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激闘!帝国武術大会

7 孫、桃源郷を見つける!

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 カスミと俺は各々の修行の仕上げを終え、休養を経て遂にこの日がやって来た。

 俺は自室の窓から帝都の様子を眺める。

 帝都の街は普段から賑やかなれど、今日は輪を掛けて賑やかだ。
 人は尽きる事なく通りを賑わせ、そんな人達を待っていた出店が賑やかに呼び込みを始めて、それらを買った人達が辺りの広場で賑やかに食事をする。

 この山のような数の人達の目的は唯一。

 【帝国武術大会】

 この毎年帝都で開かれる大会は、予選を含めて数日かけて行われる。

 この本大会で振るわれる力や、珍しい技の数々は、観客を魅了して、来年もまた来よう!と思わせる程だ。

 そして、そんな力と技のぶつかり合いを見て憧れを持つ子供たちや将来のある若者達は、こぞって武を磨くようになる。

 軍事国家の帝国にとって、この武術大会は軍備増強には欠かせないイベントなのだ。

 もっとも……発案者のお爺ちゃんは、そんな気はまるで無い。

「ただ強い奴と戦いたいから始めたんだぞ!」

 子供の時に質問した俺に、目を輝かせてそう語ったお爺ちゃんはとても活き活きとしていた。

 まぁ、だからと言ってお爺ちゃんが出場すると、有象無象と一緒に優勝候補などが全滅してしまうため、お爺ちゃんの出場は第二回大会以降は帝国の軍務を取り仕切る当時のエレイン家──エレイラお婆ちゃんのパパに禁止されてしまったんだとか。 

「軍備増強じゃグヘヘへへ」と笑っている所に英雄が大人気なく、せっかく来た出場者全員を一撃でプライドもろとも粉砕して等しく病院送りにするのだから、軍務を取り仕切る側からしたらたまったものじゃ無かったのだろう。

「グレイブ?準備は出来た?」

 そんな昔話を思い出していると、部屋の扉が開き、長い黒髪をポニーテールに纏めた色白でスレンダーな女の子が入って来た。

「ああ……カスミか。問題ないよ」

 入って来たカスミに俺は手を振って、準備万端とアピールする。

「それにしても、ルカをこの二ヶ月程見てないんだけど……何処に行ったのかなぁ」
「ルカちゃん?それならさっき、盛子さんと一緒に城に戻って来てたわよ?今頃自室でお菓子でも食べてるんじゃない?」
「あいつ。俺に何も言わないで……ふらっと二ヶ月近くも消えやがって。ちょっと文句言ってくるよ!」

 俺は椅子から腰を上げ、勢い良く部屋から飛び出した。

「グレイブ!もぅ!……」

 部屋からカスミの叫び声が聞こえたが、そんなのは後だ。今はルカにお仕置きを与えなければならないのだから!

「おいルカ!」

 俺は、バタン!と勢い良く扉を開け放つと、カツカツと部屋の中へと無許可で入室する。

「お前今まで何してた……ん……」

 俺はルカを探すように部屋の中を見渡して、ある一点で視線を止めた。

 そこには桃源郷が広がっていたのだ。
 褐色の肌色が、そこからそびえ立つ二つの山が、登頂部にはツンと尖ったピンクのお豆が俺の方を向いてこんにちわしている。
 視線を横にずらすと、今度は白磁のようなキレイな肌が目に入る。
 褐色の双子山には少々劣るものの、十分立派な双丘に、薄桃色のポッチが乗っていた。
 部屋に満たされた甘い匂いは、俺をバカな雄へと変えるには十分過ぎた。

「何が薄桃色のポッチよ!このスケベ!」
「ぐふぉ!」

 俺の臨戦態勢を取っていたマイサーンは、飛び込んで来たルカの強烈な蹴り上げによって、またたく間に萎んでいく。

「どーて~のくせに、美少女二人を同時に相手にしようだなんて!超ウケるんだけど~!」

 マイサーンが纏った黄金の闘士が砕かれて、床を転げ回っている俺を見下ろすと、盛子はノーパンなのも気にせずに、足を上げて俺の顔面を踏み付ける。
 俺はなんだか盛子から、少し怒っているような気配を感じた。

「カスミと婚約して~、ルカとあーしに同時に手を出そうだなんて~雑魚グレイブのくせに舐めてんの?ねぇ?そんなに舐めたいならあーしの足の裏でも舐めてろし!おらおら!」

 そう言って、盛子はグリグリと俺の顔面をノーパン素足で攻め立てる。

「ちょっと盛子!その辺でやめなよ!もう着替えたから!」

 どうやら服を着たルカが、盛子の腕を引いて俺の顔面から足を退かしやがったらしい。
 何をしてくれるんだこの馬鹿は!空気というのを読んで欲しいものだ。

「あン!ルカったらぁ……もう少しグレイブの趣味に付き合ってあげたかったのにぃ~」
「えええ?!──うぇぇぇぇ」

 盛子のセリフに、驚きの声を上げたルカは、地面で転がっている俺の表情をちらりと見て、今度は嫌悪の声を上げた。何故だ?

「ゴホン!──ルカ、今まで何処に行ってたんだよ?何も言わずに消えたら心配するだろ?」

 立ち上がった俺は、至って真顔でそう伝えると、ルカは申し訳なさそうに頭を下げた。

「ごめん……グレイブのパートナーとして、少しでも強くなろうと思って……」
「グレイブとずっと一緒に居るために!って健気にあーしと特訓してたんだよ~」
「ちがっ!杖を見つけるまでの!戦う為のパートナーとしてだからね!」

 ニヨニヨといやらしい笑みを浮かべる盛子の大きな胸を、ルカは顔を真っ赤にしてポフポフと叩いている。ズルいルカさん!俺もその太鼓叩きたいです!

 こうして無事にはしゃいでいる姿を見て、俺は内心ホッとしたと同時に、何故こんなにも不安や心配をしていたんだろう?と首を傾げるのだった。



 

 
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