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第2章
2 - 2 婚約指輪だけは用意できたが…
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「アンナ!」
「雷斗さん。どうしたんですか?突然大声なんて出して……」
俺は廊下で窓を掃除しているアンナを発見し勢いに任せて声を掛けた。
突然名前を叫ばれたアンナは当然だがキョトンとした顔で俺を見ている。
やべっ!なんか顔見たら急に恥ずかしくなってきたぞ!プロポーズってどーするんだ!?
なんて言えばいいんだ!!さぱらん!
「あ~……きょ……きょきょ……」
「きょ?」
だぁぁぁぁ!顔が熱ぃぃぃ!絶対赤面してる!
「きょ……今日はいい天気だな!」
「そうですね。余りにも天気がいいので、これからお布団を干そうと思っていた所なんですよ」
何言ってるんだ俺!そうじゃねーだろ!
って……何て言えばいいんだ!あわわわわ……
「そ……そうか!さすがアンナだ。宜しく頼むよ」
ダメだ!もう無理だ!戦略的撤退!!
俺はそそくさとその場を立ち去ってしまった……
「ふふっ…変な雷斗さん」
はぁはぁ……ふぅぅ……なんとか落ち着いたが……
《あの……プロポーズはどうなったんですか?》
(うむ……心の準備ががが)《意気地無し!》
そうは言うがねぇ……やっぱり雰囲気とか必要だと思うんだよね……ほら……浜辺とか……夜のレストランとか……高台の夜景をバックに……とか……
《そんなんどーでもいいと思うんですけど……》
そうだ!指輪だ!指輪を買いに行こう!
レナート待ってろよ!今行くからなーー!
いーそぐんだよー!あらほらさっさー!
「という事でレナート!」
「はい!?」
突然店に飛び込んで来た俺に呼ばれて驚くレナート。《少しは落ち着いてくださいよ……》
「かくかくしかじかで指輪が欲しいのだ!」
《何がかくかくしかじかなんですか……そんなんじゃ解りませんよ……落ち着けと……》
「分かりました」
「《ええ!?》」
「婚約指輪をお探しなのでしょう?お二人分でよろしいですよね?」
「おおお!宜しく頼む!」
ガバッと頭を下げる俺にレナートは一言「任せて下さい」と言うなり裏へと下がって行った。
流石レナート素晴らしい洞察力だ!もし俺が女だったら間違いなく……惚れてまうやろ~!な感じだな!
《バカな……この男……ニュータイプだとでも言うのか!?》
(レナートなら白い悪魔も裸足で逃げるで!)
《大絶賛ですね~もういっそ性転換します?》
(お湯を掛けたら男に戻れる?)《ブタにならなれるかも?》(それならパンダがいいな!)
「お待たせ致しました」
俺と女神さまの漫才が始まろうとした矢先……早くもレナートは戻ってきた。
片手にはオススメと思われる指輪が乗ったトレーを持っている。
「これらであればお二方も二つ返事で結婚を了承すること間違いなしでしょう」
トレーに乗っているどの指輪も白銀に輝き……飾り部分にはしっかりとした存在感のあるダイヤモンド…しかし、そこに僅かな違和感があった。
「……おや?この石とこっちの石……光方が違うのだが……ダイヤモンドじゃないのか?」
トレーに乗っている指輪の内2個だけ……輝き方が違う……なんていうか光の色?というのか……宝石特有のキラキラっていう光の反射ではない。
まるで光の反射などなくても石自体が光っている……そう思える程に石の中に光を感じる。
「ほう……流石ですね。その2つだけはダイヤモンドではなく、ミスリルと呼ばれる伝説級の金属を使用しています」
「ミスリル……」
そう呟き、もう一度指輪の宝石を覗き込む……
「そのミスリルは別名白銀鋼と言い本来は武器等に用いる金属なのですが……当店専属技師の技術によってミスリルの内包する魔力を利用し、ダイヤモンドですら敵わぬ輝きと……そして装備した者へ光の加護を与えるよう改良が施されております」
なんだって!この世界のミスリル万能すぎやしませんか!?
《この世界もなにも……雷斗さんの世界にミスリルなんて元々ないじゃないですか……》
(いやいや!ラノベとかゲームでのミスリルについての扱いと比べてだね────)
《その話しは今度で……とりあえず指輪を……》
ふむ。こんなの悩まず購入だろ!
「ミスリル2つ!」
「そう仰ると思いました。2つで白金貨6枚ですが……5枚で如何でしょう?」
ぐぬぬ!高い!高いぞ!さすがミスリル!
だが……値下げまでしてくれている手前やっぱりダイヤモンドで───なんて恥ずかしくて言えない!
《さすがレナートさんですね。こういう方をやり手と言うのでしょうね》
(そ……そうだな……)
《この場合、雷斗さんに呼び名を付けるならカモって言うのでしょうけど……ね》
ぐぬぬぬ!そんなことはない!と思いたい!
「よし!買おう!レナートよ……」
「綺麗な箱をご用意させて頂きますね。」
「お……おぅ。頼む」
《ふふっ完全にレナートさんの方が一枚も二枚も上手ですね♪》
(煩いおばあちゃんだなぁ……これだから老害は困るよ。)
《誰が老害ですか!》(あんただよ!この煽りしか能がないダ女神さまがっ!)
《そ……それを言っちゃぁおしまいだよぅ……》
脳内でメソメソと……おそらく泣き真似をしている女神さまを無視し───
「お待たせ致しました」
と小箱を2個を手渡してもらい、白金貨5枚を支払いレナートの店をあとにした。
そして屋敷までの道すがら……
どうしたものかと悩んでいると───
「雷斗の旦那じゃないかい!どうしたんだい?難しそうな顔して」
アンジュが正面から現れた。
「ああ、アンジュか」
「アンジュか~とはなんだい!悩んでるような面してたから心配して声を掛けてやったっていうのに!」
「ああ……悪気はないんだ。すまん」
《ところで~なんやかんやアンジュさんにもお手付きしてましたけど……どうするんです?》
あっ…………
(しまったぁぁぁぁぁぁぁぁ!どうしよう!)
《早速浮気相手に遭遇するなんて……不運ですね♪》
ぐぬぬ!楽しみやがってぇぇ!
まぁ……身から出た錆びだな……素直に言って謝ろう……許しては貰えないだろうが……
俺は意を決してアンジュを見て「アンジュ……」と声を出したその時!
「その顔……二人に結婚でも申し込むのかい?」
「へ?」
「そっかぁ……二人とも良かったなぁ……」
「あ……あぁ……」
なぜバレたのだろう……手間は省けて助かったのかもしれないが……
「すまん。そういう事なんだ。だからアンジュとは付き合えないんだ」
と頭を下げ謝罪する俺に───
「え?あたいは旦那に対して付き合うとかそういうのは求めてないよ?」
なんだ?アンジュは何を言っているんだ?
《つまり雷斗さんが勘違いした痛い人だと。》
(はぁ!?)《いや……だって……》
「あたいは年齢的に旦那より上だしね。それにお嫁さんって柄でもないし」
《およ?》(む?)
やはり何を言っているのか分からない。
「だからいつも通り愛人ってことで。二人と喧嘩したり、ちょっと別の刺激が欲しくなったらあたいの所に……っていつもそんな感じか」
「え?」と未だに頭に?を浮かべたままの俺
「ほら、貴族様ってよくこう言うだろ?俺には全ての街に愛人が居んねん!って」
なにやら爽やかに纏めに入っているアンジュだが……そういうもんなのか?
《残念ながら……事実ですね。全部の街に~なんて言うのは言い過ぎですけど……大概の貴族は街に何人かの愛人を囲っているものです》
「そういう事で、んじゃな!旦那!新婚一月位は二人と一緒に居なよ!」
と言うだけ言ってアンジュは去って行った。
「しかし…いつも通り愛人って…俺そんな扱いしてたのかなぁ…」
《そうですね。むしろ自覚してなかったのが意外でした?》
(あのさ…自覚しててやってたら善行とはさすがに言えなくないですかね?)
《いいんじゃないんですか?お互い同意の上でなら。》
(良くはねーだろうに…ホントこの世界の価値観を疑うわ…)
アンジュと別れた後、結局俺はそのまま屋敷に戻った───
「ただいま~」
「お帰りなさい。雷斗さん」
俺が帰宅の挨拶をするとリビングに居たアンナが廊下へと顔を出し俺を出迎えてくれる。
さて…朝のリベンジが果たして俺にできるのだろうか…
まずはなんて切り出せばいいのだろうか…と思案しつつアンナの様子を窺っていると───
「雷斗さん。今日はミレーヌが夕食を用意していますので、先にお風呂にでも入っていらっしゃったらいかがですか?」
とアンナから提案があったので、とりあえず乗っかることにする。
風呂にでも入ってすっきりすれば自ずと名案が浮かんでくるというものだ!
《などと意味不明な供述を述べており───今後の動向に注目が注がれております》
(やめてー!注目しないでー!ってか意味不明な供述って俺なんかしたのかよ!)
《罪状は複数の女性と交友関係を結び、あろうことか乙女心を弄んだ…とか?》
ぐぬぬ…悔しいが言う通りかもしれん…
「あの?雷斗さん?具合でも悪いんですか?」
「ああ…ごめんごめん。少し考え事をしてて…ついボーっとしてしまったよ」
と俺を覗き込むアンナへ苦しい言い訳をし、気まずくなる前にお風呂へと逃げるように移動する。
俺は風呂に首まで浸かり…「意気地なしだな…」と一人ゴチる…さすがのダ女神さまも処置なしといったところか、いつものバカな口撃もしてこない。
俺は湯船から出て着替えを済ませリビングへと向かう。もちろん夕飯を食べるためだ…
「雷斗様!今日はミレーヌ特製ビーフシチューですよ!」
とミレーヌは俺にシチューの入った器を出すと上機嫌に俺の横の椅子へと腰掛ける。
俺はシチューを一口…「美味い…」と一言漏らし、食事を再開。結局おかわり含め2杯のシチューを食べて──現在は食後の紅茶を飲んでいるところだ…
横には俺がおかわりしたのがよっぽど嬉しかったのか一層上機嫌なミレーヌが座っている。
その横顔を眺めて───「ミレーヌ…」───思わず名前を口にしてしまったらしい。
「はい?なんですか雷斗様?」
名前を呼ばれ俺の方へと顔を向けるミレーヌ
俺はその顔を見て…プロポーズを────できるかっ!!!《はああああ!?》
(いや…だって…食後のまったりとした時間に唐突に結婚しよう!とか言うのってどうなん!?)
《まぁ…ない!ですね》(だろ!?)《でも!このままでは埒があきませんよ!》むぅぅぅぅ…
俺がうんうんと悩んでいると…ミレーヌの方から声があがる。
「雷斗様…先日お約束して頂いたデートの件ですけど…明日でもよろしいですか?」
ああ…そういえばそんな約束してましたね…すっかり忘れてましたよ…
「ああ、それは構わないよ」
「じゃあ…明日────あの!…アンナさんも一緒でもよろしいですか?」
「え…ああ…別に構わないが…ミレーヌはそれでいいのか?」
「はい!」{抜け駆けすると何を言われるかわからないですし…
ボソッと言った言葉になぜか納得してしまう────アンナ…怒ると怖いもんな────
《チャンスですよ!雷斗さん!明日の二人とのお出かけでプロポーズするんです!!》
(むっ!しかしどうすれば…)《その為にも明日のプランを練りましょう!!》さあ早く部屋へ!
と女神さまのやる気に中てられ俺は部屋へと戻り作戦会議を脳内で執り行うことになったのだった…
「雷斗さん。どうしたんですか?突然大声なんて出して……」
俺は廊下で窓を掃除しているアンナを発見し勢いに任せて声を掛けた。
突然名前を叫ばれたアンナは当然だがキョトンとした顔で俺を見ている。
やべっ!なんか顔見たら急に恥ずかしくなってきたぞ!プロポーズってどーするんだ!?
なんて言えばいいんだ!!さぱらん!
「あ~……きょ……きょきょ……」
「きょ?」
だぁぁぁぁ!顔が熱ぃぃぃ!絶対赤面してる!
「きょ……今日はいい天気だな!」
「そうですね。余りにも天気がいいので、これからお布団を干そうと思っていた所なんですよ」
何言ってるんだ俺!そうじゃねーだろ!
って……何て言えばいいんだ!あわわわわ……
「そ……そうか!さすがアンナだ。宜しく頼むよ」
ダメだ!もう無理だ!戦略的撤退!!
俺はそそくさとその場を立ち去ってしまった……
「ふふっ…変な雷斗さん」
はぁはぁ……ふぅぅ……なんとか落ち着いたが……
《あの……プロポーズはどうなったんですか?》
(うむ……心の準備ががが)《意気地無し!》
そうは言うがねぇ……やっぱり雰囲気とか必要だと思うんだよね……ほら……浜辺とか……夜のレストランとか……高台の夜景をバックに……とか……
《そんなんどーでもいいと思うんですけど……》
そうだ!指輪だ!指輪を買いに行こう!
レナート待ってろよ!今行くからなーー!
いーそぐんだよー!あらほらさっさー!
「という事でレナート!」
「はい!?」
突然店に飛び込んで来た俺に呼ばれて驚くレナート。《少しは落ち着いてくださいよ……》
「かくかくしかじかで指輪が欲しいのだ!」
《何がかくかくしかじかなんですか……そんなんじゃ解りませんよ……落ち着けと……》
「分かりました」
「《ええ!?》」
「婚約指輪をお探しなのでしょう?お二人分でよろしいですよね?」
「おおお!宜しく頼む!」
ガバッと頭を下げる俺にレナートは一言「任せて下さい」と言うなり裏へと下がって行った。
流石レナート素晴らしい洞察力だ!もし俺が女だったら間違いなく……惚れてまうやろ~!な感じだな!
《バカな……この男……ニュータイプだとでも言うのか!?》
(レナートなら白い悪魔も裸足で逃げるで!)
《大絶賛ですね~もういっそ性転換します?》
(お湯を掛けたら男に戻れる?)《ブタにならなれるかも?》(それならパンダがいいな!)
「お待たせ致しました」
俺と女神さまの漫才が始まろうとした矢先……早くもレナートは戻ってきた。
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「これらであればお二方も二つ返事で結婚を了承すること間違いなしでしょう」
トレーに乗っているどの指輪も白銀に輝き……飾り部分にはしっかりとした存在感のあるダイヤモンド…しかし、そこに僅かな違和感があった。
「……おや?この石とこっちの石……光方が違うのだが……ダイヤモンドじゃないのか?」
トレーに乗っている指輪の内2個だけ……輝き方が違う……なんていうか光の色?というのか……宝石特有のキラキラっていう光の反射ではない。
まるで光の反射などなくても石自体が光っている……そう思える程に石の中に光を感じる。
「ほう……流石ですね。その2つだけはダイヤモンドではなく、ミスリルと呼ばれる伝説級の金属を使用しています」
「ミスリル……」
そう呟き、もう一度指輪の宝石を覗き込む……
「そのミスリルは別名白銀鋼と言い本来は武器等に用いる金属なのですが……当店専属技師の技術によってミスリルの内包する魔力を利用し、ダイヤモンドですら敵わぬ輝きと……そして装備した者へ光の加護を与えるよう改良が施されております」
なんだって!この世界のミスリル万能すぎやしませんか!?
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(いやいや!ラノベとかゲームでのミスリルについての扱いと比べてだね────)
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ぐぬぬ!高い!高いぞ!さすがミスリル!
だが……値下げまでしてくれている手前やっぱりダイヤモンドで───なんて恥ずかしくて言えない!
《さすがレナートさんですね。こういう方をやり手と言うのでしょうね》
(そ……そうだな……)
《この場合、雷斗さんに呼び名を付けるならカモって言うのでしょうけど……ね》
ぐぬぬぬ!そんなことはない!と思いたい!
「よし!買おう!レナートよ……」
「綺麗な箱をご用意させて頂きますね。」
「お……おぅ。頼む」
《ふふっ完全にレナートさんの方が一枚も二枚も上手ですね♪》
(煩いおばあちゃんだなぁ……これだから老害は困るよ。)
《誰が老害ですか!》(あんただよ!この煽りしか能がないダ女神さまがっ!)
《そ……それを言っちゃぁおしまいだよぅ……》
脳内でメソメソと……おそらく泣き真似をしている女神さまを無視し───
「お待たせ致しました」
と小箱を2個を手渡してもらい、白金貨5枚を支払いレナートの店をあとにした。
そして屋敷までの道すがら……
どうしたものかと悩んでいると───
「雷斗の旦那じゃないかい!どうしたんだい?難しそうな顔して」
アンジュが正面から現れた。
「ああ、アンジュか」
「アンジュか~とはなんだい!悩んでるような面してたから心配して声を掛けてやったっていうのに!」
「ああ……悪気はないんだ。すまん」
《ところで~なんやかんやアンジュさんにもお手付きしてましたけど……どうするんです?》
あっ…………
(しまったぁぁぁぁぁぁぁぁ!どうしよう!)
《早速浮気相手に遭遇するなんて……不運ですね♪》
ぐぬぬ!楽しみやがってぇぇ!
まぁ……身から出た錆びだな……素直に言って謝ろう……許しては貰えないだろうが……
俺は意を決してアンジュを見て「アンジュ……」と声を出したその時!
「その顔……二人に結婚でも申し込むのかい?」
「へ?」
「そっかぁ……二人とも良かったなぁ……」
「あ……あぁ……」
なぜバレたのだろう……手間は省けて助かったのかもしれないが……
「すまん。そういう事なんだ。だからアンジュとは付き合えないんだ」
と頭を下げ謝罪する俺に───
「え?あたいは旦那に対して付き合うとかそういうのは求めてないよ?」
なんだ?アンジュは何を言っているんだ?
《つまり雷斗さんが勘違いした痛い人だと。》
(はぁ!?)《いや……だって……》
「あたいは年齢的に旦那より上だしね。それにお嫁さんって柄でもないし」
《およ?》(む?)
やはり何を言っているのか分からない。
「だからいつも通り愛人ってことで。二人と喧嘩したり、ちょっと別の刺激が欲しくなったらあたいの所に……っていつもそんな感じか」
「え?」と未だに頭に?を浮かべたままの俺
「ほら、貴族様ってよくこう言うだろ?俺には全ての街に愛人が居んねん!って」
なにやら爽やかに纏めに入っているアンジュだが……そういうもんなのか?
《残念ながら……事実ですね。全部の街に~なんて言うのは言い過ぎですけど……大概の貴族は街に何人かの愛人を囲っているものです》
「そういう事で、んじゃな!旦那!新婚一月位は二人と一緒に居なよ!」
と言うだけ言ってアンジュは去って行った。
「しかし…いつも通り愛人って…俺そんな扱いしてたのかなぁ…」
《そうですね。むしろ自覚してなかったのが意外でした?》
(あのさ…自覚しててやってたら善行とはさすがに言えなくないですかね?)
《いいんじゃないんですか?お互い同意の上でなら。》
(良くはねーだろうに…ホントこの世界の価値観を疑うわ…)
アンジュと別れた後、結局俺はそのまま屋敷に戻った───
「ただいま~」
「お帰りなさい。雷斗さん」
俺が帰宅の挨拶をするとリビングに居たアンナが廊下へと顔を出し俺を出迎えてくれる。
さて…朝のリベンジが果たして俺にできるのだろうか…
まずはなんて切り出せばいいのだろうか…と思案しつつアンナの様子を窺っていると───
「雷斗さん。今日はミレーヌが夕食を用意していますので、先にお風呂にでも入っていらっしゃったらいかがですか?」
とアンナから提案があったので、とりあえず乗っかることにする。
風呂にでも入ってすっきりすれば自ずと名案が浮かんでくるというものだ!
《などと意味不明な供述を述べており───今後の動向に注目が注がれております》
(やめてー!注目しないでー!ってか意味不明な供述って俺なんかしたのかよ!)
《罪状は複数の女性と交友関係を結び、あろうことか乙女心を弄んだ…とか?》
ぐぬぬ…悔しいが言う通りかもしれん…
「あの?雷斗さん?具合でも悪いんですか?」
「ああ…ごめんごめん。少し考え事をしてて…ついボーっとしてしまったよ」
と俺を覗き込むアンナへ苦しい言い訳をし、気まずくなる前にお風呂へと逃げるように移動する。
俺は風呂に首まで浸かり…「意気地なしだな…」と一人ゴチる…さすがのダ女神さまも処置なしといったところか、いつものバカな口撃もしてこない。
俺は湯船から出て着替えを済ませリビングへと向かう。もちろん夕飯を食べるためだ…
「雷斗様!今日はミレーヌ特製ビーフシチューですよ!」
とミレーヌは俺にシチューの入った器を出すと上機嫌に俺の横の椅子へと腰掛ける。
俺はシチューを一口…「美味い…」と一言漏らし、食事を再開。結局おかわり含め2杯のシチューを食べて──現在は食後の紅茶を飲んでいるところだ…
横には俺がおかわりしたのがよっぽど嬉しかったのか一層上機嫌なミレーヌが座っている。
その横顔を眺めて───「ミレーヌ…」───思わず名前を口にしてしまったらしい。
「はい?なんですか雷斗様?」
名前を呼ばれ俺の方へと顔を向けるミレーヌ
俺はその顔を見て…プロポーズを────できるかっ!!!《はああああ!?》
(いや…だって…食後のまったりとした時間に唐突に結婚しよう!とか言うのってどうなん!?)
《まぁ…ない!ですね》(だろ!?)《でも!このままでは埒があきませんよ!》むぅぅぅぅ…
俺がうんうんと悩んでいると…ミレーヌの方から声があがる。
「雷斗様…先日お約束して頂いたデートの件ですけど…明日でもよろしいですか?」
ああ…そういえばそんな約束してましたね…すっかり忘れてましたよ…
「ああ、それは構わないよ」
「じゃあ…明日────あの!…アンナさんも一緒でもよろしいですか?」
「え…ああ…別に構わないが…ミレーヌはそれでいいのか?」
「はい!」{抜け駆けすると何を言われるかわからないですし…
ボソッと言った言葉になぜか納得してしまう────アンナ…怒ると怖いもんな────
《チャンスですよ!雷斗さん!明日の二人とのお出かけでプロポーズするんです!!》
(むっ!しかしどうすれば…)《その為にも明日のプランを練りましょう!!》さあ早く部屋へ!
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