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第1章

ラグナロク。

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 昔々、大昔。
 バルドルと言う神が悪夢を見ました。
 その悪夢を父親であるオーディンが心配し、ニブルヘイムへ行き巫女の亡霊を呼び出し、悪夢の話しをします。
 バルドルは近い将来にヘルヘイムへ行くのか、死んでしまうのか、一体誰に…いくつかの問に「バルドルはヘズによって死ぬ」と、一呼吸の間に告げ巫女は消え去りました。

 そして母親であるフリッグは万物にバルドルを殺すなと命じると、生まれたばかりのか弱いヤドリギのヘストルティン以外が誓約しました。
 母親曰く「新芽で弱そうだったし、幼くて誓約出来なかった」と放置しました。

 その誓約の後、成人したバルドルに神々が祝福の儀式だと言って、ありとあらゆる物を投げつける遊びを始めました。

 盲目であったヘズと言う神は勿論参加しませんでしたが、ロキがヘズを誘うと、小さな小枝のヘストルティンを持たせました。
 ロキとヘズは言いました「ムカついたから、ちょっとケガさせて遊びを止めさせようと思った」と。

 ですがヘズが適当に投げた筈のヘストルティンは、心臓のド真ん中に命中してしまい、バルドルは死んでしまいました。

 母フリッグがオーディンへ、オーディンがヘルへ懇願します、バルドルを生き返らせてくれ。
 オーディンが大嫌いなヘルは言いました「全てのモノが泣けば生き返らせてあげる」と。

 様々な生き物、様々な神々が泣く中でロキだけは泣かず、バルドルを火葬用の船に乗せ海へ流しました。

 季節が何周しても尚、ロキは喪に服していました。

 ですが、バルドルを忘れた暇な神々達は再びいつもの様に宴を催すと、豊かなユグドラシル全土ではドンチャン騒ぎへと発展します。

 宴の7日目の事でした、あまりに長く煩い宴にロキが文句を言いに乱入すると、オーディンまでもが楽しそうにして居たのでキレてしまいました。
 そして他の神々をも1人1人罵倒していきます。
 オーディンも神々も反論しようにも言い負かされ続け、宴は戦場と化し、焦土と成り果てました。

 そこに狩りから戻ったトールが不穏な空気を察し、ロキを探しに宴会場に乗り込むと。
 見るも無惨な神々の姿を目の当たりにします。

 あまりの惨状にトールは「黙らないとミョルニルを突っ込む」とロキを制します。
 いくらロキが反論しても暴れても「黙らないとミョルニルを突っ込む」とトールはロキに言い続けました。

 ロキはとうとう言い負かす気も何も無くなってしまい「薄情者!バーカバーカ!」と、捨て台詞を吐いて近くの川へと消えてしまいました。

 そして本当の事を言われ悲しみ、逆上した神々は徒党を組みロキへの嫌がらせを開始します。
 先ず、ロキの子供達を捕らえ世界の隅の洞窟に追いやり、押し込めました。
 そして助けに来たロキをも閉じ込めると、洞窟の隙間から毒液を流し込み、ロキに苦痛を与え続け様としました。
 長い間、ずっと。

 そしてとても長い時が経ち、ロキや子供達の事がすっかり忘れられた頃。
 今だかつて無い厳しい冬が到来、様々な生き物が死に絶えていきました。
 厳しい気候に遠く忘れ去られた洞窟の入り口も崩れ、獣や神々が解き放たれ。
 ラグナログが始まります。

 先導者は勿論ロキ、炎の巨人スルトや他の神々と獣と共に殴り込みに行きます。
 そこへトールが真っ先に止めに入りました「争うのは後だ、今は太陽を復活させなくては」と、空を指差しますが、厚い雲に覆われ太陽は見えません。

 落ち着かせる為の嘘だと思ったロキは言いました「また神々の尻拭いか、例えお前でもバカは殺す」と、長年の鬱憤は限界突破しています。

 そこへすっかり弱々しくなったオーディンが現れ、今までの非礼を詫びるから、どうか力を貸してくれと言いました、それに続き他の神々も謝罪していきます。

 自分達より小さくなった神々を見て、怒りのやり場を失ったロキの子供達が一斉に叫ぶと、あの分厚かった雲が晴れました。

 オーディンの様に弱々しく燃える太陽に、いよいよこの世界が終わってしまうと皆が悟りました。

 最早怒っている場合ではありません、ロキや他の神々が相談し作戦を立てました。
 スルトの炎の剣を投げつけ太陽を復活させようと。

 ですが太陽は余りに遠く、神々だけでは到底届きません。
 皆で協力しなくては。

 そこでオーディンや神々が、ロキの子供達や獣、その他の神々に謝罪行脚。
 何とか協力を得ることが出来ました。

 ユグドラシルの根に戻っていたヨルムンガンドが、樹上のてっぺんまで行き、背伸びをし。
 ヘイルダムが長い虹の橋を掛け、フェンリがスルトを背に乗せ空へと跳ぶ。

 それでも太陽は遠く、スルトはフェンリを踏み台に跳躍し、炎の剣を投げ込みました。

 作戦は成功、炎の剣は太陽へ捧げられました。

 ですが、思う様に太陽は燃えてくれません、一部の神々が謝罪を渋り時間を浪費したため、炎の剣だけでは燃料が足りなくなってしまっていたのです。

 呆然とするスルトの左肩で、その異変に気付いたオーディンは太陽へと跳躍し、身を投げました。
 その意図に気付いた他の神々も、スルトの背を爆走し太陽へ飛び込んで行きます。

 ですがそれでも足りないと悟ったスルトは、最後の力を振り絞り、太陽へ飛び込みました。

 そして沢山の命を溜め込んだ太陽は復活し、光と熱を取り戻し、今でも輝いているのです。

 おしまい。
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