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4人で馬車に乗り込み街に着くと、ものづくりが盛んな帝国なだけあり、とても賑わっていた。
「わー、お姉さま見てください!
かわいい飴が売ってます!」
「本当ねアリス!あとで買ってもらって2人で分けましょ!」
2人の姉妹は物珍しさもありキョロキョロと辺りを見回しながらも、街で買い物を楽しんでいた。


「おい、お前の様な奴がどうしてこんな良いものを身につけている!
 どうせどこかから奪ってきたんだろ!よこせ!」

大きな声が聞こえ、周りを見渡すと綺麗な服を着た褐色肌の少年が、男に服を剥ぎ取られそうになっていた。
エマは慌てて走り出し、少年の前に立ちはだかりさけんだ。

「やめて!!
 おじさん、なにをするの?
この子のものを盗もうとするなんて!」
「綺麗な服を着たお嬢ちゃんは知らないかもしれないが、この国じゃ、この肌をした奴が綺麗な服を着れるなんてありえないんだよ!
どうせどこからこいつが奪ってきたもんだから、俺がもらってやろうと思ってな!」

エストレジャ帝国ではかつて奴隷制度があり、褐色肌の人々は奴隷として扱われていた。今の先代の皇帝陛下が奴隷制度を撤廃したものの、なかなか貧富の差は埋まらず、差別意識も根強く残っているのが現状であった。
だからこそ、周りの人々もこの少年が乱暴されていることに気づいていたが巻き込まれたくないと、見て見ぬ振りをしていたのであった。

だがエマは他国との交流が盛んなマーティ家の娘であり、様々な見た目の人と小さい時から接してきた。また両親も見た目によって態度を変える様な人たちではなく、エマにとっては差別意識など生まれるはずもなかったのである。

「これは隣のムーア帝国の民族衣装のはずよ!そして、ムーア帝国はこの肌の色の方がほとんどのはず!きっとこの子のものに違いないわ!」

エマはそう叫ぶと少年の手を掴み、立たせてあげる。少年はとても驚いたものを見る様にエマのことを見つめていた。
そこにエマを追ってきたマーティ侯爵が現れ、その男は暴行罪で騎士たちに連行されていった。

「エマ!急に離れたら危ないじゃないか!
これからは1人でどこかに行こうとしてはいけないよ。分かったね?」
エマは両親に何も言わず慌てて走り出したために、父からしっかり怒られた。
少し落ち込むエマに少年は何やら声をかけてくれたが、まだ他の国の言語を勉強し始めて間もないエマには伝わらず、慰めている雰囲気だけは伝わったため、少年に笑顔を返した。

そしてやっと少年のことに気づいたマーティ侯爵は少年のつけていたネックレスを見て、慌てて帝国騎士団に連絡をとり始めた。

そのあと両親は慌ただしくし始めたため、買い物は中止となり、母と姉妹だけ先に家に帰ることとなった。

家に着いた後も怒られたことと、買い物が途中で終わってしまったことに落ち込むエマに、アリスは母親に買ってもらっていたウサギの形をした飴をくれた。

「お姉様一緒に食べましょう?
お姉様が悲しいと私も悲しいです。」

エマはそんな可愛い妹と、初めて食べた不思議な形の飴のおかげで、父親が帰ってくる頃にはすっかり少年のことは忘れていた。
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