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始まり。

2日目の午後。

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 お2人を眠らせたと言う事は、次は私へのお説教でしょうかね。

『説教されると思っているね』
《はい》
『もう、何て意地悪な子なのかしら』

《褒めて伸ばすにしても、限界が有りますので》
『ならあのキスマークは何よ』

《彼に観察力の低さを自覚して貰う為です》
『だけ?』

《意識して頂くには、良いかと》
『あのね、既にこの子は離縁してるの、しかも父親と大事な親戚の子とも、立て続けに2人もよ』
『ココでも大きなだろうに、心の負担を舐め腐って対応してはいけないよ』

《それは、失礼しました。本人にも改めて謝罪を》
『ダメよ、私を方便に使わないで頂戴。それは私と彼女の信頼を崩す行為、違うアプローチをしないと口を縫い合わせるわよ』
『だそうだ、後は自分で考えなさい、エルフの坊主』

《はい、ありがとうございます》

『じゃあ、ダイダロスに魔導具を作らせに行くから、何か有ったら風の精霊達イェル・ルサリィ彼女ディンセレに伝えさせて』
《はい》
『それから妖精女王ズーナも紹介しなければね。忙しくなるんだ、くれぐれも、頼んだよ』

《はい》

 離別に死別。
 だからこそ泣いていたのかも知れないと言うのに、以降の接し方を考えなければ。



 目が覚めると覆いを取られたクリーナちゃんが横で、寝てる。
 眼福。

 いや、こんなのと同衾は嫌だろう、早く離れないと。
 ついでに一服だ。

「はぁ」

 神様も綺麗だったし、ココ天国かしらね。
 けど魔獣が居るなら、王様には地獄よな。

 けど、あの子もココに来れてたら、天国だとか疑うだろうか。

 いや、なら転生が良いだろうな、外見を嫌ってたし。

 あぁ、でもココで生きててくれないかなぁ。

《失礼しま、大丈夫ですか》
「あぁ、目にゴミが入ったので」

《大量に入ってしまったみたいですね》
「少しだけですよ、涙が出易いんです」

《診ましょうか》
「大丈夫です、直ぐに取れたので。顔を洗いたいんですけど、何か」

《煙が見えたのでお茶をと思いまして、廊下で待ちましょうか》

「一応、そうして下さい」



 隠れて泣かせると言う、男としてもやってはいけない状況を作ってしまった。
 洗面所から戻った彼女には完全に顔を逸されてしまうし、冗談半分でも、もう少し控えるべきだった。

《お茶をどうぞ》
「どうも」

 手拭きで目を冷やす完璧さ。
 治させる隙も作らない人なのに、どうして離縁する事になったのだろう。

《その首筋の事ですが、嫌な事を思い出させてしまったなら謝らせて下さい》
「いや、いや、良い思い出にさせて頂きますので大丈夫です」

《冗談半分で、半分は本気ですので》
「美醜の価値観が狂い過ぎでは」

《神々とは接する機会を設けさせて頂いていますが、ココでの価値は強かさや強さ、才能を評価するモノなのです》
「で、本来のココでの一般的な外見の評価は」

《幼い、飽満、個性的》
「でしょうね」

《少々偏った見方をされるでしょうが、可愛らしいと思いますよ》
「口の上手くて面白いクソな人と結婚してたり、顔だけで選んで失敗したり、男を見る目が無いので誂わないで貰えますかね。仕事仲間とは軋轢を生じさせたく無いので、控えて下さい」

《失礼しました》

 どう言い訳をすれば、本心から惹かれているのが伝わるのか。

『ローシュさん?』



 啜り泣く声が聞こえた気がして。
 ローシュさんがまた泣いているのかと思って。

「おう、おはよう」

 体を起こすと、ソファーに寝転がるローシュさんが、目に手拭いを載せていて。
 少しだけ困った表情にも見えるルツさんと、目が合って。

《あぁ、君は瞳が茶色いんですね》
『あ』
「もう大丈夫だべ、カツラ辛いでしょう」

『はい』
《髪も同じ色なんですね》

『コレは染めてるんです、脱色です』
「パーマも?」

『はい』
「似合う、可愛い」

 褒められれば褒められる程、罪悪感が湧いてくる。
 僕は真っ先に外見を批判的に見てしまったし、まして中身についても考え無かった。

 妹や父親と同じ事はしたく無かったのに、結局は全く同じ事をしてしまった。

 けど謝るのは2度傷付ける事になる、そんな事を思っていたのか、そう見られてたのかと。
 更に傷付ける事になる。

『ありがとう、ございます』

 本当なら、いつもなら嬉しく思える筈なのに、全く嬉しくない。



 空気重い。
 気まずいけど、怠いから空気を変える気も起きない。

 やっぱり面倒だな、人間関係。

《それで、ソチラに浄化魔法を試そうとしていたのでしょうか》
『あ、はい、そうなんです』

《なら私に試させて頂けますか》
『じゃあはい、コレでお願いします』

 手拭いを退けて見てるんだけど。
 浄化されたんだかされて無いんだか、全く分からんのよね。

《分解されなかったので大丈夫だとは思いますが、全体に掛けるには、魔導具で代用品を頼んでからにしてみますか》
『出来るならお願いしたいんですけど、コレも可能かどうか聞いて貰えますかね』

《はい、ではベランダに精霊をお呼びするので、そのお皿をお願いします》
『はい』

 興味本位でベランダを覗くと、トンボ羽根を背負った幼女が飛んで来た。

「ょぅじょ ヵワィィ」
『ローシュさん?』
《コチラは風の精霊達イェル・ルサリィ彼女ディンセレです》
《宜しゅう》

「どうもローシュです」
『あ、クリーナです』
《ふむ、コレが頼み事かえ?》
《はい、より良い複製品が可能で有れば、お願いしたいそうです》

《ふむ、ふむふむ、可能じゃが何をする気なんじゃ、じゃと》
『変装して王様に見合う方を探したいんです』
「いつの間にそんな話に」
《アナタが眠った直後ですね》

《じゃったら既に変身が可能じゃろ》
『けど万が一を考えて予備が欲しいんです』
「あぁ、魔法が解除された時とか、魔法が使えない場所とか有る?」
《はい、特別な空間では、場合によっては解除されてしまいますね》

《ふむ、ふむ。バラウールに案内させて姿を見せてくれ、じゃと》
「あ、採血どうするよ」
《健康はアリアドネ様が保証してくれましたので、後ででも大丈夫ですよ。では行きましょうか》
『え』

 ルツさんが指笛を吹くと、渋い黄金色の翼竜が目の前に現れた。
 しかもルツさんが取り出した手綱を竜に付けると、金色に変化した。

 ファンタジー、マジファンタジー。

「コレは」
《コヤツはスクロモナールの優等生でな、竜が操れるんじゃよ》
『スクロモナール?』
《説明はアナタにお願いしますよディンセレ、移動中は口を閉じて無いと舌を噛むので》

《しょうがないのぅ》

 Scholomanceスクロモナールとは地下に有る魔法学校だそうで、卒業生をSolomonariソロモナリアと呼ぶんだそうだ。

 入学と同時に赤毛になるらしく、毎年7人~13人が入学し、最短で7年間太陽を浴びる事も無く学び続け。
 最優秀者だけが竜を操れるのだそう。
 尚、入学資格は生まれる時に赤い胎盤に包まれたままで生まれた子、らしい。

 そして落第したり9年間の間に卒業出来なければ、Vântoaseヴァントワーセと言う強風を操る女性の精霊になったり、モロイやストリゴイと言う吸血鬼の様な何かになったり、時には狼男に。

《正確にはロマやジプシーと言った商隊に流れてたんですが、今では商隊の護衛程度ですよ》
《これこれ、面白おかしく話してやってると言うのに》
「いや喋れてるじゃん」

《話し好きのディンセレに譲っただけですから》
《それでコヤツらには魔法の袋マジックバッグが与えられるんじゃよね~》

 斧や杖に白樺の手綱、そして風を閉じ込めた木の瓶と、知恵の書。

「ソロモンさん?」
《まぁ、創始者と言うんじゃろか、アリアドネが絡んで絡んで、デュオニソスのワインで落ちて情報を渡した。と言う感じじゃよねぇ》

「俗物的で好きだわぁ」
《じゃろう、良い奴なんじゃよ、くふふふ》
《まだ全てを話して無いですし、どうぞ、お譲りしますよ》

 そして首席達はウェザーメイカーとも呼ばれ、天候も操れるらしい。

「凄いじゃんルツさん、それでお医者さんってマジ凄いわ」
《じゃが死体解剖なんぞしておるでな、近頃は死霊魔術師ネクロマンサー等と言われておるんじゃよね》

「いや解剖大事よ、死因の特定にも繋がるんだし」
《ほう、そちもネクロマンサーの方じゃったか》

「いや解剖だけでなれるなら、確かに、そうか」
《冗談を鵜呑みにしないで下さいね、霊媒師を担ってる場合の呼称でも有りますから》

「霊媒かぁ、ご遺体が無いと呼べない?」
《そうですが、誰か呼び出したい方がいらっしゃるんですか》

「いや、うん、安眠してたら可哀想だし。転生してたら無反応なのかな」
《どうでしょうね、そも本人かどうか、知識を使って本人のフリをしている何かか区別が付かないでしょうし。実際に私は試した事は無いんですよ》
《コレでも結構真面目なんじゃよねー》

「真面目ねぇ」
《割に、じゃよ》

「じゃなきゃ首席は無理か」
《じゃよ!》
《後は、竜人ズメウ族ですかね》

《そうじゃな。ズメウは強いんじゃけどねぇ、ちょびぃっと、バカなんじゃよね》

 ザっと言うと脳筋らしい。
 けど容姿が良いそうなので、モテモテ。

 成程。

「ほう、だからルツさんは敢えて容姿を無視するのか」
《どうじゃろねぇ》



 僕は舌を噛むのが怖くて黙っていたけど、話が半分も理解出来無かったから黙っていた面も有る。
 だって、ネクロマンサーって単語は分かるけど、そう分かってても頭が追い付かない感じで。

《もう着きますから、本当に口を閉じてて下さいね》

 そうして着陸した場所は、空中都市と言うべきなのか。

「浮島?」
《じゃよ!》

 そう、ローシュさんみたいに的確な言葉が直ぐに見当たらない。
 間違えて怒られたくない。

「浮島だってお、端怖いわー」

 けどニコニコしてる。

『あ、ローシュさんの目』
《コレ位はワシでも可能じゃもん》
「ありがとうございます」

《それもじゃけど、コヤツ目が少し不自由じゃな》
『そうだったんですか?』
「いやー、視力は良い筈なんだが」
《少し診せて貰えますか》
『おい、イチャ付くな、殺すぞ』

『お邪魔してます、クリーナです』
「ローシュです」

『おう、ローシュ、ココに何か見えるか』

「いや、何も、空しか見えないんですが」
『ローシュさん、キラキラが見えて無いんですね?』

「キラキラ?」
『魔素かと、多分』
『だな、ほれ』

「眼鏡」
『ほれ、ディンセレ』
《ほぃ》

 風の妖精が魔法を使うと。

「ほわぁ」
『アリアドネ嬢から聞いてたんでな、作って待っていた』

「ありがとうございます。それであの、コッチが巻き込まれた方なんですかね?」
『巻き込まれた?あぁ、転移魔法に、か』
『その、僕はローシュさんに巻き込まれたのかなって思ってたんですけど』
《救える者を、じゃし、2人を招いたのかも知れんよ》

「おぉ、じゃあ2人共に必要なのか」
『そうなんですかね?』
『お前の成果次第だろう、どれ』
《お願いしたいのはコチラと、コチラです》

『ほう、コレは初めて見るな』
『それは眼球に入れるレンズなんです、そのカツラと似た素材で作られてて、どちらかと言えば石油、鉱物系です』

『それがココまで柔らかくなるモノか』
『加熱して膨張させてって感じですけど、そこまでしか僕には分からなくて、すみません』
「同じく、西暦2000年以降から来ましたが、さっぱりです」

『そうか。それで、変装用だったか』
『はい、けど禁忌なら地毛の色で、長い髪をお願いしようかと思ってます』

『介入についても知っているんだったな、良いだろう。アリアドネ嬢』
『はいはい、はい、はい』




 アリアドネさんにオデコをツンと押され、上に向けさせられると同時に頭が痒くなった。

「ほ、しゅごい」
『でしょー』
『お嬢の髪が、かみのけ座になったとココでは言われているんでな、髪の守護もしている』

 簡単に足元まで髪を伸ばすとか、凄いな神様。
 髪様?

「ありがとうございます」
『まだまだ、コレから、よね』
『おう。ルツ、昨今の女ならどの程度まで切って良いんだ』
《その、限界点は顎のラインまでかと》

「意外、もっと長くしてるのかと」
《平民なら、なので》

「ぁあ」
《貴族でしたら年相応に、伸ばしたままです》
『あら、ならこの位ね』
『結構、お前は年を取ってるんだな』

「はい」
『この子はココ位』
『あぁ、意外と年を取っているんだな』
『はい、一応、成人済みです』

「一旦、貴族用のカツラを仕立てて頂こうか?」
『ですね』
『よし、切るぞ』

 髪に刃が入った様な感覚も無しに、僅かに頭が楽になった。
 そして隣りのクリーナも。

「何したって似合うなぁ、可愛いわ。ワシ眉毛を何とかしないとな」
『まだだ、お嬢』
『はいはい』

 また髪が伸びて、切られ、伸び。

 何処かで機械的な何かが高速で動く音を聞きながら、どんよりとした空を眺める。
 髪の毛って、売れるのかしら。

「あの、ルツさん」
《ルツで良いですよ》

「髪の毛は幾らで売れるの」
《アナタ達の髪の毛は売れません、価値が高過ぎますので売れません、かなり魔力が含まれていますから》

「じゃあ爪にも?」
《はい、僅かですが》
《地を肥やすに良いんじゃよ、豊かになるでな》

「と言う事は土地が痩せてる?」
《はい、全土では無いのですが、前王を追い詰める為、仕方無く》

『あの、爪ヤスリとかって有ります?』
《あぁ、はい、どうぞ》
「かわヨ」

 あ、ヤベぇ、年甲斐も無く。

『細工物が好きか』
「まぁ、はい、石のカッティングとか凄いし」
《ヨボヨボはこう言うモノに無関心じゃったものね》 

『あぁ、だがまぁ、アレはアレで役に立つ情報を持っていたしな』
「そこ聞かせて貰えますかね、後で、頭が痒い」
《うむ、温泉が有るでな、入って来ると良いじゃろ》

『あぁ、仕立てておく』
「ありがとうございます」



 ローシュさんと背中合わせに洗い場で洗って、白く濁る温泉に入って。

『何か、まだ痒い気がするんですけど』
「だよね、温まったらまた洗おう」

『その、長いと大変ですね、髪って』
「面倒しか無いけど、お洒落が好きな人は手入れも楽しいんじゃない?苦にならなそう」

『お洒落に興味無い感じなんですか?』
「まぁ、もう年だから面倒しか無い、全自動で洗われたい位やな」

『アレ、垢すりとか良いですよね、頭まで洗ってくれるってヤツ』
「やった事有る?」

『無いです、女性にされるって聞いたので』
「あー、スーパー銭湯超楽しいよね」

『ですよね、偶の贅沢に行ってました』
「あの近所の?」

『はい、けど3回位ですけどね、1日居るとそれなりに使っちゃうし』
「分かる、飲食代がね、マンガ読み放題にしてもトントンになっちゃうし」

『そう言う、マンガ喫茶とかって行った事無いんですよね』
「えー、じゃあ何してたのよ」

『サウナと、カラオケの練習に』
「カラオケ屋行った方が安くない?」

『練習と、それこそ見られるのが嫌で』
「あー、偶に目が合うもんな、通路の人と」

『ドリンクバーで鉢合わせた時とか。何か、自意識過剰なのは分かってるんですけど、コイツ独りで練習とかダサいって思われたくなくて』

「如何に開き直るか、だもんな」
『はい、そう言うのが苦手で』

「そっか。そろそろ洗い流すけど」
『あ、じゃあ僕もう少し入ってます』

「おう、すまんね」

 そして僕が禄な事も言えないまま、お風呂から上がると、魔導具が出来上がっていて。

 ショートベールにカラフルなカツラ達。
 それからベルトと一体型のバックに、シャトーレンに。

『わぁ、凄い、向こうでも欲しかったんですよ』
「ソレ、何?」
《シャトーレンですね、貴族用の装飾品です》

『鏡にお裁縫セットも、凄い』
「コレは?」

『シャトーレンポケットって呼ばれてましたけど』
《コチラではポシェットと呼ばれ、同じく貴族用です》

『シャトーレンって吊り下げ小物って感じで、キーチェーンとかハンドバックの原型かもって言われてるんですよ』
「けどコレはシザーバッグっぽいよね」
《仰る通り、刃物入れとして主に職人が使っていますね》
『コイツのはソロモンの加護なんでな、コレらの容量は見た目通りだ』

『でも凄い、可愛いですし、ありがとうございます』
《シャトーレンは目上、それこそ女主人が使うモノですから、コレはローシュさん用ですよ》

 別に自分用だって勘違いしたワケじゃないのに、何か、恥ずかしい。

「ルツはクリーナがそんなに好きなの?」
《いいえ、と言うか、どうすればそんな結論に至るのでしょうか?》

「好きな子程、虐めたくなる生理現象」
《私は好きな相手には優しくしますが》

「クリーナが、さも自分用だと勘違いしたかの様な物言いをしたやん」
《勘違いされては困るので釘を差しただけですよ》

「そんな勘違いをする子に見えますか」

《アナタの扱いからして、容姿としては良い方なのでしょう。そうした者は大概、何故か容姿が劣るとされる者を蔑み、疎かにしがちですから。ね?》
「いや、クリーナ、君の外見への判断自体は正しい、逆だって同じ様にガッカリするだろうから。大丈夫、ごめんね、こんなのと一緒で」
『違っ』



 言い切れない時点で、ですよね。

《転生者に外見だけで甘やかされ、利益を享受して来た者には気を付けろ。現にローシュさんにフォローさせ、おんぶに抱っこ、幼いにしても程が有るのでは》

「それ何を基準に言ってんのよ」
《ココでの騎士道精神を元に言っています。鍛えた様な形跡も無い、細くて華奢な体、しかも彼女よりも手が殆ど荒れていない》

「コレは肌が弱いのに面倒だから手入れをしてないだけ、しかも苦労してたって荒れない人も居る、そう外見で判断を」
《読み取れる情報には限りが有る、なら対応にしても反論にしても、出来る者と出来無い者の評価に差が出ても当然では》

「だとしても」
《庇われるばかりなのが良い証拠。しかも心身共に問題が無いなら男として彼女の身を守る為の道具を請い願うべきなのに、そのまま、年下の女性として身を守られ様としてますよね》

「そう言う作戦だったら問題無いでしょうが」
《庇い過ぎは過度な甘やかしと同じです、手を貸し過ぎては独り立ちが難しくなる、それとも一生面倒を見続けたいんですか?》

 嗜好、思想、それこそ生き方が異なるのなら分離は早い方が良い。
 後々、中枢を担った状態で袂を分かたれるとなれば、それこそ迷惑でしか無い。

 なら、最初から離れて貰った方が早い。

『もう、ルツは意外と嫉妬深いのね?』
《全く、どちらが幼いんじゃろか》
『男同士の揉め事を見せるな坊主、はしたないぞ』

《いえ、別に》
『はいはい、まだまだ自覚が無いのね』
《困ったちゃんじゃのぅ》
『使い方は後で教える、今日はもう眠った方が良いだろう、何せ相当魔力を消費させたからな』

『そうね、おやすみなさい』
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