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44 悪魔2。
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各地で僕らの知る人種同様、先ずは敢えて領域を区切り、生息域を狭めた。
そして宗教を作り、法も。
そう、何もかも。
そしてその囲いの中、僕らと精霊が人種の姿を取り、世話をした。
途端に人種は増え始め、繁殖も安定した頃、前世の記憶を持つ人種が現れた。
それは星屑であったり、正に星の様に煌めく子もいた。
だからこそ、僕らは研究を続ける事にした。
「全く分かりません」
《改心を促すのも、悪しき根を絶つ事も、僕らの役目だからね》
『ココへ生まれ変わっている、と言う事は他へも生まれ変わっている、と言う事。そう大義名分を見付けてしまった』
《そう、関われる大義名分を、ね》
その頃にはもう、人種の存在を拒否するモノは僅か。
けれどそうしたモノ達へも配慮する事を約束し、人種の存在は完全に認められる事となった。
「何がそんなに良いんでしょうか」
『無垢な幼子は可愛い、それはどの種でも同じ事』
《弱く脆く、時に賢く愚かで強い。人種の定義は広い、その事も関係するかも知れないね》
「エルフ、とは、そんなにも一律なのでしょうか」
《人種に比べれば、僕らもかなり一律な方だね》
『そうですね、ソチラで言う人種の違い、そうした違いに似ています』
「それは、そう育てば、そうなるかと」
《そこだよ、僕らに世代交代は無い》
『役回りを定期的に変更し、均等に担う』
《四季、寿命、それらが有ってこそ年輪は形成される》
『私達に年輪は無い、そしてエルフの木目は薄く、人種には様々な木目が有る』
《僕らの不死は呪いであり祝福だと思っている、けれども他のモノに与えられては、それは不幸な事だと思っているよ》
「では、精霊の方は」
『私達は所謂、共同意識体。稀に分身や末端にかなりの個体差が出ますが、大元は大元。風は風に混ざり、雨は水に、時には結晶体へ、ですがそれら全てを受け入れる』
《けれど人種を受け入れるには、かなり時間が掛かっていたね》
『水を汚し森を焼く、なんて事は人種しかしませんからね』
「すみません」
《でも綺麗にするのも上手だし、新たに作り出す事も上手だ》
『大量殺戮破壊兵器も、ですけどね』
「仰る通りです、いつ滅ぼしますか」
《滅ぼさないよ、勿体無い。壊すのは簡単だけれど、全く同じモノを作り出す事は出来無い、例え神にでも無理な事》
「それは、どうなんでしょうか」
《全く同じモノを作り出せるなら、悪も悪魔も、差別も偏見も暴力も兵器も無い新たな世界を作れる筈。でも、君が居た世界は違うだろう?》
「それは、偶々」
《ほぼ同型の個体が幾つか来た事も有るし、幾つかの世界に行ったけれど、何某かの大量殺戮破壊兵器は存在していたよ。ただ、それが核か生物兵器か、作為的か偶発的発生かの差は有るけれど。全くの戦争無しに、人種が栄えた場所は無い》
「行き来が可能ですか」
《制限はかなり有るけれど、可能だよ、それこそ君の居た世界に行った事も有る》
「脱線しても宜しいでしょうか」
《構わないよ、息抜きも必要だからね。お菓子の味はどうかな?》
「コレ、母国で1度だけ食べた事が有るんですけど、それより美味しいです」
《龍髭飴だね、ありがとう、本場で修行した甲斐が有ったよ》
「まさか手作りとは」
《勿論、全て自作だよ、原材料からね》
「恐れ入ります」
《いや、それより手作りが嫌なら拒否してくれて構わないよ、家族の料理すら無理だとする子も居ると知っているからね》
「衛生管理がなされていれば大丈夫ですのでご心配無く」
《なら良かった、紅茶をどうぞ》
「ありがとうございます」
話の途中、同行者の姫様は何度か頷き、遂には眠ってしまった。
影さんの言う通りなら、会話を聞きながら思い出し、飽きて眠ってしまったのか。
若しくは、体が自動的に情報量を制限したか。
《それで、本題はどれかな》
「悪魔憑きについてお伺いしたいんですが」
《あぁ、困っている者は勿論、自称悪魔憑きに本当に取り憑いて何度か助けてはいるけれど。その証明は非常に難しいね》
「どう、助力しているんでしょうか」
彼曰く。
父親の子を妊娠してしまい、完全に錯乱しかけた少女を助けに、先ずは彼女が思い描く通りの悪魔の姿で目の前に現れたらしい。
そして実際に取り憑き、退魔師を呼び寄せる。
《そこで気が合いそうなら真実を話させるし、ダメそうなら退魔師を交代させる、それでもダメなら暴れて天の国への近道を作る》
「分かっていて、悪魔祓いと呼んでいるんですか」
《誰から悪魔を祓うか、だね》
「その、儀式が長く掛かる場合は」
《殆どが離縁への説得だね、腐っていても親は親、家族は家族。しかも家族を大切にと教えているし、どんな暴力を受けようとも、子は保護者に縋ってしまう。その説得の為、彼女達の言葉を操る事も有る》
「教会は味方だ、と言う事でしょうか」
《だからこそ、科学や遺伝子に手を出すなと忠告した、既に生まれている子供達の為にもね》
「殆どが、虐待ですか」
《いや、寧ろコレから先の不幸に耐えられず大量殺戮を計画する者や、無惨に亡くなる者だったり。逆に大きな幸運を受け入れる為の下準備、だったり、世論を動かす殺人鬼に誘導する事も有る。けれど干渉には限界が有る、幾人もの中、被害を最小限に留められる者へ誘導する事が限界だ。それ以上の干渉をしようとすれば、弾かれてしまう》
「つまり、神は居る、と」
《どの神かは分からないけれど、向こうにもココにも、一貫性の有る神は居ると思っているよ》
「一定の宗教の方には、耐えられ無さそうですが」
《そうだね、大概は拒絶、次に否定だね。君の国は寛容と言うか、柔軟性に富んでいると知っているし、君に否定も拒絶する理由も無いと分かっているしね》
「では何故、会話をするんでしょうか」
《コミュニケーションであり、答え合わせ、答え合わせは楽しいだろう》
作り話かも知れない。
それが全てか、一部か。
もし嘘なら、それは何故か。
「何故、そんなにも執着をするんでしょうか」
《そうしたモノだし、人種も僕らを好きだから、だね》
「天使でも有るとするなら」
《後世に出た対抗する天使とされるモノ、ロヴィア、それも僕だよ》
そこまでは流石に、向こうの情報と合っているのか分からない。
「すみません門外漢で、兄が居れば」
《スターライトを知っているだろう、幻の耐火物質》
「あ、姉から少しだけですが、はい」
《彼は悪用される事を恐れ、記録は残さなかったとされているけれど。寧ろ開発者はコチラから向こうへ転生した者、かも知れないとしたら、どうだろうか》
考えようとした瞬間、と言うか、もしもと考え出した瞬間。
完全に思考が停止した。
フリーズしたのは、もしかしたら初めてかも知れない。
と考えられると言う事は、コレは一瞬のリミッターかも知れない。
『そう試し、愛していると言う、私達には相変わらず理解し難い』
《出来るだろうモノへ更に科す、それを分かり易い言葉で伝えるかどうか、大した差は無いと思うけれどね》
偏見を多分に含んでいるだろうけれど、まるでフランス人とイギリス人の様だ。
そして、天使と悪魔に見える。
『あぁ、私達は天使と言う役目は負ってはいませんよ。そうした者達により疎まれた、原始の精霊、と言う存在の集合体に過ぎない。ただ恵みだけを齎し、人種の為だけに天候を変更する、そうしたモノは既にココには居ません』
「寧ろ、風神雷神に近いのでしょうか」
『そうですね、それらも私達の一部、アナタ達には馴染みが有るかと』
天の恵み、天の脅威。
その現象に対し、機嫌が悪かった、気紛れに助けられた。
と思えるかどうかで、アイデンティティの丈夫さが変わる、と兄は言っていた。
もし、今そうでなければ、発狂してしまうんだろうか。
生まれに恵まれているせいか、アイデンティティが揺らぐ事すら全く分からないが。
SAN値が削られる、とかそう表現しそうな。
あぁ、そうだ、ユノちゃんへ魔法を教えたモノの存在についても聞かないと。
「あの、ニャル」
《その名はあまり、北欧のトリックスター同様、それらの名はあまり口にしない方が良い》
『ですが呼び名が無いのは不便です、ココではハワードのC、又はCのNと呼んでいます』
「何故、でしょうか」
《僕らとしては、CのNの母体は、北欧のトリックスターだと考えているんだ》
『アレはココにも存在しているだろう、そして私達の目をかいくぐり、何かしらの干渉してをいるのではと考えています』
《例えば、人種にだけ星の子の生まれ変わりが現れる事や、今回の様な例外が起きると特にね。僕らは本来は綿密さ、精密さを重視し、例外を良しとしない》
『神経質さが私達とは違う所ですね』
「では、CのNは」
《それは別の時に、整理したいだろう、次はもう1人も連れて来てくれて構わないよ》
『補助を付けましょう、どれか選びなさい』
人は、何種類かを並べられると、ついつい断る事を忘れ選んでしまいがちだ。
私は、選んでしまった。
《で、この空を飛ぶ親指サイズの白い牡鹿ちゃんを選んだ、って事?》
「面目ない」
ネネちゃんが吐き出す様に言った瞬間、牡鹿ちゃんは瞬きの間に妖精の姿になると、顔を抑えるネネちゃんの頭へ向かい。
《あの》
「ひっ、何、今の」
『星の子よ、未だに私達をも疑うなら、先ずは正しく問いなさい』
「その正しい問いが難しいのですが」
『回数に制限は無く、時間の限りも無いのです、遠慮は要りませんよ』
《では私から》
『良いでしょう、どうぞ』
《精霊は正直ですか?》
『アナタ達に限り、正直に言います』
「何故」
『神代だからこそ、やり取りにおいて私達は敢えて答えを伏せていたに過ぎない。アナタ達は人種、しかも多様な表現が存在する国の者、言葉の方が早い時代の者だからです』
「イワナガヒメをご存知ですか」
『醜さ故に選ばれなかったモノ、では醜さとは何か、それは他とは少し違うモノだったからに違い無い。その違い、とは、星の子であったのでしょう』
星の子って事は、転移転生者って事?
「では、かぐや姫は」
『彼女も、そして星では無く月の子、と自ら名乗った。星ではあまりに抽象的過ぎる事、月は当時の者には身近であった事から、月に戻る定めなのだと明言した』
《成程》
『そしてイワナガヒメも又、帰還を願っていた。うつけ者を装い、知恵を授ける事をせず、長命の約束を叶えず国へと帰った』
《おぉ、それっぽい》
「確かめる術が無いんですが」
『所詮は又聞き、仮説と思ってくれて構いません。ココの成り立ちからして、既にソチラとは随分と違うのだから』
《あ、最古の記憶は?》
『私達は雨で、風で、名も無く好きに存在していた。そこに明確な意志は無く、役割も無く、全てに喜びを感じていた』
そして宗教を作り、法も。
そう、何もかも。
そしてその囲いの中、僕らと精霊が人種の姿を取り、世話をした。
途端に人種は増え始め、繁殖も安定した頃、前世の記憶を持つ人種が現れた。
それは星屑であったり、正に星の様に煌めく子もいた。
だからこそ、僕らは研究を続ける事にした。
「全く分かりません」
《改心を促すのも、悪しき根を絶つ事も、僕らの役目だからね》
『ココへ生まれ変わっている、と言う事は他へも生まれ変わっている、と言う事。そう大義名分を見付けてしまった』
《そう、関われる大義名分を、ね》
その頃にはもう、人種の存在を拒否するモノは僅か。
けれどそうしたモノ達へも配慮する事を約束し、人種の存在は完全に認められる事となった。
「何がそんなに良いんでしょうか」
『無垢な幼子は可愛い、それはどの種でも同じ事』
《弱く脆く、時に賢く愚かで強い。人種の定義は広い、その事も関係するかも知れないね》
「エルフ、とは、そんなにも一律なのでしょうか」
《人種に比べれば、僕らもかなり一律な方だね》
『そうですね、ソチラで言う人種の違い、そうした違いに似ています』
「それは、そう育てば、そうなるかと」
《そこだよ、僕らに世代交代は無い》
『役回りを定期的に変更し、均等に担う』
《四季、寿命、それらが有ってこそ年輪は形成される》
『私達に年輪は無い、そしてエルフの木目は薄く、人種には様々な木目が有る』
《僕らの不死は呪いであり祝福だと思っている、けれども他のモノに与えられては、それは不幸な事だと思っているよ》
「では、精霊の方は」
『私達は所謂、共同意識体。稀に分身や末端にかなりの個体差が出ますが、大元は大元。風は風に混ざり、雨は水に、時には結晶体へ、ですがそれら全てを受け入れる』
《けれど人種を受け入れるには、かなり時間が掛かっていたね》
『水を汚し森を焼く、なんて事は人種しかしませんからね』
「すみません」
《でも綺麗にするのも上手だし、新たに作り出す事も上手だ》
『大量殺戮破壊兵器も、ですけどね』
「仰る通りです、いつ滅ぼしますか」
《滅ぼさないよ、勿体無い。壊すのは簡単だけれど、全く同じモノを作り出す事は出来無い、例え神にでも無理な事》
「それは、どうなんでしょうか」
《全く同じモノを作り出せるなら、悪も悪魔も、差別も偏見も暴力も兵器も無い新たな世界を作れる筈。でも、君が居た世界は違うだろう?》
「それは、偶々」
《ほぼ同型の個体が幾つか来た事も有るし、幾つかの世界に行ったけれど、何某かの大量殺戮破壊兵器は存在していたよ。ただ、それが核か生物兵器か、作為的か偶発的発生かの差は有るけれど。全くの戦争無しに、人種が栄えた場所は無い》
「行き来が可能ですか」
《制限はかなり有るけれど、可能だよ、それこそ君の居た世界に行った事も有る》
「脱線しても宜しいでしょうか」
《構わないよ、息抜きも必要だからね。お菓子の味はどうかな?》
「コレ、母国で1度だけ食べた事が有るんですけど、それより美味しいです」
《龍髭飴だね、ありがとう、本場で修行した甲斐が有ったよ》
「まさか手作りとは」
《勿論、全て自作だよ、原材料からね》
「恐れ入ります」
《いや、それより手作りが嫌なら拒否してくれて構わないよ、家族の料理すら無理だとする子も居ると知っているからね》
「衛生管理がなされていれば大丈夫ですのでご心配無く」
《なら良かった、紅茶をどうぞ》
「ありがとうございます」
話の途中、同行者の姫様は何度か頷き、遂には眠ってしまった。
影さんの言う通りなら、会話を聞きながら思い出し、飽きて眠ってしまったのか。
若しくは、体が自動的に情報量を制限したか。
《それで、本題はどれかな》
「悪魔憑きについてお伺いしたいんですが」
《あぁ、困っている者は勿論、自称悪魔憑きに本当に取り憑いて何度か助けてはいるけれど。その証明は非常に難しいね》
「どう、助力しているんでしょうか」
彼曰く。
父親の子を妊娠してしまい、完全に錯乱しかけた少女を助けに、先ずは彼女が思い描く通りの悪魔の姿で目の前に現れたらしい。
そして実際に取り憑き、退魔師を呼び寄せる。
《そこで気が合いそうなら真実を話させるし、ダメそうなら退魔師を交代させる、それでもダメなら暴れて天の国への近道を作る》
「分かっていて、悪魔祓いと呼んでいるんですか」
《誰から悪魔を祓うか、だね》
「その、儀式が長く掛かる場合は」
《殆どが離縁への説得だね、腐っていても親は親、家族は家族。しかも家族を大切にと教えているし、どんな暴力を受けようとも、子は保護者に縋ってしまう。その説得の為、彼女達の言葉を操る事も有る》
「教会は味方だ、と言う事でしょうか」
《だからこそ、科学や遺伝子に手を出すなと忠告した、既に生まれている子供達の為にもね》
「殆どが、虐待ですか」
《いや、寧ろコレから先の不幸に耐えられず大量殺戮を計画する者や、無惨に亡くなる者だったり。逆に大きな幸運を受け入れる為の下準備、だったり、世論を動かす殺人鬼に誘導する事も有る。けれど干渉には限界が有る、幾人もの中、被害を最小限に留められる者へ誘導する事が限界だ。それ以上の干渉をしようとすれば、弾かれてしまう》
「つまり、神は居る、と」
《どの神かは分からないけれど、向こうにもココにも、一貫性の有る神は居ると思っているよ》
「一定の宗教の方には、耐えられ無さそうですが」
《そうだね、大概は拒絶、次に否定だね。君の国は寛容と言うか、柔軟性に富んでいると知っているし、君に否定も拒絶する理由も無いと分かっているしね》
「では何故、会話をするんでしょうか」
《コミュニケーションであり、答え合わせ、答え合わせは楽しいだろう》
作り話かも知れない。
それが全てか、一部か。
もし嘘なら、それは何故か。
「何故、そんなにも執着をするんでしょうか」
《そうしたモノだし、人種も僕らを好きだから、だね》
「天使でも有るとするなら」
《後世に出た対抗する天使とされるモノ、ロヴィア、それも僕だよ》
そこまでは流石に、向こうの情報と合っているのか分からない。
「すみません門外漢で、兄が居れば」
《スターライトを知っているだろう、幻の耐火物質》
「あ、姉から少しだけですが、はい」
《彼は悪用される事を恐れ、記録は残さなかったとされているけれど。寧ろ開発者はコチラから向こうへ転生した者、かも知れないとしたら、どうだろうか》
考えようとした瞬間、と言うか、もしもと考え出した瞬間。
完全に思考が停止した。
フリーズしたのは、もしかしたら初めてかも知れない。
と考えられると言う事は、コレは一瞬のリミッターかも知れない。
『そう試し、愛していると言う、私達には相変わらず理解し難い』
《出来るだろうモノへ更に科す、それを分かり易い言葉で伝えるかどうか、大した差は無いと思うけれどね》
偏見を多分に含んでいるだろうけれど、まるでフランス人とイギリス人の様だ。
そして、天使と悪魔に見える。
『あぁ、私達は天使と言う役目は負ってはいませんよ。そうした者達により疎まれた、原始の精霊、と言う存在の集合体に過ぎない。ただ恵みだけを齎し、人種の為だけに天候を変更する、そうしたモノは既にココには居ません』
「寧ろ、風神雷神に近いのでしょうか」
『そうですね、それらも私達の一部、アナタ達には馴染みが有るかと』
天の恵み、天の脅威。
その現象に対し、機嫌が悪かった、気紛れに助けられた。
と思えるかどうかで、アイデンティティの丈夫さが変わる、と兄は言っていた。
もし、今そうでなければ、発狂してしまうんだろうか。
生まれに恵まれているせいか、アイデンティティが揺らぐ事すら全く分からないが。
SAN値が削られる、とかそう表現しそうな。
あぁ、そうだ、ユノちゃんへ魔法を教えたモノの存在についても聞かないと。
「あの、ニャル」
《その名はあまり、北欧のトリックスター同様、それらの名はあまり口にしない方が良い》
『ですが呼び名が無いのは不便です、ココではハワードのC、又はCのNと呼んでいます』
「何故、でしょうか」
《僕らとしては、CのNの母体は、北欧のトリックスターだと考えているんだ》
『アレはココにも存在しているだろう、そして私達の目をかいくぐり、何かしらの干渉してをいるのではと考えています』
《例えば、人種にだけ星の子の生まれ変わりが現れる事や、今回の様な例外が起きると特にね。僕らは本来は綿密さ、精密さを重視し、例外を良しとしない》
『神経質さが私達とは違う所ですね』
「では、CのNは」
《それは別の時に、整理したいだろう、次はもう1人も連れて来てくれて構わないよ》
『補助を付けましょう、どれか選びなさい』
人は、何種類かを並べられると、ついつい断る事を忘れ選んでしまいがちだ。
私は、選んでしまった。
《で、この空を飛ぶ親指サイズの白い牡鹿ちゃんを選んだ、って事?》
「面目ない」
ネネちゃんが吐き出す様に言った瞬間、牡鹿ちゃんは瞬きの間に妖精の姿になると、顔を抑えるネネちゃんの頭へ向かい。
《あの》
「ひっ、何、今の」
『星の子よ、未だに私達をも疑うなら、先ずは正しく問いなさい』
「その正しい問いが難しいのですが」
『回数に制限は無く、時間の限りも無いのです、遠慮は要りませんよ』
《では私から》
『良いでしょう、どうぞ』
《精霊は正直ですか?》
『アナタ達に限り、正直に言います』
「何故」
『神代だからこそ、やり取りにおいて私達は敢えて答えを伏せていたに過ぎない。アナタ達は人種、しかも多様な表現が存在する国の者、言葉の方が早い時代の者だからです』
「イワナガヒメをご存知ですか」
『醜さ故に選ばれなかったモノ、では醜さとは何か、それは他とは少し違うモノだったからに違い無い。その違い、とは、星の子であったのでしょう』
星の子って事は、転移転生者って事?
「では、かぐや姫は」
『彼女も、そして星では無く月の子、と自ら名乗った。星ではあまりに抽象的過ぎる事、月は当時の者には身近であった事から、月に戻る定めなのだと明言した』
《成程》
『そしてイワナガヒメも又、帰還を願っていた。うつけ者を装い、知恵を授ける事をせず、長命の約束を叶えず国へと帰った』
《おぉ、それっぽい》
「確かめる術が無いんですが」
『所詮は又聞き、仮説と思ってくれて構いません。ココの成り立ちからして、既にソチラとは随分と違うのだから』
《あ、最古の記憶は?》
『私達は雨で、風で、名も無く好きに存在していた。そこに明確な意志は無く、役割も無く、全てに喜びを感じていた』
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