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4 彼が家を購入するというので付いて行きます……
しおりを挟む「アンナ…俺はこの町で家を持とうと思うのだが、何処に行けば買えるのかな?」
「えっ!家を───ですか……でしたら私が登録している商業ギルドへ向かいませんか?そこでなら情報を得られるはずです」
私達は食後のデザートであるキッシュと紅茶を頂きながら───
(このキッシュ!とってもおいしいです…アプルの酸味と甘みが程よく生地に馴染んでます!)
───今後の行動方針を決めることにしました!
まずは商業ギルドへ、そこで私のハーブを売却、その後職員に売り出されている家が何処かにないか情報を聞く、あるいは直接売ってもらう。
その後──「とりあえず今日のところは宿に泊まろうと思ってる」というライトさん……
(今日解散してしまったら…そのままお別れしてしまうかもしれない!何一つお礼してない!)
「あの!今日は私の家にいらっしゃいませんか?今日のその…お礼も兼ねて…」
と私は上目遣いでライトさんを見つめ……
「じゃあ…今日は…お世話になろう…かな…」
やりました!少々あざとかった気もしないでもないですが…やったもん勝ちです!問題ないでしょう!───と私は心の中でガッツポーズ
ってあれ?なんかライトさん…目は虚ろでボケっとしながら紅茶を啜ってます…本当はとても疲れているんじゃないでしょうか───なんて心配していると案の定
「ぶほっ!ごほっごほっ…」
ライトさんは咽て紅茶を吹き出しました!
「大丈夫ですか!?」と心配する私の声など聞こえていないかのように───
「だあああああ!もうっ!アンナ!行くよ!!」
「え?ええ?」
ライトさんは私の手を取り店を出て早歩きでどこかへと向かって歩きだしました…
って私たち…これから商業ギルドに向かうはずじゃ……
ギルドは反対方向なんですが……言った方がいいのでしょうか……と頭を悩ませていると──
「ごめんアンナ……手を引いて歩き出したはいいけど、俺は道がわからないんだった。あはは……はぁ」
「ふふっ。雷斗さんってホントに面白いです。それじゃ、選手交代ですね!行きますよ!」
「あはは!よろしく!」
今度は私がライトさんの手を引き、来た道を戻り、そのまま反対方向へと進みます──
チラッと振り返りライトさんを見ると……ちょっと落ち込んでます……なんか可愛いです!ここはフォローしてあげましょう!
「ふふっ…すいません。手を引かれるなんて余りなかったので、つい言いそびれてしまいました」──と微笑をライトさんに向け……(あふっ…やっぱり恥ずかしいです!)体温が上がっていくのを感じ……(今絶対顔が赤いです!間違いありません!一人になったら思い出して悶絶必至です!)
その後二人は無言で移動───
「着きましたよ!ライトさん!」
そう言う私の目の前には周囲とは少し違い、一言に言うと金がかかってそうな建物には…でかでかと【商業ギルド】と看板が出ている。
私はライトさんの手を引き、商業ギルドへと入っていきます!
「お…アンナか。今日もハーブ持ってきたのか?」
「おつかれ~アンナ~」
「アンナちゃんち~っす」
私はいつも通りギルドに入ると、そこに居る方々がいつものように笑いかけてくれます。
そんな方達全員ときちんと挨拶しながらライトさんをカウンターに案内しました。
順次待つこと数分。私達の番が来たので、カウンターの前に立ちハーブの精算をしてもらいます。
そして報酬を受け取った後……私は受付の女性にライトさんの件を相談します。
「あの……ミレーヌさん。今日は少し相談があって──」
と私はギルドの受付嬢をしているミレーヌさんに詳細を説明───するとなぜかカウンターから身を乗り出してボソッっと──{なに?アンナ…今日はやけにオメカシして…後ろの人は彼氏?}──などと言われ、それを全力で否定!
(私などがライトさんとお付き合いなんて……とても出来るわけがありません!)
「ちっ違います!私の後ろに居る方が家をお探しになっていて、良い処がないか相談に来たんです!」
私は肩を上下させ「はぁ…はぁ…」と荒い息を吐き一気に捲し立てます!
ミレーヌさんは「な~んだ。つまんない~」と一言いうと「んじゃ連れて来て~」と投げやりです!
ちょっとイラッと来ましたがライトさんの手前言い合いは印象を悪くしてしまいます……ここは我慢です!
私はライトさんへジェスチャーを送ると──私の所に移動してきてくれます。
「貴方が依頼人ってことでいいんですか?」
「はい。宜しければ家を紹介していただけますか?」
ミレーヌさんはライトさんを値踏みするように
見て────
「貴方はこの町の住人ではないようですが──失礼ですが、住民登録はお済みですか?または何処かのギルドに所属されたりはしていますか?」
とミレーヌさんの問いに少々困ったような……難しい顔をするライトさん。
すると彼は懐をまさぐり何かカードみたいな物を取りだしミレーヌさんに提示しました。
「ありがとうございます。拝見しても宜しいですか?」
ミレーヌさんは、そのカードを恭しく受け取り記載されている情報に目を通すと──みるみる顔色が青くなっていきました……一体どうしたというのでしょう?
するとミレーヌさんは頭をカウンターに叩きつける勢いで──ドカッ!──あぁ……叩きつけてます……痛そうな音がしましたが……
「ももも申し訳ございません!王都直轄の執行者様に向かっての無礼を何卒お許しください!」
「な……」
私の脳にも先ほどのミレーヌさんのドカッ!と同様の衝撃が走った───気がしました!
噂でしか聞いた事はありませんでしたが……王都直轄の執行者……実際に存在しているなんて……
なんでも執行者とは……善行を良しとして悪行を許さず、悪行を働く者を見れば裁きを下す──その判断は全て執行者が決める。
噂ではとても恐ろしく、恐怖の存在とされていましたが……
「あの……私……どうなっちゃうんですか……」
ああ……やはり先ほどの自分の態度が悪かったのを心配してか、ミレーヌさんは瞳に涙を浮かべ……小鹿のようにガクブルしています。
(ま……お気持ちはお察ししますが……自業自得ですね。ミレーヌさんの癖にライトさんに向かって身分証も持ってないんですか~?プークスッ!などと言ったのが運の尽きでした)
若干の脚色がない気もしないでもないですが……概ねミレーヌさんのヘマで間違いはないでしょう。
しかし…そんな怯えるミレーヌさんに彼はとても優しく微笑み──
「ああ──驚かせてすまない。別に怒ったりしてないから安心して欲しい……それでどうかな?家の方は?買える物件はある?」
「勿論です!執行者様のお願いを断るなんて怖──恐れ多いことはありません!直ぐに空き屋を調べてご案内致します!」
「ははは!そんなに畏まらなくていいよ。名前──ミレーヌって言ったかな?俺の事は気軽に雷斗で構わない。それじゃあ──そこの椅子で待ってるから宜しく頼む。」
「はい!ライト様がきっと気に入るような物件を探して来ます!」
なんてお優しいのでしょう!
ライトさんは怯えるミレーヌさんを気遣い優しく……それでいて気さくに話しかけてます!
そして会話を終えたミレーヌさんは奥へと疾風の如く駆けて行きました。
それを見送り私とライトさんはカウンターから離れて中央の椅子へと腰かけ、私はライトさんへ──
「ライトさんって王都の出なんですね!しかも執行者様だったなんて!だからあんなにも強かったんですね!色々と納得しました!」
と今日一の疑問が解決してスッキリした事を報告!
(しかし……こんなすごい方とお知り合いになれるなんて……今日は最悪から一転!最高の日です!)
思わず先ほど私を助けてくれたライトさんのシーンを思い出して「んふふっ♪」と声が漏れてしまいました!気付かれなかったでしょうか……
と……一人妄想に耽っていると───
奥からミレーヌさんが走って戻って来ました。
「ライト様!お待たせして申し訳ありません!」
「いやいや、そんなに待ってないから平気だよ」
と言うと彼は「そうそう……」と何かを思い出したかのように───
「ミレーヌ…それにアンナも聞いてくれ。俺が執行者だって言うことは本来内密にしなければならないんだ。なぜなら悪人を見掛けた場合、俺の正体が公にされていたら、俺を見た悪人が逃げたりして取り逃がす可能性もあるからね。
俺の事は王都の商人の子供で遊び人──とでもしておいてくれないかな?」
───だから3人だけの秘密だよ?───
と、私達に言い聞かせギルドから出て行きます。
しかし……(うう……私達だけの秘密……ライトさんと私だけの秘密……)
「はぅ……」
頬が……瞳が熱い……ライトさんは詐欺師の才能もありそうです……今なら結婚しよう!って言われたら……それが例え騙されていると知っていても……はい!って答えてしまう自信があります!
チラッと横を見ればミレーヌさんも「はぁ……」となにやら熱い吐息を漏らしています……どうやら彼女は私のライバルになるようですね……
と考えていると───
「ぶほっ!」
と急に吹き出すライトさんに私はこの邪な考えがバレたのではないかと驚く!
「?」
「ごめんごめん。何でもないんだ」
と何事もなかったかのように歩みを進める。
そうしてしばらく街を歩くと──
「着きました!ライト様!ここなんてどうですか?部屋数も多くキッチンやトイレ…お風呂も完備!裏手にはお庭もありますから、家庭菜園なども可能ですよ!
この物件のセールスポイントは、やはりお風呂です!
お風呂というのは一般人には縁遠い物ですから!」
と……どうです!すごいでしょ!という心の声が聞こえてくるかのようなミレーヌさんのドヤ顔……
別に……あなたがすごいんじゃないんですよ?
お風呂がすごいんですよ?勘違いしないでくださいね?
ってあぁ……なんか私……急に黒い感情が涌き出てくるようになってしまいました……
こんなの普段の私じゃありません!
と脳内で器用に頭を抱える───
「ミレーヌ。ここの値段はどれくらいするんだい?」
「そうですね…ここのお屋敷は只今白金貨10枚で売りに出されています。少々高いので買い手も付かず商業ギルドでも不良在庫になっているのが現状ですね」
「ふむ……」
と頭を抱えている内に何やら話が進んでいる様子!
「もし購入されるのでしたら私が責任を持って値引き交渉をさせて頂きます!」
「ではミレーヌ。購入ということで交渉はお願いするよ」
「はい!ライト様の為に必ずや値下げさせてみせます!」
「ははは!余り無茶な交渉にならないようにね!」
いつの間にやら購入まで決定していました……
横目で見たミレーヌさんは──ふふんっ!──とどこか勝ち誇った顔を私に向けています……
ですが───
「では……ライトさん。今日の所は私のお家でお休みくださいね……っと、そうだ!お夕飯の買い物を一緒に廻って頂いてもよろしですか?」
と言うや早く私はライトさんの腕を取り、商店街へと足早に歩きだすのでした───
ちなみに、後方に取り残したミレーヌさんをチラッと見れば───「ぐぬぬっ」───と悔しそうにしていました!
「えっ!家を───ですか……でしたら私が登録している商業ギルドへ向かいませんか?そこでなら情報を得られるはずです」
私達は食後のデザートであるキッシュと紅茶を頂きながら───
(このキッシュ!とってもおいしいです…アプルの酸味と甘みが程よく生地に馴染んでます!)
───今後の行動方針を決めることにしました!
まずは商業ギルドへ、そこで私のハーブを売却、その後職員に売り出されている家が何処かにないか情報を聞く、あるいは直接売ってもらう。
その後──「とりあえず今日のところは宿に泊まろうと思ってる」というライトさん……
(今日解散してしまったら…そのままお別れしてしまうかもしれない!何一つお礼してない!)
「あの!今日は私の家にいらっしゃいませんか?今日のその…お礼も兼ねて…」
と私は上目遣いでライトさんを見つめ……
「じゃあ…今日は…お世話になろう…かな…」
やりました!少々あざとかった気もしないでもないですが…やったもん勝ちです!問題ないでしょう!───と私は心の中でガッツポーズ
ってあれ?なんかライトさん…目は虚ろでボケっとしながら紅茶を啜ってます…本当はとても疲れているんじゃないでしょうか───なんて心配していると案の定
「ぶほっ!ごほっごほっ…」
ライトさんは咽て紅茶を吹き出しました!
「大丈夫ですか!?」と心配する私の声など聞こえていないかのように───
「だあああああ!もうっ!アンナ!行くよ!!」
「え?ええ?」
ライトさんは私の手を取り店を出て早歩きでどこかへと向かって歩きだしました…
って私たち…これから商業ギルドに向かうはずじゃ……
ギルドは反対方向なんですが……言った方がいいのでしょうか……と頭を悩ませていると──
「ごめんアンナ……手を引いて歩き出したはいいけど、俺は道がわからないんだった。あはは……はぁ」
「ふふっ。雷斗さんってホントに面白いです。それじゃ、選手交代ですね!行きますよ!」
「あはは!よろしく!」
今度は私がライトさんの手を引き、来た道を戻り、そのまま反対方向へと進みます──
チラッと振り返りライトさんを見ると……ちょっと落ち込んでます……なんか可愛いです!ここはフォローしてあげましょう!
「ふふっ…すいません。手を引かれるなんて余りなかったので、つい言いそびれてしまいました」──と微笑をライトさんに向け……(あふっ…やっぱり恥ずかしいです!)体温が上がっていくのを感じ……(今絶対顔が赤いです!間違いありません!一人になったら思い出して悶絶必至です!)
その後二人は無言で移動───
「着きましたよ!ライトさん!」
そう言う私の目の前には周囲とは少し違い、一言に言うと金がかかってそうな建物には…でかでかと【商業ギルド】と看板が出ている。
私はライトさんの手を引き、商業ギルドへと入っていきます!
「お…アンナか。今日もハーブ持ってきたのか?」
「おつかれ~アンナ~」
「アンナちゃんち~っす」
私はいつも通りギルドに入ると、そこに居る方々がいつものように笑いかけてくれます。
そんな方達全員ときちんと挨拶しながらライトさんをカウンターに案内しました。
順次待つこと数分。私達の番が来たので、カウンターの前に立ちハーブの精算をしてもらいます。
そして報酬を受け取った後……私は受付の女性にライトさんの件を相談します。
「あの……ミレーヌさん。今日は少し相談があって──」
と私はギルドの受付嬢をしているミレーヌさんに詳細を説明───するとなぜかカウンターから身を乗り出してボソッっと──{なに?アンナ…今日はやけにオメカシして…後ろの人は彼氏?}──などと言われ、それを全力で否定!
(私などがライトさんとお付き合いなんて……とても出来るわけがありません!)
「ちっ違います!私の後ろに居る方が家をお探しになっていて、良い処がないか相談に来たんです!」
私は肩を上下させ「はぁ…はぁ…」と荒い息を吐き一気に捲し立てます!
ミレーヌさんは「な~んだ。つまんない~」と一言いうと「んじゃ連れて来て~」と投げやりです!
ちょっとイラッと来ましたがライトさんの手前言い合いは印象を悪くしてしまいます……ここは我慢です!
私はライトさんへジェスチャーを送ると──私の所に移動してきてくれます。
「貴方が依頼人ってことでいいんですか?」
「はい。宜しければ家を紹介していただけますか?」
ミレーヌさんはライトさんを値踏みするように
見て────
「貴方はこの町の住人ではないようですが──失礼ですが、住民登録はお済みですか?または何処かのギルドに所属されたりはしていますか?」
とミレーヌさんの問いに少々困ったような……難しい顔をするライトさん。
すると彼は懐をまさぐり何かカードみたいな物を取りだしミレーヌさんに提示しました。
「ありがとうございます。拝見しても宜しいですか?」
ミレーヌさんは、そのカードを恭しく受け取り記載されている情報に目を通すと──みるみる顔色が青くなっていきました……一体どうしたというのでしょう?
するとミレーヌさんは頭をカウンターに叩きつける勢いで──ドカッ!──あぁ……叩きつけてます……痛そうな音がしましたが……
「ももも申し訳ございません!王都直轄の執行者様に向かっての無礼を何卒お許しください!」
「な……」
私の脳にも先ほどのミレーヌさんのドカッ!と同様の衝撃が走った───気がしました!
噂でしか聞いた事はありませんでしたが……王都直轄の執行者……実際に存在しているなんて……
なんでも執行者とは……善行を良しとして悪行を許さず、悪行を働く者を見れば裁きを下す──その判断は全て執行者が決める。
噂ではとても恐ろしく、恐怖の存在とされていましたが……
「あの……私……どうなっちゃうんですか……」
ああ……やはり先ほどの自分の態度が悪かったのを心配してか、ミレーヌさんは瞳に涙を浮かべ……小鹿のようにガクブルしています。
(ま……お気持ちはお察ししますが……自業自得ですね。ミレーヌさんの癖にライトさんに向かって身分証も持ってないんですか~?プークスッ!などと言ったのが運の尽きでした)
若干の脚色がない気もしないでもないですが……概ねミレーヌさんのヘマで間違いはないでしょう。
しかし…そんな怯えるミレーヌさんに彼はとても優しく微笑み──
「ああ──驚かせてすまない。別に怒ったりしてないから安心して欲しい……それでどうかな?家の方は?買える物件はある?」
「勿論です!執行者様のお願いを断るなんて怖──恐れ多いことはありません!直ぐに空き屋を調べてご案内致します!」
「ははは!そんなに畏まらなくていいよ。名前──ミレーヌって言ったかな?俺の事は気軽に雷斗で構わない。それじゃあ──そこの椅子で待ってるから宜しく頼む。」
「はい!ライト様がきっと気に入るような物件を探して来ます!」
なんてお優しいのでしょう!
ライトさんは怯えるミレーヌさんを気遣い優しく……それでいて気さくに話しかけてます!
そして会話を終えたミレーヌさんは奥へと疾風の如く駆けて行きました。
それを見送り私とライトさんはカウンターから離れて中央の椅子へと腰かけ、私はライトさんへ──
「ライトさんって王都の出なんですね!しかも執行者様だったなんて!だからあんなにも強かったんですね!色々と納得しました!」
と今日一の疑問が解決してスッキリした事を報告!
(しかし……こんなすごい方とお知り合いになれるなんて……今日は最悪から一転!最高の日です!)
思わず先ほど私を助けてくれたライトさんのシーンを思い出して「んふふっ♪」と声が漏れてしまいました!気付かれなかったでしょうか……
と……一人妄想に耽っていると───
奥からミレーヌさんが走って戻って来ました。
「ライト様!お待たせして申し訳ありません!」
「いやいや、そんなに待ってないから平気だよ」
と言うと彼は「そうそう……」と何かを思い出したかのように───
「ミレーヌ…それにアンナも聞いてくれ。俺が執行者だって言うことは本来内密にしなければならないんだ。なぜなら悪人を見掛けた場合、俺の正体が公にされていたら、俺を見た悪人が逃げたりして取り逃がす可能性もあるからね。
俺の事は王都の商人の子供で遊び人──とでもしておいてくれないかな?」
───だから3人だけの秘密だよ?───
と、私達に言い聞かせギルドから出て行きます。
しかし……(うう……私達だけの秘密……ライトさんと私だけの秘密……)
「はぅ……」
頬が……瞳が熱い……ライトさんは詐欺師の才能もありそうです……今なら結婚しよう!って言われたら……それが例え騙されていると知っていても……はい!って答えてしまう自信があります!
チラッと横を見ればミレーヌさんも「はぁ……」となにやら熱い吐息を漏らしています……どうやら彼女は私のライバルになるようですね……
と考えていると───
「ぶほっ!」
と急に吹き出すライトさんに私はこの邪な考えがバレたのではないかと驚く!
「?」
「ごめんごめん。何でもないんだ」
と何事もなかったかのように歩みを進める。
そうしてしばらく街を歩くと──
「着きました!ライト様!ここなんてどうですか?部屋数も多くキッチンやトイレ…お風呂も完備!裏手にはお庭もありますから、家庭菜園なども可能ですよ!
この物件のセールスポイントは、やはりお風呂です!
お風呂というのは一般人には縁遠い物ですから!」
と……どうです!すごいでしょ!という心の声が聞こえてくるかのようなミレーヌさんのドヤ顔……
別に……あなたがすごいんじゃないんですよ?
お風呂がすごいんですよ?勘違いしないでくださいね?
ってあぁ……なんか私……急に黒い感情が涌き出てくるようになってしまいました……
こんなの普段の私じゃありません!
と脳内で器用に頭を抱える───
「ミレーヌ。ここの値段はどれくらいするんだい?」
「そうですね…ここのお屋敷は只今白金貨10枚で売りに出されています。少々高いので買い手も付かず商業ギルドでも不良在庫になっているのが現状ですね」
「ふむ……」
と頭を抱えている内に何やら話が進んでいる様子!
「もし購入されるのでしたら私が責任を持って値引き交渉をさせて頂きます!」
「ではミレーヌ。購入ということで交渉はお願いするよ」
「はい!ライト様の為に必ずや値下げさせてみせます!」
「ははは!余り無茶な交渉にならないようにね!」
いつの間にやら購入まで決定していました……
横目で見たミレーヌさんは──ふふんっ!──とどこか勝ち誇った顔を私に向けています……
ですが───
「では……ライトさん。今日の所は私のお家でお休みくださいね……っと、そうだ!お夕飯の買い物を一緒に廻って頂いてもよろしですか?」
と言うや早く私はライトさんの腕を取り、商店街へと足早に歩きだすのでした───
ちなみに、後方に取り残したミレーヌさんをチラッと見れば───「ぐぬぬっ」───と悔しそうにしていました!
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