英雄の孫は見習い女神と共に~そしてチートは受け継がれる~

GARUD

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新たな火種

6 孫、ハゲグマのハーレムを羨む!

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「俺達はよ。本来は旅から旅の渡り鳥みたいな傭兵団だったんだ」

 俺とルカは、ガイルと言う傭兵団のボスに案内され、今はガイルの家の一室に通されて話を聞いていた。

「それがさ。この辺りを俺達傭兵団が移動していた時の話だ」

 なんでもガイルの話では、この辺りの街道を中心に、人攫いや奴隷商人などという不貞の輩が幅を効かせているらしい。
 たまたま傭兵団の分隊が移動中に人攫いの一団を発見。
 後をつけると公国から少し離れた海岸から船で攫った人達を運び出そうとしていたらしい。
 そこを報告を受けたガイル達本隊が強襲し、人攫い達を壊滅させ、助けた人達が安心して住める場所を作ろう!という事になって今に至る……らしい。

「そんなコインに成らない仕事を好んでするほど傭兵団って人が良いものなのか?」

 俺が訝しげな視線を送ると、ガイルは照れ臭そうに頬を描きながらこう付け足した。

「まぁなんだ……助けた人の中に居た女に一目惚れしてな。猛アタックして半年前に結婚したんだ」
「それでついでに拠点を構えたってわけか。部下がよく納得したな」

 ヤレヤレと肩を竦める俺に、ガイルは男臭い笑みを浮かべる。

「部下も女日照りが長かったからな。いつ果てるともわからない傭兵家業より農業したいって奴も結構居てな……今は街道の自警団みたいな事をしながらこうやってのんびり開拓の真似なんて事をしてるのさ」

 なんでも攫われてくるのは大概が女子供らしく、その殆どが身内を人攫いに殺されたり、帰る場所がない者だったりと……まぁなんだ。男達が滾る展開だったわけだ。

「んで……今は一大ハーレムを築き上げている……と」

 さっきから俺の前でソファーに腰掛けてるガイルは、横に美人なお姉様を二人も侍らせている。
 思わずジト目になってしまうのも仕方ない。だってこいつ、一目惚れして半年前に結婚したって今言ったばっかで二人目が横に居る理由がわからない。え?今度は一目惚れされたって?巫山戯んなよこのハゲグマ!

「そんなつもりはないんだがな。スマンな。自慢してるみたいで」
「こんなハゲたクマの何処がいいんだか……」
「ハハハ!こんなナリでも見慣れたら天使に見えるらしいぜ?」

 はぁ……と深いため息を吐く俺に、大口を開けて豪快に笑うガイル。
 こういった筋肉から男臭いフェロモン撒き散らしてそうなのがいいのかね。

「ハゲたクマが天使に見え始めたら……俺もお前に抱き付いてやるよ」
「よせよ。俺は男の尻に興味はないぜ」
「奇遇だな。俺も掘られる趣味はない」

 そうお互いにニヤッと笑い合ったところで、ガイルは話の矛先を俺達へと向けた。

「んで……俺達の話はした。今度はお前達の番だ。特に、お嬢ちゃん……あんたは人間じゃないからな。正直部下や女達がビビってるんだ」
「アンタはビビらないの?」
「俺か?やめてくれよ。こう見えて俺は気が弱いんだ」

 ルカは金色の中にある黒い瞳でガイルに視線を送ると、ガイルは「おおう……」と呻き、わざとらしく眉尻を下げ、額に手を当てて弱ったポーズを取る。

「嘘付けハゲ」
「ハハハ。まぁ俺はともかく、お嬢ちゃんの翼を見て何人かの子供や女が怯えているのは事実なんだ。さっきみたく戦闘して実力で排除するのも可能かもしれないが、俺達が被る損害の方が大きそうなんでね」
「だからこうやって俺達と談笑して様子を伺ってる……」
「正解だ」

 ガイルはそう言って人の良さそうな笑いを浮かべながらも、キッチリと肉体は戦闘態勢を意識している。
 さっきから時折放たれる威圧に俺が気が付かないとは思ってないようだが……

「俺達は公国に大量発生したという魔物を退治する依頼を受けて帝国から来たんだ」
「お前らみたいな坊主がか?」
「俺の名前はグレイブガント・スズキ・ギュスターヴ・ブリガント……」
「ほぅ……スズキと言えば吟遊詩人がよく歌にしている英雄の名前だな。そしてブリガントは帝国の公家の名だが……証拠は?」

 俺の名乗りに目を細めてギラリと光らせるガイルに、俺は短剣をアイテムBOXから取り出すと、それを無造作に放り投げた。

「何処にしまってたんだよ……って!この家紋は!……なるほどな。坊主、俺は態度を改めた方がいいのかな?」
「はッ!ハゲたクマに今更畏まられたら返って不気味だよ」

 柄に王家の家紋が彫られた短剣を大事そうに俺に返したガイルは、頬に一筋の雫を垂らして困ったような表情をしているのに、俺は鼻で笑って今更だと手を振ってやると、ガイルはホッと息を吐いて頬に流れる汗を拭った。

「これはこれは……中々に話がわかる坊主だな。んで、そっちのお嬢ちゃんは何者だ?」

 話を振られ、喜色を浮かべたルカは「やっと来たわね!」と声を上げ、ダンッ!と立ち上がり、漆黒の翼をおっ広げ、口から生える二本の牙を剥き出しにしてこう答えた……

「何を隠そう、私は女神よッ!」
「……と思い込んでる痛い奴だ。背中の翼はファッションだ」
「お……おぅ……ファッション……な……」

 俺は強くそう言って、ビクッ!と腰が引けているガイルと横の女性二人を一睨みして、興奮しているルカの背中に生えた翼を力尽くで折り畳もうとするが……くッ!こいつ!無駄に抵抗しやがる!

「痛ッ!やめてよ!翼が折れちゃうでしょ!それに誰が痛い奴だって言うのよ!」
「煩い黙れ。このドジッ娘」
「誰がドジッ娘なのよ!」
「お前が昨日ドジッ娘って言えって言ったからだろ?」
「ぐぬぬ……」

 悔しそうに唇を噛んだルカは、渋々といった表情で翼をしまってソファーに座り直したのだった。



 
 
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