英雄の孫は見習い女神と共に~そしてチートは受け継がれる~

GARUD

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新たな火種

3 孫、寝袋から出られなくなる!

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「いい朝だぜ……」
「さっさと寝袋から出なさいよ!」

 寝袋から顔だけ出して地面に転がっている俺は、ゲシッ!とルカに蹴り飛ばされ、まさに手も足も出ないまま、蹴られた勢いよろしく木に熱烈なキスをかました。

「あいててて……まったく、朝から過激だなぁ。俺が寒空の中寝袋で一夜を明けたというのにさ……」
「フン!あんたみたいな変態と一晩同じテントに居たらこ……こここ……」
「こけこっこー?」
「子供が出来ちゃうじゃない!」

 顔を真っ赤に大声でわめくルカ。
 朝から元気でなによりだ。

「あ~……なるほど。ちなみになんだが、子供の作り方って知ってんのか?」
「しし、知ってるわよ!ある程度の年齢の男女が同じ布団で寝ると翌日にはお腹の中に赤ちゃんが出来ちゃうんでしょ!」

 どう?!と顎をシャクって未だ寝袋で転がっている俺に上から見下ろすようにドヤ顔でそう言ったルカ。うん。縞々な逆三角形が丸見えで、俺に寝袋から出るという選択肢を奪ってくれる。

 しかし、ルカの知識の無さはどうするべきか……どう反応するのが正解なんだろうか?

俺A『しっかりとホントの事を教えてあげるのが年長者の務めだぞ!(真面目)』
俺B『いやいや。ここは話の流れに乗っかるべきだよ(ニヨニヨ)』
俺C『そうだよ!ここはもう少し様子を見ようよ!(ゲス顔)』

 というわけで、2対1で様子を見る。

「…………おお!よく知ってるな!」
「フン!馬鹿にしないでよ!それくらいママに教わってるんだから!」
「そうか……ママか……」
「だからパパも『男とは一緒に寝るなよ』って言ってたわ!」

 そう言ったルカの表情は真剣そのもの。俺は震える腹筋に別の意味で寝袋から出れなくなってしまった。

「ふ……ふむ……その後パパとは同じ布団で寝なかったのか?」
「当然じゃない!『パパだけは大丈夫なんだよ?!』って言ってたけど、万が一があると困るからダメ!って拒否し続けたわ!」
「ブフッ!」
「……何笑ってんのよ?」

 ついに堪えきれずに噴き出してしまった俺を吊り上げた瞳でギロリと睨むルカ。
 俺はなんとか寝袋の中で腹を押さえて腹筋に力を入れ直し、歯を必死に食いしばる。

「プッ……ククク……いや……なんでも……ないよ……パパ泣いてたなかった?」
「なんだかその日はずっと泣いてたわ。ママが慰めてたけど」

 ルカは何でかしらね?と本気で首を傾げて、う~ん?と顎に指を置いて考え込んでしまった。その余りにもの本気な姿に、ついに俺はダムが決壊するかのように大声を出してゴロゴロと笑い転げてしまった。

「ブハッ!フヒヒヒヒ!もうダメ!限界!ブハハハハ!おま!おまえ!ウヒヒ!それは反則だよアハハハハ!」
「な!何がおかしいっていうのよ!」
「フヒー!……あ~ヤバかった。危うく笑い死ぬところだったよ」
「だから今の話の何処がおかしいのよ?」
「いや。なんだか急にルカが可愛いなって思えてさ」

 俺は誤魔化す為に、そう言ってパチンとウインクすると、ルカはプイッとそっぽを向いた。

「フッ、フン!私が可愛いのは今に始まった事じゃないし!」
「そうだな……よし。それじゃぼちぼちテント片付けて出発しようぜ」

 俺は寝袋からようやっと抜け出して、テントと一緒にアイテムBOXに収納した。

「……ねえ。お腹空いたんだけど?」
「あ~……確かに小腹が空いたな。それじゃ、これでも食うか?」

 俺がそう言ってアイテムBOXから取り出したのはコッペパンに刻んだキャベツとソーセージを焼いて挟んだホットドッグという食べ物だ。

「またソーセージ?」

 ホットドッグと俺をジト~とした目で交互に見るルカ。
 昨日は少しからかい過ぎたかもしれないな。

「あはは。そんな警戒すんなよ。それはお爺ちゃんに教わった簡単な料理なんだ。外で野宿する時とか、移動しながらとか、片手で食べられて便利なんだよ」

 大丈夫だから食べなよ。と手渡すと、ルカは前から後ろから、下から覗き込んでと全方位からホットドッグを観察し、やっとの事で口の中に入れた。

「……あむッ……ん~~~?!」

 一思いに1/3を齧ったルカは、目を白黒させてワタワタと手を振って走り出した。

「ああ……マスタードが辛かったかな?はい。水だよ」

 察した俺がアイテムBOXから水を取り出すと、ルカはひったくるように俺から水の入った水筒を奪ってゴクゴクと喉を鳴らせながら飲み下した。

「大丈夫?」
「うん!辛くて驚いたけど、これはこれで刺激的で美味しい!」

 そう言ってホットドッグを再び齧ると、流石に2回目とだけあって、走り回ったりはしなかったが目に薄っすらと涙を浮かべている。
 俺は苦笑しながらアイテムBOXにある甘いHP回復ドリンクを取り出して手渡すと、ゴクゴクと飲んだルカは目を輝かせた。

「う~~ん!甘くて美味しい!」

 結局、俺の分の作り置きまで全部ペロリと平らげたルカは、満足そうな顔で「ありがとう!」と言って大輪の華を咲かせていた。
 




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