英雄の孫は見習い女神と共に~そしてチートは受け継がれる~

GARUD

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激闘!帝国武術大会

26 孫、見た目なんて気にしない!

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「それじゃ……行ってくる」
「おねーちゃん頑張って!」
「コーホー……」

 カスミは愛用の槍を片手に立ち上がったのを見て、サーリアとルカはエールを送る。

「グレイブ……」

 それでも、チラッと不安そうな視線を送るカスミに、俺は近づいて優しく頭を撫で「頑張ってな」と声をかけると、途端に鼻息を荒くして目を輝かせる。こいつ、本当に年上か?

「もし、私があのヘンテコな仮面着けられたら責任取って結婚してね?」
「いやじゃい!」
「結婚……してね?」
「…………」
「結婚……するよね?」
「…………」

 コテッと首を傾げ、あざとくも上目遣いで俺を見るカスミだが、あんなヘンテコ仮面を着けた嫁などノーサンキュー!と俺はプイッとソッポを向くが、向いた方向に回り込んで再び上目遣いで見るカスミ。
 俺は知らん!とだんまりを決め込んで、再びプイッ!とソッポを向く。
 すると、再び回り込んだカスミは懲りずに上目遣い──だが、瞳の中のハイライトが薄くなっている。
 でも!俺はやなもんはやじゃ!と再度ソッポを向くと──

「アナタを殺して私も「是非結婚させてください!おねがいします!」

 うん。槍からペットを呼び出すのは止めような。
 そいつ、この間普通に人だか魔物だか分からないのをガツガツ食ってたじゃんかよ怖えーよ!
 そりゃ脂汗浮かべながら満面の笑顔でプロポーズするよ!
 なにが「うふふ。見た目なんて関係ないもんね♪」だよ!ハヨ行けよ!



『さあ!今年の武術大会女性の部も残すところ一試合!決勝戦のみとなりました!』

『数々の美闘士の中のトップ!今年はなんと、優勝候補筆頭の大会三連覇の女王サーリア選手が準決勝敗退という事で、展開が読めません!』

『それでは選手の入場です!旋風の女戦士!荒ぶる暴風は再び帝国に不敗神話を轟かせるのか!カスミ!』

 解説のコールに、会場を揺るがすような歓声が巻き起こる中、真剣な表情のカスミがコーナーから舞台上へと上がっていく。

『続いては、顔に着けたオドロオドロしい仮面の下は一体どんな顔なのか!美女なのか!はたまた不細工なのくわぁぁぁあ!いやいや、美女でしょう!絶対に美女です!保証します!なので仮面を投げないで下さい!それ取れないって医務室で噂にコーホー……コーホー……』

 身の程知らずの解説は、コールの途中でビタン!と顔面に仮面を叩き付けられて、ルカと同様に「コーホー……」以外喋れなくなってしまった。
 必死に仮面を引っ張ったり、解説の机に顔ごと全力で叩きつけているが、当然のように割れる気配もない。

 その光景をみた観客達は一斉に静まり返り、一斉に手で顔を覆った。
 みなさん顔面がよほど大切なようだ。

【呪われた仮面の戦士!褐色仮面!】

 最終的に諦めたのか、筆談で解説を始めた。
 その情熱には頭が下がるが、正直今後のあんたの生活が心配だよ。

『それでは両者中央へ!』

「ルカちゃんの仇……私が勝ったら仮面の外し方を教えてもらうわ」
「コーホー……コーホー……」
「ふん!言うわね……いいわ!力尽くでも仮面の外し方を吐かせてやるんだから!」
「コーホー……コーホー……」

 俺の強化した聴覚は、舞台上の二人の会話?をしっかりと拾ったているのだが……カスミさんや。あんた、ソイツの言ってること分かってないよね?
 なんだか一人で盛り上がってるみたいだけど大丈夫だよね?

『決勝戦!始め!』

 審判が合図と同時に舞台上から飛び降りる!

 カスミは無手の相手に、まずは小手調べと遠距離スキルを放つが、褐色仮面は軽く突き出した手のひらに力を集め、カスミが放った遠距離スキルをアッサリと後に逸した。

「やるわね!なら!連続ならどうかしら?!」

 カスミは宣言どおり、水火風雷と属性を帯びたスキルを連続で飛ばすが、褐色仮面は空いているもう片方の手も前に出し、迫るスキルを両手でバシバシと弾き飛ばしていく。

「コーホー……コーホー……」
「確かに……遠距離では決定打を与えられないみたいね!ならば!」

 褐色仮面のコーホーで、どーやって会話を成立させているのか分からないが、カスミは大剣を腰溜めに構え──

「〈レールセット〉!」

 カスミがスキルの発動を声高に宣言すると、カスミから伸びた光のラインが褐色仮面に触れた。
 ダメージなどは一切無いのか、褐色仮面は「コーホー……」と首を傾げている。ホラー待ったなしだな。

「これでアナタは私から逃げられないわよ!〈スタンジャンプ〉!」

 カスミは大剣を腰溜めに構えたまま、新たなスキルの発動を宣言した。
 すると──

「?!」
「やっほー!」

 褐色仮面の眼前に、突如カスミが移動した!
 俺はカスミが走ったり飛んだりという移動する所を一切見ていない。
 まるで、カスミと褐色仮面との空間を切り取ったかのように距離を縮めたように見える。

「動けないでしょ!骨が折れるだけで済めばいいわね!どっせぇぇぇい!」

 そう言って、カスミは腰溜めに溜めた大剣を、身体に捻りも加えて全力で褐色仮面の横っ腹に叩き込んだ!



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