上 下
24 / 52

一抹の不安、破壊

しおりを挟む
またまたまたまた地図で示された場所まで歩き、遂に辿り着いた。
ゴブリンの時よりさらに森の奥で、さらに薄暗い。
やはり難易度が上がったということで雰囲気も上がっている。

「う~怖いです…」

メイが震えながら俺の腕を組んだ。
何か柔らかいものが当たっている気がする。

俺も怖いな~…女の人が……

「そろそろ来るよ。準備して」

王子はこちらを気にせず装備を着始めた。
俺はずっと着たまんまだから良いのだが一方の装備を着ていないメイは特に動く様子がない。

「メイは装備とかないの?」
「はい!そうなんですよ!!武器を高いの買っちゃってお金無くて…」

「その"武器"って?」

メイは両手を一度ズボンの中に入れ、また出した。

「これです!」

ズボンから現れた拳には、金属のトゲトゲしている物が装着されていた。

「…メリケンサックか……!」

俺は驚いた。
そんな物作れたんだという驚きも勿論あるが問題はそこでは無い。
防具も無しで…メリケンサックだけで戦えるのかという事だ。

やはり不安は残る。

そんな不安をよそにメイと王子は馬鹿みたいに武器を振り回している。

「かかってこんかい!」「やるぞ~」

不安だ。大丈夫かな。

「ウ゛ウ゛ウ゛」

!?!?

「わん!後ろだ!」

王子の掛け声で、後ろを振り向くとそこには、ゾンビが数匹ゆっくりとした歩みで近づいてきていた。
暗くてあまり分からないのだが、そのゾンビの後ろから何匹も歩み寄ってくるのが見える。

一体何匹いるんだ…

でもやることは変わらない。

「ヘヤッ!!」

俺は先頭の1匹に肩の辺りへ一撃を入れた。

よしっまずは1人!

「まだだよ!!」

前を向くと、変わらぬ姿勢でまだゆっくりと進んでいた。

これが…ゾンビか……

俺の背後で王子も戦闘に入っている。

「頭だ!頭を切り落とせば倒せるっぽい!」

なるほど…それだったら…!
頭を斬……

「ぐわッ」

俺は横に突き飛ばされた。
何だ?何が起こった?
体を起こし前を見ると、そこにはメイの後ろ姿が。

どうやら俺の身を案じ、メイが突き飛ばしてくれたようだ。
だが今度は…メイが危険にさらされる。

「メイ!危ない!」
「『破壊クラッシュ』」

メイの頭への打撃でゾンビの頭が宙を待った。
え、強~

「わんさん!私強くなったんですよ?見てて下さい!」

「『破壊クラッシュ』」
ぽーん
「『破壊クラッシュ』」
ぽーん
「『破壊クラッシュ』」
ぽーん

ゾンビの頭がボウリングのピンかのように弾け飛ぶ。
うん。ナイスストライク。

「やった~めっちゃ飛んだ~!!」

俺は…とんでもない娘を仲間に入れてしまったかもしれない。
……いい意味で……ね?

--続く
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

VRMMOを引退してソロゲーでスローライフ ~仲良くなった別ゲーのNPCが押しかけてくる~

オクトパスボールマン
SF
とある社会人の男性、児玉 光太郎。 彼は「Fantasy World Online」というVRMMOのゲームを他のプレイヤーの様々な嫌がらせをきっかけに引退。 新しくオフラインのゲーム「のんびり牧場ファンタジー」をはじめる。 「のんびり牧場ファンタジー」のコンセプトは、魔法やモンスターがいるがファンタジー世界で スローライフをおくる。魔王や勇者、戦争など物騒なことは無縁な世界で自由気ままに生活しよう! 「次こそはのんびり自由にゲームをするぞ!」 そうしてゲームを始めた主人公は畑作業、釣り、もふもふとの交流など自由気ままに好きなことをして過ごす。 一方、とあるVRMMOでは様々な事件が発生するようになっていた。 主人公と関わりのあったNPCの暗躍によって。 ※ゲームの世界よりスローライフが主軸となっています。 ※是非感想いただけると幸いです。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

戦闘職をしたくてVRMMOを始めましたが、意図せずユニークテイマーという職業になったので全力でスローライフを目指します

地球
ファンタジー
「え?何この職業?」 初めてVRMMOを始めようとしていた主人公滝沢賢治。 やろうと決めた瞬間、戦闘職を選んでいた矢先に突然出てきた職業は【ユニークテイマー】だった。 そのゲームの名はFree Infinity Online 世界初であるフルダイブ型のVRゲームであり、AIがプレイヤーの様子や行動を把握しイベントなどを考えられるゲームであった。 そこで出会った職業【ユニークテイマー】 この職業で、戦闘ではなくてスローライフを!! しかし、スローライフをすぐにはできるわけもなく…?

えっちのあとで

奈落
SF
TSFの短い話です

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件

こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。 だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。 好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。 これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。 ※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ

処理中です...