英雄の孫は見習い女神と共に~そしてチートは受け継がれる~

GARUD

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激闘!帝国武術大会

9 孫、災害級の竜巻を考察する!

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 くじ引きも終わり、バトルロイヤル一組目は昼から始まった。

 ルカ、カスミ、サーリアの三人は別の組へと順当に振り分けられ、取り敢えず全員本戦へと出場する可能性が出た。

 一組目、40人は居るであろうバトルロイヤルは、流石に闘技場は狭すぎて、サクサクと舞台から転落して残り10人まで減っていく。
 ここからは実力も伯仲しているのか、ジリジリとした時間が続き、遂に一人の勝ち残りが決まって一組目の終了となった。

「うん……一組目のは三人の相手にはなりそうにないな」

 俺は会場の最上階に設置されている関係者専用のvipルームから戦闘の一部始終を見て、そう感想を漏らした。

 そして続く二組目は、カスミが含まれている。ここは是非とも応援してやらねばなるまい。

 舞台上に現れる参加者たち。
 会場からは至る所から声援が送られているが──わぁぁぁぁぁぁ!──
 一人の選手が登場したところで声援の量が増す。
 会場を大きく揺らすような声援の中、手を振りながら現れたのはカスミだ。
 もともと大会の覇者という事もあり、帝都ではファンも多いのだが、初めて見る者達は、カスミの生まれ持った艷やかな黒髪が一つに纏められ、歩く度に左右に揺れる尻尾に見惚れ、意志の力が篭った力ある瞳にため息を吐く。
 まぁ……黙ってて、暴力を振るわなければ美少女に間違いはないからな。

「カスミー!最初から飛ばすなよ!」

 大きな歓声の中、俺の声など届くわけはないのだが、それでも俺は必死に声を張って声援を送った。
 すると、カスミは俺の方を向いてニコリと笑顔を作って手を振っている。

 それを見て、vip席の下の階に座っている男たちがにわかに騒ぎ出す。

「おお!カスミ様が俺に笑顔を!」
「馬鹿野郎!カスミ様は俺に手を振ってくれたに違いない!」
「おおお!カスミ様!結婚してくれぇぇぇぇ!」

 目の中にハートを浮かべながら声援を送る馬鹿共の声に混じって、俺も手を振って頑張れよ!と伝えた。

『それではバトルロイヤル第二組!始め!』

 拡張器を持った審判の叫び声により、第二組の戦いが始まった!

 舞台を見ると、何故か誰も戦い合っている感じはなく、皆一斉にカスミへと殺到する。

「なるほど……一番の難敵を真っ先にみんなで潰す作戦か。まぁ……当然っちゃ当然か」

 俺はそう一人ごちるが、カスミの心配なぞ一切してはいなかった。

 舞台上のカスミは、前後左右から迫る剣や槍、斧や槌などを巧みに躱しては大剣の一撃で行動不能にさせていく。

 最初はしっかりと対処していたカスミだが──

「ああ……やっぱりこうなったか」

 舞台上では吹き荒れる竜巻が、バコバコと当たるを幸いに参加者達を跳ね飛ばしている。

 カスミの十八番〈ランページサークル〉だ。
 大剣を水平に構え、コマのように回りだしたカスミは、ギュンギュンと徐々にその回転スピードを増していく。
 既に、当てたそばから殺しかねない速度となった回転だが、どうもカスミが持った大剣は刃の部分が潰されているみたいで、跳ね飛ばされた参加者も、真っ二つになったり、ましてや肉片を飛び散らせるような惨事になる事もなく、五体揃った状態で舞台上から跳ね飛ばされていく。

 ただし跳ね飛ばされた選手の全員が、致命傷ちっくに曲がってはいけない所が曲がったりしていた。
 もっとも、舞台上から落ちた段階で、舞台内で受けたダメージは回復する仕様になっている為、即死しなければどんな致命傷でも即時回復する。
 目の前で背骨が真っ二つに折れた選手も、一瞬の内に元の健康体へと回復された。

 カスミはソレを見越して即死しない程度に跳ね飛ばしまくっているのだろう。

 参加者達は、最初こそ元気にカスミに飛びかかっていたのだが、カスミが荒れ狂う竜巻と化した所で様子が一変。

 顔を青褪めさせて、我先にと舞台から飛び降りる者が続出した。

「そりゃこうなるよな」

 これは推測しなくても分かる事だ。

 生き残った選手達は、跳ね飛ばされた奴らの損壊具合を見て、いくら即時回復するとはいえ、一瞬でもあのダメージから来る痛みを想像してしまったのだろう。

 結果──災害級の竜巻による被害は最小限で済まされた。

『カスミ選手!決勝トーナメント進出決定ーーー!』

 ──おおおおお!──

 沸き起こる大歓声の中、カスミは大剣を肩に担ぐと、俺の方を向いて笑顔で手を振った。
 俺もサムズアップして応えてやる。

「カスミ様ーー!愛してるーーー!」
「カスミ様はまた俺にあんな愛くるしい笑顔を!」
「だからあの笑顔は俺のだと言っているだろ!」

 下の階では再び男たちが、やんややんやとはしゃいでいた。




  
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