女装転移者と巻き込まれバツイチの日記。

中谷 獏天

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更に更に、その後。

例え敵からでも情報収集しちゃう。

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《お久し振りですね、パルマ公》

『何それ、嫌味?』
《本名でお呼びしましょうか?》

『いや、良い、何?』
《結婚式について、お伺いしようかと》

 別世界の未来を参考に、と言うか他に何か出来ないかを探る為、なんですが。

『は?』

《ぁあ、何も知らないなら結構です、では》
『ちょっ、言うから、コッチの要望を少しは聞いてよ』

《モノによりますが、何でしょう》
『ローシュと話させてよ』

《却下です、では》
『君も立ち会って良いからさ、暇で死にそうなんだよ、退屈は猫をも殺すって知らないの?』

《動物園の動物は最低限の環境が整っていれば自傷行為はしない、とは聞いていますが》
『コッチは家畜の猫だって言ってるの』

《何故、ローシュと話したいのでしょうか》
『全く同じかは分からないけど、似た世界を知ってるし。君さ、寝て起きたら500年後で、少しでも知ってるのが1人しか居なかったら話してみたいと思うでしょ?』

 素地を活かさなかった馬鹿な男。
 勿体無い、その知識と素地が私に有れば。

《提供が先です》

『良いけど、何で結婚式?』

《提供する気が無いなら》
『分かった、質問は無しね』

 そうして得られたのは、既知の情報だけ。
 本当に役立たずですね。

《評価の結果、5分だけ、追加は認めませんので》
『有意義な追加情報が有っても?』

《評価の評価、ですか》
『それもだし、追加情報を提供するよ』

 そして何故、彼が行事に執着したのかを理解する事に。

《行事を企画立案していたそうです、前世で》
『あぁ、つかそこややこしいんだよなぁ、前世だけど未来の記憶持ち。で、良い情報は得られたか?』

《面会時間5分が10分に、後はローシュに任せようかと》
『アレだけ嫌がってたのに、か』

《知る者との会話はローシュの益になる場合も有るので、選んで頂こうかと》
『まぁ、マジで話し合うかは姉上次第だしな』

《ですね》
『いつ会わせるんだ?』

《一通り終わってからで》

『アイツ、バラしそうだが』
《先に説明します、無事に終われば些末な事、必死さを理解して頂ける機会になるかと》

『あぁ、マジで必死だしな』
《はい、こうなれば死者でも叩き起こして成功させます、意地でも》

『おうおう、倒れない程度にしてくれよ、元も子もないからな』
《はい、では》



 愛する人と結婚する為、先ずは家から。

『良い考えね、ふふふふ』
『うんうん、ローシュが好きな必死さが、既に僕らにも伝わっているよ』
『あぁ、だな』

《もし宜しければご協力を》
『勿論だよぉ、協力するに決まってるじゃないかルツ』
『そうよ、何でも言いなさい?』
『どう建てる』

《向こうでバイレフェリックス地区とされてる場所の、ココに建てようかと》
『あら良いじゃない、森の中の素敵な隠れ家、入り口は魔法で見えなくさせて』
『ローシュは小さな家が良いと言っていたね』
『耐火煉瓦、土間も欲しいと言っていたが』

《図面はコチラを、宜しくお願い致します》

 ローシュが言っていた通り、何にでも例外は有る。
 転移転生者が根付く為の介入は、何処の神でも可能なのよね。

『ソロモン、宜しく頼むよ』
『私達の子孫の為、世界の為に、ですね』
『足りない物が有れば言って頂戴ね、何でも用意するわ』
『俺がな』

 人が何年も掛けて建物を作る様を見るのも好きよ、けど今は早さが大事。
 私達の可愛いルツの為、ローシュの為に。

『うん、良いね』
『東屋も作りましょう、それに井戸と窯も、殺風景だもの』
『井戸が飾りですか、昔にしたら贅沢ですが』
『上下水道を通すのはコレからだが、まぁ、贅沢品だな』

『だってローシュは古風が好きなんだもの、ねぇ?』
《我に風車を回させるんじゃよねぇ》
『それはそれは、ご苦労様ですディンセレ』
『アレは機構が好きなんだ、時計で目を輝かせていたぞ』
『人の生み出したモノは好きでも、人はそう好きじゃないとか、好きなのに自覚が無いと厄介だよねぇ』

『全てが好きだとは私も言えませんから、良く分かりますよ』

 赤い髪の砂漠地帯の神、ソロモン。
 良い方よ、本当、けれど。

『勿体無い、可愛いじゃない?強いモノに抗おうとする様とか』
『そうだね、つい構いたくなるね』
『介入制限、実に厄介だが、成長を見守る時がやっと来たとも取れる』
《見守るだけ、とか超つまらんのじゃけど、良く耐えられるのうソロモンや》

『私は強力なので、コレ位で丁度良いかと』
『そこよねぇ、私達よりも出来る事が多い、羨ましいわ』
『その分の苦労も考えると、僕はこの位で良いよ』
『狂信者を制御出来るのは相当だぞデュオニソス』
《我なんか風じゃよ?》

『君は空気の概念を得たじゃないか、クーリナによって』
《殺せるのは良いが、殺すのはつまらん、風で吹き飛ばす方が楽しいぞぃ》
『自然を操る精霊の恐ろしさを存分に発露してらっしゃいますね』
『悪戯好きもな、集中している時に道具を飛ばしてくれて困る』
『アレは偶々よねぇ?』

《じゃの!》

《あの、コレは》
『中もだよ、さ、見ておいでルツ』

 ルツ、すっかり自信を無くしてしまっていたのだけれど。

《ありがとうございます》
『何を言う、家具も未だなのだ』
『そうそう、カーテンも、あ、タオルも作っちゃいましょう』
『織りならアラクネだね、きっと喜ぶよ、新しい織りの案』

《あの、それでは神々の》
『君が対価を払うんだよ、ローシュを幸せにする事が対価だ』
『私達では無くアナタが努力するのよ、ルツ』
『俺らは補佐、補助、全てはお前次第』
《じゃの!》

《ディンセレ、暴れないで下さいよ、家が傷むので》
《何で我だけぇ?》

《ローシュは甘いので、今のうちに釘を刺しておこうかと》
《だって良い風じゃと褒めてくれるんじゃもん》
『はいはい、何事も程々に、ですね。もう行こうアリアドネ』
『王が言ってた通り、程々に、ね』
『倒れる手前までだぞルツ』

《はい》

 疎まれ、忌避され、嫌がられるより。

『はぁ、早く喜ぶ顔が見たいわ』
『ソロモン、良いのかい?ルツに何も言わないで』
『言えば影響が出るでしょう、転移者にも』
《アレは気にしておらんぞ?》
『だが確かに、恩義を感じるやも知れんな』

『そこです、関わろうとすればあの子が心配をするでしょうから』
『そうねぇ、中つ国にも関わろうとする位だし』
『関わらせないのも愛だけど、寂しくないのかい?』

『信仰さえ有れば、何処かに理解者が居れば』
『神は死なない、滅びない、でも』
『君は僕らとは違う系統だと自負しているものね、尊重するよ』

『はい、では』

『もう』
『はいはい、アラクネに会いに行こう』
『俺は家具を、ニーダベリルにでも行くかな』
《我は風車でも回しておくかの》



 ルツさんに呼ばれ、私が向かった先には。

『ココは?』
《ローシュとの家、の予定なんですが》

『ローシュ様の好きなお花を植えないとですね』
《話が早くて助かりますアンジ》

 私の我儘を聞いて頂いたんですし、コレ位は余裕ですよ。
 白いマグノリアにクチナシ、白い薔薇にスズラン。

『白いお花が好きなんですよねぇ、それこそブランシュって名前にしちゃえば良かったのに』

《可愛らしいモノが合わないと自負していますので、難しいかと》

『ぁあ、見るのが好きなのは分かりますけど、身に着けたがらないのって』
《それよりどうなんですか、彼とは》

『へっ、えーっと』
《問題無いのか、ですよ》

『あ、はい、問題無く、ですはい』

 本当ならローレンスと結婚する筈だったんですが、まぁ、刺繍を教えて貰ってるウチに懇意になってしまって。
 皆様には申し訳無いとは思うんですが。

《それでも嫌になったら無理をせず、遠慮せずにご相談下さい》
『はい、ありがとうございますぅ』

 良いなと思っていたら、先に彼の方が動いて、ローシュ様に言っちゃって。
 何の反対も無しに、あっさり結婚出来てしまった。

 私の体が出産に耐えられる様になるまで、それまでだけ、ココでお世話になる。
 本当はココで過ごしたいんですが、彼の家との約束だからと。

《その程度で良いですよ、種類を植えないといけませんし、他にも頼みたい事が有るので》
『他、と申しますと?』

《花冠と、花束です》
『まさか、結婚式を?』

《はい》
『やっとですね』

《やっと、ですね》
『そこはもう大丈夫です、咲かせるのなんて楽勝ですから、前日にでも言って下さればチョロいです』

《ありがとうございます、では、青と白で》
『お任せを!』

 ずっと考えてたんですよねぇ、ローシュ様の花冠。



《はぁ》
『どうしたルツ、もう過労か?』

《いえアンジェリークにも、やっとか、と》
『ぁあ、まぁ、既婚者の女なら至るかも知れんが、姉上は微妙に違うからなぁ』

《だとしても、アンジェリークにしてみたら、ですから》
『大規模なのは面倒、着飾るのが好きじゃない、結婚式は見るモノだ。ココまで言われて至れる方が、逆に姉上を理解して無いと思うがな』

《それでも、小規模なら、似合うなら着飾る事は嫌がらないんですから。はぁ》
『至れた事が大事なんだ、まだまだ、ドレスもだろ、どうなんだ?』

《藍染めで何とか、緑色も草木染めで良い発色なので、後は型を、縫製待ちです》
『そこはもう姉上を使えば良い、呼べ呼べ、見せて喜ぶ姿を堪能しとけ』

《はい》

 相手が姉上だから良いものの、コレがそこらの女だったらと思うと。

 いや、逆に、こうならないか。
 ココまで入れ込む事も無く、淡々と何もかもをこなして、子を成して。

 家臣としては安定してくれて結構だが、つまらんと言うか、何か違うんだよな。

 と言うか別に仕事はしてくれてんだし、うん、やっぱり俺は正しい。
 ルツの傍にこそ、愛せる者を置くのがルツの為、相手の為。

『よし、覗きに行くかな』



 凄い、もう、綺麗。

「コレ、このまま飾っておきたい」
《一応、ドレスで、とお針子も用意してありますので》
『カーテンはカーテンで別に作って貰おう?』

《はい、コレはドレス用の生地ですから》
「あー、じゃあ、ガブちゃん」
『アナタの思う図案を夢で見せれば、アナタが思い描いた図案を描くかと』

「成程、そんな方法が」
《では、宜しくお願い致します》

 そうしてお針子達の中に、私が思い描いた図案を出してくれた子が。

「コレ、お願い」
『はい!頑張ります!』

 そしてお邪魔にならない様に、部屋を出る事に。

「ありがとうガブちゃん」
『いえいえ、では』

「って言うか、アレ、王族用のお針子達よね?」
《最近は作業が減ってるので、却って動かすべきなんですよ》

「でも染めの」
《染めと交代です、特化より平均を、それにお針子の本業は縫物。人手も増えてますから大丈夫ですよ》

「でも」
《何着も作るワケでも無いんです、彼女達の気晴らしにもなるんですよ》

「なら、まぁ」

 確かに凄く楽しそうだし。

『楽しみだね、ドレス』

 女アーリスに着せるのよね、アレ。
 うん、絶対に似合う筈。

「そうね」

 場所は何処が良いかしら。
 やっぱり背景は、白?



『白い背景で着て、って』
『マジで着る気0じゃねぇか』
《だから言ったでしょう、見るしか考えて無い、と》

『が、着せる、白い背景だな』
《教会での結婚式が主流だったそうですが、話し半分にしても》
『ローシュには無しだよねぇ』

『建てるか、それっぽい何か』
《また大雑把な物言いをしないで下さい》
『アリかも、教会とモスクと全部混ぜた様な建物にしたら良いんだよ』

『で、新婚はそこで愛を誓って、そのまま新婚旅行。完璧だろ』
『神殿、白の神殿とかで良いじゃん、でステンドグラスで飾るの』
《どれだけ工期が掛ると》
『いや、ルツが知らないだけで、実は近くに有ったんだよ』
『そうそう、後で見に来たら良いわ、後でね』

『だそうだ』
《ここまでの恩を、私はどう返せば》
『ハーレムの主軸になるのでしょう、ならアナタが施す側になるのだし』
『彼らに恩恵を分けるには、先ずは君から、だ』
『だって、あ、ローレンスも家が欲しいって言ってたんだ、ヤシに』

『おうおう、良いぞ、敢えて目立つ土地か』
《あの、収穫期ですし》
『あ、夜にでも僕が手伝うよ、朝とかお昼はローレンスがローシュの相手だし』

『体を壊すなよ?』
『大丈夫、任せて』

《すみません、もっと前に、早く気付けていれば》
『いや、ルツらしい時期だと思うぞ、あんまり早いと入れ知恵を疑うだろうしな』
『だから今が頑張り時、成功したらまたルツに頑張って貰うから、ね?』

《ありがとうございます》

 新しい家、新しいドレス。
 楽しみだなぁ。

 あ、スペランツァとシャルルも知りたがってたんだよね、ローシュの結婚式。
 もしかして手伝ってくれるかな。

《手伝うに決まってるじゃない?ただ、何をしたら良いのかしら》
『ローレンス居るでしょ?家だけを考えてるみたいだから、ドレスはどうかなって』

《ぁあ、ウチが1番進んでるのよね、ドレス》
『今ベネチアに居るから、ドレスを仕立てさせるの良いかなって』

《させるしか無いわね》
『ビーズの、ギリギリ夜会でも使えるのとかが良いなって』

《成程、ちょっと調べさせたりしても、期限は?》
『10日後の予定、ベネチアを出て直ぐかなって感じ、だからルツの方のドレスもギリギリなんだよね』

《ぁあ、移動での時間稼ぎが出来ないものね》
『何か用事を作れない?』

《劇の事はどうなってるの?》
『明日、寸劇みたいなのを見る予定だけど、それで問題が起きても余裕な日程なんだよね』

《あ、じゃあアレよ、夜会を開かせてよ。良いじゃないモスリンドレスでのお茶会に夜会、私も行くわ、ベネチア》
『えー?大丈夫?』

《視察に行くつもりでは有ったのよ、あ、ロレダン家とは繋がりは?》
『まだ、バルバリゴ家と会っただけ、明日はドルフィン家で、その次かも?』

《まさかロレダン家が保護してるなんてね、私も最近知ったのよ、結構居るのよね》
『ガラス職人だったんだっけ?』

《そうなの、侮れないわ、神童ってどっちなのかと思ってしまうわよね》
『職人系って、前と同じ仕事を選ぶの多いよね』

《そうそう、お陰で助かってるのだけど。あ、ドレスよねドレス、私が行くんだから仕立てるしか無いでしょう?》
『お茶会だけにしてね?夜会って皆がヤりに行っちゃうから』

《それ本当に?》
『半分は必ず休憩室に行っちゃう』

《凄いわね》
『けど王族主催だと、大丈夫、かも?』

《いえ、先ずはお茶会だけにしましょう、まだまだウチの評判は良くないし》
『じゃあ手紙か何か届けようか?』

《そうね、ロレダン家にアナタが渡して、その方が繋がるのも楽な筈だから》
『分かった、シャルルにも相談してから渡すね』

《あ、じゃあシャルル女王にも書くわ、待ってて》
『うん』

 それから2つの書簡を持って、次はフランク王国へ。

『手伝わない理由が無いよ』
『そうよ、何をすればい良いのかしら』

『やっぱり、そうなる?』
『勿論』
『小出しにするつもりだったのだけど、全然、全く要求してくれないじゃない?だから凄く困ってたのよ』

『メリュジーヌとゼリーの恩恵は国民にも広まっているからね、渡せる機会を心待ちにしていたんだよ』
『けどローレンスのドレスはスペランツァの方だし』
『あらネオスは良いの?』

『あー、相談してみる』
『ふふふ、またおいで』
『またね、竜の子』



 ルツは勿論、ローレンスまで家を。

『で、ドレスの事はスペランツァの協力で作らせるってなった、ガラスビーズのドレス』

『それで私も、ですか』
『うん、ネオスはどうしたいかなと思って』

『アーリスは良いんですか?』
『うん、もう家は有るし一緒に住んでるし、ドレスは欲しいけど最後で良いかなと思って』

『もう案が有るんですね』
『黒と青のドレス、僕の色だから』

『そしてルツさんは青と緑、となるとローレンスは白ですかね』
『ネオスが白が良いなら他の色にさせるけど』

『ココの結婚についてご存知ですか?』
『今は色が決まって無いんだよね、で、進むと白』

『はい』
『悩んでる?』

『真っ白な姿を、見てみたいなと。ですけどローレンスを優先させたいので、決まってから、再度考えようかと』
『譲るんだ?』

『家もドレスも、私は考えた事も無かったので』
『あ、家は?』

『海沿いを、と思ったんですが』
『良いじゃん、ローシュ水辺大好きだし、一緒に良い景色の場所を探そう?』

『はい、ありがとうございます』

 ローシュの為の家、ドレス。
 どうしたら気に入って貰えるだろうか。
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