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4章 天使と悪魔と運営と

7 鈴木、トモを紹介する!

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「スズキ様!」
「スズキ!」
「スズキさん!」
「アニキ!」

 俺がナツキを連れて城に戻ると、イザベラが先頭で駆けて来て、その後ろからエレイラとメルさん。オマケのウィルと続いている。

 イザベラは駆け寄った勢いのまま俺の胸に飛び込んで、潤んだ瞳を向けてくる。

「雲を見てくるとか言って出て行ったきり、遠くからドン!ドン!って音が聞こえて……私……」
「イザベ──「未亡人になると、この先貰い手が見つからないですから……もう心配で……」あぁそっちの心配ね……」

 胸に当たる巨乳の感触を堪能しつつも、げんなりと肩を落とす俺に、続いて抱き付いて来たのはエレイラ。胸が当たってゴリゴリするから離れなさい。

「スズキ!やはり無事だったな!私はちっとも心配してなかったぞ!」
「なに言ってるんですかエレイラさん。一番ソワソワと落ち着きなく部屋の中をウロウロしてたじゃないですか……」

 そう言いつつ最後に来たメルさんは、俺の左右をイザベラとエレイラが占めているのにへこたれず、俺の背中に「えい!」と抱き付いて来た。
 スズキさんの匂い~と言いながらクンカクンカしている。
 いざ他人にやられると、これは中々に恥ずかしい。
 そんな俺を左右背後からサンドイッチして会話を続ける三人。

「ちょっ!メル!なんて事を言うんだ!そそそ、そんなことにゃいじょ!」
「アハハ。そう言うメルさんだってずっと両手を握りしめて祈っていたじゃないですか」
「殿下?!」

 ゆっくりと正面に来たウィルは楽しそうに俺たちを見ているのだが……おいウィル?なんで両手をワキワキしてるのかな?膝に力を溜めて飛びかかろうとするのは止めような?

「ちょっとちょっと!スズキくん。何このハーレム!いくらNPCだからってこんだけの美少女が三人も抱き付いてくるなんてズルくない?!しかもなんかオマケで美男子まで居るんだけど?やっぱりソッチもイケる人なの?!」
「馬鹿言うな!ウィルはこの国の皇太子で俺の子分?みたいなもんだ!」
「あ、でも俺的にはアニキにケツを差し出せ!と言われたら差し出す覚悟はしてますよ!」
「要らんわ!そんな覚悟は犬にでも食わせてしまえ!」

 後ろについて来ていたナツキはズルいやズルいや!と子供みたいな文句を言って、ウィルはポッと顔を赤らめながら胸を張って夜迷い事を口走っている。男二人が増えただけでなんでこんなに疲れなければならないんだ……

「スズキ様。そちらの方は?」

 その余りにもの騒がしさに、ようやっとナツキに視線を向けたイザベラ。

「ああ……コイツは──「どうも、愛らしく可憐なお嬢様。僕はナツキ。スズキくんとは良きトモです。どうです?御近づきの印に僕と今度ディナーでも?」
「え……」

 そう言ってナツキはイザベラの手を取って甲の部分に口付けをすべく跪くが、イザベラは咄嗟に手を引いて、ササッと俺の後ろに隠れてしまった。

「おいナツキ……俺の婚約者を寝取ろうなんて舐めたマネしてくれるな?」
「うわッ!ちょっとした冗談じゃないか!本気にしないでよ!」

 あれれ?と首を傾げるナツキの頭を俺は掴んで強引に元の位置に戻す。
 掴んだ手からはメキメキ!と音が聞こえるが気のせいだろう。

「随分と仲がいいな。スズキ、そいつもお前が言うところの紳士というやつなのか?」
「あぁ……顔だけなら超絶好みなのになぁ……」
「おい貴様!すっごい失礼だな?!……でもスズキの友人だということは残念ながら理解できた……」
「あはは。確かに、なんだか可愛いスズキさんが居る感じですね」

 なんともストレートな感想を言うナツキにエレイラとメルさんは何故か俺とコイツとの共通点を見つけたようでニヤニヤと見比べている。ちっとも似とらんがな!
 と脳内で抗議の声を上げる中、ナツキはビュン!と物凄い速度で俺の後ろにいたメルさんの手を取った。

「──!俺!ナツキって言います!貴方のお名前は?!」
「メルといいます。ナツキさん、今後もよろしくお願いします」

 メルさんは嫌な顔一つせず、ニコリと天使のような微笑みをナツキに浴びせると、たちまちナツキの目の中にはハートマークが浮かび上がり、興奮した様子でメルさんに迫った。

「はいぃ!ぜひとも!スズキくんよりも仲良くしてくださ──『ガシッ』ぃぃぃぃぃ!」
「全員俺の婚約者なんだよ!あんまり巫山戯てるとマジで捻り殺すぞ!」
「ぬぉぉぉぉぉ!取れちゃう!首が取れちゃうからぁぁぁぁぁ!」

 結局、イザベラとメルさんに興奮しまくったナツキの肩を掴んで頭をグキグキと力ずくで左右に曲げてやるハメになった。

「えっと……改めまして、ナツキと言います。スズキくんとは良きライバルで、戦場では時には敵対したり、時には共闘したりと切磋琢磨する間柄です」

 涙目でそう自己紹介をするナツキ。
 最早そこに廃課金者としての威張り散らした態度は何処にもなかった。

「お前も女の子がお漏らししたパンツを咥えたり、ペロペロしたり、祈りを捧げたりするのか?」
「え?」
「スズキと同じ紳士なのだろ?」

 エレイラがなんの気なしに出した質問に、ナツキは疑問の声を上げ、ジトリとした目を俺に向けた。

「……スズキくん?」
「なんだねナツキ?」
「僕は変態じゃないんだけど?」
「紳士なんだろ?」
「変態と言う名の紳士じゃないんだけど?!」

 そう声を大にして言うナツキに、エレイラはギラリとした視線を向けた。

「……どういう事だ?」
「どうもこうも!君たちは騙されてるんだよ!彼の言う紳士ってのは変態と同義なんだよ!」
「……スズキ、お前の友達はそう言ってるが?」

 必死にそう言い募るナツキの言葉に、エレイラは鋭い視線を今度は俺に向ける。

「うむ。変態と紳士はイコールで結ばれた……言わば同義。その点では間違いのない事実だ。前に言ったろ?俺の居た場所では、そういった事を紳士と言う……と」
「なんか納得したくないけど納得してしまう説得力が……」
「屁理屈感が途轍もないですけど……」

 俺の自信に満ち溢れた力強い言葉に、エレイラとイザベラは何故かガックリと肩を落とした。解せん。

「別に私はスズキさんが変態でも紳士でも愛してます。お二人はリタイアと言う事ですか?お疲れ様でした」
「「メル?!」」

 最後にそう締めくくったメルさんに、イザベラとエレイラの二人は驚愕に表情を強張らせたのも束の間、直にその可愛い顔を真っ赤に染めて怒りの言葉をぶつける。

「汚い!流石は村娘!汚い!」
「私の怒りは有頂天ですよ!」

 そして始まる最早恒例のキャットファイトに俺たち男組みは、ウィルに案内されてサロンでお茶を飲みながら今後の話をする事にした。





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