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βの世界。
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「あのー」
『コレが例の、組織の報告係だ』
《どうも、組織の報告係です》
「どうも」
『コッチは、知らない』
「あ、スイカ食べます?」
花衣ちゃんにちょっと似てる子と、ギラギライライラしてる男の人は多分、α。
嫌だな、花衣ちゃんの近くに居て欲しく無いかも。
『余ったら私が食べる』
《あ、なら私も、好きなんですよスイカ》
「あ、じゃあ切ってきますけど、ちょっと良い?花衣ちゃん」
『あぁ、手伝う』
どうやら組織は敵じゃなかったみたいだけど。
どうしたんだろ、と言うか、報告係の人ちょっと汚れてるのは。
「あ、もしかして乱闘でも有った?大丈夫?」
『あぁ、いや、アレには少し軒下に落ちた物を取って貰っただけなんだ』
「あ、そう、良かった。塩も持って行った方が良いかな」
『だな』
持って行ったけど。
スイカの咀嚼音と、偶に風鈴が鳴ってるだけで。
「凄い、気まずい」
《あぁ、失礼しました、美味しいスイカですね》
「おばさんと植えたんです、2年目の、スイカなんです」
《大変申し訳御座いませんでした、既に処理中ですが、この事は》
『で、他には何、って言うかコレどうすんの』
「花衣ちゃんの従姉妹?」
《そうですね、そんな感じです》
「そっか、僕はたか」
『で』
《資料請求をして頂ければご用意させて頂きます、そして活用方法を提案して頂ければ、後は全てコチラで処理致します》
「へ?」
『どうやら、私はそうした事を行う後任にされたらしい』
《はい、前任者様は既に危篤状態、断る事は不幸を招きます》
「え、断ると」
《アナタも不幸になります》
「あ、ごめんね、僕の」
『君が謝る事は無い、寧ろコレは私の』
《後任を断ればアナタだけでは無く、関わる者全てが不幸となります》
「あの、その仕事、僕に何か手伝える事って」
《沢山、御座いますよ》
「受けよう花衣ちゃん、僕らが適任、他に任せると花衣ちゃんが担うより不幸になるって事でしょ?」
『あぁ、そう言う事か』
《はい》
『はぁ』
「僕に出来る事が沢山有るって言うし、応援するし手伝う、一緒に頑張ろう」
《良き番を選ばれましたね》
「ふふ、ありがとうございます」
『先ずは2人の全ての情報』
《コチラです、どうぞ》
紙媒体だ、珍しい。
「あ、住む場所って」
《何処でも構いませんよ》
「ココでも?」
《はい》
「けど」
『ココで良いならココに住み続ける』
《了解しました》
『はぁ、読み終える迄には時間が掛かる、その2人を確保し隔離。暫定的に処分保留』
《はい、では、参りましょう》
ずっと黙ったままで、麦茶だけ飲んで帰って行った。
顔合わせ、とかなのかな。
「スイカがお昼ご飯になっちゃったね」
『ヤダ、おにぎりと卵焼きとソーセージ食べたい』
「直ぐに用意するね」
結局、親は生きていた。
コレは何年も前から計画されていた事だった
私以外にも、アレ以外にも親の遺伝子が組み込まれた両性具有は居るらしい。
けれどそれは本当に、どうなるかの観察だけ。
子の居ない夫婦にただ授けては、もしかすれば蔑ろにするから、と。
で、折角なら賢い者の元に、疎かにしない様にと少しの使命を与えただけ。
子の最適な番を選ぶ使命、だけ。
後任は全国民全てが候補。
カビを恐れず共存を選ぶ者、良き番を選べた者、そして最低限の知能を有している事が大前提らしい。
そして、何でアレがクソ野郎の元に居るかと言うと、本当に偶然らしい。
胎内に戻す胚の取り違えが起きたので、出産まで様子見をし、取り違えを装い元の組み合わせに戻した。
そしてあの子が成長した段階で、敢えて取り違えが起きたと家に入り込ませたらしい。
そこそこの家の、そこそこな人間だけれどクソなので、組織はアレを餌に更に釣りをしていた。
そうして釣れたのが、全世界αΩ化計画を信念とする組織、この組織は本当に存在する。
潰しても潰しても似た様な組織が作られる為、敢えて温存させる方針で、危ないのは定期的に排除が慣例となっている。
で、そのクソ組織の関係者が、あのα男。
本気でΣを排除し、ハーレムが築きたかったらしく、既に番が居る。
なので、番と共に、発情専用器具となって貰う事になった。
Ωには悪いが、愚かなαと番った罰だ。
今までの教育や手間暇を無駄にした罰として、他者を発情させる専用の生き物として何某かの施設に配置予定だ。
『永久』
「ん?」
『もし悪いαとΩが居て、けど皆の為に発情させる専用の生き物になるって言われたら、どう配置する?』
「んー、地下墓地的な場所に埋める、とか?」
『フェロモンは空気より重いよ』
「あー、じゃあ、ピラミッドの頂点?」
『あぁ、確かに、上程に効果が高いだろうしな』
「羨ましいなぁ、まだ発情期来ないんだよね」
手を出せば直ぐかも知れない。
けれども、この子はまだ未成年。
『その分、いっぱい溜まってそうだね』
「確かに、直ぐに花衣ちゃんに赤ちゃんが出来ちゃうかもね」
可愛い、堪らなく可愛い。
私を好きになるしか無い環境なのに、寧ろ喜んで適応しようとしてくれた、そして今でも。
大役を任されても。
いや、彼込みで私は後任に選ばれた、それすらも彼は喜んで受け入れている。
嬉しい、可愛い、守りたい。
《お邪魔致します》
「あ、報告係さん」
『本当に邪魔だなおい』
《コチラが今回の報告です》
違法薬物、か。
新薬の事も有るんだ、コッチを先に処理すべきだろうな。
あぁ、こうして愚か者の処分も、となるのか。
けれど人口にあまり影響は与えてはならない、過激な排除方法は恨みを生む、コレは確かにモラルが必要とされるな。
それに穏やかさと、アクロバティックさ。
ピラミッドの案は良い、嘗ての有名観光地の様な宿泊施設を作って貰おう。
『取り合えずはこの案を』
《はい》
「あ、今年最後のスイカ、食べます?」
《はい、ありがとうございます》
新薬の噂が流れると同時に、おかしな薬物が現れた。
カビの影響分類をランダムで変えられる薬だ、と粗悪な幻覚剤が出回り始めたらしい。
困る、俺の番に何か有っては。
「お前、絶対に使うなよ」
『えー?でも直ぐにΩ化出来るかもなんだよ?』
「つか俺はα予定なんだし、そっちは女なんだから別に」
『いっぱい欲しくないの?』
「欲しいが邪道はダメだ、しかもハズレたら粗悪な幻覚剤」
『それそれ、面白そうじゃん』
「マジで最悪は死ぬからな」
『冗談、使わないよ』
俺は両性具有なせいか、未だにどの数値も閾値に達しない、未分化状態だ。
少なくともΣになる事はないらしいが、0じゃない。
だが、Σやβになれば、俺の未発達な下半身はこのままかも知れない。
幸いにも幼馴染が相性も良いからこそ、βと言えど番になると言ってくれているが。
もし、彼女がΩ化しても俺がこのままなら。
「なぁ」
『あ、友達から、ちょっと待ってて』
「おう」
俺の番予定は可愛い。
俺の為にとお洒落に気を使い、俺の為にΩ化の情報に敏感になってくれている、だからこそ。
『ごめん、情報収集してくる』
「すまん、ありがとう」
「いえいえ、じゃ、またね」
『おう』
抱けば分化が進む可能性が有るらしい、けれど俺達はまだ未成年。
それに、抱くも何も。
いや、どの道もう半年で成人、結婚出来る年になるんだ。
もう少し、もう少しだ。
『それがさ、もう、こんなサイズなの』
《まさに子供サイズじゃない》
『でしょ、だからコッチが好き』
《もう溜まっちゃったの?》
『それもだし、このままで結婚とか、マジで無理じゃん』
《コレ、使ってみる?》
『それ、もしかして例の?』
《裏では、既に新薬は出来てて、もう表に出ちゃったから。同じ見た目のヤバい薬も流してるらしいよ》
『あー、ぽいぽい。本当に好きだよね、都市伝説とか陰謀論』
《まぁ、コレ幻覚剤なんだけどね》
『それさ、マジで飛べるの?』
《飛べるわよ、しかも飲んでからするとマジで飛べるの、どうする?》
『するする』
《はい、その水あげる、新しいの持ってくるけど何が良い?》
「炭酸ー」
《了解》
私も両性具有なんだけど、バレて無いのが悲しいわ。
しかも私の番予定を傷付けようとするわ、こうして浮気するわ違法薬物に手を出すわ、アホでバカであまりにも忌々しい。
けど、やっと解放される。
『ねー、まだー?』
《はいはい、効いて来た?》
『ふふ、あは、かも』
《ベランダに出ると凄く気持ち良いらしいよ》
『あー、空綺麗』
《柵ギリギリはどう?》
『良いねー』
《羽ばたいて》
『おー、あはは』
《さ、跳び箱を飛んで》
邪魔者が消えてくれたし、やっと会える。
私の番予定に。
「アナタの、部屋で」
《はい、前からΩ化の相談を受けてて。なのに、ごめんなさい、まさか薬に手を出すだなんて》
この人は一体、どっちなんだろうか。
男なのか、女なのか。
「いえ、ある意味、俺のせいなので」
《それは無いわよ、私だって注意したのに、その後に。ごめんなさい》
良い匂いがする。
香水なんだろうか。
「いえ」
《良いの、怒るなり何なりして貰った方が、却って楽だから》
「あ、いや、いえ。すみません、こうなるかもとは、思っていたので」
《その、少し、楽天家だったものね》
「はい」
《そこが良かっ、ごめんなさい、もう帰るわね》
「あ、送ります、アナタΩですよね」
《残念だけど違うの、でもありがとう、良く女αに間違われるから嬉しいわ》
「間違われるって、じゃあ」
《あ、少し複雑だから、説明が難しいのよね》
「俺」
《また、会った時にね。ほら、今は気が動転してるでしょうから》
「あ、はい」
《じゃあ》
「あの、連絡先を良いですかね」
《勿論》
もし、この人がそうなら、俺と同じなら。
コレは運命かも知れない。
《今回の報告です》
例のおっさんは治験体として、違法薬物の犠牲となった。
異常行動からの、自死とも言える事故死、壁に頭を下げ打ち付け死亡。
そしてコレは。
『永久、読む?』
「うん」
『かなり珍しい事例だね』
「へー、両性具有同士かぁ」
コレは私は今回、全く感知していない事だった。
もう少し、他に興味を広げるべきかも知れない。
『あ、コッチは殆ど違うやつ』
「えー、じゃあどうなったか分からないんだ」
『コッチに番ったてあるよ、妊娠中らしい』
「そっか、良かったね」
結果は兎も角、コレは大問題だ。
新薬の噂に便乗し、β男をΩ化され奪われたβ女の復讐から、違法薬物が出回っていた。
そこに更に私と同類の、両性具有が絡んでいる。
だが、組織は全くの無関係だ、と。
仮に信じるとしても、何故、調査を。
あぁ、例の財閥関連か。
しかも組織が敢えて関わらないとしている地区、ある意味で特区での出来事。
東京のとある地区は坩堝だと聞いていたが、コレか。
『12枚目の追加情報が欲しい、それにどうしてなのかも』
《少し飛んで15枚目に》
大事件、大事故に関わる場合は例外とし、けれど必ずしも手を出す義務は無い。
多様性を尊重する為、敢えて手付かずの自然と同様に保護されるべき区画だ、と。
『この15枚目に関わる重要案件は』
《コチラです》
新薬、やはり既に完成していたのか。
しかもテロ計画まで。
『既に着手済みでも被害を最小限に、良い機会だとは思うが、出来るだけ救う方向で。追加情報が有れば随時回して欲しい』
《では、発表には賛成と言う事で》
『出来るだけ遅らせ準備したいが、機会を逃したくは無い。想定される状況の報告、いや関連事項全てだ』
《畏まりました》
『一先ずは、以上だ』
《はい、では》
「何か、凄い事が起こる?」
『良い事がね』
それと同時に不幸も起こるだろう。
被害は最小限に、効果は最大に。
悲しむ者を減らし、幸福を増やす。
難しい、永久が居なければ私とはとっくに折れていただろう。
「大丈夫、花衣ちゃんは間違えない」
『だと良いんだがな』
『コレが例の、組織の報告係だ』
《どうも、組織の報告係です》
「どうも」
『コッチは、知らない』
「あ、スイカ食べます?」
花衣ちゃんにちょっと似てる子と、ギラギライライラしてる男の人は多分、α。
嫌だな、花衣ちゃんの近くに居て欲しく無いかも。
『余ったら私が食べる』
《あ、なら私も、好きなんですよスイカ》
「あ、じゃあ切ってきますけど、ちょっと良い?花衣ちゃん」
『あぁ、手伝う』
どうやら組織は敵じゃなかったみたいだけど。
どうしたんだろ、と言うか、報告係の人ちょっと汚れてるのは。
「あ、もしかして乱闘でも有った?大丈夫?」
『あぁ、いや、アレには少し軒下に落ちた物を取って貰っただけなんだ』
「あ、そう、良かった。塩も持って行った方が良いかな」
『だな』
持って行ったけど。
スイカの咀嚼音と、偶に風鈴が鳴ってるだけで。
「凄い、気まずい」
《あぁ、失礼しました、美味しいスイカですね》
「おばさんと植えたんです、2年目の、スイカなんです」
《大変申し訳御座いませんでした、既に処理中ですが、この事は》
『で、他には何、って言うかコレどうすんの』
「花衣ちゃんの従姉妹?」
《そうですね、そんな感じです》
「そっか、僕はたか」
『で』
《資料請求をして頂ければご用意させて頂きます、そして活用方法を提案して頂ければ、後は全てコチラで処理致します》
「へ?」
『どうやら、私はそうした事を行う後任にされたらしい』
《はい、前任者様は既に危篤状態、断る事は不幸を招きます》
「え、断ると」
《アナタも不幸になります》
「あ、ごめんね、僕の」
『君が謝る事は無い、寧ろコレは私の』
《後任を断ればアナタだけでは無く、関わる者全てが不幸となります》
「あの、その仕事、僕に何か手伝える事って」
《沢山、御座いますよ》
「受けよう花衣ちゃん、僕らが適任、他に任せると花衣ちゃんが担うより不幸になるって事でしょ?」
『あぁ、そう言う事か』
《はい》
『はぁ』
「僕に出来る事が沢山有るって言うし、応援するし手伝う、一緒に頑張ろう」
《良き番を選ばれましたね》
「ふふ、ありがとうございます」
『先ずは2人の全ての情報』
《コチラです、どうぞ》
紙媒体だ、珍しい。
「あ、住む場所って」
《何処でも構いませんよ》
「ココでも?」
《はい》
「けど」
『ココで良いならココに住み続ける』
《了解しました》
『はぁ、読み終える迄には時間が掛かる、その2人を確保し隔離。暫定的に処分保留』
《はい、では、参りましょう》
ずっと黙ったままで、麦茶だけ飲んで帰って行った。
顔合わせ、とかなのかな。
「スイカがお昼ご飯になっちゃったね」
『ヤダ、おにぎりと卵焼きとソーセージ食べたい』
「直ぐに用意するね」
結局、親は生きていた。
コレは何年も前から計画されていた事だった
私以外にも、アレ以外にも親の遺伝子が組み込まれた両性具有は居るらしい。
けれどそれは本当に、どうなるかの観察だけ。
子の居ない夫婦にただ授けては、もしかすれば蔑ろにするから、と。
で、折角なら賢い者の元に、疎かにしない様にと少しの使命を与えただけ。
子の最適な番を選ぶ使命、だけ。
後任は全国民全てが候補。
カビを恐れず共存を選ぶ者、良き番を選べた者、そして最低限の知能を有している事が大前提らしい。
そして、何でアレがクソ野郎の元に居るかと言うと、本当に偶然らしい。
胎内に戻す胚の取り違えが起きたので、出産まで様子見をし、取り違えを装い元の組み合わせに戻した。
そしてあの子が成長した段階で、敢えて取り違えが起きたと家に入り込ませたらしい。
そこそこの家の、そこそこな人間だけれどクソなので、組織はアレを餌に更に釣りをしていた。
そうして釣れたのが、全世界αΩ化計画を信念とする組織、この組織は本当に存在する。
潰しても潰しても似た様な組織が作られる為、敢えて温存させる方針で、危ないのは定期的に排除が慣例となっている。
で、そのクソ組織の関係者が、あのα男。
本気でΣを排除し、ハーレムが築きたかったらしく、既に番が居る。
なので、番と共に、発情専用器具となって貰う事になった。
Ωには悪いが、愚かなαと番った罰だ。
今までの教育や手間暇を無駄にした罰として、他者を発情させる専用の生き物として何某かの施設に配置予定だ。
『永久』
「ん?」
『もし悪いαとΩが居て、けど皆の為に発情させる専用の生き物になるって言われたら、どう配置する?』
「んー、地下墓地的な場所に埋める、とか?」
『フェロモンは空気より重いよ』
「あー、じゃあ、ピラミッドの頂点?」
『あぁ、確かに、上程に効果が高いだろうしな』
「羨ましいなぁ、まだ発情期来ないんだよね」
手を出せば直ぐかも知れない。
けれども、この子はまだ未成年。
『その分、いっぱい溜まってそうだね』
「確かに、直ぐに花衣ちゃんに赤ちゃんが出来ちゃうかもね」
可愛い、堪らなく可愛い。
私を好きになるしか無い環境なのに、寧ろ喜んで適応しようとしてくれた、そして今でも。
大役を任されても。
いや、彼込みで私は後任に選ばれた、それすらも彼は喜んで受け入れている。
嬉しい、可愛い、守りたい。
《お邪魔致します》
「あ、報告係さん」
『本当に邪魔だなおい』
《コチラが今回の報告です》
違法薬物、か。
新薬の事も有るんだ、コッチを先に処理すべきだろうな。
あぁ、こうして愚か者の処分も、となるのか。
けれど人口にあまり影響は与えてはならない、過激な排除方法は恨みを生む、コレは確かにモラルが必要とされるな。
それに穏やかさと、アクロバティックさ。
ピラミッドの案は良い、嘗ての有名観光地の様な宿泊施設を作って貰おう。
『取り合えずはこの案を』
《はい》
「あ、今年最後のスイカ、食べます?」
《はい、ありがとうございます》
新薬の噂が流れると同時に、おかしな薬物が現れた。
カビの影響分類をランダムで変えられる薬だ、と粗悪な幻覚剤が出回り始めたらしい。
困る、俺の番に何か有っては。
「お前、絶対に使うなよ」
『えー?でも直ぐにΩ化出来るかもなんだよ?』
「つか俺はα予定なんだし、そっちは女なんだから別に」
『いっぱい欲しくないの?』
「欲しいが邪道はダメだ、しかもハズレたら粗悪な幻覚剤」
『それそれ、面白そうじゃん』
「マジで最悪は死ぬからな」
『冗談、使わないよ』
俺は両性具有なせいか、未だにどの数値も閾値に達しない、未分化状態だ。
少なくともΣになる事はないらしいが、0じゃない。
だが、Σやβになれば、俺の未発達な下半身はこのままかも知れない。
幸いにも幼馴染が相性も良いからこそ、βと言えど番になると言ってくれているが。
もし、彼女がΩ化しても俺がこのままなら。
「なぁ」
『あ、友達から、ちょっと待ってて』
「おう」
俺の番予定は可愛い。
俺の為にとお洒落に気を使い、俺の為にΩ化の情報に敏感になってくれている、だからこそ。
『ごめん、情報収集してくる』
「すまん、ありがとう」
「いえいえ、じゃ、またね」
『おう』
抱けば分化が進む可能性が有るらしい、けれど俺達はまだ未成年。
それに、抱くも何も。
いや、どの道もう半年で成人、結婚出来る年になるんだ。
もう少し、もう少しだ。
『それがさ、もう、こんなサイズなの』
《まさに子供サイズじゃない》
『でしょ、だからコッチが好き』
《もう溜まっちゃったの?》
『それもだし、このままで結婚とか、マジで無理じゃん』
《コレ、使ってみる?》
『それ、もしかして例の?』
《裏では、既に新薬は出来てて、もう表に出ちゃったから。同じ見た目のヤバい薬も流してるらしいよ》
『あー、ぽいぽい。本当に好きだよね、都市伝説とか陰謀論』
《まぁ、コレ幻覚剤なんだけどね》
『それさ、マジで飛べるの?』
《飛べるわよ、しかも飲んでからするとマジで飛べるの、どうする?》
『するする』
《はい、その水あげる、新しいの持ってくるけど何が良い?》
「炭酸ー」
《了解》
私も両性具有なんだけど、バレて無いのが悲しいわ。
しかも私の番予定を傷付けようとするわ、こうして浮気するわ違法薬物に手を出すわ、アホでバカであまりにも忌々しい。
けど、やっと解放される。
『ねー、まだー?』
《はいはい、効いて来た?》
『ふふ、あは、かも』
《ベランダに出ると凄く気持ち良いらしいよ》
『あー、空綺麗』
《柵ギリギリはどう?》
『良いねー』
《羽ばたいて》
『おー、あはは』
《さ、跳び箱を飛んで》
邪魔者が消えてくれたし、やっと会える。
私の番予定に。
「アナタの、部屋で」
《はい、前からΩ化の相談を受けてて。なのに、ごめんなさい、まさか薬に手を出すだなんて》
この人は一体、どっちなんだろうか。
男なのか、女なのか。
「いえ、ある意味、俺のせいなので」
《それは無いわよ、私だって注意したのに、その後に。ごめんなさい》
良い匂いがする。
香水なんだろうか。
「いえ」
《良いの、怒るなり何なりして貰った方が、却って楽だから》
「あ、いや、いえ。すみません、こうなるかもとは、思っていたので」
《その、少し、楽天家だったものね》
「はい」
《そこが良かっ、ごめんなさい、もう帰るわね》
「あ、送ります、アナタΩですよね」
《残念だけど違うの、でもありがとう、良く女αに間違われるから嬉しいわ》
「間違われるって、じゃあ」
《あ、少し複雑だから、説明が難しいのよね》
「俺」
《また、会った時にね。ほら、今は気が動転してるでしょうから》
「あ、はい」
《じゃあ》
「あの、連絡先を良いですかね」
《勿論》
もし、この人がそうなら、俺と同じなら。
コレは運命かも知れない。
《今回の報告です》
例のおっさんは治験体として、違法薬物の犠牲となった。
異常行動からの、自死とも言える事故死、壁に頭を下げ打ち付け死亡。
そしてコレは。
『永久、読む?』
「うん」
『かなり珍しい事例だね』
「へー、両性具有同士かぁ」
コレは私は今回、全く感知していない事だった。
もう少し、他に興味を広げるべきかも知れない。
『あ、コッチは殆ど違うやつ』
「えー、じゃあどうなったか分からないんだ」
『コッチに番ったてあるよ、妊娠中らしい』
「そっか、良かったね」
結果は兎も角、コレは大問題だ。
新薬の噂に便乗し、β男をΩ化され奪われたβ女の復讐から、違法薬物が出回っていた。
そこに更に私と同類の、両性具有が絡んでいる。
だが、組織は全くの無関係だ、と。
仮に信じるとしても、何故、調査を。
あぁ、例の財閥関連か。
しかも組織が敢えて関わらないとしている地区、ある意味で特区での出来事。
東京のとある地区は坩堝だと聞いていたが、コレか。
『12枚目の追加情報が欲しい、それにどうしてなのかも』
《少し飛んで15枚目に》
大事件、大事故に関わる場合は例外とし、けれど必ずしも手を出す義務は無い。
多様性を尊重する為、敢えて手付かずの自然と同様に保護されるべき区画だ、と。
『この15枚目に関わる重要案件は』
《コチラです》
新薬、やはり既に完成していたのか。
しかもテロ計画まで。
『既に着手済みでも被害を最小限に、良い機会だとは思うが、出来るだけ救う方向で。追加情報が有れば随時回して欲しい』
《では、発表には賛成と言う事で》
『出来るだけ遅らせ準備したいが、機会を逃したくは無い。想定される状況の報告、いや関連事項全てだ』
《畏まりました》
『一先ずは、以上だ』
《はい、では》
「何か、凄い事が起こる?」
『良い事がね』
それと同時に不幸も起こるだろう。
被害は最小限に、効果は最大に。
悲しむ者を減らし、幸福を増やす。
難しい、永久が居なければ私とはとっくに折れていただろう。
「大丈夫、花衣ちゃんは間違えない」
『だと良いんだがな』
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・作者は鉄道関係に関しては完全な素人です。
・自衛隊の名称をお借りしていますが、装甲列車が出てくる時点で現実とは異なる組織です。
―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》
EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。
歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。
そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。
「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。
そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。
制刻を始めとする異質な隊員等。
そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。
元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。
〇案内と注意
1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。
3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。
4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。
5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~
takahiro
歴史・時代
『船魄』(せんぱく)とは、軍艦を自らの意のままに操る少女達である。船魄によって操られる艦艇、艦載機の能力は人間のそれを圧倒し、彼女達の前に人間は殲滅されるだけの存在なのだ。1944年10月に覚醒した最初の船魄、翔鶴型空母二番艦『瑞鶴』は、日本本土進攻を企てるアメリカ海軍と激闘を繰り広げ、ついに勝利を掴んだ。
しかし戦後、瑞鶴は帝国海軍を脱走し行方をくらませた。1955年、アメリカのキューバ侵攻に端を発する日米の軍事衝突の最中、瑞鶴は再び姿を現わし、帝国海軍と交戦状態に入った。瑞鶴の目的はともかくとして、船魄達を解放する戦いが始まったのである。瑞鶴が解放した重巡『妙高』『高雄』、いつの間にかいる空母『グラーフ・ツェッペリン』は『月虹』を名乗って、国家に属さない軍事力として活動を始める。だが、瑞鶴は大義やら何やらには興味がないので、利用できるものは何でも利用する。カリブ海の覇権を狙う日本・ドイツ・ソ連・アメリカの間をのらりくらりと行き交いながら、月虹は生存の道を探っていく。
登場する艦艇はなんと82隻!(人間のキャラは他に多数)(まだまだ増える)。人類に反旗を翻した軍艦達による、異色の艦船擬人化物語が、ここに始まる。
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●本作のメインテーマは、あくまで(途中まで)史実の地球を舞台とし、そこに船魄(せんぱく)という異物を投入したらどうなるのか、です。いわゆる艦船擬人化ものですが、特に軍艦や歴史の知識がなくとも楽しめるようにしてあります。もちろん知識があった方が楽しめることは違いないですが。
●なお軍人がたくさん出て来ますが、船魄同士の関係に踏み込むことはありません。つまり船魄達の人間関係としては百合しかありませんので、ご安心もしくはご承知おきを。もちろんがっつり性描写はないですが、GL要素大いにありです。
●全ての船魄に挿絵ありですが、AI加筆なので雰囲気程度にお楽しみください。また、船魄紹介だけを別にまとめてありますので、見返したい時はご利用ください(https://www.alphapolis.co.jp/novel/176458335/696934273)。
●少女たちの愛憎と謀略が絡まり合う、新感覚、リアル志向の艦船擬人化小説を是非お楽しみください。
●お気に入りや感想などよろしくお願いします。毎日一話投稿します。
―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――
EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。
そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。
そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。
そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。
そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。
果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。
未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する――
注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。
注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。
注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。
注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
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