余ったよもぎで草餅でも作ろうかな。そうしたらきっと、おみも喜ぶだろう。
「明日は花粉が少ないといいなぁ」
そうしたら俺も嬉しい。さて、明日は「雨が降った次の日」になるだろうか。それはもう、神のみぞ知るのだ。
「みっ!?」
むず、と鼻がくすぐったくなったあと、思い切りくしゃみが出た。心なしか目も痒い。鼻水が詰まっておかしな声になっているし、もしかして風邪でもひいたかな。
最近、朝と昼の気温差が大きいし。油断したのかもしれない。
「ぐしゅっ!」
「みー……りょーた、かぜ?」
「どうだろ、へしゅっ、なんか、ぐしゅっ、わかんない」
「あわわわわ」
目が痒くてゴシゴシ擦ってしまう。うーん、これってもしかして。
「花粉症、かも」
「かふんしょー?」
「そう。ほら、今日はお空がちょっとぼんやりしてるだろ?」
「ふむふむ」
ここ数日、太陽は出ていてよく晴れているにも関わらず空が薄ぼんやりとしていた。変な天気だなぁと思っていたが、今朝のニュースで特集されていたことを思い出した。
今年は過去最大の花粉量だ、と。
「杉とかヒノキとか、花粉が飛ぶだろ?」
「むん」
「それが多いとこんな風にくしゃみが出たり、目が痒くなったりするんだ」
「ほほー」
ここ数年は花粉症と無縁だったのに。今年になって久しぶりに発症した。一度くしゃみが出るとしばらく止まらないし、とにかく目は痒い。鼻水も垂れ流し状態だから寝る時に苦しいなぁと感じている。
雨の降った次の日は特に花粉が多いというが。それならばこの山はどこよりも花粉量が多いだろう。なんたって毎日「雨が降った次の日」なんだから。
「ううー、鼻がむずむずする……」
「ちーんして、ちーん」
居間からボックスティッシュを持ってきたり、タオルを取ってきたりと、おみがジタバタ走り回っている。病気とかではないから、そんなに慌てなくていいのに。
俺は数年ぶりに花粉症が発症したというのに。おみは平然としているのが不思議でならない。やっぱり神様だから花粉症とは無縁何だろうか。だとした、花粉症で苦しんでいるのはこの山だと俺だけか。
「おみは何ともないのか」
「げんき!」
「それはよかった」
「あ、おはなぐじゅぐじゅに効くおくすりあるよ!」
元気いっぱいなおみが、薬草の入った戸棚にかけて行く。そこには乾燥させた様々なハーブや薬草が入っていて、体調が悪い時に必要なものを選んでいる。
大きな瓶がずらりと並べられた薬棚の中に潜り込むような勢いで、おみが何かしらを探している。一人じゃ危ないだろうと思い手伝いに行くが、少しするともうくしゃみが出る。うーん、今日は特にひどいな。
「むー、どれかな……」
「何が欲しいんだ?」
「よもぎ!」
よもぎが。確か瓶にラベルがはってあったな。でもよもぎって花粉症に効くのか?
「あったー! これ、よもぎ!」
「あ、ほんとだ」
「これね、おちゃにするの」
「へぇ」
「あと、おめめ洗うといいの」
「そうなんだ」
「むん」
おみがそう言うならきっと効くのだろう。得意げに鼻高々なおみにお礼を言って、さっそくよもぎを煮出すことにする。
これで少しは楽になるだろうか。それなら嬉しいな。でも、おみが俺のために頑張ってくれたことが何よりも嬉しい。
余ったよもぎで草餅でも作ろうかな。そうしたらきっと、おみも喜ぶだろう。
「明日は花粉が少ないといいなぁ」
そうしたら俺も嬉しい。さて、明日は「雨が降った次の日」になるだろうか。それはもう、神のみぞ知るのだ。
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