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更に更に、その後。

次は夜会の準備なのだけど。

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「ごめんなさい、ちょっと食べられ掛けたわ」
『僕のせいで止めたの?』

「せい、と言うか」
『あのねローシュ、僕、綺麗で安全な大きい水場を独占してるみたいで凄く嫌なんだ。勿論ローシュが独占されたがってる事は分かってるし、その方が良いって理屈も分かってるつもり、けど僕は悪い独占に思えてる。大きくて安全で綺麗な水場って、クロアチア州でも意外と少なかったでしょ?天然とか自然でもそうなのに、僕らは近くに居て、皆が其々に見付けた。しかも先に見付けたのはルツ、その次に僕でローレンスも見付けた、ちゃんと他も見て回って良いなと思ったのはローシュだけ。その事を分かってるのに、独占を良い事だとは思えないけど、ローシュに無理して欲しくない』

「ごめんなさい」
『違うんだ、そうじゃなくて、僕は共有したいと思ってごめんねって事。ローシュが間違ってるって思う事を僕は正しいと思ってる、勝手に思って、勝手に嫌な気持ちになってごめんね』

「そこは勝手と言うか、私の我儘と言うか」
『そこは我儘で良いと思う、僕の我儘もローシュの我儘も許される事だと思う、だからハーレム形成も本当は許される事の筈だよね?』

「ただでさえ、普通に、1対1でも」
『それは向こうのがクソなのと、ローシュが凄過ぎて逆に手に負えなかったんじゃないかって、良い意味でね。調子に乗った男の話を聞いて、ローシュは優しいから、きっとどんな相手でも優しくしたんだろうなって思った。でも見張れるでしょ?僕らが見張って気を付けて、ローシュも愛せて、良い事しか無い筈なんだけど。どんな悪い事を想像してる?』

「嫉妬、とかで」
『そこはもう相談したんだ、皆には仕事が有るし、それこそローレンスは離れてる時が多い。だからエッチの時間を出来るだけ同じにする、複数なら時間を割って、先ずは平等になれる様に努力する。けどそれでも難しいだろうから、何日か2人だけの時間を作らせる。出来るだけ機会を与え合う、天国と同じ、譲り合えば良いんじゃないかって。けどローシュの気持ちの問題も有るから、ローシュは好きに選ぶ、調節は僕ら。ローシュは何も考えないで、承諾してくれるだけで良い』

「何も考えないのは流石に」
『だよね、けど信じて任せて欲しい、僕らなりに調節する。だって水場の仕事じゃないから、調節は、水を飲ませるかどうか判断するだけで良いと思わない?』

「結構、乱暴な」
『うん、難しいし複雑だけど、簡単に立ち入れる水場って安全だと思う?』

「そこは、まぁ、そうだけど」
『立ち入るのが難しいって分かってて、安全で、綺麗な水が飲めると思ってる。けど違うと思ったら記憶を消させる、全部、何もかも』

「その、受け入れるのは」
『喜んで受け入れるって難しいと思う、それこそ他所から見たら利用されてるって思うだろうし、水場としても利用されてると思って当然だと思う。けどローシュは嫌じゃないでしょ?嫌がるローシュは少し違うと思うし、嫌なら仕事の為でも今後は何もして欲しく無い。ローレンスの事もルツの事も嫌じゃないって、僕もう分かってるし、ローシュが自分の気持ちを否定するの凄く嫌だ』

「私が嫌がら」
『誰でもは僕も嫌だよ、それこそ惹かれて無いのにウムトと寝られるとか凄く嫌だけど、それこそルツの事は好きでしょ?それとも嫌な所が出た?』

「いえ」
『僕の我儘はルツを受け入れて欲しいけど、無理に受け入れて欲しく無いって事、言ってて凄く我儘だとは思うけど。間違ってるかってなると、僕は間違って無いと思ってる、ローシュはどう思う?』

「利用される面も有るけど、同時に私にも利益なのが」
『原罪とか自己評価の事だよね、けど水場は水場の価値を正確に把握出来ると思う?』

「いえ」
『少なくとも僕は共有しなきゃならないって思う程に価値が有ると思ってる、手に負えないとか嫌とかじゃなくて、皆で一緒に美味しい水を飲んで水浴びしようって事。嫌な面や意味は含まないからね、僕も独占するし、独占したくないワケじゃないから』

「それを実際にしてみて、問題が起きたら」
『だから話し合いで解決出来る者だけで共有する、ルツもローレンスも出来ない者じゃないでしょ?寧ろ凄く良く理解してる筈、だから僕は心苦しい、クソが羨ましがっても共有する気は起きない。だからローシュのせいじゃない、コレは僕とルツとローシュの問題』

「なのに、ネオスにもローレンスにも私が手を出しちゃったから」
『ローシュ、思い出したの?』

「実は、結構前に、ごめんなさい」
『ううん、こんな大きい問題が解決して無いんだもん、言い出せないよね、答えを出す事になるんだもん。ごめんね、解決する前に思い出させて』

「アーリスが馬鹿なら、逆に多分、直ぐに受け入れたのよ。私に大きな利益になり過ぎる、アーリスだけで十分」
『なのにルツも、だと多過ぎる、けど凄く良い水場なんだよ?しかも海に面してて平地も有って、土も豊か、領地としては最高でしょ?』

「水場で納得しなかったら、次は領地に例えるのね」
『ルツがね、きっと水場ってだけで納得しないだろうって。けど本当にそう思ってる、それこそ世界、地球を独占するとか有り得ないでしょ?』

「大きく言うわねぇ」
『井の中の蛙大海を知らず、合ってる?』

「合ってる、私は井戸で蛙ね」
『しかも金の蛙、金を産むし金で出来た蛙だから、蚕と同じで良い環境で僕らにお世話されないといけないの』

「それだと、お世話係が1人だけは大変ね」
『ううん、お世話するだけでも元気になる御利益が有るから、本当は皆がお世話したがってる。けど僕もお世話する事になるから、お世話係が限られる、僕は黄金を守る竜だから気難しいし』

「結構、誰にでもホイホイ渡しそうなんだけど」
『ウムトにはあげないし、ファウストも阿呆の子になったら絶対に渡さない、もうその時点で記憶処理だね』

「もう増やさない様にアナタも気を付けてくれない?」

『そこは、ローシュ優先だから』
「そこはもう少し気を強く持って頂戴よ」

『だってローシュが悦ぶ特技を持ってたら、僕は拒否出来ないもん』
「特段に私に特殊な性癖は御座いません」

『今は分からないだけかもよ?』
「この年で?無い無い、この年で無いなら無いんです」

『ルツより年下なのに』
「そこは除外しなさい、アレは最近まで童貞だっ……そこよね、寧ろ良く今まで何もして来なかったし、良く我慢してくれてたのよね」

『けどローレンスが動いて、凄かったよ、羨ましいって気持ちが溢れてたから』
「そこよ、アナタが血をあげちゃうから、可哀想であげちゃったのよね」

『機会をね、僕の為にも、ローシュの為にも』

「良いのかしらね、許されるのかしら」
『それ、誰に?』

「姪っ子、だから子供には悪いけど、本人にバレそうにならない限りは地底で暮らしたい位に後ろめたい」
『鎖国するし、姪っ子の事、そろそろ僕らにも詳しく教えてくれない?』

「そうね、血が濃くなっても困るし」
『あ、けど、どうする?記憶の事、まだ良く考えたいでしょ、ルツの事もハーレムの事も』

「良いの?」
『うん、だってローシュが1番だし、僕が泣いたのの半分は記憶が戻らない事だったから』

「ごめんね、アナタの事を考えて無かった約束だった」
『ううん、信じてくれてたからだし、僕も泣くと思わなかったから大丈夫。止めなかったんだからお互い様、僕らの罪は等分、半分こだよ』

「ありがとう」

 良かった。
 本当に記憶が戻ってくれて良かった。

『あ、黒真珠はそのままが良いよね?』
「そうだけど、何故?」

『磨り潰して飲ませたら記憶が戻るかなって』
「勿体無い」

『だよね』
「そこに至りそうならバラすわ、流石に」

『うん、じゃあそうしよう』

 コレで嫌な気持ち無しでローシュとイチャイチャ出来る。

「あの、ちょっと考える時間を」
『後でね、だって僕もムラムラしたんだもん、相手して』



 悲しみと言うか、憂いの無いアーリスの手加減の無さよ。

「おはよう、諸君」

『おはようございます、あの、お疲れなら』
「良いの、続けてローレンス」
《アーリス》
『えへへ、ごめんねローシュ』

「いえいえ、さ、どうぞ続けて」

『じゃあ、先日の情報で……』

 紗の仕入れの事は勿論、性的な秘密クラブの開設に、恋愛結婚の物語を垂れ流す集団の情報が耳に入っては来る。
 入って来ても、どうにも考えが筋肉痛に邪魔をされる。

 アーリスの体液が効くのって、この痛みと怠さの後なのよね。
 何で時差式なのよ、とは思うけれど、効いてるだとか体の具合を関知させてくれるからこそで。

『恋愛に恋焦がれさせる集団に対して、なんですが』
「はい」
《どうぞローシュ》

「舞台と本とで広めてるのよね、どんな意図かは不明だけれど」
『ですね』

「なら同じ様に迎撃したらどうかしら、本と舞台で迎え撃つの」

《それは、悲話や悲恋で、と言う事でしょうか》
「それに限らず、阿保の見本市にして、喜劇や悲劇、それこそ成就するのも見せるの。そして向こうの荒を馬鹿にして、貶める、なので現物が見たいし知りたいわね」

《今から夜会までとしても、少し移動する事になるかも知れませんが》
「大丈夫、今日コレからでもね、どうせ移動は眠るだけだし」

 治りが良いけど対価に睡眠を必要とするのよね、食事と睡眠、そうやって体を早く修復させる。
 魔法と言えば魔法なのだけど、理にかなってる感じで、確かに魔法の存在には不慣れ。

『ごめんねローシュ』
「なら以降は考えてねアーリス」

『はーぃ』

 この、憂いって、女性は定期的に強制的にホルモンのせいで得るから慣れてるけど。
 男って憂い慣れして無いって事よね、この事例だけ見ると特に。

 だから直ぐに体に出るし、自殺率も高い?

 けど、憂いを取り除く為に女が我慢するのも違うし。

《では、今日はローレンスに夜会の準備を任せ、コチラは観劇と本を集める。で宜しいですかね》
「うん、はい、そうします」

 そうして馬車に乗り、急遽観劇に行く事に。

 あら、これ、言うタイミングかしら。
 でも、凄く眠い。



『ごめんねルツ』
《いえ、私でも同じ立場なら同じ様になるでしょうし、気にしないで下さい》

 嫉妬と言うか、悪戯心と言うか、そうした邪な気持ちでローレンスと何をしたのかを聞き出して困らせて。
 他人の馬車で久し振りにローシュに触れて、触れられて。

『ローシュは食べられ掛けたって言ってたけど』
《ぁあ最後まではしてませんよ、流石に他人の馬車ですし、当然抵抗されましたし》

『だよね、記憶が戻っても抵抗するだろうし』

《少し、すれば記憶が戻るんじゃないかとは思ってしまって、そこそこ食べてしまったんですよね》
『分かる、僕もそこはちょっと期待した、ローレンスの時にもね』

《ですけど、不埒過ぎて、結局はローレンスと同じ事に留めておきました》

『美味しかった?』
《半分も食べて無いんですけど、美味しかったですね、凄く》

『だよねぇ、それで水場とか領地の事を話したんだ』

《それでローシュは》
『世界は流石に大き過ぎるって、けど納得はして貰えたと思う』

《それでも、ハーレム案を呑む迄には至らなかったんですね》
「コレにしてみればだ、平凡な平民にいきなり国をやると言われたも同じ。しかも平和が欲しいと願い、平和な国をやると言われた状態なのだ、無理も無かろうよ」
『けどスカアハ、実はローシュは王族だったんだよ?僕らにしてみたら』

「であればこそ、人に認められねば受け入れられぬだろうよ」
《少ない人数では無く、ですね》

『そっか、子供の事も有るもんね、ウチと同じ様に子育てしたいって言ってたし』
「複数人、他の者の目を敢えて必要する、子の為にもと。であれば国内で認められるかどうかが重要になるであろうよ」
《だからこそ王を基準にしていた》

『娶らせる?』

《それは最終手段にしておきましょう、確かに国内の整備も必要ですね》
「ほれぇ」

《すみません》
『僕もごめんね、取り乱すより気付くべきだったのに』
「神でも取り乱すだろうに、仕方あるまい。それに戦場では冷静なのだ、問題無かろう」

『けど急に影から出られるとビックリするよ、ローシュが起きたのかと思ったもん』
「起きぬよ、どんだけじゃよお主」

『えへへ』
「まぁ良い、こう配慮すれば少しはマシになるだろうさ、周りも国内もな」

『うん、はい、ありがとうスカアハ』
《ありがとうございます》
「うむ」

 アーリスでも驚くとは。

『ん?』
《君でも驚くんですね》

『だって気配とか何も無いんだもん、察知出来無い事では驚くよ。セレッサも驚いたでしょ』

 セレッサの大きな頷きに釣られてなのか、妖精まで険しい表情で頷いている。

《竜にも妖精にも不可能なんですね》
『だね、それこそ世界ちゃんの事も神様には察知不可みたい、スカアハは覚えてるんだって』

《竜にも神にも察知不能な、何か》
『それか、察知してるって気付いて無いだけで、誰かが気付いてるかもって』

《誰も気付けない可能性を消す為に、ですかね》
『全員に無視されるのを嫌がる子なら、だって』

《若しくは嫌だと思った時に、気付いて貰えるか》
『良いねそれ、世界ちゃんも変化するかも知れない』

《私も変化しましたし、可能性は有るかと》

『コレってココの者が考えるべき事だよね、本当は』
《そうですね、そして一通りの可能性を考え尽くしたと思ってから、観測確定者に考えて貰う》

『適切な観測が出来る者で、その責任を負える者』
《知る責任が発生しますからね、知れば確定に繋がる》

『だからローシュの記憶を消したいけど、意外と悩んで無さそうだから良いかなって』

《彼の記憶も巻き込まれそうですし、それで問題無いかと、と言うか》
『問題無く過ごして貰う、僕らで』

《ですね》

 そして休憩時にもローシュは起きる事は無く、もう直ぐ観劇が行われている場所へ着く。

 黒真珠を渡してから今日まで、アーリスは手加減をしていたらしい。
 それだけ私に遠慮が有った、憂いが有ったんですよね。
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