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雨の海【1月長編】
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「おいしかったねーりょーた」
「すごかったな」
「うまま」
夜食にと言って出されたのは、自家製のタレに漬け込まれた新鮮なブリが乗ったお茶漬けだった。香り豊かな刻み海苔とちょっぴりの山葵がより風味を高めてくれた。特に自家製のタレには胡麻がたくさん入っていて、売って欲しいくらいだ。それか作り方を教えてもらいたい。
なんだ、あれ。天才か?
「お口にあったようでよかったです」
「みうしゃ、ごちそうさまでした」
「いえいえ。たくさん食べるおみちゃん、とても可愛かったですよ」
「み?」
うんうん。分かる。口いっぱいにして、目をキラキラさせながら美味しそうに食べるおみはとても可愛い。たとえ俺の分をねだろうとも、山葵で泣いてしまっても。
おみはとても可愛い。
「お二人はこちらのお部屋をお使いください。もちろん、しらたきさんも」
「はい、え、でも俺はおみと一緒には寝れないんですけど」
「それならば気にするな」
「うわわわ!?」
だから、どうして人は毎回突然、気配を消して背後に立つんだ! 神様だからか!?
「お、おいち様」
「そう堅苦しく呼ぶな。肩がこる」
無茶言うな。そんなこと出来るのはさっそく舌足らずに「いーしゃん」と呼んでいるおみくらいだ。
「室生殿、寝ている間のことを心配しておるのだろう?」
「そうです。あんまり長い時間俺が意識のない状態でおみの近くにいると影響を受けすぎてしまうから」
昼間はこの眼鏡でなんとかなるが、さすがに寝ている間はあまりにも無防備だ。お昼寝くらいなら大丈夫だけど、一晩中だなんて下手したら俺の命が無くなってしまう。
おみも俺も未熟だから、お互いを守るため別々に寝ている。しかし、おいちさんは気にするなと言う。どうしてだろう。
「これを寝室に置くといい。私が清めた水が入っているから、場を清めてくれる」
「そんな貴重なものを貰っていいんですか」
「当然だ。ほら、おみ。これで大好きなりょーたと一緒に眠れるぞ」
膝を折ってしゃがみこみ、おいちさんは優しくおみの頭を撫でた。おみの手には小さなガラス玉が握られていた。青いガラス玉の中には水が入っている。
「おみ、りょーたと一緒にねていいの?」
「いいぞ。ぎゅーっとしてもいい」
「はわー! ぎゅーする、ぎゅーする!」
おみが、足元でぴょんぴょん跳ね回る。そのまま転ばないように抱き上げて、早く用意された部屋へと向かおう。
明日、というか、もう今日だけど。お昼くらいまでのんびりしていいと言われている。むしろ、午前中はおいちさんに仕事が入っているから部屋に居た方が邪魔にならないだろう。
そんなわけで明日はアラームをかけず眠ることができる。
「おみ、りょーたと一緒にねたかったの!」
「そうなんだ」
「しらたきもうれしー! って」
「そっか」
ニコニコ笑いながらしらたきを押し付けてくる。俺もつられて笑ってしまう。ついでにまとめてぎゅうと抱きしめると、海結さんの手元にあるスマホからシャッター音が聞こえてきた。
気にしていてもしょうがないので、気付かないふりをして部屋に入っていった。
「すごかったな」
「うまま」
夜食にと言って出されたのは、自家製のタレに漬け込まれた新鮮なブリが乗ったお茶漬けだった。香り豊かな刻み海苔とちょっぴりの山葵がより風味を高めてくれた。特に自家製のタレには胡麻がたくさん入っていて、売って欲しいくらいだ。それか作り方を教えてもらいたい。
なんだ、あれ。天才か?
「お口にあったようでよかったです」
「みうしゃ、ごちそうさまでした」
「いえいえ。たくさん食べるおみちゃん、とても可愛かったですよ」
「み?」
うんうん。分かる。口いっぱいにして、目をキラキラさせながら美味しそうに食べるおみはとても可愛い。たとえ俺の分をねだろうとも、山葵で泣いてしまっても。
おみはとても可愛い。
「お二人はこちらのお部屋をお使いください。もちろん、しらたきさんも」
「はい、え、でも俺はおみと一緒には寝れないんですけど」
「それならば気にするな」
「うわわわ!?」
だから、どうして人は毎回突然、気配を消して背後に立つんだ! 神様だからか!?
「お、おいち様」
「そう堅苦しく呼ぶな。肩がこる」
無茶言うな。そんなこと出来るのはさっそく舌足らずに「いーしゃん」と呼んでいるおみくらいだ。
「室生殿、寝ている間のことを心配しておるのだろう?」
「そうです。あんまり長い時間俺が意識のない状態でおみの近くにいると影響を受けすぎてしまうから」
昼間はこの眼鏡でなんとかなるが、さすがに寝ている間はあまりにも無防備だ。お昼寝くらいなら大丈夫だけど、一晩中だなんて下手したら俺の命が無くなってしまう。
おみも俺も未熟だから、お互いを守るため別々に寝ている。しかし、おいちさんは気にするなと言う。どうしてだろう。
「これを寝室に置くといい。私が清めた水が入っているから、場を清めてくれる」
「そんな貴重なものを貰っていいんですか」
「当然だ。ほら、おみ。これで大好きなりょーたと一緒に眠れるぞ」
膝を折ってしゃがみこみ、おいちさんは優しくおみの頭を撫でた。おみの手には小さなガラス玉が握られていた。青いガラス玉の中には水が入っている。
「おみ、りょーたと一緒にねていいの?」
「いいぞ。ぎゅーっとしてもいい」
「はわー! ぎゅーする、ぎゅーする!」
おみが、足元でぴょんぴょん跳ね回る。そのまま転ばないように抱き上げて、早く用意された部屋へと向かおう。
明日、というか、もう今日だけど。お昼くらいまでのんびりしていいと言われている。むしろ、午前中はおいちさんに仕事が入っているから部屋に居た方が邪魔にならないだろう。
そんなわけで明日はアラームをかけず眠ることができる。
「おみ、りょーたと一緒にねたかったの!」
「そうなんだ」
「しらたきもうれしー! って」
「そっか」
ニコニコ笑いながらしらたきを押し付けてくる。俺もつられて笑ってしまう。ついでにまとめてぎゅうと抱きしめると、海結さんの手元にあるスマホからシャッター音が聞こえてきた。
気にしていてもしょうがないので、気付かないふりをして部屋に入っていった。
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