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第3章

3 - 7 不可視の対決

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日も落ちてきた頃…

俺は無事ライラの職探しも終え、ライラの当面の寝床にと街の宿屋の店主に部屋代三ヵ月分を前金で支払う

「そんな!職を見つけてくださっただけでも申し訳ないと思っているのに…ここまでして頂くなんて…私…こんなに恩を返せません!」

と必死に宿代はいいです!と言うライラ

「まぁまぁ…どの道ギルドのお給料が入るまではお金はかかるでしょ?食費とか雑費とか?
とても部屋を借りるなんて出来ないと思うんだ。だからここでひとまずお金を貯めなよ!ね?」

「そんな!知り合ったばかりの私にどうして…」と困惑を隠せないライラ

「おじいちゃん達には俺が魔力切れを起こしていた時に助けてもらったからね。ささやかな恩返しって所かな!それに…おじいちゃん達にライラの事を頼まれたしね」

と言って微笑みかけると「久世さん…」とライラは頬を染め身長差から俺を見上げる

「それじゃ、俺は少し出てくるから!また明日ね!っと忘れるとこだった!朝と夜は宿から食事出るから!詳しくは宿のカウンターで聞いてね~」

と俺はこれ以上の問答を避けるため素早く部屋を出て

「ぇぇぇ!ちょっと久世さーーーん!」

遠くから聞こえるライラの叫び声を聞きながら、俺は夜の街を飛翔する


脳内の地図には既に商業ギルドで得たツェーザル邸の所在地へマーカーが打ち込まれている。

俺はそのマーカー目掛け夜の街を目下に眺めつつ空を翔る

「やっと三人目か…」

俺はそうぼやきつつ足の裏を大地へ立て、忘れてはいけないと定番の「【シャドウハイド】」を使用し屋敷へと近づいて行く

《雷斗さん!久々に仕事の時間ですね!》

(そうですねぇ…今日はどうしようか…)

《わくわく!わくわく!》

女神さまと脳内で今日の懲らしメニューを考えつつ屋敷の外堀へと辿り着いた俺は「【クリアラビリンス】」と念じて屋敷の全貌をサーチ、脳内の地図にマーカーが打ち込まれていくのを確認した。

地図のマーカーで監視と思われる者が巡回しているのを確認、その合間をみて「【サンドストーム】」と定番の魔法を念じ人が通れる程度の穴を開ける。

俺はすかさず外堀に開けた穴から屋敷の庭へと潜入

建物内の空き部屋を見つけ再度「【サンドストーム】」で穴を開け、難なく屋敷内部へと侵入を果たす

(毎回思うけどハイドとサンドのコンボは最強だねー)

《まるで時代劇に出てくる忍者みたいです!闇に隠れて仕事をする辺りなんて特に!》

(忍者なぁ…でも忍者ってあんなデカイ穴掘ったりしねーと思うんだけど…)

《忍びなのに忍ばない!ですね!》

(なにそれ?)

《ちょっと前にやってたドラマで~そんな忍者のやつがやってたんですよ~》

(大丈夫かそのドラマ…)

《巨大ロボットも出てきましたよ!》

(……それ…何曜日の何時頃やってたの?)

《日曜日の朝7時半?とか?》

(それって…)

はぁ…こいつ幼児番組まで網羅してんだな……よっぽど暇なのだろうか…食っちゃ寝ゴロゴロしている女神さまが目に浮かぶ

《その後のバイクに乗って悪を討つやつとか、女の子が変身して悪を討つやつもいいですよ!》

それでねーそのバイクがねー……と未だに脳内で喋っている女神さまを無視して俺は屋敷内部の探索にかかる。

今回も主に見張りの居ない部屋はスルーして見張りが立っている部屋の探索を優先する事に。

おっ!早速見張り君発見!今回は一名!

ならば─と俺は鉄貨を取りだし見張り目掛け投擲

「ぁ──」と小さな声を一つ漏らしたと同時に見張りの頭部が砕けて爆ぜる

見張り君を処理した俺は扉の中の様子を伺うと、中から男と女の声と何かを叩きつける音が聴こえてくる。

「うはははは!それ!孕め!孕め!」

パンパンパンパン!

「いやぁ!いやぁ……」

「ほれ!タップリと出してやるわ!ほぅれ!出すぞぉ!」

パンパンパンパン!

「やだぁ……やだぁ……」

────

《雷斗さん!何時まで聞き耳立ててるんですか!》

(はっ!)

《あ~あ……雷斗さんが鼻血垂らしてる間に終わっちゃいましたよ……》

(なっ!鼻血なんて出してねーし!)

俺は女神さまに抗議しつつ目の前の扉を勢い良く蹴り開けた!

部屋の中央にあるキングサイズのベッドにはぐったりとした少女の姿

男は…居ない!俺が男を探し視線を左右へと向けたその時──

「残念だったな執行者…」

と背後からの声に振り向こうとした俺の首筋に冷たい刃が食い込んだ──



ドサッ───




「我の偽装にも気が付けぬとは……噂の執行者とは名ばかりよな…それに貴様が街に潜入してきた時点で既に御館様は屋敷から退避しておられるわ…」

と首を切り裂いた死体を無造作に蹴ろうとした足を掴み、放り投げる

「へぇ…さすがに身ばれしてるとこういった事もある訳ね…勉強になったよ」

投げ飛ばされた男は空中で受け身を取り着地するも、その顔には焦りがまざまざと現れている

「なぜだ…我は確かにお前の首を切り裂いた…即死せずとも身動きなぞ取れる訳が…」

と俺の首を見て男は驚愕の表情でうち震える

「ほれ!首がどうしたって?」と俺は男に向け無傷の首をアピールする

そもそも俺は女神さまの加護により寿命以外では死なない体になっている。
最も…あの程度の刃でどうこうなるような体じゃないんだけど…

勿論、そんな事など露知らず、目の前の男は苦虫を潰したような顔で──

「くっ…化け物が!」

と男は小刀を取り出し連続で投擲

「よっ!ほっ!ほいっと!」

俺は高速で飛来する小刀をまるで軽業を披露するピエロのような動きで指の間に収めていく

「バカな!我が必殺の飛び苦無を…こうと容易く…」

俺は苦虫を潰したような表情の男の足元に小刀を投げ返し──

「さて…お次は何を披露してくれるのかな?」

カツ…カツ…と俺は男にゆっくりと近づいて行く

「ならば!これは見切れるかっ!秘技!不可視飛び苦無!」

男はそう叫ぶと右手を一閃!
俺は咄嗟に頭を横に反らせば頬に一筋の線が刻まれる

「なるほど…いい技だ…」

「感心している場合ではないぞ!それそれそれ!」

と俺へ向けて男は不可視のを投げつける!

俺は迫りくるそれらを造作もなく全て掴みとり……

パラパラ──とそれらを床に撒く

「不可視ってのは…こういうのだろ?【トルネイド】!」

俺が放った必殺の初級魔法は……男に直撃。脳を揺らし意識を刈り取った──

「ふっ…お前には見えなかったようだな…」

《なにカッコつけてるんですか!風の魔法なんですから見えなくて当然じゃないですか!インチキ!ズル!ヘンタイ!》

(おい!最後のヘンタイってなんじゃい!)

《そんな事よりツェーザルが逃げちゃったみたいじゃないですか!どーするんです?》

(あ~…それな…どーしようか…目の前のこいつを拷問した所で吐きそうになさそうだし…困ったなぁ…チラッ)

《………………》

(どこかの素敵な方が協力してくれないかなぁ…チラッ)

《チラッチラッって…はぁ…仕方ないなぁ》

(よっ!さすが女神さま!惚れてまうわ~)

《【シザーマインド】と対象の頭に手を置き念じれば、必要な情報を抜き取る事が可能です》

(おお!それは素晴らしい!)

《ちなみに【クラッシュマインド】と対象の頭に手を置き念じると精神を破壊できますよ♪》

(怖いわ!ちょっと技名が変わっただけで急激に危険度が増したわ!)

《てへ!》

こいつマジコエー!その内脳ミソ弄くられて洗脳されてんじゃねーの?

《やだな~雷斗さんったらぁ~。私そんな事しませんよ~?》

「信用できねーわ!…まったく…【シザーマインド】っと…」

俺は男の頭に手を置き、念じてツェーザルの居場所を探る──

俺の手を介して男の情報が流れ込む……なるほど、ツェーザルは別荘か……場所は……


その後も俺は必要な情報を男から抜き取り、ついでに【クラッシュマインド】で精神を破壊しておく。

「しかし…貴族ってのはどいつもこいつも…ヤバくなると別荘に逃げる癖があるよな…」


俺はそうぼやくとベッドで横たわっている少女へと近付き脈を計り……

俺は舌打ちを一つ…再び闇夜の空へと飛翔した──


 
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