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山茶花時雨 【12月短編】
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イネとマイに手伝ってもらった結果、なんとおみはしらたきの靴下を編むことが出来ていた。緑色のふわふわで暖かそうな靴下は、しらたきの足にぴったりの大きさだ。
小さいと編みにくかっただろうに。すごいな。
「いねとまいが、ここ、編んでくれた!」
「そうか。よかったな」
「おみはね、ここ!」
おみが指さしたのは最後の数段で、見るからにガタガタで編目は歪だった。それでも、おみの中で「しらたきのため」という気持ちは果たされたのだろう。
にこにこ、零れそうな笑顔を見せていた。
「しらたき、おしゃれさんになったね」
「確かに。勾玉もマフラーもしてるな」
「んふふ。可愛い」
本当にしらたきのことが大好きなんだな。ぎゅーっと抱きしめて、頬ずりしている。どちらも同じ髪色だし、ふわふわだし、自分と似ているところも気に入っているのだろうか。
手伝ってくれたイネとマイも、どこか楽しそうだ。
「イネ、編み物苦手なのに頑張ってた!」
「マイも、毛糸で遊ぶの我慢してた!」
「そっか。二人ともありがとな」
両手で二人の頭を撫でてやる。擽ったそうにゴロゴロ喉を鳴らしていた。新しい靴下を履いたしらたきもどこかご機嫌に見える。
足の先っぽだけが緑色で、なるほど、確かにネギみたいだ。
「りょーた! さかぐちに見せに行く!」
「え、今から?」
「おひろめー! ね、いい?」
どうやらお洒落に着飾ったしらたきを見せびらかしたいようだ。この時間なら坂口さんも家にいるだろう。
でも、いきなり行くのは大丈夫かな。
「りょーたー! おさんぽ!」
「うーん、しょうがないなぁ」
「やったー!」
「相変わらず、おみちゃんに甘いのねェ」
織田さんがからかうように言ってくる。自覚している分まだマシだろう。どんなに外が寒くても、仕事が溜まっていても、おみが甘えてきたらつい応えたくなる。
今までずっと我慢させてきたんだ。せめて、俺と一緒に居る時くらいは。
「おみ、あまえんぼさん?」
「甘えん坊で泣き虫さんだよ」
「みぃ?」
そして、俺にとって世界で一番大切な存在だ。ぎゅうと抱きついてきた小さな体を受け止めた。
小さいと編みにくかっただろうに。すごいな。
「いねとまいが、ここ、編んでくれた!」
「そうか。よかったな」
「おみはね、ここ!」
おみが指さしたのは最後の数段で、見るからにガタガタで編目は歪だった。それでも、おみの中で「しらたきのため」という気持ちは果たされたのだろう。
にこにこ、零れそうな笑顔を見せていた。
「しらたき、おしゃれさんになったね」
「確かに。勾玉もマフラーもしてるな」
「んふふ。可愛い」
本当にしらたきのことが大好きなんだな。ぎゅーっと抱きしめて、頬ずりしている。どちらも同じ髪色だし、ふわふわだし、自分と似ているところも気に入っているのだろうか。
手伝ってくれたイネとマイも、どこか楽しそうだ。
「イネ、編み物苦手なのに頑張ってた!」
「マイも、毛糸で遊ぶの我慢してた!」
「そっか。二人ともありがとな」
両手で二人の頭を撫でてやる。擽ったそうにゴロゴロ喉を鳴らしていた。新しい靴下を履いたしらたきもどこかご機嫌に見える。
足の先っぽだけが緑色で、なるほど、確かにネギみたいだ。
「りょーた! さかぐちに見せに行く!」
「え、今から?」
「おひろめー! ね、いい?」
どうやらお洒落に着飾ったしらたきを見せびらかしたいようだ。この時間なら坂口さんも家にいるだろう。
でも、いきなり行くのは大丈夫かな。
「りょーたー! おさんぽ!」
「うーん、しょうがないなぁ」
「やったー!」
「相変わらず、おみちゃんに甘いのねェ」
織田さんがからかうように言ってくる。自覚している分まだマシだろう。どんなに外が寒くても、仕事が溜まっていても、おみが甘えてきたらつい応えたくなる。
今までずっと我慢させてきたんだ。せめて、俺と一緒に居る時くらいは。
「おみ、あまえんぼさん?」
「甘えん坊で泣き虫さんだよ」
「みぃ?」
そして、俺にとって世界で一番大切な存在だ。ぎゅうと抱きついてきた小さな体を受け止めた。
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