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3章 ラヴィア公国に迫る影
12 鈴木、パレードに乗り込む!
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俺は空を一昼夜の間、休まず飛行した。
課金の飛剣ブースターを購入し、真気解放を回数制限まで発動させて全速力で帝国からかっ飛ばしたのだ。
「ここが……ラヴィア公国の首都か?」
俺は数カ所あった村や街でラヴィア公国の首都の場所や方角を聞きながら飛行して、やっと辿り着いた都市は帝国の首都よりも広く、高さ10メートルはあろう壁に囲まれた城塞都市だった。
壁の外にまで広がる街並みはかなりの広さだ。
「さて、下に降りて探したのでは日が暮れるか……仕方ない。一度潜伏して夜にでも城に乗り込んでみるとしよう」
俺はハイド薬を使って、眼下に見える都市の人気がない所に静かに降り立った。
不正入国を終えた俺はハイド薬を解除して通りを歩く。
「おい!聞いたか?なんでも皇太子殿下が結婚するんだとさ!」
「おお!帝国の皇女様とだろ?」
「それが一気に三人と同時に結婚式をするらしいぞ!」
「なんて羨ましい!さすがは皇太子殿下だ!」
「なんでも他の二人は皇女の侍女と、まるで伝記に出て来るような聖女のような美貌を持つ美少女らしいぞ!」
「皇女の侍女はどうなんだ?」
「城に務めてるヤツの話だと、なんでもまるで色気のない男のような女らしいぜ!」
「なんだそいつあ!皇女様のオマケか?がはははは!」
「一つで二度美味しいってか?うはははは!」
という噂話が通りのあちらこちらから聞こえてくる。
まさか俺への当て付けに全員との婚約発表を飛ばして結婚式をやろうとは……これはとんだNTRだな。これが他人事なら興奮してマイサーンがおっきしちゃうところだな。
「なぁ、そこの兄さん達」
「あん?」「なんだ?」
「俺は今日やっとこの街に来た田舎もんなんだけどさ、皇太子殿下の結婚式っていつやるんだ?」
「んあ?なんでも明日の昼には盛大にパレードを行うって告知があったぜ」
「あったな。田舎から出て来て早々運がいいな。こんな記念すべきパレードは一生に一度だって拝めないぜ」
そう言って俺が情報欲しさに声を掛けた男二人は機嫌良く「「がっはっは」」と肩を組んで笑い合っている。
こいつらや、街中の住人達は本当にこのラヴィア公国や皇太子が好きなんだろう。
待ち行く人たちは皆が笑顔で皇太子の名前を叫んで祝福していたが、正直俺にはさっぱり理解ができない。
(あんなにも横柄で横暴なヤツがこんなに民に好かれるものか?)
むしろ圧政に苦しんで犯罪が横行している国なんじゃないか?と、ここに来る前までは思って居たが、まるでそんな気配もなく、街は活気に満ち溢れている。
行く先々で皇太子殿下万歳!という声が聞こえる。
俺は納得が行かない感じで通りの宿屋に部屋を取った。
『麒麟』
『うぅ……主……』
『お前がついて居ながらみすみす攫われるとは……』
『キュルル……いきなり攻撃されて……』
『お前を倒したヤツはどんな攻撃をしてきたんだ?』
『キュルル。なんか後ろから当てられたら気を失ってた』
『大した情報もなしか。わかった。しばらく休め』
俺はペット専用課金アイテム〈復活の卵〉を購入し、死亡状態の麒麟を復活させて話を聞くが、遠距離からスキルで殺られた以外の収穫はなかった。
(だが、これで確定したな。犯人は遠距離スキル型ヒューマンかエルフだ。しかもLv100前後で装備はハイか順ハイスペックだ)
残念ながら未だに俺のLvは100に届いておらず、金神装備に手を付けれていない。
麒麟を一撃で仕留めると言うことは、朝焼けの神殿で手に入るドロップから作るLv適正装備はあるだろう。
正直、金魔装備とではステータス的に勝負にならない。
「まぁ……なんとかなるだろ。予定もわかった事だし、今日の城への侵入は取り止めだな」
俺は課金ショップを開いて必要なアイテムを購入し、今日のところはスキルも回数制限になってしまっている物もあるしと焦る気持ちを押さえ、無理は禁物と自分に言い聞かせてベッドの中に潜ったのだった。
翌日、盛大なファンファーレの音に俺は目を覚ました。
宿の窓を開けて通りを覗き込めば、騎士達が道の端に立って通りを確保している。
沿道には人だかりができていて、その彼らは今か今かと皇太子の結婚パレードが始まるのを待ちわびている。
その様子に俺は軽くため息を吐くと、サッと屋根の上に登って馬車が出て来るであろう城門をじっと見る。
待つこと一時間……ついに城門が開き、重武装の騎馬隊に続いて、きらびやかに装飾されたオープン屋根の馬車が現れた。
オープン屋根の馬車に乗っているのは俺に気絶させられた皇太子と俺の婚約者達。
俺はいても立ってもいられず屋根を走り、馬車の前に躍り出た!
「その三人は俺の嫁だ!返してもらう!」
一度やってみたい事ランキングに入賞間違いなしの[結婚式に乱入して花嫁を攫う!]だ。
どうだ!カッコイイ俺に三人は惚れ直す事間違いなしだぜ!うはははは!
「……はぁ?」
「何この勘違い君は?」
「ダッサ……死ねばいいのに」
「──え?」
三人は凍てつく波動を帯びた、凍える視線を俺に向けてチッ!と舌打ちしたり、ペッ!と唾を吐きつけたり、中指をおっ立てたりと、とても歓迎ムードとは思えない。
「ねぇ……ウイリアム様……式の後は私と……ね?」
「ちょっと!お嬢様!抜け駆けはズルいです!」
「そうですよ!初めては三人一緒にって決めたじゃないですか!」
俺が呆然としている中、三人は皇太子に腕を絡ませ、胸を当て、頬を擦り付けるようにして各自が愛を囁いている。
皇太子は俺を一瞥し、厭らしい笑みを浮かべ、イザベラとメルさんの腰に手を回し、大きな膨らみを堪能している。
「ふはは!今日の夜は覚悟しておけよお前達!ふはははは!」
勝ち誇った笑いを上げる皇太子を乗せた馬車は街へとゆっくりと進んで行ってしまった。
課金ショップの残金44万7930クレジット
今回の消費
飛剣ブースター(使い捨て) 100クレジット
復活の卵 500クレジット
課金の飛剣ブースターを購入し、真気解放を回数制限まで発動させて全速力で帝国からかっ飛ばしたのだ。
「ここが……ラヴィア公国の首都か?」
俺は数カ所あった村や街でラヴィア公国の首都の場所や方角を聞きながら飛行して、やっと辿り着いた都市は帝国の首都よりも広く、高さ10メートルはあろう壁に囲まれた城塞都市だった。
壁の外にまで広がる街並みはかなりの広さだ。
「さて、下に降りて探したのでは日が暮れるか……仕方ない。一度潜伏して夜にでも城に乗り込んでみるとしよう」
俺はハイド薬を使って、眼下に見える都市の人気がない所に静かに降り立った。
不正入国を終えた俺はハイド薬を解除して通りを歩く。
「おい!聞いたか?なんでも皇太子殿下が結婚するんだとさ!」
「おお!帝国の皇女様とだろ?」
「それが一気に三人と同時に結婚式をするらしいぞ!」
「なんて羨ましい!さすがは皇太子殿下だ!」
「なんでも他の二人は皇女の侍女と、まるで伝記に出て来るような聖女のような美貌を持つ美少女らしいぞ!」
「皇女の侍女はどうなんだ?」
「城に務めてるヤツの話だと、なんでもまるで色気のない男のような女らしいぜ!」
「なんだそいつあ!皇女様のオマケか?がはははは!」
「一つで二度美味しいってか?うはははは!」
という噂話が通りのあちらこちらから聞こえてくる。
まさか俺への当て付けに全員との婚約発表を飛ばして結婚式をやろうとは……これはとんだNTRだな。これが他人事なら興奮してマイサーンがおっきしちゃうところだな。
「なぁ、そこの兄さん達」
「あん?」「なんだ?」
「俺は今日やっとこの街に来た田舎もんなんだけどさ、皇太子殿下の結婚式っていつやるんだ?」
「んあ?なんでも明日の昼には盛大にパレードを行うって告知があったぜ」
「あったな。田舎から出て来て早々運がいいな。こんな記念すべきパレードは一生に一度だって拝めないぜ」
そう言って俺が情報欲しさに声を掛けた男二人は機嫌良く「「がっはっは」」と肩を組んで笑い合っている。
こいつらや、街中の住人達は本当にこのラヴィア公国や皇太子が好きなんだろう。
待ち行く人たちは皆が笑顔で皇太子の名前を叫んで祝福していたが、正直俺にはさっぱり理解ができない。
(あんなにも横柄で横暴なヤツがこんなに民に好かれるものか?)
むしろ圧政に苦しんで犯罪が横行している国なんじゃないか?と、ここに来る前までは思って居たが、まるでそんな気配もなく、街は活気に満ち溢れている。
行く先々で皇太子殿下万歳!という声が聞こえる。
俺は納得が行かない感じで通りの宿屋に部屋を取った。
『麒麟』
『うぅ……主……』
『お前がついて居ながらみすみす攫われるとは……』
『キュルル……いきなり攻撃されて……』
『お前を倒したヤツはどんな攻撃をしてきたんだ?』
『キュルル。なんか後ろから当てられたら気を失ってた』
『大した情報もなしか。わかった。しばらく休め』
俺はペット専用課金アイテム〈復活の卵〉を購入し、死亡状態の麒麟を復活させて話を聞くが、遠距離からスキルで殺られた以外の収穫はなかった。
(だが、これで確定したな。犯人は遠距離スキル型ヒューマンかエルフだ。しかもLv100前後で装備はハイか順ハイスペックだ)
残念ながら未だに俺のLvは100に届いておらず、金神装備に手を付けれていない。
麒麟を一撃で仕留めると言うことは、朝焼けの神殿で手に入るドロップから作るLv適正装備はあるだろう。
正直、金魔装備とではステータス的に勝負にならない。
「まぁ……なんとかなるだろ。予定もわかった事だし、今日の城への侵入は取り止めだな」
俺は課金ショップを開いて必要なアイテムを購入し、今日のところはスキルも回数制限になってしまっている物もあるしと焦る気持ちを押さえ、無理は禁物と自分に言い聞かせてベッドの中に潜ったのだった。
翌日、盛大なファンファーレの音に俺は目を覚ました。
宿の窓を開けて通りを覗き込めば、騎士達が道の端に立って通りを確保している。
沿道には人だかりができていて、その彼らは今か今かと皇太子の結婚パレードが始まるのを待ちわびている。
その様子に俺は軽くため息を吐くと、サッと屋根の上に登って馬車が出て来るであろう城門をじっと見る。
待つこと一時間……ついに城門が開き、重武装の騎馬隊に続いて、きらびやかに装飾されたオープン屋根の馬車が現れた。
オープン屋根の馬車に乗っているのは俺に気絶させられた皇太子と俺の婚約者達。
俺はいても立ってもいられず屋根を走り、馬車の前に躍り出た!
「その三人は俺の嫁だ!返してもらう!」
一度やってみたい事ランキングに入賞間違いなしの[結婚式に乱入して花嫁を攫う!]だ。
どうだ!カッコイイ俺に三人は惚れ直す事間違いなしだぜ!うはははは!
「……はぁ?」
「何この勘違い君は?」
「ダッサ……死ねばいいのに」
「──え?」
三人は凍てつく波動を帯びた、凍える視線を俺に向けてチッ!と舌打ちしたり、ペッ!と唾を吐きつけたり、中指をおっ立てたりと、とても歓迎ムードとは思えない。
「ねぇ……ウイリアム様……式の後は私と……ね?」
「ちょっと!お嬢様!抜け駆けはズルいです!」
「そうですよ!初めては三人一緒にって決めたじゃないですか!」
俺が呆然としている中、三人は皇太子に腕を絡ませ、胸を当て、頬を擦り付けるようにして各自が愛を囁いている。
皇太子は俺を一瞥し、厭らしい笑みを浮かべ、イザベラとメルさんの腰に手を回し、大きな膨らみを堪能している。
「ふはは!今日の夜は覚悟しておけよお前達!ふはははは!」
勝ち誇った笑いを上げる皇太子を乗せた馬車は街へとゆっくりと進んで行ってしまった。
課金ショップの残金44万7930クレジット
今回の消費
飛剣ブースター(使い捨て) 100クレジット
復活の卵 500クレジット
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