入れ替わった彼女

チャロコロ

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隠し事 1

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 10年以上会っていない上に、元々親しい訳ではなかったのでよそよそしい。
 「うん、久しぶりです。うん、うん……」
 佐々木は一つ一つ丁寧に相づちをうっていた。
 3分くらい話をしたところで、私に受話器を返した。話を終えたようだ。
 「突然びっくりしただろ?」
 おどけた振りをして受話器越しの遥に訊いた。
 「うん、びっくりした。佐々木君、私のこと覚えていてくれたみたいだし」
 「そりゃ忘れてないよ。それより、今日はもう遅いから帰ってもいいよ。
  明日何もないなら泊まっていってもいいけど」
 「うん、遅いから泊まらせてもらおうかな」
 「分かった、先に寝ててもいいから」
 「うーん、起きれたら起きてる」
 電話を切った直後に佐々木に両手を合わせた。
 「悪かったな。突然」
 「いや、嬉しかったよ。懐かしい声訊けたし、それに元気そうだったしな」
 佐々木は何か考え事をしているのか、何を話しても上の空だった。
 眼も覚めてきたので車に乗ると、エンジンをかけて高速に戻った。
 外の空気を吸えたことで気分転換になったので、自然と饒舌になる。
 佐々木とくだらない話をしていたが、佐々木は相変わらず口数が少なかった。
 断りなしに遥と話をさせたことで気分を害してしまったのかと思ったが、機嫌が悪くなったというより、ずっと考え事をしている顔をしていた。
 だが、30分もすると考え事に飽きたのか、再度強烈な眠気が襲ったのか、あるいはその両方なのか分からないが、眼が虚ろになっている。
 「もうすぐ着くから、少しくらい寝るの我慢しろよ」
 助手席から返事は返ってこない。既に眠りの世界に入ってしまったのだろうか?
 まあいいや。疲れもあるみたいだし、早く送っていってやろう。
 音楽のボリュームを絞ってハンドルを握り直すと、隣りからのいびきが耳に届いてきたが、すぐにその音に違和感を覚えた。
 いびきというより、ヒューヒューという苦しそうな呼吸音だ。
 路肩に車を止めて助手席を見ると、佐々木の顔は蒼白になって唇は紫色に乾燥していた。
 「おっ、おいっ?どうした……大丈夫かよ?」
 身体を揺らして呼びかけても、息苦しそうに呼吸をしているだけで反応が薄い。
 おかしい、明らかに容態が悪い。急性アルコール中毒か?
 いずれにせよ病院に連れて行く必要がありそうだ。近くにある総合病院に電話をして佐々木の名前と容態を伝えると、高速を下りて病院に急いだ。
 10分くらいで病院に到着して受付を済ませると、すぐに医師と看護師が佐々木のもとに駆け付けてきた。
 佐々木が満足な応対ができないので、私が代わりに簡単な問診に応えるとすぐに担架に乗せられて移動した。やっぱ都会の総合病院となると対応が早いんだな、と感心していると、一人の看護師がすぐに戻って来た。
 「佐々木さんはこれから緊急の手術をします」         
 彼女はそれだけを伝えると、私の返事を待たずに走り去っていった。
 おいおい、急性アルコール中毒で手術なんてするのか?思ったより大ごとになってしまった。
 手術が終わるまでは病院にいよう。遥に電話で事情を説明して先に寝るよう伝えると、病院のソファーにどかっと座った。
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