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朝時雨【12月特別編】
【クリスマス】3
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次は織田さんのところだ。早く行かないと、イネとマイが眠ってしまう。おみも眠くなるとぐずってしまうからあまりのんびりはできない。とはいっても、おみはぽてぽて呑気に歩いては調子はずれの歌を楽しそうに歌っている。背中のしらたきもどこか楽しそうだ。せっかくなら首に鈴でもつけてやればよかった。
先月、出雲でたくさんのお客さんを手に入れた織田さんは年末年始に向けて忙しいそうだ。特に新年はどこの神社も大忙しで、注文が殺到しているのだとか。本人も稲荷なのだからめちゃくちゃ忙しく、この時期は京都に帰ることも多いそうだ。でも今年はこの山に残ってくれるらしく、おみもそれを聞いて大喜びしていた。
「おだしゃ、ショーバイはんじょーだね」
「そうだな」
「おみもはんじょーするかな」
「何が繁盛するんだ?」
おやつのことだろうか。だとしたらその願いは聞き入れられないぞ、おみ。
そういえば織田さんには何をプレゼントするんだろう。坂口さんみたいに年代ものの何か、なのだろうか。あの蔵ですらかなり高価なものが収められていた。本家の蔵はもっとすごいんだろうな。
古くから続く神社の神主とは聞いているが、実際何年続いているかは聞かされていない。そもそもうちは本家じゃないし。難しいこととは無縁で生きてきたのだ。おみと出会うまでは。
「おーだーしゃーん、おみサンタでーす!」
「あらあらまあまあ、可愛いサンタさんじゃないの!」
「おみちゃんかわいい!」
「しらたきもいるー!」
盛大に迎えられたおみサンタは、抱きしめられたり頬擦りされたり、されるがままになっていた。可愛い可愛いと撫で繰り回され、ようやく解放された頃には髪の毛がボサボサになっていた。
大変だな、サンタさんも。
「プレゼント、届けにきました」
「おだしゃにはこれー」
「やだ、ありがとう!」
ピンク色のリボンが巻かれた袋を織田さんに渡している。神様だし人から何かを貰うことには慣れているだろうけれど、神様同士で贈りあったりとかするのだろうか。何気ない気持ちで贈ったものが時を経て重要文化財とかになってそうだ。
どうしよう、いつか何千年も経っておみの宝物(ツヤツヤのどんぐりなど)が国宝になっていたら……。怖いなぁ。
「あらまあ、すっごく素敵!」
「おだしゃ、キラキラ似合うから」
「帯留めか」
「そう」
確かに帯留めは俺もおみも使わないな。蔵に眠っているだけじゃかわいそうだ。坂口さんの言う通り、ただ使われることなく仕舞い込まれているのは勿体無い。
「まあまあこんなにたくさん、本当にいいのかしら」
「おだしゃ、おしゃれさんだから」
「本当にいい子ねぇ、おみちゃん!」
「ふへへ」
奇妙な笑い方が聞こえてきたが気にしないでおこう。織田さんに贈られた帯留めは、薔薇の形の桃珊瑚、百合が彫られた翡翠、そして花束みたいに大きな宝石がいくつも散りばめられた豪華なアンティークの三つだった。どれも年代ものなんだろうな。一体何時代のものなんだろう。
「イネとマイにはこれ」
「おそろいだ!」
「いろちがいだ!」
二人には色違いの扇子を送ったようだ。夏場になると浴衣の注文が多く入り、その宅配は全てイネとマイが行っている。ウカさんがお嫁に行ってしまった今、次の夏は大忙しだろう。
そんな二人のために、暑くても困らないようにと扇子を選んだそうだ。
「おみちゃん、ありがとー!」
「素敵なクリスマスだわ」
「また来年も遊ぼうね!」
大好きな三人にたくさん抱っこをされて、ふにゃふにゃ笑いながらおみは「またね」と手を振った。さ、早く帰ろうか。外は随分と寒くなってきたからな。帰ったらお風呂に入って、しらたきと一緒に早く寝なさい。
いい子にしていたら、いいことがあるかもしれないから。
先月、出雲でたくさんのお客さんを手に入れた織田さんは年末年始に向けて忙しいそうだ。特に新年はどこの神社も大忙しで、注文が殺到しているのだとか。本人も稲荷なのだからめちゃくちゃ忙しく、この時期は京都に帰ることも多いそうだ。でも今年はこの山に残ってくれるらしく、おみもそれを聞いて大喜びしていた。
「おだしゃ、ショーバイはんじょーだね」
「そうだな」
「おみもはんじょーするかな」
「何が繁盛するんだ?」
おやつのことだろうか。だとしたらその願いは聞き入れられないぞ、おみ。
そういえば織田さんには何をプレゼントするんだろう。坂口さんみたいに年代ものの何か、なのだろうか。あの蔵ですらかなり高価なものが収められていた。本家の蔵はもっとすごいんだろうな。
古くから続く神社の神主とは聞いているが、実際何年続いているかは聞かされていない。そもそもうちは本家じゃないし。難しいこととは無縁で生きてきたのだ。おみと出会うまでは。
「おーだーしゃーん、おみサンタでーす!」
「あらあらまあまあ、可愛いサンタさんじゃないの!」
「おみちゃんかわいい!」
「しらたきもいるー!」
盛大に迎えられたおみサンタは、抱きしめられたり頬擦りされたり、されるがままになっていた。可愛い可愛いと撫で繰り回され、ようやく解放された頃には髪の毛がボサボサになっていた。
大変だな、サンタさんも。
「プレゼント、届けにきました」
「おだしゃにはこれー」
「やだ、ありがとう!」
ピンク色のリボンが巻かれた袋を織田さんに渡している。神様だし人から何かを貰うことには慣れているだろうけれど、神様同士で贈りあったりとかするのだろうか。何気ない気持ちで贈ったものが時を経て重要文化財とかになってそうだ。
どうしよう、いつか何千年も経っておみの宝物(ツヤツヤのどんぐりなど)が国宝になっていたら……。怖いなぁ。
「あらまあ、すっごく素敵!」
「おだしゃ、キラキラ似合うから」
「帯留めか」
「そう」
確かに帯留めは俺もおみも使わないな。蔵に眠っているだけじゃかわいそうだ。坂口さんの言う通り、ただ使われることなく仕舞い込まれているのは勿体無い。
「まあまあこんなにたくさん、本当にいいのかしら」
「おだしゃ、おしゃれさんだから」
「本当にいい子ねぇ、おみちゃん!」
「ふへへ」
奇妙な笑い方が聞こえてきたが気にしないでおこう。織田さんに贈られた帯留めは、薔薇の形の桃珊瑚、百合が彫られた翡翠、そして花束みたいに大きな宝石がいくつも散りばめられた豪華なアンティークの三つだった。どれも年代ものなんだろうな。一体何時代のものなんだろう。
「イネとマイにはこれ」
「おそろいだ!」
「いろちがいだ!」
二人には色違いの扇子を送ったようだ。夏場になると浴衣の注文が多く入り、その宅配は全てイネとマイが行っている。ウカさんがお嫁に行ってしまった今、次の夏は大忙しだろう。
そんな二人のために、暑くても困らないようにと扇子を選んだそうだ。
「おみちゃん、ありがとー!」
「素敵なクリスマスだわ」
「また来年も遊ぼうね!」
大好きな三人にたくさん抱っこをされて、ふにゃふにゃ笑いながらおみは「またね」と手を振った。さ、早く帰ろうか。外は随分と寒くなってきたからな。帰ったらお風呂に入って、しらたきと一緒に早く寝なさい。
いい子にしていたら、いいことがあるかもしれないから。
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