とら×とら

篠瀬白子

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家族 7

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――細い路地裏を通って行った先には転々とネオンの光る店が並ぶ。
人はその通りをネオン通りなどとまんまな名前で呼んでいたが、その通りから少し離れたところには未成年たちが足を運ぶクラブやバーが点在していた。
その中でもひときわ客足が多いのは、三階建ての小さなビルの地下に設けられたクラブ、デスリカ。

だが最近、その売り上げを追い越さんばかりに勢力を伸ばす店があった。
それはデスリカよりさらに地下に設けられたバー、カシスト。

エレベーターの扉が開くと同時に店内であるそこに足を踏み入れれば、すぐ右横の壁にはこんなポスターが貼られている。


〔バイト、募集中〕


世界にたった一つしかない、言わずもがな雄樹手作りである。


「トラちゃーん、卵味噌二つちょーだぁい」
「こっちは中華二つくださーい」
「トラちゃん、アタシたちは梅二つと卵味噌三つねー」


今日も元気な非行少年少女やら、大学デビューしたての輩が笑う。その頬はみな赤く、一目で酔っていることが分かった。そんな姿に微笑んでからお粥を作りはじめると、俺の隣に立っていたバイトの凰哉(こうや)が注文をメモしながら笑う。


「今日も大人気ですね、小虎さん」
「まぁな。悪いけど出来たやつから出してくれる?」
「はい」


にっこり。笑みを返して鍋を火にかけると、スタッフルームの扉が激しい物音を立てて開いた。中から飛び出してきた学生服の少年は、若干泣きの入った青い顔で走り去る。そんな少年のあとにつづき、のそりと怖い顔をして現れた仁さんは、口に咥えていた煙草を歯で噛み潰していた。


「お疲れ様です仁さん、またダメだったんですか?」
「クソガキ共が舐めた態度取りやがって、あー……今になって玲央目当てのヤツ面接してた司の気持ちが分かった」
「あはははは」


カウンター内にやって来た仁さんに声をかければ、怒りと疲れの交じるものすごい表情で遠くを睨む仁さんについ笑ってしまう。仁さんはそんな俺の頭を軽く小突いたあと、ギロリと容赦なく凰哉を睨んだ。


「大体てめぇが一丁前に有名なくせして、ここでバイトしてるからだろうが。くそっ、あんときマジで騙された」
「ひどいなぁ、俺あのときボロボロだったじゃないですか」
「自業自得だボケ」


俺を小突いたときよりも強く、白に近いグリーンの髪色をした凰哉を叩いた仁さんは、一般人が怯える表情のままシェーカーを手に取り仕事に戻る。


「つーかトラ、お前が拾って来たんだから最後まで世話しろよ?」
「そんな犬猫じゃないんですから……それに凰哉は頑張ってますよ?」
「その頑張る姿に釣られて、不純なクソガキ共が空欄だらけの履歴書送り付けてくんだろうが」


と、ぼやく仁さんの声にカウンター前の少女たちの肩がビクリと震える。何人か心当たりがあるのだろうか。気づかなかったことにしよう。

ブラックマリア解散から十年、かつて街を闊歩していた不良たちは影を潜め、時代の流れか今の非行少年少女たちのそれはチャラ男かオシャレ女子だ。以前までたまに見かけていた喧嘩もあまり見なくなり、逆に陰湿な現場を目にすることが増えた。それでも犯罪率が極めて低いのはあの司さんがデスリカで目を光らせ、常にサボり気味の新山さんが警察学校の教官に就き、新人警官たちを良いように扱っているからだろう。

それとは別にまだ理由がある。それがこのバイトの凰哉だった。
どこのアニメキャラだと疑いたくなる髪色をした凰哉だが、彼は裏表が非常に激しく、裏人格である凶暴な姿はバケモノと呼ばれているらしい。ひどいネーミングセンスだ。
そんな凰哉にイジメやカツアゲを邪魔された現代の不良たちは執拗に報復を狙うが、そのたび容赦なくボコボコにしていた凰哉は、ある日カシスト近くの路地裏で膝を抱えていた。買い出し帰りの俺が声をかけると、今にも倒れそうな顔色の凰哉は一言「腹が減った」と言うのでお粥を与えてやれば、なぜかその日から懐かれ、ついにはバイトの座を手に入れてしまったのである。

いわく、喧嘩(という名の一方的暴力)で体力を消耗し、食べるはずだった晩ご飯がその喧嘩の最中踏みつぶされ、腹が減っていたらしい。

そんなどこか抜けている凰哉だが、その暴れっぷりは集る不良たちの心を粉々に砕き、しまいには「群れなきゃなにも出来ねぇカスが吠えんな。文句があんなら一人で来いや」とばっさり追い打ちをかけ、皮肉にも街の平和を保つ要因となっていた。
そんな凰哉だが、仕事に関してはいたって真面目で、その端正な顔立ちから女性客にも人気だ。凰哉に群れたいと狙う不良少年の他に、凰哉に近づきたいと狙う女子たちもしかし、仁さんの手によって追い払われている。


「でも俺だけのせいじゃないと思いますよ? 仁さんも人気が高いけど、なにより小虎さんファンが一番多いじゃないですか」
「あー……まぁ、そりゃ否定しねぇが」


ん? なんだか話の矛先がこっちに向いてないか?
苦笑を浮かべたまま作り終えたお粥をカウンター越しの少年に差し出すと、彼はだらしのない笑顔でお粥を受け取った。お盆ごと差し出したとき、さりげなく触れられた手にいち早く気づいた凰哉が「調子乗ってんじゃねぇぞクズ」と暴言を吐いていたので、打って変わって顔色の青い少年の代わりに凰哉の腕をひじで突いた。


「否定するとこですよ、仁さん。第一俺にファンなんていませんよ」
「「……」」
「なんで二人で黙るんですか」
「「……」」
「だからなんで黙るんですか、もう」


と、怒る俺の姿を優しい眼差しで眺める二人に説教しようと口を開いたとき、出入口から現れたキラキラと輝く今時のオシャレ女子たちが俺に手を振った。


「トラちゃーん、約束通りお粥食べに来たよー」
「あ、こんばんは。本当に来てくれたんだ」
「うんっ、あの日食べてからハマっちゃった。今日は友達も連れてきたから、売り上げ貢献しちゃうかもよ?」
「あはは。うん、助かる」
「本当? じゃあデート一回で手打つよ?」


なんて、可愛い冗談を口にしながら谷間を強調する女子にゆるりと微笑む。


「だーめ、俺なんかがこんな美人とデートしたら、色んな男に怨まれちゃう。ね?」
「……ちぇー」


あざとく谷間を強調する美人。特に見てもつまらない俺。そんな二人の会話で見るべきは美人だろうに、なぜかカウンターに座る男女の大半が見つめてくるのは俺だった。違うだろ。特に男子ども。


「わー、トラちゃんが天然タラシモード入ってるー」


と、そんな可笑しな空間にケラケラと声を上げて現れたのは、今や予約三ヶ月待ちの人気美容師となった雄樹だ。
トーンの落ち着いたオレンジと、明るいブラウンの交じる人目を引く髪色をした雄樹は学生の頃よりも随分男らしくなり、今は可愛さと格好よさが見事に合わさった魅力的な顔立ちをしている。
そんな雄樹の登場に、特に女子たちはヒソヒソと喜びの声を上げるが、聞こえているのか無視しているのか、俺のすぐ前まで来た雄樹はカウンター越しに俺を覗き込む。


「でも浮気はダメだよー?」
「はいはい。ご忠告どーも」
「あはは。なんかトラちゃんと会うの久しぶりだねー。一週間ぶり?」
「そんな久しぶりでもねぇだろ」
「久しぶりじゃーん、トラちゃんの薄情者~」


しかしその中身はあまり成長しておらず、社会人としての常識を身に着けた雄樹は身内の前では変わらない。
俺の前に座っていた少年にほくそ笑んだ雄樹は、顔を赤くして席を譲る彼にお礼を言うと早速お粥を注文してくる。おいこら、なにしてんだお前は。


「シローちゃんは? 今日寄るって言ってたけど」
「いや、まだ来てないな。仕事忙しいんだろ」
「あー、次期社長だもんねー」


注文せずとも雄樹の頼むものが分かっている仁さんが、けらけら笑っているアホの前にシェリートニックを置く。そんな仁さんに向ける雄樹の視線の甘いこと甘いこと。お手拭を差し出す凰哉でさえ苦笑いだ。
ピルルルル、デスリカと直通している電話が鳴った。すぐさま受話器を取った仁さんの眉根が寄るのを見て、颯爽とお粥を運びに行く凰哉は正しい。


「トラ、デリバリー頼む。あと司が話あるってよ」
「司さんが?」
「またいつものお使いじゃねぇの? こっちはやっとくから先行って来い」
「はい」


俺の返事にいくぶん和らいだ笑顔を見せる仁さんの指示で、俺は卵味噌と梅のお粥を一つずつ持ってカシストを出る。

チン。軽快な音がしてエレベーターの扉が開いた先は賑わしい。重低音が体を揺すり、目に悪そうなライトの踊る様が自由に楽しむ男女を照らす。
俺は声をかけてきた男女に笑みを返しながら、さっさとカウンターの方へ足を進めた。


「どーも夏輝さん、デリバリー来ました」
「あー小虎くん。いつもごめんね?」
「いえいえ。こっちもがっつり稼がせて貰ってるんで」


なんて意地悪に笑えば、緑のモヒカンよろしく夏輝さんは、その派手な容姿で可愛い笑顔を見せて頷いた。
お盆ごとお粥を渡しながら司さんの所在を聞こうと口を開けば、少し離れた場所に増設されたカウンターから拍手の音が湧く。


「今日も人気ですね、豹牙さんのパフォーマンス」
「まぁねー。俺もここからこっそり見て楽しんでるんだー」


初めてデスリカにデリバリーしたあの日、同じくこのカウンターにいた夏輝さんに驚いていたのも懐かしい。今やすっかり打ち解けた彼が「内緒だよ」なんて笑いながら司さんを呼び出してくれた。すぐ来るから、と告げた夏輝さんに頷き目線を豹牙さんに向けると、彼は俺の存在に気づいていたらしく、今しがた作り終えたカクテルを頬の赤い女性客に差し出してから、別のバーテンダーに声をかけてカウンターを出る。


「小虎、今日もデリバリーか? 凰哉はどうした?」
「お疲れ様です、豹牙さん。司さん直々にご指名がかかったので今日は俺ですよ。ご不満ですか?」
「いや、むしろ嬉しい。つーかなんど聞いてもいいよなぁ、その豹牙さんって響き」
「ははは」


学生の頃から男性らしさの滲む豹牙さんだったが、歳を重ねた今の彼は色気が増し、少しつり上がったその瞳の雄々しさに女性客はこぞって頬を染める。
カクテル好きが高じてバーテンダーの道を歩んだそんな豹牙さんは、フレアバーテンダーというパフォーマンスをしながらカクテルを作る技術がより高く、数々のコンテストでも優勝をおさめていた。そんな彼だが、純粋な技術は仁さんに負けると自分の腕を磨く一途さは相変わらず格好いい。


「司の指名って、またお使いか?」
「だと思いますよ。二人とも人使い荒いですよねぇ」


ため息をつく俺の頭を豹牙さんが撫でる。もう子供じゃないんだから止めてくださいよ、と以前お願いしたとき、俺からみりゃ年下だろ、なんて軽く一蹴されてしまったので、それ以降受け入れている。


「はい浮気現場とつげーき」
「いてっ、ちょっと司さん、重いです」


そんな俺と豹牙さんのあいだを割るように、肩を組んで現れた司さんが豹牙さんの手によって俺から離される。嫉妬ですか、ごちそうさまです。なんて思っていたら、逆に豹牙さんが肩を組んできた。


「え、本当に浮気? うそ、やだ俺の豹牙が反抗期……!? ちなみに3Pとかどう? 小虎くん」
「いやぁ、お断りします」
「まぁそう言わずにさ、俺も司も損させねぇくらい上手いと思うけど?」


と、二人揃うと凶悪なこの兄弟に苦笑を浮かべ、伸びてくる両手を叩く。


「学生だった俺にあんなクリスマスプレゼントをくれる二人には付き合いません」


今や毎年恒例となったカシストでのクリスマスパーティー初めの年、玲央とどうなるかも分からなかった俺に兄弟揃ってクリスマスカラーの包装紙に包まれたプレゼントをくれた二人だが、その中身は壮絶だった。
なにせエネマグラとグリセリンフリーのアナル用ローションだったのだ。初めて迎えた甘い一夜の翌日、中身を見てクエスチョンマークを浮かべる俺の手からそれを奪った玲央は、無言でゴミ箱に捨てていた。


「えー、豹牙どうする? 小虎くん諦める?」
「無理だろ。年々色っぽくなってよ、ちょーエロい」


と、ニヤニヤ笑った豹牙先輩が俺のシャツの襟元を指で広げた。その下に隠されていた歯形とキスマークの数は正直言ってグロかった。


「すげぇマーキング。あの澄ました顔がどんなんなるか、見てぇよな?」
「本当だよねぇ。ついでに録画したいなぁ」


歳を重ねても凶悪さの消えない、いやむしろ邪悪さが増しているこの兄弟に、俺はやはり苦笑を浮かべるのだった。
そんな俺に司さんがようやく本来の用事であろう茶封筒を手渡す。その中身がなにかよくよく理解している俺は素直に受け取った。


「いつもごめんねー。メールでやり取りすりゃいいんだけど、こっちは個人情報だからさ」
「いえ、俺で良ければいつでもお使いしますよ」
「んふふー。だぁいすきなお兄ちゃんのためにぃ?」


と、人の悪い笑みを浮かべる司さんに目を細める。


「えぇ、そうですよ」


それからきっぱり言い切れば、二人は目を丸くして口を閉じた。かと思えばやっぱり3Pがどうのこうの言ってきたので、いい加減にしなさいと頭にチョップを食らわせ離れる。大人しく離れた二人が夏輝さんに怒られた頃、俺はようやく出入口であるエレベーターを目指した。

すれ違う客層は以前と大分変ってしまったなぁと目を細める。
カシストにハシゴしてくる客層がそうであるように、不良の溜まり場となっていたこのデスリカもいまや服装も髪型も派手な男女がひしめき、その中でも洗練された一部の人間に周りが群れている。
それでも非行少年少女の呼び方が変わらず不良であることは、なんだか嬉しかったりもするのだけど。

チン。軽快な音がしてエレベーターの扉が開いた先で、思わぬ人物に目が見開く。
相手もまさかここで俺に会うとは思わなかったのか、疲弊していた顔がパッと喜びに変わった。


「小虎、こんばんは」
「こんばんは、志狼ちょっと痩せた?」
「そうかな? じゃあ小虎のお粥食べて回復するよ」
「ははは、まかしとけ」


医者の夢を諦め、親の会社を継ぐため常務として仕事に就く志狼は以前よりも美人になったと思う。黒髪をワックスで撫でたスーツ姿は上品な艶やかさが漂い、にこりと微笑むその笑みは男の俺でもドキリと胸が高鳴る。
志狼の隣に並べば、惜しみもなく笑みを浮かべる彼につい笑ってしまった。


「そういや雄樹がシローちゃんはー? って騒いでたぞ」
「本当? でも雄樹に会ってなかったからなぁ。カシストには頻繁に通ってたけどね」
「まぁ、でもここ最近来てなかったじゃん。ちょっと心配してた」


そう言って志狼の肩をひじで突くと、嬉しそうに俺の頭を撫でる志狼の姿に乗り合わせていた男女が甘い吐息を漏らす。
すぐさま開いたエレベーターの扉をくぐってカシストに戻れば、いち早く志狼を認めた雄樹が近寄ってくる。


「シローちゃん、久しぶり―!」
「うん、久しぶり。こないだ雑誌で見かけたよ。男前だった」
「えー、本当? ねぇ聞いたトラちゃん、俺男前だって」
「はいはい、俺から見りゃお前ら二人ともイケメンだよ、ごちそーさん」


雄樹と志狼の二人の姿に騒がしくなる店内を通り抜け、カウンター内でお粥を見ていた仁さんの元に戻れば、陣取っていたカウンター席に二人が並んだ。


「おい志狼、痩せたか?」
「え? 仁さんまで小虎と同じこと言ってるんだけど。そんなに痩せたかな?」
「痩せただろ。ちゃんと食ってんのか?」
「ははは。ちゃんと食べてるよ、大丈夫」


席に腰を下ろした志狼に仁さんが不機嫌そうに声をかける。
短期間ではあったが、カシストでバイトしていた志狼のことを仁さんも大事に思っているのだろう。お手拭とビールを出しながらしきりに世話を焼く仁さんの姿はお父さんのようだ。


「まぁ、仕事を頑張る志狼のことは応援するけど、辛いときは言えよ? 会社までデリバリーしてやるからさ」
「小虎……うん、ありがとう」


仁さんが見ていてくれたお粥を完成させながら、そんな志狼に声をかける。照れくさそうに微笑む志狼の笑顔に、カウンターにいた数名の男女が悶絶していた。

医者を目指し、その職に就ける人間はいるだろう。けれどこの会社の社長の座に、お前以外の人間を付ける気はない。と、和解した両親に言われてから、志狼は医者の夢を諦めたと言っていた。当時は軽い口調で語っていたが、多分かなりの葛藤があったはずだ。今でこそ「あれは単なる脅しだった」と笑い話にする志狼だが、両親の思いに応えようと励む彼の姿は、やっぱり俺の憧れである。


「大丈夫ですよ。彼の面倒は私が見ますから」
「げ、仙堂……」


そんな志狼を中心に集る俺たちのもとに、相も変わらず爽やかな笑顔で現れたのは、警察庁警視長課長となったキャリア組の仙堂さんだ。その後ろにはだるい顔をした新山さんまでいる。
仙堂さんの登場に、志狼はその顔を歪め、心なしか身を引いていた。


「確かに痩せましたね。アナタは頑張りすぎるところがある、もう少し肩の力を抜いてはどうです? ほら、この冴えない新山さんのように」
「え、ちょっと冴えないとか本人の前で言う? あ、言うよね。お前はそういうキャラだふっ!?」
「でも真似しちゃダメですよ。適度に力を抜け、ということです」


十年経ち、互いに離れた役職になっても変わらない漫才に俺はつい笑ってしまうが、話し掛けられている志狼はやはり全身で拒絶していた。
なにやら志狼に思い入れがあるらしい仙堂さんは、忙しい身でありながらこうして志狼によくちょっかいをかけている。歳を重ねるごとに美人になっていく志狼は、仙堂さんはじめ多くの年上の男性に人気が高いようで、常務に就任した際、親にあてがわれたという志狼の秘書も、たまにカシストへ訪れる志狼をしきりに迎えにきては世話を焼いているのだ。
今のところ、俺は誰も応援せずにいるが、いつか志狼が心を開ける人が現れたのなら、もちろん応援しようと雄樹と二人で決めている。


「あれ、新山さんだ」


お粥やお酒をテーブルに運んで戻ってきた凰哉が、ぐったりしている新山さんを見つけて目を輝かせた。


「どうしたんですか、そんな冴えない顔して、あ、右頬が赤いですね、舐めましょうか?」
「いやぁー! こいつ怖い! マジ怖い! つーか俺奥さんいるから!」
「もう亡くなってるじゃないですか、一夜の過ちくらい天国から許してくれますよ」


止めなさい。そう言って凰哉の頭を小突くと、歳相応な可愛い顔を見せて微笑まれる。
そんな凰哉に対し、ちゃっかり志狼の隣に座った仙堂さんは志狼と同じように気持ちの悪いものを見るような冷えた目をしていた。


「冴えないオジサンには同意しますが、私には無理ですねぇ、そんなゲテモノ」
「ゲテモノッ!?」
「いやいや、こんなカラッカラのおっさんを組み敷くのが楽しいじゃないですか」
「カラッカラッ!? なんなのお前ら!?」


完全に遊ばれている新山さんが、まだ比較的安全だと判断した仙堂さんの隣に座ると、俺の前にいた雄樹がけらけらと笑う。


「ほーんと凰哉って良い性格してるよねー。喧嘩してるときとギャップありすぎ」
「ありがとうございます。ちなみに守備範囲広いんで、雄樹さんも小虎さんもイケますよ」
「おい凰哉、次そんな冗談言ったらタマ潰すぞ」


仁さんの凄んだ忠告に、なぜか新山さんが股間を隠した。


「今日は賑やかだねー」
「お前らカウンターに密集しすぎだろ」


そんな賑やかな場所に現れたのは、あれから日本支社で企画課長の座に就いたノエルさんと、出す作品のほとんどがヒットを飛ばす売れっ子官能小説家の巴さんだ。
派手な見た目の二人の登場に場がより濃くなり、店内のお客さんも水を得た魚のようにはしゃいでいる。


「いらっしゃいませ、二人とも。今日も来てくれたんですね」
「うん。小虎のお粥を食べると良い案が浮かんでくるんだ」
「俺は付き添いだけどな」


色々とあった二人だが、あの麻薬事件があった年、日本支社に異動してきたノエルさんをノアさんだと信じ込んで狙う輩も多かった。その多くが誤解であることを知らない彼らを、ノエルさんの側にいた巴さんは容赦なく叩き潰していた。その縁から二人は密接な関係となり、二年前から同棲もはじめている。

もう十年来もこうして足を運んでくれる二人目当てに訪れるお客さんも多いのだが、今日はそれ以上に派手なメンツが揃っているせいか、店内はたくさんの人で溢れていた。


「おいなんなんだ、今日に限って集まりやがって。おいトラ、手ぇ止めてんな」
「はい。あ、凰哉これあそこのテーブルに。こっちとこっちは左側の二人だから」
「はい。あ、いらっしゃいませー」


そんな人数を三人でさばくには限度がある。だからバイトを募集しているのだが、なかなかいい人材にはまだ巡り合えていない。そんな状況だからか、俺と仁さんと凰哉のチームワークはバランスが良く、その姿を肴に楽しむ輩が多いのもまた事実だった。

現在のカシストで看板メニューとされた俺の作るお粥はありがたいことにとても人気で、若い連中が集まるこの時間でも仕事帰りのOLやサラリーマンも訪れてくれる。
目指せお粥のてっぺん頂上、なんていつぞや雄樹が名付けた目標を果たせたかどうかは分からないが、俺は仁さんと一緒に悩んで一定ラインのお粥を作り上げた。けれどそれは一定ラインであって、多くの人が好むであろう基本の形だ。
酔っ払いや、それに合わせる酔えない人たち、はたまた仕事帰りで疲れ切った社会人、賑やかな店内で暗い表情を見せる誰か。そんな連中一人一人に対し、俺が出した答えはその人にあった味、量、食感を提供することだった。
この十年で築き上げた経験が、こうして忙しい中でも俺が持ちつづける誰かを癒したいという気持ちを、少しでも現せていたらいい。


「おい嘘だろ」


テキパキと動いていた仁さんが、新たな来客に顔を歪める。どうしたのだろうと視線を向ければ、俺と同じように出入口に目を向けた店内の全員の時間が止まった。

今や各有名ブランドの広告塔としても活躍し、海外でも人気の高いスーパーモデル。街で見ない日はないと言われた朝日向玲央の登場に店内の空気は甘く滴った。

カツン。ブーツの底を床に叩きつけながら、優雅な歩みを見せる玲央に女性客が色を帯びる。契約中のブランドイメージに合わせた黒髪が靡けば、伝説と謳われた元不良の玲央に男性客が目を瞠る。
こちらを真っ直ぐと射抜くその熱い視線に、俺と仁さんと凰哉の気持ちは見事に一致する。最悪だ――と。


「あのっ、玲央さんですよね! 握手、握手お願いしていいですか!?」
「すみません、私はサインをお願いします!」
「玲央さんっ! 俺ずっと玲央さんのファンなんです!」


俺と目が合った玲央が微笑んだ瞬間、いっせいに集まった男女の壁で玲央の歩みが止まった。いたく面倒くさそうにカウンターを出た凰哉が、そんな肉の壁を押しのけながら「握手もサインも写真もダメですよー」と気だるげな声を出している。はじめはそんな凰哉に文句を言っていた彼女たちも、カシスト名物、裏人格凰哉の凄味に黙ってしまう。ちなみに凰哉の前は仁さんがあの役割を担っていた。

人の壁が某神話を沸騰とさせる動きを見せて道が出来る。そんな舞台をゆるりと歩き出す玲央に店内は甘いため息で埋め尽くされたが、当の本人はまるで俺しか見えていないかのような素振りでこちらまでやって来た。


「悪いな、司からリスト預かってるだろ。その中に急ぎの客があるから取りに来た」
「……はい、どうぞ」
「なんだその顔」
「いーえ、玲央が来ると面倒だなーとか、これっぽっちも思ってないよ?」
「へぇ?」


雄樹と志狼のあいだから、カウンターに手をついて茶封筒を受け取った玲央がくすりと笑む。
その破壊力たるや、雄樹と志狼、その他いつものメンツさえ目が離せずにいる。

パシッ。と軽い音を立てながら、俺の頭を茶封筒で叩いた玲央が意地悪な笑みを残して歩き出した。もちろん最後に「馬鹿トラ」と口パクすることも忘れずに。

いつぞや宣言した通り、玲央は匡子さんの事務所が特に熱を入れているファッション誌で結婚を発表した。
それも強かに「ブライダル特集」と名付け、事務所でも人気の高いモデルや、実際結婚していた隆二さんまで巻き込んだ大々的な企画を利用したのだ。
流れとしては隆二さんと泉ちゃんの結婚発表後とあった為、その特集で他のモデルたち単品のタキシード姿と、アートを意識した写真は歴代の特集の中でも評価は高かったと言う。
大きくページを独占した玲央の記事には、自分には婚約を約束した女性がいて、彼女とは死別してしまったが、彼女が望んでいた結婚をこうした形で発表します。これからは辛いとき支えてくれた、彼女も大切に思ってくれた弟とより家族の時間を築き上げていきたい。などと云った文章がプロの手により受け入れやすい形で掲載されていたのである。
その一人の女性に対する誠実な態度と、弟を可愛がるギャップに女性ファンは倍増し、いつぞやのMVですでに目をつけていた各社からのオファーは高校卒業後、後を絶たなかった。
とはいえ、今やスーパーモデルとして名高い朝日向玲央を世に送り出したと言われているのが、その結婚発表の特集だった。

玲央と婚約していたコトという女性の正体が俺であると知る人間は、ミキちゃんさん含め数人いる。が、そのすべてを上手く言いくるめてしまった匡子さんに、玲央は一生頭が上がらないことだろう。
そんな匡子さんも、ブライダル特集を撮影した西さんと再婚したが、今もバリバリ働きながら、たまにカシストに飲みに来てくれる。


「おし、戸締りいいな? 今日もお疲れさん」
「お疲れ様でした」


玲央の登場により一層の盛況を迎えた本日の営業も、ようやっと終わりを迎える。
後片付けを終え、店内出入口前のスラットシャッターを下ろした仁さんが鍵をかけた。それを俺が確認してから凰哉が待たせていたエレベーターに乗り込む。


「今日はやけに集まってきたな」
「ですね。今や有名人ばっかですから、大変ですよね」
「そういう小虎さんも有名ですけどね」


そう言って笑う凰哉に仁さんと声を合わせて「お前もな」と言ってしまうのは、仕方がないと思う。


「そういや、明日の面接は凰哉が前に連れてきた、なんつった、鷲美(すみ)だったか? 予定だから遅刻すんなって言っとけよ」
「大丈夫ですよ、鷲美のやつ真面目だけが取り柄なんで」


バイトを募集してすぐの頃、凰哉が連れてきた学生が一人いる。派手な非行少年少女の中では目立たないけれど、控えめな笑顔が可愛らしい真面目そうな子だった。自分は鈍臭いから、と一度は断っていたが、あれからも凰哉がアプローチしつづけ、ようやく観念して履歴書を送ってくれたらしい。
あの子が働いてくれるなら、当面のバイト事情は安泰かな、なんて仁さんと目を合わせて笑えば、凰哉は生き生きとした顔で鷲美くんのサイズを教えてくれたのだった。

カシストから約五分、新居はすぐ近くになった。

モデルとして活躍し、五年前から事業を立ち上げた玲央はある日突然、引っ越すぞと言い出したのである。その日、玲央が買ってきてくれたロールケーキを食べていた俺の顔はひどく間抜けだったことだろう。
というのも、玲央と母さんが過ごしていた以前のマンションはセキュリティ面があまり宜しくなく、隙を見て家の前まで押し寄せるストーカーまで現れてしまったのだ。それを危惧した玲央が目をつけたのが、セキュリティ面も高く、駅にもカシストにも近い今のマンションだった。地下駐車場から直接自宅まで繋がる面も、バイク好きの玲央には高評価だったらしい。

以前住んでいたマンションは、祖父母経由で知り合ったとある一家に貸している。
人の好い優しそうな夫妻で、もうすぐ子供も生まれるのだと言う。あの家に思い入れがないわけではない。けれど、あの場所で誰かが温かな家族を築き上げてくれたのなら、それだけで十分幸せな気持ちになれる。


「ただいまぁ」


厳重なロックをくぐり抜け、やっと玄関扉を開く。確かにセキュリティは高いが、そのぶん苦労も多い。それに見合う安心感と飲み込めばいいのだろうが、疲れた体を引きずって帰る日はこのロックがちょっとだけ憎いのも本音だ。
リビングまでのろのろ歩いていくと、灯りは点いているが玲央の存在はなかった。仕事部屋からカタカタとキーボードを叩く音が聞こえていたので、先ほど渡したリストに関する仕事でも片づけているのだろう。

玲央が立ち上げた事業は今でこそ真っ当だが、当初それを始めたのは、ファッション業界で知り合ったデザイナー個人が趣味で作った一点ものを、司さんお墨付きの富豪層に売るところからだった。
有名ブランドの専属デザイナーが、ブランド名に傷をつけたと言われぬよう匿名で売り出し、それに十分見合った客を用意した司さんに話をつける。という始まりでも、今では無名デザイナーにもチャンスを設けたシステムを作り、あの司さんと協力して経営する玲央は、いつだったか「モデルだけじゃ養えねぇだろ」と言っていた。

そも、どうしてデザイナーに話をつけたかといえば、結婚後、モデルを引退した隆二さんは泉ちゃんと一緒に匡子さんが経営する事務所と協力して、ブランドを作り上げたのだ。そこでデザイナーとして働く隆二さんと泉ちゃんのタッグは業界でも特に有名で、今も友好関係にある玲央がそんな二人に目をつけ、今の事業の基礎を築いたらしい。


「小虎」
「あ、ただい、んぅっ!?」


いつのまにやら俺の背後に立っていた玲央に振り返った瞬間、塞がれる唇。ついでに抱かれた腰に回る手が、情欲に俺の背中をなぞった。ぞくぞくと背筋を襲う感覚に舌を絡めると、ねっとりと甚振る真っ赤な舌が俺の思考を駄目にする。ひっそりと離れた唇を繋ぐ唾液の糸を舐めとった獣は、隠そうともしない肉欲で揺らぐ瞳に俺を映した。


「おかえり」
「うん……ただいま、仕事してたんだ?」
「まぁな」


俺の首元に顔を埋め、思いっきり匂いを嗅いだ玲央がそのまま俺を持ち上げ、近くのソファーに押し倒してきた。柔らかさに跳ねる体が隙間なく密着すれば、シャワーを浴びたであろう石けんの香りに俺まで興奮してしまう。
俺の首筋を舐めはじめた玲央が、器用にも長いチェーンを舌で引き出しながら、その先に繋がる指輪を咥えて笑った。俺は迷うことなくチェーンを外し、そのまま手を差し出して微笑めば、恭しい仕草で嵌めた玲央は満足げに口付けを施す。


「んっ……何回やってもなんか、慣れないね」
「なんどでも確認できて良いだろ」
「玲央のものだって?」
「あぁ」


あのクリスマスイブの日、本当は指輪が用意できてからちゃんと言うつもりだった玲央は、司さんのせいでイブに告白なんてくせぇことさせられた、などとぼやいてもいたが、玲央がオーダーメイドで作ってくれた指輪は見た目こそシンプルだが、形や装飾など細かなところまでこだわった美しいものだった。料理ばかりの俺の手にはあまり似合っていないと思うのだが、こうして二人だけになると指輪を嵌め、なんどでも味わう形式に照れてしまうのも本当で。


「お前は馬鹿だから、こうしてなんどだって教えてやんねぇと忘れんだろ」
「忘れないけどなぁ。玲央が俺のこと、あんまり放っておかなきゃね」
「へぇ?」


いくども叩き込まれるような、玲央のものであるという儀式めいたこの状況を楽しむのはお互い様だ。
組み敷かれたまま微笑む俺に、玲央が少し荒っぽく喰らいつく。指輪の嵌められた左手に指が絡まり、無意識に握れば舌先をかじられてしまった。


「……ムカつく」
「は?」


さも当然とばかりに服の中へ手を滑り込ませてきた玲央の動きが止まった。不機嫌そうに眉間に寄るしわをつい見つめてしまえば、玲央が俺を抱き上げる。


「香水と煙草くせぇ」
「ちょっ、玲央、シャワー浴びて来るから、分かったから離して」


カシストで働いていればどうしても香水や煙草、お酒の匂いが移ってしまうのは仕方がないのだけれど、俺を抱いてからの玲央はそれを特に嫌った。
今回も同じように、俺だけの匂いでないことについに痺れを切らした玲央に担がれて、広い脱衣所に運ばれる。そもそもこの歳になって俵抱きされる俺って一体。

潔く俺を下ろした玲央は、問答無用で服を剥ぎ取った。ついでに自分も服を脱いで、どうやら一緒に入るつもりらしい。強引に連れられた浴室で、すぐさま温かいシャワーを向けられる。
パシャパシャとお湯が床に跳ねる中で、頭からお湯を浴びせられる俺は目を伏せたまま、伸びてきた手にされるがままだ。

玲央の潔癖症は、実は直っていない。今も外食は好まないし、誰かの手作りなど絶対手をつけない。そのくせ俺が作るご飯は食べるし、以前まで噛みつくだけだった首筋もしきりに舐めるようになった。いつだったか、散々イかされてぐったりしている俺の汗を舐めた玲央が、文字通り獣の如く襲いかかってきたこともあった。

そんな玲央が執拗に愛でるのが、やはり背中だった。
まるで自分のものであると後ろから散々揺さぶりながら、よく背中へ欲望をかけては塗り込むこの男の、そんな小さな独占欲がたまらないと言えば、喜ばせるだけなんだろうなぁ。

シャワーから上がり、髪も濡らしたままの状態で俺にすり寄る玲央はひどくご満悦だ。ベッドに寝転び、自分の腕の中に閉じ込めた俺の首筋に顔を埋め、求めるように匂いを嗅いでは牙を突き立て、じわり痛むそこを舐め上げる。


「でも好きなんだよなぁ」
「あぁ?」
「んーん、独り言。今も変わらず横暴なお兄ちゃんが、大好きだなぁって」
「知ってる」


顔を上げた玲央が俺の唇をついばむ。

誰もが見惚れる気高い美しさを持ちながら、その口から語る言葉は心地よく、ときにひどく一方的なことを言い出したって目が離せない。その風格たるや絶対の王者。従わずにはいられない。
そんな野獣のような荒々しくも麗しい獣がゆるりと笑みを浮かべるのは、あぁ。


「あはは、うん。俺も知ってる……悔しいけど、すっげぇ好き」
「当たり前だろ、馬鹿トラ」


なんて、言い放つ玲央の言葉に笑んだ俺の首筋に、獣は優しく牙を突き立てた。泣きたくなるほど甘い痛みに、俺はいるかも分からない神様に一人、ただどうしようもなく自慢したくなるのだ。

今もなお、溢れ続けるこの温かさを飲み込んで。
俺は玲央の頬を撫で、こちらへ引き寄せた。互いの瞳に映る獣の姿に微笑みあってしまえば、もうそこには幸せしかなくて。

だから、俺は世界で一番愛おしい兄の唇に喰らいついた。



-END-

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