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千歳をかねてたのしきをつめ【お正月】

【鏡餅】

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    鏡餅にみかんを乗せるだけの、簡単なお仕事だったはずなのに。どうしておみはここまで不思議なことを思いつくのだろうか。
    やけに静かなうえ、いつまで経っても呼びに来ないから少し心配していた。もしかしたら、飾り用のみかんを食べてしまったのではないか。
    いやいや、柚子湯の時に学んだはずだからそれはないだろう。 
    それなら、まさか鏡餅にかぶりついたとか?
    いやいや、鏡開きを楽しみにしているからそれもないだろう。
    それならば一体、この静けさは何なのだろうか。頭痛はしないし、外は快晴。泣いているわけではないから尚更疑問が深まっていく。
「おみ、お雑煮出来た……え?」
    居間へ向かうと、やけに神妙な顔つきをして鏡餅と向かい合っていた。こんな真剣な顔初めて見たぞ。
    というか、一体何をしているんだ。
「しらたきを乗せてるのか……?」
「んむ」
「え、っと……なんで?」
    大きな鏡餅の上に、ちょこんとしらたきが乗せられていた。みかんを抱き抱えるように座っているが、少しでもバランスを崩すと転がってしまいそうだ。
    それをなんとか安定させようと、しごく真面目な顔で向き合っている。
    いや、なんで?
「しらたき、おもちみたいだから」
「そ、そうか」
「乗せたら、似合うとおもったの」
「そうか……?」
「むむ」
    なんとか上手く座らせることが出来たようで、満足そうに戻ってきた。よく分からないけどよかったな。何が良いのか分からないけど。
    こうして我が家の鏡餅は、例年よりもふわふわに仕上がることになった。ご飯を食べたらきっとすぐに恋しくなって、しらたきー!    と抱きつくのだろうけれど。
    鏡餅の上に鎮座しているしらたきが普段よりも誇らしげに見えたので、しばらくそのままにすることにした。やけにおめでたい感じもするし、可愛らしいと言えば可愛らしい。
「おぞーに、おぞーに」
「お餅はよく噛んで、少しずつ食べるんだぞ」
「うぃ」
    それでは今年も、感謝の気持ちを込めて。
「いただきまーす!」
    たくさん食べて大きくなれよ、おみ。
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