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アリスが王宮で暮らすようになり、エマの生活は一変した。

オリバーがエマにより冷たく当たるようになったのだ。

働かないなら家に住まわせないと、洗濯、掃除、料理など侍女と同じ扱いをするようになった。
またことあるごとにエマを蔑む発言を繰り返すようになった。
「妹は美しく、ピアノの才能もあり、未来の王妃となるのに、お前は見た目もさえず、大した才能もない!
役立たずめ!」

エマは最初こそ悲しんでいたが、だんだんとオリバーの暴言をその通りだと自分自身も感じるようになってきた。

オリバーがエマだけに冷たく当たるのは、優秀な自分の兄と見た目がそっくりなエマが憎いためであったのだが、もちろんエマはそんなこと知る由もなく、自分自身が醜く、大した才能がないからなのだと考えるようになった。

エマは疲れたのだった。両親の死後、悲しむまもなく、理由もわからず冷たくあたられるようになり、怒ることも、自分の環境を嘆くことも、全て疲れてしまい、考えることを諦めるようになっていた。

これまで侍女に整えてもらっていたみなりも自分で整えなければならず、また、大した服等も与えられず、身も心もボロボロになっていった。

元々いた使用人たちは、エマを甘やかすからと解雇され、新しい使用人たちは、自分たちよりボロボロなエマをバカにした。

マーティ侯爵家は、エマたちの父が貿易を広げ、エストレジャ帝国でも、1.2を争うお金持ちであったが、オリバーが贅沢を繰り返すようになり、たいして働きもしなかったため、次第に生活も苦しくなっていった。

生活が困窮するにつれ、オリバーは毎日大量の酒を飲むようになり、しまいにはエマに暴力を振るうようになった。

エマの自慢の美しいシルバーヘアーはボロボロになり、毎日の暴力で顔にあざもでき、以前の美しいエマは見る影もなくなった。
元々控えめな性格だったエマは、さらに心を閉ざし無表情になってしまったのだった。

エマの心にあるのはアリスが無事なのかと言う心配だけであったが、オリバーに隠されてしまっているのか、アリスからの手紙は届かず、こちらから送ろうにも手紙を買うお金をもらえずで、連絡を取れずにいた。
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