英雄の孫は見習い女神と共に~そしてチートは受け継がれる~

GARUD

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激闘!帝国武術大会

26.5後編 カスミ、殺意の波動に目覚める!

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 悲鳴や歓声が響く会場内で、一人の男の声が──私の大好きな──愛おしい彼の声が耳に飛び込んで来た。

 痛みに頭がどうかしたのかと思ったけど、なんとかグレイブが居るであろう場所へと視線を向けると、vipルームの窓から身を乗り出して、必死に声援を飛ばしている姿が見えた。 

 あんまり乗り出してると落ちるよ?
 そんなに心配なら大会優勝云々なんて関係なく私を無理やりにでも攫ってくれればいいのに……男らしく、カッコよく攫われたなら……そうしたら私だってもう少し女の子らしくするのにさ……

「カスミィィィィ!お前がそのヘンテコなお面を着けられたら絶対に結婚なんてしてやらねーからなぁぁぁ!」

 だからそんな大声で叫ばなくたって──

 あん?

 アイツ今なんて言った?負けて仮面着けられたら結婚しない?
 それはアレか?見た目的にNGって事か?私の中身云々より、見た目がNGだから結婚しないってか?
 アイツ……実は私の中身なんて一切見てないんじゃ……
 それどころか最初から私の身体目当てだったんじゃ……

 サーリアやルカちゃんにも色々といやらしい事をしているみたいだし……
 私にもお漏らしを強要したり、トイレ覗かれたし……そう言えば、ルカちゃんがグレイブと旅しているとパンツがよく無くなるって言ってたっけ……私が脱ぎたてあげたのに……

 うん。殺そう。

「コーホー……コーホー……」

 私を殴りまくっていた仮面のヤツは、私が抵抗しなくなったのを見て勝利を確信したのか、どこからか自分が装着している仮面と同じ物を取り出して、今にも私の顔に取り付けようと手を伸ばしている。
 アレが着けられると私もルカちゃんと同様に取れない仮面に苦しみながら一生を終えなければならなくなるかもしれない。


 でも正直、今はそんな些細な事などどうでもいいの。

「うふ……うふふ……〈神気解放〉」
「コーホー……」

 突然私が全身に赤い靄を纏った瞬間、仮面のヤツは伸ばしかけた手を引くと慌てて飛び退った。

「とりあえず……殺そう……そうしよう……」
「コーホー……コーホー……」

 仮面のヤツは、両手を前に出して、ワタワタと手を振った後、腕でばってんを作っている。
 私の放つ殺気が本気だと分かったのか、必死にダメ!絶対!とアピールしてくるが、そんな事は関係ない。

「大丈夫よ……殺した後は私も死ぬわ……」
「コーホー……コーホー……」

 私は更に強めた殺気を纏って、今にもヤツをぶち殺さんと未だダメージが残る身体に鞭打って大剣を握り締めると、オタオタとしていた仮面のヤツは、構えを取った。
 なにやら覚悟を決めました!みたいな感じだけど──

「邪魔するってんなら容赦しないわよ!〈マテリアルブレイバー〉!」

 私は赤い靄を纏ったまま、得意の分身を創り出し、仮面のヤツを囲むように展開する!

『アイツは今すぐ粉微塵にしないと気が済まないの!だから──〈テンペストサークル〉ぅァァああア!』

 四つに分かれた私は、仮面のヤツを中心にして、大剣を水平に持って高速回転を始めれば、たちまち舞台上に巨大な竜巻が四つも現れた。

『アハ!アハハハッ!』

 そして、私達は中心部へと向けて回転を狭めて行けば、ギャリギャリ!と何かを削り取る音が聞こえてくる!

 見れば仮面のヤツは全身を丸くて透明な球体のような物で覆っていて、削り取るような音は、大剣がソレを削り取る音だった。

「コーホー……」

 仮面のヤツは気合を吐くと同時に、私と同様に全身を赤い靄で覆い始め、力を増した球体の範囲を徐々に拡げて四つの竜巻を徐々に押し返していく!

『なんてヤツなの!』
「コーホー……コーホー……」

 ヤツは更に力を入れ、身を守っている球体をバチン!と弾き飛ばす!

『キャッ!』

 なんと仮面のヤツは、力技で無無理矢理に私の四つの竜巻を打ち破ったのだ。
 そして、回転の余波で四方にぶっ飛ぶ私を見て、身を守る球体を解除した──

「アンタのその油断を待ってたのよおおおおお!」
「コーホー……」
「ぶっ飛べぇぇぇぇぇぇ!」

 空から落ちてきた私は、仮面のヤツの頭部をガシッと掴んだまま、コマのように回転して全力でぶん投げた!

 すると、仮面のヤツは高い放物線を描き、舞台の外へボトリと落下した。

 起き上がってきた仮面のヤツは自分が負けたのに納得がいかず、首を傾げ──

 1、2、3、4と四方で倒れている私を指差して確認し……最後に私を指差し──

「数が合わないじゃん!……あ」
「やっぱり喋れるんじゃないその仮面!」
「コーホー……コーホー……」
「今更誤魔化したってダメよ!」

 慌ててくぐもった息を吐くフリをする仮面のヤツに私はスタンジャンプで飛び込んで、ガシッと頭を鷲掴みにして睨みつけた。

「あン!……お願いだから優しくシテ?……あぁぁ!痛い痛い!あーしの小さな頭が砕けちゃう~~!」

 ギブギブ!と腕をタップする仮面のヤツを私はギロリと睨みつけると、渋々といった様子で変質者まる出しの仮面の額に付いた出っ張り部分をポチッと押すと、ポロリと仮面が落下した。

「やっぱり……なんでアンタが大会に出てるのよ!盛子さん!」

 現れた素顔は物心付いた時から見慣れた顔、お爺ちゃんの愛人にして、地上最強のダークエルフだった。

 


 
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