α様に囲われて独立が出来ません!

翠 月華

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29、実体験のお話

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なり「ねぇ」
 ある日、カフェに居ると声をかけられた。
 その日は個室が空いていたから、個室でお茶をした。
「えっと、僕のこと?」
成「そう。あなたのことよ」
隆登「俺達に何の用だ?」
成「少し待って。
 執事達は出ていって。
 彼らの執事達もよ」
汐「失礼ですが、理由をお伺いしてもよろしいでしょうか」
成「私はこの二人とだけで話たいの。
 それを邪魔するって言うの?
 彼らは誰も敵わないトップクラスのアルファの番がいるけど、貴方達は所詮執事。
 私の行動にとやかく言える権利はないわ。
 分かったなら早く出ていって、目障りなのよ」
 辛辣な言葉を並べる彼女だが、その瞳には何か哀しげなものがあった。
汐「分かりました。
 那央様、何かあればお呼び下さい」
 隆登の執事さんも同じ感じのことを言って退出していった。
成「単刀直入に聞くけど貴女達、脱走、家出を企んでいるでしょ?」
 そう言われて僕も隆登も驚きを隠せない。
 何で分かったんだろう。
成「多分オメガでは・・気づいているのは私だけよ。
 だからそんなに心配しなくてもいいわよ」
隆登「何で分かった?」
 彼女は少し考えると応えた。
成「それは私も家出をしたからよ。
 でも、結局捕まったわ。
 だから、ここに居るの」
「捕まった?」
成「そうよ。
 家出して始めて分かったわ。
 世界はね、オメガを大切にしているけれど、アルファが出てくれば誰も助けてくれなくなる。
 特に運命の番であれば、ね。
 世界を支配するのはアルファなのよ、結局ね」
 世界を支配するのは、アルファ?
 誰も助けてくれなくなる?
 よく分からないことでいっぱいだ。
 でも、僕ら以外に家出した人がいたなんて!
隆登「そんなのは分かっている」
成「分かっていないわ!分かるはずないもの。
 鳥籠の中に、アルファによって創られた仮想の幸せに囚われている貴方達は。
 外に、家出をしてみれば分かるわ、必ず」
 シン…とした空気が広がりかえる。
成「そういえば、私の名前は成。
 貴方達は自己紹介なんてしなくて良いわ。
 知っているから」
隆登「何で知って…まぁ、そんなことどうでもいい。
 捕まった後はどうなった?
 それに、学校にも来れるのはなぜだ?」
 成は鼻で笑い、呆れ気味に応えた。
成「捕まった後?
 そんなの地獄に決まっているじゃない。
 逃げ出したことを何回も何回も謝らされて、それでも許してくれなくて。
 彼らは自分のフェロモンも権力も財力も全部使って私が一生自分達から逃げられないように洗脳のように教えられたわ!
 地獄の日々よ。
 彼ら、アルファはね、心の底まで逃げ出そうとする意志を潰しにくるの。
 オメガは寿命が長いからその分じっくりとじっくりと精神を蝕んでいく」
 成の戸惑い様や諦め、怒りからは彼女が番のアルファからどれほどのことをされたかが伺えた。
 成がどれほどの思いを抱えているかは分からないけれど、捕まったら僕もどうなるのか不安でたまらない。
 でも、それでもあの夢の様な生活を少しでも触れたい。
成「そして、私がここにいるのは、無理矢理番契約をされたからよ。
 運命の番であればオメガの同意がなくても番契約をできる。
 世界を支配しているのはアルファだからそれをしても見逃される。
 それにね?番ったからって地獄の様な生活は終わらないのよ。
 それより、もっと酷くなる。
 家に帰ればずっと彼らと一緒、もし仕事をしていても会社に連れて行かれて逃げれない。
 フェロモンや香で思考は鈍らされるからまともに考えることも出来ない。
 ただ、彼らに甘えるだけ。
 そして、どんどん自分が自分じゃなくなる。
 彼らに依存して、一人では何も出来なくなる。
 実際ね、今じゃ一人で着替えも出来ないの。
 これから、どうなるのやら。もう諦めよ」
 彼女は闘うのを辞め、諦めたんだ。
 自分が欲しかったものの為に闘うことを…
成「だからね、家出なんてやめればって言っているの。
 どうせ無駄なんだし。
 大人しく、この偽りだけど楽しい世界を満喫しましょう?
 そうすれば…」
 彼女の瞳からは涙が流れた。
隆登「それでも、俺達はやる」
「僕もあの生活に触れてみたいんだ」
 それでは僕達の決意は変わらない。
◆◆◆◆
 本当に久しぶりの投稿です。
 これからもどうかよろしくお願いします。
 木曜日に投稿しようと頑張りましたが、無理でした。はぁ…
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