43 / 160
旅立ち。
サンジェルマン伯爵家。
しおりを挟む
マナーを学ぶ為の学園を作ったのは、先のイザベル女王の国婿、シャルル5世だと表立っては言われているけれど。
本当は、私達家族がお願いして作って頂いた、謂わば学園の先駆け。
歴史を踏襲しながらも、差別や文化の消滅を避けられる様に、けれども無理無く時代を推し進めるのが私達一家の役目だと考え、行動している。
でも思う様には行かないモノで。
『お嬢様、先日の報告に有ったローシュ嬢を謗った者が入学して参りましたが』
何と嘆かわしい事か、コチラのミスで優秀だろうと思われる方を傷付け、すっかり閉じ籠らせてしまったのだ。
神々と祖父母により同胞だと聞いていたので、丁重におもてなしを、とクリスティーナの家に預かって貰ったのに。
糞女が若いからと言って、例え祖父や祖母が許しても、私は絶対に許さない。
《あぁ、なら死刑ね》
『お嬢様、流石に死刑は無理です。最も品位の高いとされるクラスに入れるか、最低クラスに入れるかのご相談で御座います、どうぞ評価表で御座います』
品行方正、清廉潔白とは真逆。
品性下劣、佞悪醜穢、風紀紊乱、傷風敗俗。
遊惰放蕩、白眼青眼、俗臭芬々、野卑滑稽、奢侈淫佚、荒淫無恥。
幸いにも、今まで盗む事が無かったからマシはマシ。
けれども、こんな子女を野放しにしていては。
流連荒亡。
この国は滅びてしまう。
《Les agriculteurs Péquenaudか、fermier redneck、田夫野人の称号を授け、最高位のクラスへ入れたいと私は考えています》
『はい、ではコチラにご署名を』
この学園は私の一存では動かない。
流石に紳士淑女も預かるのだから、家族会議が必要なのよね。
「うん、評価表の言葉を使わず、見事に表現した。このままこの2つ名を使わせよう」
『そうね、最高位クラスへの配属も。まぁ、下劣な民に慣れて頂くには良いでしょう、善き見本だけでは純粋培養と化して直ぐにも病んでしまうでしょうし。はい、承認』
「それと」
『彼女の事よね、すっかり怯えてしまっているそうよ、お義母様がどうにかならないのかと気にしているのよね』
「その件だが、学園へ招いてはどうだろうか」
『まぁカンネに?綺麗な海沿いを満喫して頂こうと思っていたのだけれど』
「イエールまで出れば、また海だし、海が好きな人かどうかは分からないんだ。意外とカンネの自然を気に入ってくれるかも知れない、お断り出来る様に誘えと伝えておこう」
『そうね、私達一家の事を知りながらも接触して来ないのは、単に機会を伺っているだけかも知れないものね』
「流石、僕の聡明な妻だ、愛しているよマリー」
『ふふふ、私もよ、けど今は書類仕事を終わらせましょうね』
僕ら家族は、転移者の子孫。
元は曾祖母の一家がこの地へ、神へと遣わされ、そのまま居着いたと聞いている。
曾祖母は医師だったらしい、そしてその娘夫婦は料理人と教師。
そして僕の母である3姉妹はそれぞれに比較宗教学、服飾、農業を学んでいる最中だった。
そして家に家族が揃っていた時、災害が起き、気が付けばこの地に居たらしい。
遠い先の時代、将来、未来と呼ばれる新しい時代でフランスと呼ばれるとされる、このフランク王国へ。
神に遣わされたのだ、と。
ただ、私もマリーも、それこそ娘のアンナも神々の姿を認識する事も声を聞く事も出来ない。
神々に会えるのは、それこそ女王と国婿のみ、しかも就任時だけらしい。
そこでもし神々がお見えにならなければ、女王や国婿として認められず、そのまま廃嫡されると言われている。
だが、嘗ては民ですらも神々と会い、話が出来ていたらしい。
が、忌むべき事象が頻発した事で、神々は手を引く事になったのだと。
その一端を担ったのが、魔王の分化、およそ200年前。
一神教の爆発的な広まりにより、7つの大罪と呼ばれる概念が一部で定着をし、魔王から暴食と呼ばれる者が分化した。
そうした事象を許してしまった全世界の人々への罰だ、と各国で大騒ぎとなり、一神教が排斥される流れとなった。
だが既にシルクロード沿いでは一神教が定着しており、争いを避ける為、各国では勧誘と布教活動のみが禁止とされた。
その者達が信じる神を否定するのは、自分達の神をも否定する事になるかも知れない。
そして、その神に救われる者がいつか現れるかも知れないから、と我が国も無理に追い出す事はしなかったのだが。
度重なる魔女狩りの復活、そして悪習因習を復活させようと。
何故か、同胞らしき者が暴走を繰り返し、最近ではルーマニアへも突撃した。
そしてそれを退け、魔女とされる者を保護しているのが、ルーマニアの大魔女。
祖母と同じ黒い髪と目、適度に日焼けした肌色を持つ、東洋の魔女だと。
「あぁ、我らは学ばかりで、実は怒らせてしまっていたのだとしたら」
『各国を穏便に出立しているからこそ、隣国からも不穏な噂は聞かないのですし。そう、ヒップヒップな方々とは違うのでしょう』
「匹夫匹婦、ぁあ、多夫一妻制を気にしているんだろうか」
『ぁあ、貞淑であれ、そう教えを広めている最中ですものね』
「そこを、そうでは無いんだけれど、ぁあ」
『誤解を解く為にも、やはりお招きした方が良さそうですわね』
「そうだな、あの子への伝書紙に、そう付け加えておこう」
『ですわね』
同胞よ、もし貴女様が人面獣心で無いのなら、どうか味方だとご理解下さい。
「ネオスェ」
サンジェルマン伯爵家より、ローシュ宛てに招待状が届いてしまった。
けれども内容としては。
『ローシュ、貴女を愚弄した子女を処罰している最中なので、是非にも観覧しに来て下さい。と』
「観覧、見学では無く?」
『はい』
《ルツさん、見せ物として楽しめる、と言ってます?》
《ですね》
『行こうよローシュ、ざまぁ、見に行こうよ』
「敵地かも知れないのに?」
ローシュが心配しているのは、怒られる事、余計な事をしてしまう事。
そして巻き込まれてしまう事。
《なら別れて行動しましょうか、ネオスとローシュとアーリス、私とファウスト》
《いやだぁ》
「ファウスト、全滅より生き残りが最優先、ココからの逃げ道は覚えましたね?」
《シャモニーでキャラバンと合流して、スイスを抜けてドイツ、ポーランド、ウクライナ回りで行くか。ヴェネツィアから海路か、です》
「船も、馬も、乗り物がリレー方式だからこそ安全で早い。けれどもお世話になるなら?」
《お手洗いを綺麗に使って、手を良く洗う、お風呂に入れたら毎回服も綺麗にする》
「そう、移動の要は病気を広めない、我儘せずに我慢は言わない」
《でも今は逃げて無いですよ?》
「いつ逃げる事になるか分からない状態、逃げてるのとさして変わらないの」
《えー》
《この学園は、バール州のカネル、この山を抜ければグリモーの港も使えますから。私達は馬を使って移動し、待つか同時に到着する様にするか》
《じゃあ先で待ってます、情報収集しないとですし》
「よろしくねファウスト、ルツ」
《では、杞憂も一先ずは先送りに出来ましたし、準備しましょうねローシュ》
「確かに1週間の滞在だけど、そう溜まっても」
《私には害が有るかも知れませんよ。ファウストとネオスはクリスティーナ夫人に招待状の返事と、旅の予定を伝えてきて下さい》
《はーい》
『はい』
そうして伝え戻ると。
《あー》
『ファウスト、勉強をしに戻っていて下さい』
《はーい》
『アーリス、コレが実際の行程表です』
『はーい』
ルツは最近、ワザと私を煽る様な真似をする。
それにアーリスも。
『では、以上です』
『ちゃんと手を洗って優しく触ってる?』
『余計なお世話ですよアーリス』
『だって強く刺激し過ぎると、イザって時に役に立たなくなるかもだよ?』
『知ってますから構わないで下さい』
『そんなに不機嫌になるならローシュに相手して貰えば良いのに』
『私を構うより、ローシュを構えば良いのでは』
『今日はルツの日だから邪魔出来ないもん』
『あぁ、暇なら挨拶でも覚えて下さい』
『はーい』
『学園ではちゃんと返事をして下さいね』
前なら、それこそ鳥の鳴き声と同じで気にならなかった。
けれど。
『休憩してくる』
『はい』
何で我慢するんだろ、ネオス。
『ファウストは、ローシュより良い女がこの世に居ると思う?』
《30過ぎで?それとも見た目年齢通り?》
『どっちも』
《ナポリには居なかったし、ココにも居ないと思う》
『だよねぇ』
《お胸を出してるのは寒そうだし、下品だと思います》
『下品の意味、分かってる?』
《勃起チ〇コモロ出し》
『あぁ、うん、下品だね』
《見せるならお金を貰った方が良いと思う、それか特別な人にだけ見せるか》
『うん、そうだね、誰にでも見せてるって価値が低そうに思えるからね』
《でも、ローシュ様のレースのケープは、逆にエロい》
『わかる』
《余計に気になる、見ちゃう》
『隠す方が逆にエロい』
《不思議!》
『ね』
今夜はこのまま下でファウストと一緒に寝ようかな、ネオスの邪魔をしても可哀想だし。
「はぁ、学園に行く服が無いからって、服を仕立てる所からなんて」
《アナタのレースのケープが逆にエロスを呼び起こす、賛成多数で可決されましたので。透けぬ様、シルクと綿で付け襟を作っただけですよ》
クーちゃんが大好きなロココだからこそ、新しい事はしたくなかったのに。
ルツやネオスがクリスティーナと相談して、新しいファッションとして、今のドレスにもボディスにも使える付け襟を製作させてしまった。
「モスリンって綿なのね」
《ソチラではメリノウールとの混同から、毛織物がメリンス、モスリンとなったそうで。本来は17世紀に広まる筈の品物、向こうではダッカモスリンと呼ばれる滅ぼされた品物から広まったそうです》
「クーちゃんね」
《はい》
「はぁ」
あの子が居たら、あの子に沢山着せて遊ぶのに。
《ローシュ様》
「まぁ、ファウスト、似合うけれど」
《変装用です、どうですか?》
「似合う、超可愛い」
《えへへへ》
「この、1着だけなの?」
《ドレスも有りますよ》
「けど、嫌じゃないの?」
《嫌じゃないです、褒められるのは嬉しいし、自分でも似合うと思います》
「可愛げが無いのが可愛いわ、その、着てきてくれる?」
《はい》
あぁ、凄い現実逃避方法だわね、コレ。
《1番、似合っていたのは誰ですかね》
「ネオスね、私と背が同じだし、綺麗で可愛い。ルツはもう貴婦人が過ぎてちょっと怖いのよ、背も有るから王族みたいな迫力で。アーリスとファウストは可愛い」
《女性体なら》
「ルツは、エロが過ぎる、ネオスは真反対で素朴。アーリスって真ん中って言うか、全く変わらないのよね、不思議」
《性別に拘らないからこそ、そこかも知れませんね》
「可愛い男の子が好きだからって、まぁ、イケメンは確かになりたいとは思わなかったけれど」
《ファウストとネオスに嫉妬したので、今日は私だけの日でお願いしますね》
「この前もしたでしょう」
《まだ出発までに日はありますし、この位が丁度良いかと》
「待って、隣にネオスが」
《音は聞こえない様にしてあるんですから、大丈夫ですよ》
「本当に?この前は凄い余所余所しくされたんだけど?」
《男子にも事情が有るんですから、それでは》
「あー、夢精位は別に気にする必要は無いでしょうに」
《かも知れませんし、まぁ、難しい年頃ですから》
「あぁ、ネオスを宜しくね」
《なら、教えるつもりで今日はしてみましょうね》
覗かない。
その選択肢も有るんですけど、学べる、得られるとなると無理でしょうね。
本当は、私達家族がお願いして作って頂いた、謂わば学園の先駆け。
歴史を踏襲しながらも、差別や文化の消滅を避けられる様に、けれども無理無く時代を推し進めるのが私達一家の役目だと考え、行動している。
でも思う様には行かないモノで。
『お嬢様、先日の報告に有ったローシュ嬢を謗った者が入学して参りましたが』
何と嘆かわしい事か、コチラのミスで優秀だろうと思われる方を傷付け、すっかり閉じ籠らせてしまったのだ。
神々と祖父母により同胞だと聞いていたので、丁重におもてなしを、とクリスティーナの家に預かって貰ったのに。
糞女が若いからと言って、例え祖父や祖母が許しても、私は絶対に許さない。
《あぁ、なら死刑ね》
『お嬢様、流石に死刑は無理です。最も品位の高いとされるクラスに入れるか、最低クラスに入れるかのご相談で御座います、どうぞ評価表で御座います』
品行方正、清廉潔白とは真逆。
品性下劣、佞悪醜穢、風紀紊乱、傷風敗俗。
遊惰放蕩、白眼青眼、俗臭芬々、野卑滑稽、奢侈淫佚、荒淫無恥。
幸いにも、今まで盗む事が無かったからマシはマシ。
けれども、こんな子女を野放しにしていては。
流連荒亡。
この国は滅びてしまう。
《Les agriculteurs Péquenaudか、fermier redneck、田夫野人の称号を授け、最高位のクラスへ入れたいと私は考えています》
『はい、ではコチラにご署名を』
この学園は私の一存では動かない。
流石に紳士淑女も預かるのだから、家族会議が必要なのよね。
「うん、評価表の言葉を使わず、見事に表現した。このままこの2つ名を使わせよう」
『そうね、最高位クラスへの配属も。まぁ、下劣な民に慣れて頂くには良いでしょう、善き見本だけでは純粋培養と化して直ぐにも病んでしまうでしょうし。はい、承認』
「それと」
『彼女の事よね、すっかり怯えてしまっているそうよ、お義母様がどうにかならないのかと気にしているのよね』
「その件だが、学園へ招いてはどうだろうか」
『まぁカンネに?綺麗な海沿いを満喫して頂こうと思っていたのだけれど』
「イエールまで出れば、また海だし、海が好きな人かどうかは分からないんだ。意外とカンネの自然を気に入ってくれるかも知れない、お断り出来る様に誘えと伝えておこう」
『そうね、私達一家の事を知りながらも接触して来ないのは、単に機会を伺っているだけかも知れないものね』
「流石、僕の聡明な妻だ、愛しているよマリー」
『ふふふ、私もよ、けど今は書類仕事を終わらせましょうね』
僕ら家族は、転移者の子孫。
元は曾祖母の一家がこの地へ、神へと遣わされ、そのまま居着いたと聞いている。
曾祖母は医師だったらしい、そしてその娘夫婦は料理人と教師。
そして僕の母である3姉妹はそれぞれに比較宗教学、服飾、農業を学んでいる最中だった。
そして家に家族が揃っていた時、災害が起き、気が付けばこの地に居たらしい。
遠い先の時代、将来、未来と呼ばれる新しい時代でフランスと呼ばれるとされる、このフランク王国へ。
神に遣わされたのだ、と。
ただ、私もマリーも、それこそ娘のアンナも神々の姿を認識する事も声を聞く事も出来ない。
神々に会えるのは、それこそ女王と国婿のみ、しかも就任時だけらしい。
そこでもし神々がお見えにならなければ、女王や国婿として認められず、そのまま廃嫡されると言われている。
だが、嘗ては民ですらも神々と会い、話が出来ていたらしい。
が、忌むべき事象が頻発した事で、神々は手を引く事になったのだと。
その一端を担ったのが、魔王の分化、およそ200年前。
一神教の爆発的な広まりにより、7つの大罪と呼ばれる概念が一部で定着をし、魔王から暴食と呼ばれる者が分化した。
そうした事象を許してしまった全世界の人々への罰だ、と各国で大騒ぎとなり、一神教が排斥される流れとなった。
だが既にシルクロード沿いでは一神教が定着しており、争いを避ける為、各国では勧誘と布教活動のみが禁止とされた。
その者達が信じる神を否定するのは、自分達の神をも否定する事になるかも知れない。
そして、その神に救われる者がいつか現れるかも知れないから、と我が国も無理に追い出す事はしなかったのだが。
度重なる魔女狩りの復活、そして悪習因習を復活させようと。
何故か、同胞らしき者が暴走を繰り返し、最近ではルーマニアへも突撃した。
そしてそれを退け、魔女とされる者を保護しているのが、ルーマニアの大魔女。
祖母と同じ黒い髪と目、適度に日焼けした肌色を持つ、東洋の魔女だと。
「あぁ、我らは学ばかりで、実は怒らせてしまっていたのだとしたら」
『各国を穏便に出立しているからこそ、隣国からも不穏な噂は聞かないのですし。そう、ヒップヒップな方々とは違うのでしょう』
「匹夫匹婦、ぁあ、多夫一妻制を気にしているんだろうか」
『ぁあ、貞淑であれ、そう教えを広めている最中ですものね』
「そこを、そうでは無いんだけれど、ぁあ」
『誤解を解く為にも、やはりお招きした方が良さそうですわね』
「そうだな、あの子への伝書紙に、そう付け加えておこう」
『ですわね』
同胞よ、もし貴女様が人面獣心で無いのなら、どうか味方だとご理解下さい。
「ネオスェ」
サンジェルマン伯爵家より、ローシュ宛てに招待状が届いてしまった。
けれども内容としては。
『ローシュ、貴女を愚弄した子女を処罰している最中なので、是非にも観覧しに来て下さい。と』
「観覧、見学では無く?」
『はい』
《ルツさん、見せ物として楽しめる、と言ってます?》
《ですね》
『行こうよローシュ、ざまぁ、見に行こうよ』
「敵地かも知れないのに?」
ローシュが心配しているのは、怒られる事、余計な事をしてしまう事。
そして巻き込まれてしまう事。
《なら別れて行動しましょうか、ネオスとローシュとアーリス、私とファウスト》
《いやだぁ》
「ファウスト、全滅より生き残りが最優先、ココからの逃げ道は覚えましたね?」
《シャモニーでキャラバンと合流して、スイスを抜けてドイツ、ポーランド、ウクライナ回りで行くか。ヴェネツィアから海路か、です》
「船も、馬も、乗り物がリレー方式だからこそ安全で早い。けれどもお世話になるなら?」
《お手洗いを綺麗に使って、手を良く洗う、お風呂に入れたら毎回服も綺麗にする》
「そう、移動の要は病気を広めない、我儘せずに我慢は言わない」
《でも今は逃げて無いですよ?》
「いつ逃げる事になるか分からない状態、逃げてるのとさして変わらないの」
《えー》
《この学園は、バール州のカネル、この山を抜ければグリモーの港も使えますから。私達は馬を使って移動し、待つか同時に到着する様にするか》
《じゃあ先で待ってます、情報収集しないとですし》
「よろしくねファウスト、ルツ」
《では、杞憂も一先ずは先送りに出来ましたし、準備しましょうねローシュ》
「確かに1週間の滞在だけど、そう溜まっても」
《私には害が有るかも知れませんよ。ファウストとネオスはクリスティーナ夫人に招待状の返事と、旅の予定を伝えてきて下さい》
《はーい》
『はい』
そうして伝え戻ると。
《あー》
『ファウスト、勉強をしに戻っていて下さい』
《はーい》
『アーリス、コレが実際の行程表です』
『はーい』
ルツは最近、ワザと私を煽る様な真似をする。
それにアーリスも。
『では、以上です』
『ちゃんと手を洗って優しく触ってる?』
『余計なお世話ですよアーリス』
『だって強く刺激し過ぎると、イザって時に役に立たなくなるかもだよ?』
『知ってますから構わないで下さい』
『そんなに不機嫌になるならローシュに相手して貰えば良いのに』
『私を構うより、ローシュを構えば良いのでは』
『今日はルツの日だから邪魔出来ないもん』
『あぁ、暇なら挨拶でも覚えて下さい』
『はーい』
『学園ではちゃんと返事をして下さいね』
前なら、それこそ鳥の鳴き声と同じで気にならなかった。
けれど。
『休憩してくる』
『はい』
何で我慢するんだろ、ネオス。
『ファウストは、ローシュより良い女がこの世に居ると思う?』
《30過ぎで?それとも見た目年齢通り?》
『どっちも』
《ナポリには居なかったし、ココにも居ないと思う》
『だよねぇ』
《お胸を出してるのは寒そうだし、下品だと思います》
『下品の意味、分かってる?』
《勃起チ〇コモロ出し》
『あぁ、うん、下品だね』
《見せるならお金を貰った方が良いと思う、それか特別な人にだけ見せるか》
『うん、そうだね、誰にでも見せてるって価値が低そうに思えるからね』
《でも、ローシュ様のレースのケープは、逆にエロい》
『わかる』
《余計に気になる、見ちゃう》
『隠す方が逆にエロい』
《不思議!》
『ね』
今夜はこのまま下でファウストと一緒に寝ようかな、ネオスの邪魔をしても可哀想だし。
「はぁ、学園に行く服が無いからって、服を仕立てる所からなんて」
《アナタのレースのケープが逆にエロスを呼び起こす、賛成多数で可決されましたので。透けぬ様、シルクと綿で付け襟を作っただけですよ》
クーちゃんが大好きなロココだからこそ、新しい事はしたくなかったのに。
ルツやネオスがクリスティーナと相談して、新しいファッションとして、今のドレスにもボディスにも使える付け襟を製作させてしまった。
「モスリンって綿なのね」
《ソチラではメリノウールとの混同から、毛織物がメリンス、モスリンとなったそうで。本来は17世紀に広まる筈の品物、向こうではダッカモスリンと呼ばれる滅ぼされた品物から広まったそうです》
「クーちゃんね」
《はい》
「はぁ」
あの子が居たら、あの子に沢山着せて遊ぶのに。
《ローシュ様》
「まぁ、ファウスト、似合うけれど」
《変装用です、どうですか?》
「似合う、超可愛い」
《えへへへ》
「この、1着だけなの?」
《ドレスも有りますよ》
「けど、嫌じゃないの?」
《嫌じゃないです、褒められるのは嬉しいし、自分でも似合うと思います》
「可愛げが無いのが可愛いわ、その、着てきてくれる?」
《はい》
あぁ、凄い現実逃避方法だわね、コレ。
《1番、似合っていたのは誰ですかね》
「ネオスね、私と背が同じだし、綺麗で可愛い。ルツはもう貴婦人が過ぎてちょっと怖いのよ、背も有るから王族みたいな迫力で。アーリスとファウストは可愛い」
《女性体なら》
「ルツは、エロが過ぎる、ネオスは真反対で素朴。アーリスって真ん中って言うか、全く変わらないのよね、不思議」
《性別に拘らないからこそ、そこかも知れませんね》
「可愛い男の子が好きだからって、まぁ、イケメンは確かになりたいとは思わなかったけれど」
《ファウストとネオスに嫉妬したので、今日は私だけの日でお願いしますね》
「この前もしたでしょう」
《まだ出発までに日はありますし、この位が丁度良いかと》
「待って、隣にネオスが」
《音は聞こえない様にしてあるんですから、大丈夫ですよ》
「本当に?この前は凄い余所余所しくされたんだけど?」
《男子にも事情が有るんですから、それでは》
「あー、夢精位は別に気にする必要は無いでしょうに」
《かも知れませんし、まぁ、難しい年頃ですから》
「あぁ、ネオスを宜しくね」
《なら、教えるつもりで今日はしてみましょうね》
覗かない。
その選択肢も有るんですけど、学べる、得られるとなると無理でしょうね。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【宮廷魔法士のやり直し!】~王宮を追放された天才魔法士は山奥の村の変な野菜娘に拾われたので新たな人生を『なんでも屋』で謳歌したい!~
夕姫
ファンタジー
【私。この『なんでも屋』で高級ラディッシュになります(?)】
「今日であなたはクビです。今までフローレンス王宮の宮廷魔法士としてお勤めご苦労様でした。」
アイリーン=アドネスは宮廷魔法士を束ねている筆頭魔法士のシャーロット=マリーゴールド女史にそう言われる。
理由は国の禁書庫の古代文献を持ち出したという。そんな嘘をエレイナとアストンという2人の貴族出身の宮廷魔法士に告げ口される。この2人は平民出身で王立学院を首席で卒業、そしてフローレンス王国の第一王女クリスティーナの親友という存在のアイリーンのことをよく思っていなかった。
もちろん周りの同僚の魔法士たちも平民出身の魔法士などいても邪魔にしかならない、誰もアイリーンを助けてくれない。
自分は何もしてない、しかも突然辞めろと言われ、挙句の果てにはエレイナに平手で殴られる始末。
王国を追放され、すべてを失ったアイリーンは途方に暮れあてもなく歩いていると森の中へ。そこで悔しさから下を向き泣いていると
「どうしたのお姉さん?そんな収穫3日後のラディッシュみたいな顔しちゃって?」
オレンジ色の髪のおさげの少女エイミーと出会う。彼女は自分の仕事にアイリーンを雇ってあげるといい、山奥の農村ピースフルに連れていく。そのエイミーの仕事とは「なんでも屋」だと言うのだが……
アイリーンは新規一転、自分の魔法能力を使い、エイミーや仲間と共にこの山奥の農村ピースフルの「なんでも屋」で働くことになる。
そして今日も大きなあの声が聞こえる。
「いらっしゃいませ!なんでも屋へようこそ!」
と
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)
@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」
このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。
「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。
男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。
「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。
青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。
ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。
「カクヨム」さんが先行投稿になります。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる