英雄の孫は見習い女神と共に~そしてチートは受け継がれる~

GARUD

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激闘!帝国武術大会

4 孫、熨斗付けて返される!

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 意識だけとなった俺は、勝手に動いている俺の肉体を上空からの視点で見ている中、迫る山のような巨岩へ向け、俺の肉体は白い渦を纏わせた拳を特に気負うことなく、ただスゥ─と突き出した。

 すると、上空から押し潰すように迫った岩山は、俺の拳に触れるか触れないかのところでピタリと静止した。

 まるでそこに、大きな壁か何かがあるかのように、ガイン!と音を立てて落下を止めた岩山は、当たったであろう部分から砂へと変わり、サラサラと風に運ばれていく。

「エルフ限定の……確かLv100越えの二次転生してないと覚えられなかったはずだが……」
「いくら私が器用貧乏のスキル特化ヒューマンとはいえ、流石にこの最上位物理混合スキルまで止められるとは思わなかったわ……」

 驚愕と疑問が混じったような表情を浮かべるお爺ちゃんと、疲れた顔で息を吐くモニカお婆ちゃん。

 そして

「グレイブ!大丈夫?!」

 目に涙を浮かべたカスミが俺に駆け寄っていく。

「〈チェンジアブソーブ〉〈エンジェルフェザー〉」

 目の前の俺は、俺の意思とは関係なく、上に突き上げた腕を降ろし、力ある言葉を発する。
 なにやら二つのスキルが発動されたらしいが、伝記にない言葉に意識体の俺は何だろう?と首を傾げて見ていると、お爺ちゃんがとても慌てた表情でスキルを使い出す。

「ヤバイ!〈神気解放〉〈ダブルダッシュ〉〈チャージボディ〉!」

 お爺ちゃんは足元から全身にかけて、赤い靄を立ち昇らせると、ギュン!と風を切るように掻き消えて、瞬きする間にカスミと俺の肉体の間に割り込むと、腕をクロスして防御の構えを取った。

 俺は、なぜそんな事をしているのか?と疑問に思ったのだが、その理由はすぐに分かることになる。

 俺は、俺の肉体に意識を向けると、いつの間にか背中から大鷲よりも大きな羽が生えていた。
 その羽は真っ白で、フワフワとして色味だけなら白鳥のようだな?と暢気な感想を抱いていると、俺の肉体はバサッ!と羽を広げ

「〈テンプルシュート〉」

 心配そうな表情を浮かべるカスミ目掛けて一斉にその白い羽を撃ち出した!
 迫る羽に驚愕し、立ち尽くすカスミ。
 しかし、その射線上に居たお爺ちゃんは全身を使って防御する姿勢を取っている!

 俺が放った無数の羽弾は地面を抉り、空間を切り裂き、カスミを庇うように前に出たお爺ちゃんに襲いかかる!このままでは──

「なんつー弾幕してんだよ……怒首領蝿も真っ青な弾幕だぞ。ったく……」

 直撃しまくってるお爺ちゃんは平気な顔で、全ての羽弾を受け続けていた。
 お爺ちゃんに着弾した羽は、その全てが力を無くしたかのようにポロリポロリと地面に落下している。

 うん。知ってた。だって本に書いてあったもん。




 本気を出した英雄コウタには、神の御技すらも通用しないって──





 俺の羽弾の威力を計り終わったのか、お爺ちゃんは防御の姿勢を解き、未だ放たれ続ける羽弾の中を悠然と歩き出した。
 その表情は上空から眺めているような視点の俺からは分からないが、おそらくニヤリと愉しそうな笑みを浮かべているのだろう。
 だってその証拠に──

「アブソーブプロテクトが何処まで耐えれるのか……試してやろう!まずは神気のみの打撃だ!オラァ!」

 ドゴン!ドゴン!

 とても60過ぎたエロボケ老人が殴って出るような音とは思えない。そんな強烈な打撃音が俺の肉体が張ったベールを揺らす。

「まぁ流石にこれくらいは耐えるよなぁ!なら今度はこうだ!〈真気解放〉」

 赤い靄を纏ったお爺ちゃんに、更に白い靄が纏わりつき、朱色に交わる。

 ズドゴン!ズドゴン!

 ハッスルした老人に振るわれた拳は、更に重みを増したのか、ついに俺の身体はベールごと押されるようにして地面を滑っていく。

「そろそろヤバそうだなぁ?!抜けたら痛いじゃ済まないからな!全力でキバレよ!装備[ナアオの聖腕]スキル解放!」

 お爺ちゃんがそう叫んだ直後、お爺ちゃんの両の拳が金色に輝き、朱色の靄と混じり、煌めく赤金色の鱗粉のような物を拳から垂れ流す。

 ──ズン!

 振るわれた拳がアブソーブのベールに触れた後、一拍置いて空間に衝撃が奔った。
 その瞬間──ベールがパキンと音を立てて割れたのが視えた。

(ムリムリムリムリ!もう嫌!コウタの奴!わかっててやってる!ホントーに意地悪でドSな変態だわ!こんな貧弱な坊やの身体であんなのと戦えないわよ!)

 俺の意識に直接語りかけ、俺の身体の自由を奪っていた声が、悲鳴を上げると同時に(後は任せるから頑張んなさいよ!)などと無責任な事を言っている。

 おいコラ!貧弱ってなんだよ!そしてこのお爺ちゃんどーすんだよ!

(知らないわよ!戦闘民族モードになったコウタは昔っから止まんないのよ!それじゃ!ノシ~)

 ノシってなんだよ!意味わかんねーよ!熨斗ノシ付けて返すとかそんな感じか!この野郎!

 なんて抗議の声が届く事もなく、上空で眺めるだけだった俺の意識は肉体へと戻ってしまった。
 目の前には目をランランと輝かせ、赤金色に染めた拳を真っ赤に燃やし、今にも打ち出さんとしているお爺ちゃんの姿が──

「いい感じに温まって来たぞ!〈ブラストナックル〉ゥゥゥァ!」
「えッ?!ちょッ!お爺ちゃんストップ!ストーーップルオォォォォ!」

 ──ズン

 そう遅れて響いた衝撃音を、俺は何処か彼方遠くの方で聞いていた。





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