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千歳をかねてたのしきをつめ【お正月】

【お雑煮】

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    我が家のお雑煮は母の地元で作られるものに似ている。あご出汁に丸餅、里芋やかつお菜を入れた九州の味だ。今年は立派な鰤が贈られてきたので贅沢に使ってしまおう。
    まさか自分がお雑煮を作ることになるとは。思ってもいなかった。大きな鍋でぐつぐつ煮込んでいく。美味しくなぁれ、と念じながら里芋の硬さを確認する。
    母も毎年こんな気分で作っていたのだろうか。
「あー、実家の味だ」
    味見をすると、懐かしい母の味がした。両親とも教師だったせいか、母はいつも忙しそうだった。それでも毎日お弁当を作ってくれて、年末にはおせち料理をこしらえていた。
    この具がたっぷり入ったお雑煮もきっと毎年作るのは大変だっただろう。俺が「美味しい」と言って食べる姿をニコニコしながら見ていたのをよく覚えている。
「あとで電話しようかな」
    この山に来ると決まって、一番心配していたのは間違いなく母だ。滅多に会えなくなるし、なによりあの「龍神様」の近くで暮らすことになる。
    室生の分家に嫁ぐということはかくも悩ましいことか。
「やべ、お餅が」
    鍋の中でお餅が柔らかく溶けていく。これ以上すると柔らかいを通り越してどろどろになってしまう。
    悩みすぎるのもよくないな。おみじゃないけれど泣きたくなってしまう。
「せっかくの元旦だからな。楽しいことを考えないと」
    大きな器に具材を入れていく。一人二つは食べられるようにお餅を煮込んでいたが、少し考えておみの方に三つ入れた。
   考えるとも悩むことも多いけれど、俺にとって何よりも大切なことはおみが笑っていることだ。それ以上、求めることは何も無い。
「おみー、お雑煮出来たぞー」
    居間で鏡餅を飾っているはずのおみに声をかける。器からは、優しい湯気が立ち上っていた。
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