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創生の杖
10 孫、兄の二回戦を観戦する!
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バスク兄さんが股間を押さえて悶絶したまま気絶している間にも、本戦はしっかりと進み──
「おう!見たかグレイブ!俺の華麗な斧捌きを!」
「斧で華麗って言われてもなぁ」
「がはは!次も勝ってバスクにリベンジだ!」
今俺が話しているのはバトルアックスの使い手であるゴンザレス。
彼もしっかりと一回戦を勝ち抜きベスト8に名を連ねている。
「ああ。そろそろバスク兄さんを起こさないとか」
本戦は、まずは第一ブロックのベスト4までを先に決め、昼を挟んで第二ブロックの本戦となる為、勝ち抜いた者は一日に二度も戦わねばならないのだ。
「兄さん!兄さん!そろそろ出番だよ?」
「んああ……川向こうでお婆ちゃんが手を振って……」
「エレイラお婆ちゃんはまだ生きてるからッ!勝手に殺すな!」
股間を押さえ、ケツを突き出した状態で気絶している兄のケツをテイッ!と思い切り蹴飛ばすと、控室の壁に顔面から突き刺さってしまった。
「やべ!手加減間違えた!」
「おいおい。お前も随分と力付けて来たな」
「あ~……手加減が中々上手く出来なくてね」
俺はバスク兄さんの足を掴んで、よいしょ!と壁から頭を引っこ抜くと、ようやくバスク兄さんは覚醒した。
「うう……股間が痛いのは当然だが……なぜだか頭も割れるように痛い……」
頭痛を堪えるような感じで頭を押さえているバスク兄さんに、俺は慌てて回復スキルのキュアを掛けた。
壁から引っこ抜いた拍子に頭が少し割れたのか、額に少し流血が見えたのに焦ったというのもある。
「おお!助かったぞグレイブ!兄を思いやるその気持ち。感動だな!」
「に……兄さんには頑張ってもらいたいからね。あは、あはは……」
馬鹿で良かった。
ホッと息を吐いた俺の横で一緒に見てたゴンザレスなんて額を押さえて首を横に振ってるし。
【ワアアアアアア!】
「お、どうやら終わったらしいな。次はベスト4だ」
「兄さんが負けるとも思えないし、サクッと勝って来るといいよ」
「そうだな!そしてお前は準決勝で俺に負けるのだ!がっはっは!」
サムズアップする俺と、豪快に笑うゴンザレス。
「万年ベスト4は今年もベスト4だろ」
「ぐぬぬ!」
バスク兄さんはヤレヤレと肩を竦めてゴンザレスにそう告げると、大変悔しそうに歯を食いしばるゴンザレス。
「まぁ、今年も胸を貸してやるからよ。楽しみにしとけ」
「ふん!いけ好かない貴様の胸に俺のアックスを突き立ててくれるわ!」
「おお。脳筋はこれだから怖いね」
HAHAHAと笑うバスク兄さんだが──あんたの方が脳筋だよ!とは口が裂けても言えない。
あ、ゴンザレスも微妙に残念な物を見るような目で兄さんを見てる。
『お待たせしましたあ!それでは第一ブロックベスト4決定戦を開始致します!それでは第一試合──』
「お。どうやら出番のようだな。見てるがいい。俺の華麗なる戦いぶりを!」
そう言ってバスク兄さんは高笑いを上げながら舞台へと向かって行った。
取り残された俺とゴンザレスはヤレヤレと肩を竦め、俺は一応舞台袖へ観戦に──
「ゴンザレスは行かないのか?」
「ああ。俺はいい。バスクが終われば次は俺の試合だからな。それに、勝てば次はヤツと戦える」
「お前は初見の直感勝負が大好きだしな。俺はしっかりと研究してくるよ」
俺はそう言ってゴンザレスと別れて舞台袖へと向かった。
『ここで勝てはベスト4だあ!それではベスト8第一試合!極悪非道の足首フェチ!夜の方でも二刀流!バスク選手ううううう!』
【ブゥゥゥゥゥゥゥ!】
『ねえねえ!暗殺拳くんといい感じだったけど?ウホッてことでいいんだよね?おにーちゃん!二刀流なんてやめて一本に絞っちゃいなよ!』
観客席からは大ブーイング。
高々足首フェチというだけでこのブーイングは俺なら心が折れるな。
「おいこら解説ううう!足首フェチはやめろよ!俺はむっちりとした太ももが大好物なんだぞ!誤解を生む発言は控えろよなああ!」
舞台上で拳を握って語る兄を見て、俺は感動に打ち震えていた。
心が折れる所か、自分の真なる性癖をバラしていくスタイル!俺には真似出来ないよ!
兄さん。かっこいいよ兄さん。
そんなんだから男にしかモテないんだろうけど……
『はい!バスク選手は大会の後で地下牢にでも拘束して頂くとして──そんな変態の相手は!』
「おいい!俺の扱い!」
『豪腕一閃!上腕二頭筋が逞しい!ナックルマスター、チボデー選手ううう!』
【きゃぁぁぁぁぁぁぁ!】
『リーゼントだあああああ!』
観客席からはバスク兄さんの時のようなブーイングではなく、黄色い声援が飛んでいる。
特に若い女性の声が大きいようだ。
「テメーか!男のケツを狙ってるっていう変態野郎は!」
「だーれが変態だこのトサカ頭!大体なんなんだその頭?長いパンでも髪の毛の中に埋めてんのか?」
「テメー!俺様の魂を侮辱するとはいい度胸だ!ボコボコにしてやるから覚悟していや『だっさ!リーゼントから針金見えてるよウケルー!ワイルドな顔のくせして毎日針金で髪型整えてるんですネ♪プークスクス』が……れ……」
「ど……どんまい?」
あ……兄さんの対戦相手泣きそうだ。相変わらずサーリアの男に対する毒は猛毒だな。
舞台の上で俯き、肩を震わせているトサカの彼にほんの少し同情している俺がいた。
「おう!見たかグレイブ!俺の華麗な斧捌きを!」
「斧で華麗って言われてもなぁ」
「がはは!次も勝ってバスクにリベンジだ!」
今俺が話しているのはバトルアックスの使い手であるゴンザレス。
彼もしっかりと一回戦を勝ち抜きベスト8に名を連ねている。
「ああ。そろそろバスク兄さんを起こさないとか」
本戦は、まずは第一ブロックのベスト4までを先に決め、昼を挟んで第二ブロックの本戦となる為、勝ち抜いた者は一日に二度も戦わねばならないのだ。
「兄さん!兄さん!そろそろ出番だよ?」
「んああ……川向こうでお婆ちゃんが手を振って……」
「エレイラお婆ちゃんはまだ生きてるからッ!勝手に殺すな!」
股間を押さえ、ケツを突き出した状態で気絶している兄のケツをテイッ!と思い切り蹴飛ばすと、控室の壁に顔面から突き刺さってしまった。
「やべ!手加減間違えた!」
「おいおい。お前も随分と力付けて来たな」
「あ~……手加減が中々上手く出来なくてね」
俺はバスク兄さんの足を掴んで、よいしょ!と壁から頭を引っこ抜くと、ようやくバスク兄さんは覚醒した。
「うう……股間が痛いのは当然だが……なぜだか頭も割れるように痛い……」
頭痛を堪えるような感じで頭を押さえているバスク兄さんに、俺は慌てて回復スキルのキュアを掛けた。
壁から引っこ抜いた拍子に頭が少し割れたのか、額に少し流血が見えたのに焦ったというのもある。
「おお!助かったぞグレイブ!兄を思いやるその気持ち。感動だな!」
「に……兄さんには頑張ってもらいたいからね。あは、あはは……」
馬鹿で良かった。
ホッと息を吐いた俺の横で一緒に見てたゴンザレスなんて額を押さえて首を横に振ってるし。
【ワアアアアアア!】
「お、どうやら終わったらしいな。次はベスト4だ」
「兄さんが負けるとも思えないし、サクッと勝って来るといいよ」
「そうだな!そしてお前は準決勝で俺に負けるのだ!がっはっは!」
サムズアップする俺と、豪快に笑うゴンザレス。
「万年ベスト4は今年もベスト4だろ」
「ぐぬぬ!」
バスク兄さんはヤレヤレと肩を竦めてゴンザレスにそう告げると、大変悔しそうに歯を食いしばるゴンザレス。
「まぁ、今年も胸を貸してやるからよ。楽しみにしとけ」
「ふん!いけ好かない貴様の胸に俺のアックスを突き立ててくれるわ!」
「おお。脳筋はこれだから怖いね」
HAHAHAと笑うバスク兄さんだが──あんたの方が脳筋だよ!とは口が裂けても言えない。
あ、ゴンザレスも微妙に残念な物を見るような目で兄さんを見てる。
『お待たせしましたあ!それでは第一ブロックベスト4決定戦を開始致します!それでは第一試合──』
「お。どうやら出番のようだな。見てるがいい。俺の華麗なる戦いぶりを!」
そう言ってバスク兄さんは高笑いを上げながら舞台へと向かって行った。
取り残された俺とゴンザレスはヤレヤレと肩を竦め、俺は一応舞台袖へ観戦に──
「ゴンザレスは行かないのか?」
「ああ。俺はいい。バスクが終われば次は俺の試合だからな。それに、勝てば次はヤツと戦える」
「お前は初見の直感勝負が大好きだしな。俺はしっかりと研究してくるよ」
俺はそう言ってゴンザレスと別れて舞台袖へと向かった。
『ここで勝てはベスト4だあ!それではベスト8第一試合!極悪非道の足首フェチ!夜の方でも二刀流!バスク選手ううううう!』
【ブゥゥゥゥゥゥゥ!】
『ねえねえ!暗殺拳くんといい感じだったけど?ウホッてことでいいんだよね?おにーちゃん!二刀流なんてやめて一本に絞っちゃいなよ!』
観客席からは大ブーイング。
高々足首フェチというだけでこのブーイングは俺なら心が折れるな。
「おいこら解説ううう!足首フェチはやめろよ!俺はむっちりとした太ももが大好物なんだぞ!誤解を生む発言は控えろよなああ!」
舞台上で拳を握って語る兄を見て、俺は感動に打ち震えていた。
心が折れる所か、自分の真なる性癖をバラしていくスタイル!俺には真似出来ないよ!
兄さん。かっこいいよ兄さん。
そんなんだから男にしかモテないんだろうけど……
『はい!バスク選手は大会の後で地下牢にでも拘束して頂くとして──そんな変態の相手は!』
「おいい!俺の扱い!」
『豪腕一閃!上腕二頭筋が逞しい!ナックルマスター、チボデー選手ううう!』
【きゃぁぁぁぁぁぁぁ!】
『リーゼントだあああああ!』
観客席からはバスク兄さんの時のようなブーイングではなく、黄色い声援が飛んでいる。
特に若い女性の声が大きいようだ。
「テメーか!男のケツを狙ってるっていう変態野郎は!」
「だーれが変態だこのトサカ頭!大体なんなんだその頭?長いパンでも髪の毛の中に埋めてんのか?」
「テメー!俺様の魂を侮辱するとはいい度胸だ!ボコボコにしてやるから覚悟していや『だっさ!リーゼントから針金見えてるよウケルー!ワイルドな顔のくせして毎日針金で髪型整えてるんですネ♪プークスクス』が……れ……」
「ど……どんまい?」
あ……兄さんの対戦相手泣きそうだ。相変わらずサーリアの男に対する毒は猛毒だな。
舞台の上で俯き、肩を震わせているトサカの彼にほんの少し同情している俺がいた。
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