このたび、小さな龍神様のお世話係になりました

一花みえる

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小夜時雨【8月長編】

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    最初にやって来たのは、朝霧が有名な湖だ。宿から湖までの間にはたくさんのお土産さんが並んでいる。人も多く、とても賑わっていた。
    有名なロールケーキ屋さんを通り過ぎ、手作りの陶器が売られているこじんまりとした店を見つつ、目的地へと向かう。
    目に映るもの全てが新鮮なのか、おみは右に左にキョロキョロしていた。
「何か気になるのがあったか?」
「んー……人がたくさん」
「まあ、慣れてないよな」
「ん」
    俺と一緒に暮らす前は本当に誰とも会わず、ほとんど一人で過ごしていた。今でもそこまで多くの人と会う訳では無い。坂口さんとか、コンビニの店員さんとか、他に数人程度。
    それがいきなり、たくさん人が溢れた道を歩くのだ。緊張もするよな。
「ここを抜けたら湖だから。がんばれ」
「みぃ……」
    繋いでいた手に力がこもる。人混みをかき分け、ようやく湖の看板を見つけた。もうあと少しのようだ。人混みもわずかだけど解消されている気もするし。
    今にも泣きそうな顔したおみを励ましつつ、湖の畔まで辿り着いた。さて、ここまでが俺の役割。残りはおみの仕事だ。
「そこに鳥居があるの分かるか?」
「ん」
「俺はこの辺で待ってるから」
「あーい」
「終わったら、なんでも好きな物買ってやるからな」
「うぃ」
    繋いでいた手を離して、おみが一人で鳥居に向かう。念の為に一般の人が近づかないよう細工をして、おみが戻ってくるのを待つことにした。
    
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