話花遊び 変わり目とは

葵冬弥(あおいとうや)

文字の大きさ
上 下
1 / 1

話花遊び 変わり目とは

しおりを挟む
何かの終わり

何かの始まり

どこかの節目

どこかの境目


終わりがあるから

始まりがあって

じゃあ

その始まりはどこから

その始まりの終わりは何から

始まりと終わりはどちらが先なのだろう



「ぐすっ……」

どうでも良い思考をしてると、隣から静かに鼻をすする音がした。

「へぇ」

「なによ」

思わず漏れた声に涙目でキッと睨まれた。

その目から逃げる様に恥ずかしさを隠すように目を逸らす。

「可愛いところもあるんだなって」

「……ばか」

その言葉にはいつもの鬼のようなお説教の時みたいな力は無かった。

在校生からの歌で春の陽光差し込む体育館は満たされている。

辺りを軽く見回すと、同じように涙を流したりしてる人もチラホラ見える。

それはこれまでが終わる事への涙なのか、新しい事の始まりへの涙なのか。

そんな中、何も感じてない俺は何も終わってなければ、始まることも無いのだろうか。

「ふくっ……」

出そうになる欠伸を噛み殺す。

感傷も感慨も期待も希望も特に胸の中に去来することなく、ただ卒業式が過ぎていく。

ここで何かあっただろうか、これまで何かあっただろうか。

これから何かあるだろうか、これからも何も無いだろうか。

俺という始まり。

俺という終わり。

俺というものが変わる時はいつ来るのだろうか。

俺の変換点は訪れるのだろうか。

いつまで俺は俺なのだろうか。

そんな宛もない問を壇上の校章に投げかける。

とりあえず、隣の日に日に綺麗になっていく幼馴染を眺めることにした。

綺麗な泣き顔ってあるもんなんだな。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

卒業

村田定夏
ライト文芸
僕が少し前に書いた百合小説になります。 完全に自己満趣味です。よろしくお願いします。 実は、表紙と挿絵は少し違うんです。 よければ見比べて見てくださいね。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【短編集】ショートショートのなる木【一話完結】

夏伐
ライト文芸
ひま時間の隙間にはさまる不思議な短編集。 異世界ファンタジーから日常にちょっと不思議やホラーまで、基本一話完結のショートショートの短編集。 カクヨムさまにも投稿しております。

夏の日の時の段差

秋野 木星
ライト文芸
暑い夏の日に由紀恵は、亡くなったおばあちゃんの家を片付けに来た。 そこで不思議な時の段差に滑り込み、翻弄されることになる。 過去で出会った青年、未来で再会した友達。 おばあちゃんの思いと自分への気づき。 いくつもの時を超えながら、由紀恵は少しずつ自分の将来と向き合っていく。 由紀恵の未来は、そして恋の行方は? 家族、進路、恋愛を中心にしたちょっと不思議なお話です。 ※ 表紙は長岡更紗さんの作品です。 ※ この作品は小説家になろうからの転記です。

水しか描けない

ピンク式部
ライト文芸
「でも、僕は水しか描けない」 寒さで身体が凍えそうになっても飽きるまで部屋のなかの水底を私たちは泳いた。 夢見がちな「私」は、風変わりな画家・藤野に戸惑いながらも惹かれていく。 初出 「幻影66号線」 2011年11月3日 発行

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

一夜の男

詩織
恋愛
ドラマとかの出来事かと思ってた。 まさか自分にもこんなことが起きるとは... そして相手の顔を見ることなく逃げたので、知ってる人かも全く知らない人かもわからない。

蛙の神様

五十鈴りく
ライト文芸
藤倉翔(かける)は高校2年生。小さな頃、自分の住む棚田村の向かいにある疋田村の女の子朱希(あき)と仲よくなる。けれど、お互いの村は村ぐるみで仲が悪く、初恋はあっさりと引き裂かれる形で終わった。その初恋を引きずったまま、翔は毎日を過ごしていたけれど……。 「蛙の足が三本ってなんだと思う?」 「三本足の蛙は神様だ」 少し不思議な雨の季節のお話。

処理中です...