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創生の杖
19 孫、嫁をナンパされる!
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『決着うう!レキアス選手!決勝戦進出です!』
『バスクッ!』
俺の目の前で、バスク兄さんの胸に突き立った杖がズブリと抜けるのを呆然と見ていた。
杖が抜けると、そこには背中から正面にかけて、ぽっかりと丸い穴が空いた兄さんが倒れていくのを俺は身動き一つ出来ずにただ眺めていた──
バタリ
静かな音を立て、舞台の上へと崩れ落ちた兄さんを見て、ようやく俺の身体に脳から指令が送られた。
「兄さんッ!」
俺は叫ぶやいなや、舞台の上でうつ伏せとなって倒れている兄さんに駆け寄ると、まだ横にいた対戦相手のレキアスを無視してバスク兄さんを抱き上げる。
ダン!と力強く舞台を蹴った俺は、一瞬で舞台の外へと着地する。
それと同時に、みるみると兄さんの胸に空いた風穴が塞がっていく。
心臓を潰された兄さんは、物凄い量の血を噴き出していたが、それすらも瞬時に凝固すると、まるで巻き戻るように兄さんの体内へと戻っていく。
そうして然程も時間をかけずに元通りの肉体へと戻った兄さんをみて、俺は安堵の息を吐く。
「ふむ……ここの結界はいい仕事をしているな」
「?!」
突然背後から掛かった低い声に、俺は驚いて振り向くと、そこには先程まで兄さんを殺しかけていたレキアスが立っていた。
視線と口調から、どうやら兄さんの回復の様子を観察しているらしい事がわかる。
肉体の回復は終わったが、意識は直ぐには戻らないため、俺は係の者に頼んで兄さんを医務室へと運ぶ手配を済ませる。
「うーむ……即死クラスのダメージを耐える彼も異常だが、それを瞬時に癒やす結界も異常だな」
「お前……あそこまでする必要があったのか?!」
「ん?……はて、言っている意味が分からんが?助かったのだから良いではないか……仮に、死んでも自己責任だろ?」
「ッ……」
「それに、彼は少々強かったからね。こちらも少し熱くなってしまったのかもしれないな」
「──俺は……必ず決勝でお前をぶちのめす!」
「ほぅ……楽しみにしておこう」
レキアスはそう言うと、細い目を一層細めて、俺を一瞥すると控室へと退散して行った。
俺も舞台の清掃……バスク兄さんが流した血を係の者が清掃するという事で、一端控室へと戻る。
どうやら舞台上で血を流すと、それは失ったままになってしまうらしい。
舞台の外の結界の回復促進効果で失った血もある程度は回復するから大丈夫なんだという。
『お待たせしました!これより準決勝第二試合を行います!まずはこの方!異臭テロに胸毛テロと、観客に容赦なし!それでいて両手にカスミ&ルカという美女を侍らす極悪非道のリア充野郎!グレイブゥゥゥゥ!』
【ブウウウウウウ!】
「テメーに嗅がされた異臭で鼻が一晩中痛かったぞおおお!」
「チリチリな胸毛を食わされた恨みは忘れないわよ!」
「ふざけんなクソが!アマゾネスはいいがルカちゃんに手を出すのは許さぶふぅぅぅ」
『アマゾネスって誰の事よッ!』
うん。いい感じに収拾がつかなくなってるね。カオスカオス。
舞台上に進み出た俺は、観客の反応にうんうんと頷いていると、解説の娘は何事も無かったかのように次の選手の名前を告げる。
『続きましては!かの英雄!偉大なる傭兵スズキコウタの孫にして隠し子!残念兄弟と離れて暮らした為か!すっごくまともな美少年!スズキソウタァァァァ!』
【キャァァァァァァァ!】
「ソウタ様ぁぁぁぁぁ!」
「その優しげな緑の瞳に見つめられたいいいい!」
「美少年よおおおおお!」
「男の娘キタコレーーー!」
「俺の反り返ったアレでヒイヒイ言わせてやるぜええ!」
俺の時と違い、かなり好意的なコールに、観客席からは黄色い声の嵐が吹き荒れる。
一部不穏な声も聞こえるが……
そんな不穏な声さえも、スズキソウタは微塵も気にするような気配を出さず、観客席に向けてにこやかに手を振っている。
『フン……グレイブの方がいい男よ!』
イラつきながらいうカスミに俺の胸がキュンとなる。
カスミ……流石俺の嫁(予定)
などと俺はカスミの方に熱い視線を向けていると、正面に居るスズキソウタがタン!と床を蹴った音が聞こえた。
そして──
「よっ……と」
『なッ?!』
「え?!」
なんと、スズキソウタは解説席に座るカスミの前へ、まるで瞬間移動したかのように出現した。
驚きの声を上げている俺とカスミの声を無視して、カスミを観察したスズキソウタは一言──
「可愛いね。カスミちゃんだっけ?こんなに華奢で愛らしいお嬢さんは見た事がないよ」
『へ?!』
「どうかな?今夜、俺とディナーでも?」
『ええ?!』
なんと、スズキソウタはあろうかとか、カスミを口説き始めた。
やれやれ、よりにもよって可愛いだとか、愛らしいだとか……ましてや華奢などと、一体カスミの何処をどう見ればそう見えるのか。
余りに過剰に盛ってるお世辞に、カスミもさぞやげんなりしているに違いない──と俺はカスミの表情を見て顎を外す事となる。
『そんな……私が華奢……愛らしいなんて……』
なんと、カスミは頬をピンクに染め上げ、まるでその辺の乙女のような恥じらいを浮かべている。
「全て本当の事だよ。カスミ……」
スズキソウタは優しそうな声色でそう言うと、カスミの長い髪の毛の一房を優しく掴み、掬い上げると、その毛先に口付けをした。
こいつ……死んだな。
カスミがこのような暴挙をミスミス許す訳がないのだよ。
と俺は外れた顎をガチン!と元に戻して再び様子を窺うと──
『ッ──』
「えええええ?!」
なんと、頬をこれでもかと言うくらい真っ赤に染め上げたカスミが、ピクンと身を捩らせて潤んだ瞳をスズキソウタに向けているのに、思わず声が出てしまった。
「ハハ。彼は面白いな。どうかな?あんな面白いだけが取り柄みたいな彼なんかやめて──俺にしないか?」
「んだとゴラァ!誰が面白ギャグ要員だって?!それにカスミは俺の嫁だ!手を出すなら容赦しないぞ!」
『グレイブ……』
俺の怒りと想いを同時に込めたセリフに、カスミは一度俺の名前を呟いた後、大きく息を吸う。
「カスミちゃん?」
『いつまで触ってんのよ!このナンパ野郎!』
カスミの様子が変わったのを訝しがり、覗き込むようにカスミを見るスズキソウタに向けて、カスミは大きな声で吼えるとヤツの腕を掴んで舞台の上へと豪快に投げ飛ばした!
「うお?!」
『グレイブ!その同族を語る偽者!さっさと叩きのめしちゃいなさい!』
クルリと空中で受け身を取ったスズキソウタは舞台の上へと着地。それと同時に拡張器から声が張り上げられた!
『準決勝第二試合!始めえ!』
『バスクッ!』
俺の目の前で、バスク兄さんの胸に突き立った杖がズブリと抜けるのを呆然と見ていた。
杖が抜けると、そこには背中から正面にかけて、ぽっかりと丸い穴が空いた兄さんが倒れていくのを俺は身動き一つ出来ずにただ眺めていた──
バタリ
静かな音を立て、舞台の上へと崩れ落ちた兄さんを見て、ようやく俺の身体に脳から指令が送られた。
「兄さんッ!」
俺は叫ぶやいなや、舞台の上でうつ伏せとなって倒れている兄さんに駆け寄ると、まだ横にいた対戦相手のレキアスを無視してバスク兄さんを抱き上げる。
ダン!と力強く舞台を蹴った俺は、一瞬で舞台の外へと着地する。
それと同時に、みるみると兄さんの胸に空いた風穴が塞がっていく。
心臓を潰された兄さんは、物凄い量の血を噴き出していたが、それすらも瞬時に凝固すると、まるで巻き戻るように兄さんの体内へと戻っていく。
そうして然程も時間をかけずに元通りの肉体へと戻った兄さんをみて、俺は安堵の息を吐く。
「ふむ……ここの結界はいい仕事をしているな」
「?!」
突然背後から掛かった低い声に、俺は驚いて振り向くと、そこには先程まで兄さんを殺しかけていたレキアスが立っていた。
視線と口調から、どうやら兄さんの回復の様子を観察しているらしい事がわかる。
肉体の回復は終わったが、意識は直ぐには戻らないため、俺は係の者に頼んで兄さんを医務室へと運ぶ手配を済ませる。
「うーむ……即死クラスのダメージを耐える彼も異常だが、それを瞬時に癒やす結界も異常だな」
「お前……あそこまでする必要があったのか?!」
「ん?……はて、言っている意味が分からんが?助かったのだから良いではないか……仮に、死んでも自己責任だろ?」
「ッ……」
「それに、彼は少々強かったからね。こちらも少し熱くなってしまったのかもしれないな」
「──俺は……必ず決勝でお前をぶちのめす!」
「ほぅ……楽しみにしておこう」
レキアスはそう言うと、細い目を一層細めて、俺を一瞥すると控室へと退散して行った。
俺も舞台の清掃……バスク兄さんが流した血を係の者が清掃するという事で、一端控室へと戻る。
どうやら舞台上で血を流すと、それは失ったままになってしまうらしい。
舞台の外の結界の回復促進効果で失った血もある程度は回復するから大丈夫なんだという。
『お待たせしました!これより準決勝第二試合を行います!まずはこの方!異臭テロに胸毛テロと、観客に容赦なし!それでいて両手にカスミ&ルカという美女を侍らす極悪非道のリア充野郎!グレイブゥゥゥゥ!』
【ブウウウウウウ!】
「テメーに嗅がされた異臭で鼻が一晩中痛かったぞおおお!」
「チリチリな胸毛を食わされた恨みは忘れないわよ!」
「ふざけんなクソが!アマゾネスはいいがルカちゃんに手を出すのは許さぶふぅぅぅ」
『アマゾネスって誰の事よッ!』
うん。いい感じに収拾がつかなくなってるね。カオスカオス。
舞台上に進み出た俺は、観客の反応にうんうんと頷いていると、解説の娘は何事も無かったかのように次の選手の名前を告げる。
『続きましては!かの英雄!偉大なる傭兵スズキコウタの孫にして隠し子!残念兄弟と離れて暮らした為か!すっごくまともな美少年!スズキソウタァァァァ!』
【キャァァァァァァァ!】
「ソウタ様ぁぁぁぁぁ!」
「その優しげな緑の瞳に見つめられたいいいい!」
「美少年よおおおおお!」
「男の娘キタコレーーー!」
「俺の反り返ったアレでヒイヒイ言わせてやるぜええ!」
俺の時と違い、かなり好意的なコールに、観客席からは黄色い声の嵐が吹き荒れる。
一部不穏な声も聞こえるが……
そんな不穏な声さえも、スズキソウタは微塵も気にするような気配を出さず、観客席に向けてにこやかに手を振っている。
『フン……グレイブの方がいい男よ!』
イラつきながらいうカスミに俺の胸がキュンとなる。
カスミ……流石俺の嫁(予定)
などと俺はカスミの方に熱い視線を向けていると、正面に居るスズキソウタがタン!と床を蹴った音が聞こえた。
そして──
「よっ……と」
『なッ?!』
「え?!」
なんと、スズキソウタは解説席に座るカスミの前へ、まるで瞬間移動したかのように出現した。
驚きの声を上げている俺とカスミの声を無視して、カスミを観察したスズキソウタは一言──
「可愛いね。カスミちゃんだっけ?こんなに華奢で愛らしいお嬢さんは見た事がないよ」
『へ?!』
「どうかな?今夜、俺とディナーでも?」
『ええ?!』
なんと、スズキソウタはあろうかとか、カスミを口説き始めた。
やれやれ、よりにもよって可愛いだとか、愛らしいだとか……ましてや華奢などと、一体カスミの何処をどう見ればそう見えるのか。
余りに過剰に盛ってるお世辞に、カスミもさぞやげんなりしているに違いない──と俺はカスミの表情を見て顎を外す事となる。
『そんな……私が華奢……愛らしいなんて……』
なんと、カスミは頬をピンクに染め上げ、まるでその辺の乙女のような恥じらいを浮かべている。
「全て本当の事だよ。カスミ……」
スズキソウタは優しそうな声色でそう言うと、カスミの長い髪の毛の一房を優しく掴み、掬い上げると、その毛先に口付けをした。
こいつ……死んだな。
カスミがこのような暴挙をミスミス許す訳がないのだよ。
と俺は外れた顎をガチン!と元に戻して再び様子を窺うと──
『ッ──』
「えええええ?!」
なんと、頬をこれでもかと言うくらい真っ赤に染め上げたカスミが、ピクンと身を捩らせて潤んだ瞳をスズキソウタに向けているのに、思わず声が出てしまった。
「ハハ。彼は面白いな。どうかな?あんな面白いだけが取り柄みたいな彼なんかやめて──俺にしないか?」
「んだとゴラァ!誰が面白ギャグ要員だって?!それにカスミは俺の嫁だ!手を出すなら容赦しないぞ!」
『グレイブ……』
俺の怒りと想いを同時に込めたセリフに、カスミは一度俺の名前を呟いた後、大きく息を吸う。
「カスミちゃん?」
『いつまで触ってんのよ!このナンパ野郎!』
カスミの様子が変わったのを訝しがり、覗き込むようにカスミを見るスズキソウタに向けて、カスミは大きな声で吼えるとヤツの腕を掴んで舞台の上へと豪快に投げ飛ばした!
「うお?!」
『グレイブ!その同族を語る偽者!さっさと叩きのめしちゃいなさい!』
クルリと空中で受け身を取ったスズキソウタは舞台の上へと着地。それと同時に拡張器から声が張り上げられた!
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