α様に囲われて独立が出来ません!

翠 月華

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2、最悪な結果

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 僕は、バース検査に来た。隆登と。
 あまり気が乗らないが駄々をこねても仕方がないのでお昼ご飯後に病院に来た。
「あー行きたくなぁ」
 どうやら隆登も乗り気ではないらしい。
「何でこんな快晴の日に行かなならんのだ」
 いや、相当不機嫌だ。
 元気な時はとことん体を動かしたい彼にとっては、快晴で雲一つないこの天気は遊ぶには絶好の日だ。
 しかも今日は土曜日。学校も休みだ。
「まぁまぁ。
 早く終わらしてどこか行こう。」
「お、マジ?
 付き合ってくれんの?」
「うん」
 ちょうど今日は暇だしね。
 そんな気軽な話をしていると隆登の順番が回ってきた。
「じゃ、いって来るわ」
「いってらっしゃい」
 隆登が行ってしばらくすると僕の番になった。
 しかし、バース検査はすぐ終わる筈なのに中々隆登は帰って来なかった。
 おかしいなぁ。
 病室に入ると先生と看護師がいた。
 先生は、僕が体調が悪くなった時に対応してくれる担当医だった。
 少し気が楽になった。
 気が楽?なんで僕緊張してるんだろう。
「久しぶりだね。那央君」
「はい、ご無沙汰しております。
 所で、先生はここの担当ではなかったのでは?」
 すると先生は気まずそうに頬をかいた。
「あー、今日は人が足りなくてな」
「へー」
 特に突っかからず、珍しいこともあるんだなぁと思った。
「さて、さっさと終わらそうか」
「はーい」
 バース検査の仕方は簡単。
 血を採ってバース検査ようのキットにのせるだけ。
 青がアルファで、ピンクがオメガ、そして緑がベータだ。
 いつも通り緑に…
 そう思ってた。
 でも、キットに現れた色はピンク。
「え…」
 驚きの余り、思わず出してしまった声。
 なんで…
 そんな疑問しか頭に浮かばなかった。
「え、ピンク?」
 先生も驚いていたが、冷静だった。
 なんでそんな、冷静でいられるの?
 オメガに憧れて見てもらいたい人が大半なこの宇宙でも、僕は珍しく憧れを持ってはいなかった。
 だって、平凡な僕には関係ないことだと思ってたから。
「那央君。
 移動しようか」
 嫌だ。
 だって、移動したら宇宙機関に僕がオメガだって登録される。
 そうしたら、運命の番と番わされて、平凡とかけ離れた生活になる。
 そんなの嫌だ!
ガラッ
 勢いよく開かれた扉の前には隆登がいた。
「逃げるぞ」
 隆登に手を引っ張られながら、もつれそうな足で必死に走る。
「俺もオメガだったんだ」
 悔しそうに顔を歪めながらそう言った。
 あぁ、だから中々ホームに戻って来なかったんだ。
 角を曲がり、ドアを開け、身を伏せる隆登を見習って僕も見を伏せた。
「ここなら少し、は安全だ、と思う」
 いつも自信があり頼りになる彼の声には不安と悔しさがあった。
 それでも、僕の手をしっかりと握る隆登の手は安心感があり、今の僕にとってはいてくれるだけで心の支えとなった。
 で平穏な日々が崩れていく…
 目が熱く視界がぼやける。
「相変わらず泣き虫だな」
 ゆっくりと顔をあげる。
「なんでそんな事言うの…
 僕らの平穏で平凡な楽しい日々がなくなっちゃうんだよ?」
「学校帰りのパフェ食べれなくなるな?」
「そうだよ…え?」
「母さん達の甘い物食べた時の胸焼けの顔、見れなくなるな?
 学校や母さん達にバカしたのが、バレかったことで得られたあの謎の達成感も得られなくなるな?」
「は?こんな時に何考えてんの?
 ていうかバカしたって、何したんだよ!」
 いつの間にか流れそうになっていた涙が引っ込んでいた。
 そして、いつもの何気ないあの会話のように話すことが出来ていた。
「あ…」
 優しげに微笑む隆登。
「お前は、そうやっていればいいんだよ」
 その微笑みは、優しく心を和らげてくれる頼りある表情。
 そして、ふと気づく。
 彼の、隆登の僕を癒そうとするその姿勢を。
「あ…たか、」
 隆登の名前を言いかけたその瞬間、ドアが開かれた。
 入って来た人達はおそらく追っ手だろう。
 どうしよう、止めたくても止められない不安と恐怖。
 どこか行って欲しいという純粋な願いは淡く…
 僕と隆登は引き離される。
「やっ、やめ…隆登!」
「那央!」
 互いに名前を叫び合い、抵抗をする。
 だが、抵抗は虚しく完全に引き離される。
 どこか高級感のある部屋に連れて行かれる。
「貴方様が大貴那央様ですね?」
 返事をする気力なんてない。
「「お初にお目に掛かります」」
「宇宙機関ロイヤル所属の千野河汐と申します。
 那央様の仮専属護衛兼執事として誠心誠意お仕えしたい所存です」
「同じく仮専属護衛兼執事となりました佐賀丘苑と申します。
 今後とも宜しくお願い致します」
 あ…、嫌だ、僕の平凡な日々を壊さないで…
「うるさぃ」
「うるさいっ!
 なんで護衛なんてつけられなきゃなんない訳?
 僕は平凡でっ、平穏なっ、ただの普通の生活を望んだだけなのに!
 贅沢なんて望んでいないっ!
 普通の生活で十分なのに!
 それ以上望んでないのにぃ…」
 一つ溢れれば、また一つと溢れくる僕のただの純粋な願い。
 なんで、平凡な日々が壊されていくの…
プスツ
 首元に感じる小さな痛み…
 そこで僕の意識は途絶えた。
◆◆◆◆
 二回目の投稿!
 読んでくださった方、本当にありがとうございます!
 お気に入り、お願い致します🙇
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