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雨の海【1月長編】
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おっとり着物美人なおきつさんは、おみの歩調に合わせてのんびり歩きながら宗像三女神について説明してくれた。先程出来なかった宗像大社散策ツアーの再開だ。
おいちさんはその間にまたお勤めだとか。本当に忙しそうだ。
「私たち三姉妹は、それぞれ別の場所に家を構えているのよ。ここはおいちちゃんのお家」
「おきちゅしゃはどこ?」
「海の上よ。私以外は誰もいないの」
「はえー」
玄界灘の真ん中に浮かんだ小さな島。それがおきつさんを祀る沖津宮だ。島全体が天然記念物であり、禊を行った神職のみが立ち入ることを許されている、と聞いたことがある。
しかも女人禁制だから一体そこに祀られている女神はどんな方かと思っていたが。とても優しい神様だ。
「ここが神宝館よ。私の島から見つかったものもここにあるの」
「沖津宮の国宝と言うと……指輪とかですか」
「あらぁ、詳しいのねぇ。いい子さんね、室生さん」
真っ直ぐに褒められて照れてしまう。この歳になると褒められることもなくなるし、見た目は俺とそう変わらないおきつさんに子供扱いされたことも恥ずかしかった。
まあ、おみやおきつさんたちの前では俺なんか子供ですらなく赤子のようなものだけど。
「本当にいろいろ見つかったの。だからおいちちゃんたちにも色々あげたのよ」
「へぇ」
「指輪とか、ガラス玉とか。キラキラしていて綺麗でしょぉ?」
「……ん?」
指輪、と聞いて思い当たるものがあった。おいちさんの指に輝いていた金色の指輪。どこかで見たことがあると思っていたけれど。
目の前に貼られたポスターに、全く同じものが写っているじゃないか!
「あ、あの、おいちさんにあげた指輪って、もしかして」
「ああ、これよぉ。ちょうどおいちちゃんの指にぴったりだったから」
「こ、国宝ですよ!?」
それを、あんな、気軽に身に着けているなんて!
「りょーた? どしたの?」
「いや……神様ってすごいなぁと思ってさ」
「むむー?」
でも、おみも年代物のお猪口とか帯留をプレゼントしていたな。そう考えると、俺たち人間よりも神様の方が物をきちんと「物」として扱っているのかもしれない。
坂口さんも言っていたけれど「大切にしまいこんでいるより、使ってやる方が物のため」なのかもしれない。
そうは言うけれど。
「やっぱり国宝は気前が良すぎだろ……!」
そんな俺を、おきつさんは子供を見るように静かに微笑んでいた。
おいちさんはその間にまたお勤めだとか。本当に忙しそうだ。
「私たち三姉妹は、それぞれ別の場所に家を構えているのよ。ここはおいちちゃんのお家」
「おきちゅしゃはどこ?」
「海の上よ。私以外は誰もいないの」
「はえー」
玄界灘の真ん中に浮かんだ小さな島。それがおきつさんを祀る沖津宮だ。島全体が天然記念物であり、禊を行った神職のみが立ち入ることを許されている、と聞いたことがある。
しかも女人禁制だから一体そこに祀られている女神はどんな方かと思っていたが。とても優しい神様だ。
「ここが神宝館よ。私の島から見つかったものもここにあるの」
「沖津宮の国宝と言うと……指輪とかですか」
「あらぁ、詳しいのねぇ。いい子さんね、室生さん」
真っ直ぐに褒められて照れてしまう。この歳になると褒められることもなくなるし、見た目は俺とそう変わらないおきつさんに子供扱いされたことも恥ずかしかった。
まあ、おみやおきつさんたちの前では俺なんか子供ですらなく赤子のようなものだけど。
「本当にいろいろ見つかったの。だからおいちちゃんたちにも色々あげたのよ」
「へぇ」
「指輪とか、ガラス玉とか。キラキラしていて綺麗でしょぉ?」
「……ん?」
指輪、と聞いて思い当たるものがあった。おいちさんの指に輝いていた金色の指輪。どこかで見たことがあると思っていたけれど。
目の前に貼られたポスターに、全く同じものが写っているじゃないか!
「あ、あの、おいちさんにあげた指輪って、もしかして」
「ああ、これよぉ。ちょうどおいちちゃんの指にぴったりだったから」
「こ、国宝ですよ!?」
それを、あんな、気軽に身に着けているなんて!
「りょーた? どしたの?」
「いや……神様ってすごいなぁと思ってさ」
「むむー?」
でも、おみも年代物のお猪口とか帯留をプレゼントしていたな。そう考えると、俺たち人間よりも神様の方が物をきちんと「物」として扱っているのかもしれない。
坂口さんも言っていたけれど「大切にしまいこんでいるより、使ってやる方が物のため」なのかもしれない。
そうは言うけれど。
「やっぱり国宝は気前が良すぎだろ……!」
そんな俺を、おきつさんは子供を見るように静かに微笑んでいた。
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