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73 理解。

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「意外と、同じ手順を繰り返すんですね」

 姑と上手くいかない者から、子育ての悩み、それこそ似た様な事が起きた者まで。
 本当に、対処は同じだった。

 繰り返し考えの悪癖を矯正し、あらゆる方向から根本の問題を咀嚼し。
 納得を得られる様にする。

 本来のカウンセリングの有るべき姿。
 家族が家族の問題に向き合うべき理由。

 納得さえ得られたなら、例え悲しい事でも苛立つ事でも、衝撃を減らせる。

 人も獣も、見慣れぬ謎の物体には恐怖心を抱く。
 なら、知れば良い、納得すれば謎は消える。

 車の運転で言うと、少し荒い運転をする車が目の前に居たとする。
 運転手か助手席の者がウ◯コが漏れそうなので、思わず運転が荒くなっているのかも知れない。

 そう考えられるだけで、驚きは減り、ゆとりが出来る。

 それと同じ事なのに。
 思考の悪癖は、そう直らない。

 簡単に直るなら、トラウマなんか無いのだし、怒りが湧くワケが無い。

 どんな事にでも、何かしらの見えない事情が有る筈。
 その事が念頭に有るなら、先ずは怒鳴るかキレる、なんて事は無い筈で。

 あぁ、ソレが許せ、か。
 いや飛躍し過ぎだろう、言葉の中抜きが酷過ぎる。

 段階を経れ。
 性急な理解を求めんなハゲ。

 消化吸収するには咀嚼が必要なんだ馬鹿が、クソ、クソ教師め。

 いや、ココもザル理論か。
 何でそんな事も許せないのか、と、目が粗過ぎて機能していない分際で何を。

 いや、ココは寧ろ可哀想に、か。
 目を細かくしたくても出来無いのだし、経験が蓄積せず苦しむは苦しむのだろうし。

《少しは納得出来た?》
「はい、かなり」

《ネネは本当に偉いよ、人の立場から言葉を鵜呑みにしない、何より多くの数を得ようとする。ネネ、貴族にも、王が言っている事だからと鵜呑みにする者は多いんだよ》
『はい、その通りです。複数の、しかも賛否を取り入れようとする、それは真面目で誠実で賢いから出来る事なんですよ』

《そうだよネネ、意外にもネネの周りには愚か者が多かった、だからこそ猫を被るのも上手かった》
『貶めたかった、そう思われても仕方が無いですよ、ネネ様はさぞ脅威だったでしょうから』

《友人知人と、政治や何かについて話した事は?》

「いいえ、向こうでは避けるべき事とされていたので」
『周囲で話していた者は居なかったんですか?』

 いや、有ったけれど、避けていた。
 けれど、それこそ人付き合いはこんなものなのかと。

 でも、話したかった。
 けど、逸らされて止めた。

「若干、その事は信じ始めています、なんせ付き合いが浅かったので」
『じゃあ悪人です、先ずはそう信じて下さい』
《悩んだら僕らに相談すれば良いんだよ、ネネはココで生きるんだよね?》

「はい、宜しくお願いします」

 少し前は価値観の違いに驚いていたけれど、根本に辿り着くと、寧ろ違いは無いに等しい。

 命とは何か、生きるとは何か。
 家族とは、国とは。

 綺麗に1本道が出来上がる。
 そうして道理、理屈を考えれば考える程、向こうでの常識とされている事に無理が有る。

 陰謀論が出てしまう理由が分かった。
 複雑化し、捻じ曲がり過ぎてしまっているから、見えない面積が増え陰謀が有る様に見える。

 実際に有るかも知れないけれど、気付いた者が正道から正すしか無い。
 頑張れ、お兄ちゃん、妹はコチラで頑張ります。



『共産主義、ですか』

 ネネ様が、急に話し合いに立ち会いたい、と。
 本当に、政治の話を向こうはしないんですね。

「はい、正直、成功例が見たかったんです」
《あぁ、虹の国の事だね》
『あぁ、でしたら未だに成功し続けている、と言えるかと。王族の完全な断絶、文化の不継承は起きていませんから』

「成程、どう思われますか」

『小国だからこそ、外資を獲得出来るからこそ、成立しているかと』
《そうだね、けれど隣国への手助けが出来無い、国としてはかなり不自由だと思うよ》

『そうですね、支援をする余力が無いと言う事は、結果として支援を受けられない事を承知しなければなりませんから』
《そうした事を避ける為、諸外国に支援をするには、今度は民の理解が必要となる》

『相応の教育レベルまで引き上げ続けなければ、自身の利益に直結しない事に賛同はしませんからね』
《自分達の医療費より高額を他国へ支援する、その事がいざと言う時の備え、保険になる事が理解出来無いからね》

『食糧、衣食住に関わる支援を即座に行って頂く為の保険。愚か者程、備えや保険を疎かにしますからね』
《幾ら立場が上な者に言われ様とも、理解出来る素地も無い、損としか思わない》

『そちらではどうしていますか?』
《敢えて不意の出来事に遭遇させ、良い見本として宣伝材料になって貰っているよ》

『やっぱり悲惨さを目の当たりにさせないと、ダメですよねぇ』
《そうだね、そしてあまりに理解しない者を排除させる権利も、保全させないとね》

 それは、寧ろ当然だと思うんですが。

「やっぱり、価値観の違いに感じますね」

『それは、悪い意味で、でしょうか』
「あぁ、いえ、初見でこの会話は面食らうかと。理解が浅いと、人権や命を軽視している様に思えますから」

『ネネ様、そうは思われてませんよね?』
「本来、既に有る善き命を優先すべき。ですけど産めよ増やせよで、善し悪しが混ざったまま国も成長してしまった。飢饉の際に老人を捨てる、姥捨て山は、確かに全員の為だったと思います」
《けれど、もう無いんだよね?》

「身内が殺す事件は有ります、どうしようも無くなり、老人が老人を殺してしまう。呆けてしまう病気もです、時に呆けた者が、相手を殺してしまう」

 確かに、向こうに魔獣や聖獣は居ない。
 なら、居ないなりの手段を。

 それを、諸外国に封じられた?

『どうしようも無くなって、でしょうか』

「私が知る事件では、それが怒りとなり現れ、不意に殺してしまった。コレは憶測ですが、自殺を止められた怒りも、有るかと、自己が崩壊する病でも有りますから」

『何故、どうして、壊れる事をそのままにするんだ』
「分かりませんが、私はそう推測しました」

『何故、どうして、そこまで生かすのでしょう』

 生きる事に喜びしか無いワケでは無い。
 時にはその時代では生き辛い者、そうなってしまう者も出る、そう知っている筈なのに。

「死は忌避すべき事、生きる事こそ至高、それが強く根付き育った。多分、戦争のせいです」
『戦争ともなれば、如何に殺すか、コチラがどれだけ生き残るか』

「勝てば正義、負ければ悪、あらゆる事を否定される事になってしまった」

 対話だけでは、解決出来無い状況に追い込まれてしまった。
 いや、意外と一部の暴走かも知れない。

『やはり戦争はダメですね』
「ですけど、戦争しないワケにはいかない状態に、追い詰められる場合も有ります」
《だからこそ、他国への支援は必須、なんだけれどね》

 あぁ、追い込まれ負けてしまい、占領され洗脳された。

「虹の国に関われないと聞きましたが」
『返済が終われば可能ですよね』
《そうだね、ネネはね、実は事業を計画しているんだよ》

『えっ、そうなんですか?』
「まだ話して無かったんですか?」
《反応を知りたいでしょ、はい、どうぞ》

「実はですね……」

 ネネ様は、先程の苦痛そうな顔から一転、とても楽しそうに話して下さいました。
 それもそうです、本当に楽しそうな案。

 しかも平和に経済を回せる、もしかすれば、教育にも良い影響を及ぼすかも知れない。
 とても、凄く良い案でした。
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