女装転移者と巻き込まれバツイチの日記。

中谷 獏天

文字の大きさ
上 下
52 / 160
旅立ち。

船でエジンバラ方面へ。

しおりを挟む
『ローシュさん』
「大丈夫よアンジェリーク、遅くなるかも知れないけれど、良い子で待ってて。ちゃんと体を温めて、激しい運動はしない、良いわね?」

『はぃ』
「お願いしますねメアリー」
《はい、お気を付けて》

 私達はローシュと共に船へ、そして川を下り、海へ。
 あのまま見捨てても良いとは思うんですが。

《回収してあげるだなんて、優しいですね》
「私が欲しいと言ったのだから、その責任を取るだけよ」
『言ってくれたら幾らでも処分するのに』

「私の短気で始末するには惜しいじゃない、だって交配させてどうなるかの確認が出来なくなるのは勿体無いし」
『それ、植物の事?あの子の事?』

「さぁ、どれなのかしらね」
『もう、ネオス、半分は冗談だよ?』
《そう人間が上手く交配させられたら、誰も苦労はしませんよ》

『その、薬を使うのか、と』
「それ、誤解よ、そんな薬は存在しません。沢山探したんだものね、ルツが」
《国内と、キャラバンで揃う物でだけ、ですけどね》

「お薬はお薬、出方は人其々。善くなれば良いけど、急に悪夢みたいな幻覚を見るかも知れない、そして暴れる。そうなれば致すモノも致せない、卵子が勿体無いわ」
《ただ、恋をさせる方法は色々と有りますけどね》
『なのに無理だったんだよねルツは』

「確かに、そう言えば、なんの技も使わなかったわね?」
《小手先でどうにか出来るとはとても思えなかったですし、そのまま言い続けた方が誠実だろうと思ったのと、恋は意外と思い通りにならないと思っての事ですよ》
『隙あらば口説いてたんだって』

「おはようの次に結婚しよう、好きだ、愛してる。利害関係だ何だ、流石に吹き飛んでいったわよ」
《一気に、とはいきませんでしたけどね》
『その、アーリスの事は』

《勿論抗議をしましたよ、他に居ないのかと》
「あら聞いて無いんですけど」

《悔しかったので王には口止めしました》
「そこ対等なのよねぇ、不思議だわ」

《喜んで表舞台で動いてくれるんですから、勿論、尊重はしますよ》
《ルツさん、どうしたらローシュ様を口説けますか?》

《話し合い、説得あるのみですよ》



 折角、ルツがコツを教えてくれたのに。

『ネオス、あの1回だけ?』

『そ、匂いですか』
『うん、ローシュの皮膚が傷む位洗っても分かるし』

『汚してすみませんでした』

『気に食わなかった?』

『いえ』
『なんだ我慢してるだけかー』

『アンジェの事が有ったのに無理ですよ』
『それこそ逆に、女の子になって迫っちゃえば?』

『は?』
『自分の体で慣れる練習、とか』

『ぁあ』
『ほら、ちょっと良い案だって思ったでしょ』

『ですけど、受け入れてくれるんですか?』
『ローシュ、女の子に弱いじゃん』

『かも知れませんけど』
『楽しみだね、魔導具返って来るの』



 こうなると、今度は僕がお荷物な気がする。
 ネオスさんの邪魔もしたくないし、けどローシュ様の邪魔もしたくないし。

「どうしたのファウスト」
《もう、僕、お部屋に帰ります》

「寒いの?」
《日も出てるし、本を読みます》

「じゃあ私に読んで」
《もうローシュ様の知ってる本ですよ?》

「発音の練習よ」
《ネオスさんに聞いて貰います》

「何で拗ねてるのかしら?」

《拗ねてません、大人になる練習をしてるだけです》
「アナタは頭も素地も良い子だから大丈夫、それとも一緒に居たくなくなった?」

《そうじゃないですけど》
「遠慮して我慢した方が良い時と、そうじゃない時が有ると思いませんか?」

《ぅう》
「アンジェリークはアンジェリーク、ファウストはファウスト、アンジェリークにだってファウストにだって良い部分と悪い部分が有る」

《アンジェリークの良い部分って何ですか?》
「顔、はい次はファウストね」

《えー》



 もう思春期なのかしら、ファウスト。
 難しい。

「ネオス、ファウストにはどうしたら良いと思う?」

『ほっておくのが1番かと』
「何で皆そう、じゃあ構わない方が良い?」

『過剰に構わなければ、なので』

「じゃあ、ネオスにはどうしたら良い?」

 コレで構うな、と言われたらちょっと傷付くわぁ。

『程々で』

 程々、とは。

「過不足は?構い過ぎなら言ってね?」

 もー、何よ、何で言うのを遠慮するの?
 何かしたかしら。

 寧ろ、してない?

『ぃぇ、ダイジョウブデス』

 何故、動揺するのよ。

「そん」

 いえ、コレが構い過ぎると言う事なのかも知れないわ。

『そん?』
「いえ、分かったわ。報告はもう無い?」

『はい』
「そう、じゃあね」

 無理に聞き出すのは良くないわ。
 うん、話してくれるまで待ちましょう。



『はぁ』

 嘘を言ってしまった。
 いや、厳密には嘘では無いのだけれど。

《ネオスさん、何を失敗したんですか?》

『失礼しました、何でも無いです』

《あー、秘密を作る気なんだー、ローシュ様にっ》
『ローシュの事で悩んでるだけですから気にしないで下さい』

《ぷはっ、僕が子供だから何も教えてくれないんですか?》

『構う、と言う問題で、半分嘘を、言ってしまったなと』
《半分?》

『過不足が無いか、構い過ぎでは無いかと、そもそも君の相談から始まった事で』
《半分嘘を?》

『大丈夫、だと』
《へー、ネオスさんも大人ぶりたいんですね》

『と言うか、もっと構って欲しいなんて、言えるワケが無いじゃないですか』

《何故》

『そ、何故って』
《大人だし、功績は上げたし。それともアレですか?恩義なのか好意なのか区別が付いて無いんですか?》

『いえ、ただ、両方有りますから』
《ですよねー、僕も多分そうだけど、ローシュ様には子供だって思わ。ソコですか?ローシュ様に子供扱いされてるんですか?》

 確かに。
 ローシュにしてみたら私は若い、それこそアンジェリークを宛てがおうとする位で。

 もしかしたら、そこまで幼いと思われているのかも知れない。
 ファウストの様に、幼いと。

『確かに、そうかも知れません』
ケ・セラ・セラどんまい!》
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...