32 / 101
ラヴィア公国と発生した魔物
10 孫、早打ちガンマンを自称する!
しおりを挟む
「昨日はエライ目に会ったよ……」
頭髪をコンガリと焼かれた俺だが、護符でチリチリになった毛も無事にお婆ちゃん譲りの細い金髪に戻っている。
「フン!自業自得でしょ!このニブチンの鈍感男!」
宿で朝食を食べているカスミはベー!と赤い舌を出して俺を挑発する。
「なんだと!俺は自分で言うのもなんだが、ソロプレイなら早打ちガンマンも真っ青だぞ?!むしろ連射が効く!とてもニブかったり鈍感だとは思えんが?」
「一体なんの話をしてるのよ!このバカグレイブ!」
「ぶらぱっ!」
投げつけられたのは朝食に添えてあったティーカップ。
ビュン!と風を切って迫ったソレは見事に俺の鼻頭に直撃し、俺は後ろにひっくり返った。
「おーおー。朝から夫婦喧嘩とは仲がいいな。お二人さん」
「「夫婦じゃない!」」
何故か俺はハモったカスミを睨みつけると、カスミも俺の方を睨みつけていた。
「「真似すんなよ!」」
「パンおかわり~!」
ガルル!グギギ!と睨み合う俺とカスミをよそに、ルカはモクモクハグハグと朝食を一心不乱に口に突っ込んでいた。
その後、朝食を終えた俺たちは、馬に跨って港町を出発する。
途中途中で小休止し、馬の足を休めつつ、予定通り半日で傭兵団の村へと後少しで到着するといった所で事件が起きた──
「なぁ……あの煙って村の方じゃねーか?」
複数の煙が上がっているのを確認した俺は、ガイルに視線を向ける。
すると、ガイルは苦虫を噛み潰しような表情をする。
「ああ。ひとつふたつなら何か焼いているのか?って程度で気にもしないんだろうが……」
「なんかヤバそうだな。ルカ!」
「うん。先行するね!」
馬キライ!と言って最初から馬に乗っていなかったルカの名前を呼ぶ!
すると、以心伝心と言わんばかりにルカはパチン!とウインクして加速!
「あと10分は掛かりそうだな。ルカに任せるのは些か不安だが……」
「私達は私達の出せる速度で行きましょう!」
「そうだな。グレイブ、不安だが焦らず急ごう!」
「難しい事を言うなぁ」
ここまで休憩を挟んだ移動とはいえ、馬にもかなりの負担を強いている俺達は、馬を潰さないギリギリの速度でルカを追った!
多少短縮された程度の時間で俺とカスミ、ガイルの三人は村へと到着したが、そこには既に村と呼べる形は残されていなかった。
燃え落ちた家、焼けた畑、そこら中に転がる死体と魔物の死骸。
「ルカは?!ルカーー!」
「グレイブ!こっち!」
俺の叫びに呼応したルカの声が少し離れた焼け落ちた家の方から聞こえる。
「ルカ!」
「奥に子供が!瓦礫の下敷きに!」
魔物に囲まれて身動きが取れなくなっているルカに指された方を向くと、確かに子供が下敷きになっているのが見える!
「カスミ!ルカの援護!ガイルは俺を手伝え!」
「おう!」「わかったわ!」
大剣を担いだカスミが、魔物に向かって飛び込んで行くのを横目に、俺とガイルは崩れた建物を必死に退かしていく!
「うぅ……痛いよ……痛いよぉ」
「待ってろ小僧!今助けるからな!」
「男の子か!少し我慢しろよ!」
ガイルが太い腕を更に膨張させて建材を持ち上げては投げるを繰り返す。
俺も負けじと瓦礫を退かす!
そうしてなんとか下敷きになっていた子供を救出する事が出来た時には、ルカとカスミの方も魔物どもを撃滅する事に成功していた。
「うう……おじちゃん……団長さん?」
「おう!俺が団長だ!もう心配な──」
子供を抱き上げて安心させるように柔らかな表情を浮かべるガイル。ハゲたクマがニヤリと笑ったら最早犯罪でしかないのを自覚してないのだろうか?
ほら、抱かれた子供なんてプルプル震えちゃってるじゃねーか……
そう思って見ていると──
「ボハッ!」
ガイルの背中から小さな手が生えて来た。
ガイルは、抱えていた子供を突然掴み上げて投げ飛ばした!
「おい、ガイル!」
「て……てめぇ……なにもん……ぐ……」
俺はガイルに非難の声を上げるが、ガイルは投げ飛ばした子供をギロッと睨んだあと、バタリと倒れ込んでしまったのだった。
頭髪をコンガリと焼かれた俺だが、護符でチリチリになった毛も無事にお婆ちゃん譲りの細い金髪に戻っている。
「フン!自業自得でしょ!このニブチンの鈍感男!」
宿で朝食を食べているカスミはベー!と赤い舌を出して俺を挑発する。
「なんだと!俺は自分で言うのもなんだが、ソロプレイなら早打ちガンマンも真っ青だぞ?!むしろ連射が効く!とてもニブかったり鈍感だとは思えんが?」
「一体なんの話をしてるのよ!このバカグレイブ!」
「ぶらぱっ!」
投げつけられたのは朝食に添えてあったティーカップ。
ビュン!と風を切って迫ったソレは見事に俺の鼻頭に直撃し、俺は後ろにひっくり返った。
「おーおー。朝から夫婦喧嘩とは仲がいいな。お二人さん」
「「夫婦じゃない!」」
何故か俺はハモったカスミを睨みつけると、カスミも俺の方を睨みつけていた。
「「真似すんなよ!」」
「パンおかわり~!」
ガルル!グギギ!と睨み合う俺とカスミをよそに、ルカはモクモクハグハグと朝食を一心不乱に口に突っ込んでいた。
その後、朝食を終えた俺たちは、馬に跨って港町を出発する。
途中途中で小休止し、馬の足を休めつつ、予定通り半日で傭兵団の村へと後少しで到着するといった所で事件が起きた──
「なぁ……あの煙って村の方じゃねーか?」
複数の煙が上がっているのを確認した俺は、ガイルに視線を向ける。
すると、ガイルは苦虫を噛み潰しような表情をする。
「ああ。ひとつふたつなら何か焼いているのか?って程度で気にもしないんだろうが……」
「なんかヤバそうだな。ルカ!」
「うん。先行するね!」
馬キライ!と言って最初から馬に乗っていなかったルカの名前を呼ぶ!
すると、以心伝心と言わんばかりにルカはパチン!とウインクして加速!
「あと10分は掛かりそうだな。ルカに任せるのは些か不安だが……」
「私達は私達の出せる速度で行きましょう!」
「そうだな。グレイブ、不安だが焦らず急ごう!」
「難しい事を言うなぁ」
ここまで休憩を挟んだ移動とはいえ、馬にもかなりの負担を強いている俺達は、馬を潰さないギリギリの速度でルカを追った!
多少短縮された程度の時間で俺とカスミ、ガイルの三人は村へと到着したが、そこには既に村と呼べる形は残されていなかった。
燃え落ちた家、焼けた畑、そこら中に転がる死体と魔物の死骸。
「ルカは?!ルカーー!」
「グレイブ!こっち!」
俺の叫びに呼応したルカの声が少し離れた焼け落ちた家の方から聞こえる。
「ルカ!」
「奥に子供が!瓦礫の下敷きに!」
魔物に囲まれて身動きが取れなくなっているルカに指された方を向くと、確かに子供が下敷きになっているのが見える!
「カスミ!ルカの援護!ガイルは俺を手伝え!」
「おう!」「わかったわ!」
大剣を担いだカスミが、魔物に向かって飛び込んで行くのを横目に、俺とガイルは崩れた建物を必死に退かしていく!
「うぅ……痛いよ……痛いよぉ」
「待ってろ小僧!今助けるからな!」
「男の子か!少し我慢しろよ!」
ガイルが太い腕を更に膨張させて建材を持ち上げては投げるを繰り返す。
俺も負けじと瓦礫を退かす!
そうしてなんとか下敷きになっていた子供を救出する事が出来た時には、ルカとカスミの方も魔物どもを撃滅する事に成功していた。
「うう……おじちゃん……団長さん?」
「おう!俺が団長だ!もう心配な──」
子供を抱き上げて安心させるように柔らかな表情を浮かべるガイル。ハゲたクマがニヤリと笑ったら最早犯罪でしかないのを自覚してないのだろうか?
ほら、抱かれた子供なんてプルプル震えちゃってるじゃねーか……
そう思って見ていると──
「ボハッ!」
ガイルの背中から小さな手が生えて来た。
ガイルは、抱えていた子供を突然掴み上げて投げ飛ばした!
「おい、ガイル!」
「て……てめぇ……なにもん……ぐ……」
俺はガイルに非難の声を上げるが、ガイルは投げ飛ばした子供をギロッと睨んだあと、バタリと倒れ込んでしまったのだった。
0
お気に入りに追加
489
あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

名門の落ちこぼれですが、実家を出ようと思います。
兼望也泰
ファンタジー
名門の汚点と呼ばれ、耐え切れずに実家から逃げたメルは遠くの街で冒険者になる。名家の姓を持つ彼女は簡単にパーティに入れてもらえた。しかし、パーティ加入の翌日。ある機械が発表された。「ステータス計測機」。客観的に能力値を計測できる優れものだ。冒険前に測ってみたところ、ほとんどのステータスが最低値であることが判明してしまう。冒険に出る間もなくクビにされ、罵倒を受けて彼女は意気消沈する。
新しいパーティに入ることもできず、実家に戻ることもしたくない彼女は1人で簡単な依頼を受ける。しかし、安全なはずの依頼でドラゴンに出くわす。万事休すかと思われたが、メルは勝利して帰還する。なぜなら、ステータスは低くても能力は最強だから。
※
序盤女の子ばっかでてきますが、百合作品ではありません。
感想もらえると嬉しいです!

辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女ノヴァ ~魔力0の捨てられ少女はかわいいモフモフ聖獣とともにこの地では珍しい錬金術で幸せをつかみ取ります~
あきさけ
ファンタジー
とある平民の少女は四歳のときに受けた魔力検査で魔力なしと判定されてしまう。
その結果、森の奥深くに捨てられてしまった少女だが、獣に襲われる寸前、聖獣フラッシュリンクスに助けられ一命を取り留める。
その後、フラッシュリンクスに引き取られた少女はノヴァと名付けられた。
さらに、幼いフラッシュリンクスの子と従魔契約を果たし、その眠っていた才能を開花させた。
様々な属性の魔法が使えるようになったノヴァだったが、その中でもとりわけ珍しかったのが、素材の声を聞き取り、それに応えて別のものに作り替える〝錬金術〟の素養。
ノヴァを助けたフラッシュリンクスは母となり、その才能を育て上げ、人の社会でも一人前になれるようノヴァを導きともに暮らしていく。
そして、旅立ちの日。
母フラッシュリンクスから一人前と見なされたノヴァは、姉妹のように育った末っ子のフラッシュリンクス『シシ』とともに新米錬金術士として辺境の街へと足を踏み入れることとなる。
まだ六歳という幼さで。
※この小説はカクヨム様、アルファポリス様で連載中です。
上記サイト以外では連載しておりません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる