このたび、小さな龍神様のお世話係になりました

一花みえる

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めぐる雨【2月長編】

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    こんにちは、しらたきです。ぼくは今日もご主人の背中でぬくぬくとしております。先月はみんなで「むなかた」というところに行きました。ご主人はとても楽しそうに遊んでいましたよ。
    りょうたさんに抱っこされて、ご主人が「さふぃん」というのをしているのも見ました。ご主人、すごくがんばっていましたね!    さて、今日は何をして遊びましょうか。
「それじゃあ、最後にもう一回確認するぞ」
「うぃ」
    おや?    なんだかいつもとふんいきが違います。ご主人の小さなおてには、大きな袋があります。そこには何も入っていません。
    一体何をするのでしょう。
「まず、坂口さんのところに行く」
「さかぐち」
「で、じゃがいも二個、玉ねぎ二個、人参一本もらう」
「じゃがいもにこ、たまねぎにこ、にんじんいっぽん」
「そうそう」
    ご主人はふくふくの指を折りながら、りょうたさんの言ったことを繰り返しています。なんだかややこしいですね。じゃがいも、たまねぎ、にんじんだそうです。
    ふんふん、頷きながらご主人はなんども「じゃがいも、たまねぎ、にんじん」と呟いています。えらいですね、ご主人!
「次に織田さんのところに行く」
「おだしゃ」
「牛肉二百グラム、オリジナルミックススパイスを二人分もらう」
「ぎゅにく、えっと、にひゃく、おじりなるみくすしゅぱいひゅふたりぶん」
「うーん、スパイス、でいいかな」
「しゅぱいしゅ」
    ううん、急に難しくなりましたね。さっきのじゃかいもたちもあるし、ご主人は覚えられるのでしょうか。
    でも、もし忘れちゃってもぼくがちゃーんと覚えてますからね!    大丈夫ですよ、ご主人!
「坂口さんにはこれ、織田さんにはこっちの袋を渡すこと」
「こっちがさかぐち、こっちがおだしゃ」
「色で分かるかな。緑が坂口さんで、紫が織田さん」
「うぃ」
    何やら小さなビニール袋が手渡されています。落とさないよう袋に入れて、これで準備できたようです。
    でも、これは何の準備なんでしょう?
「りよーた、おみ、ちゃんとおつかいしてくるね」
「よろしく頼むな」
「うぃ!」
    なんと!    ご主人は今からおつかいに行くそうです!    しかも一人で!    とてもすごいです、ご主人!
    さかぐさんのお家までは一人で行ったことがあるけれど、おださんのお家は少し遠いからいつもりょうたさんと一緒ですもんね。今日は一人でだなんて。すばらしいです、ご主人!
「おみ、がんばる」
「気をつけてな」
「はーい!」
    大事そうに袋を持って、ぼくを背負い直し、元気な声でご主人は返事をしました。ぼくもがんばりますよ、りょうたさん。おまかせください。
    寒くないようにと首にまふらー(ぼくもおそろいです。むふふん)を巻いて、真っ青な空の下、ぼくとご主人ははじめてのおつかいへと出発しました。
「いってきまーす!」
「いってらっしゃい」
    ぼくも、いってきます。
    ご主人と一緒にがんばってきますよ!
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