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11 仲間。

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「いや本当、初めて死んだよね」
『でも、良かった、レオン。ありがとうございます鈴木さん』
「いや、初めての事で何か不具合が有るかも知れない、後で改めて佐藤君か誰かに診て貰った方が良い」

「いや平気っぽいんだけど」
『念の為、一応ね』
「あぁ、呼んでくる」

「ありがとうございますスズキさん」
『ありがとうございます』
「遠藤君はもう休んでくれ、じゃあ、また」

 どうしたら人を殺したり、生き返らせる事で、充足感や満足感を得られるんだろうか。
 俺は不具合に対しての不安しか無いんだが、凄いな、物語の人物達は。

《お疲れ様です、スズキ様》
「メリッサ、不安で仕方無い、本当にあの彼は本人なんだろうか」

《他者が違和感を抱かない時点で本人です、例えそうで無いにしても、いずれは本人になるのです》

「なる、か」
《サトウ様とアニスが最終報告にといらっしゃっていますが、如何致しましょうか》

「あぁ、もう最終、最終報告なのか、事情聴取ではなく」
《はい》

「そうか」
《応接室でお待ちです》

「なら、ココへ来て貰うか」

「おぉ、転移だ」
『鈴木さん、何か有ったんですか?』
「いや、遠藤君の夫、レオン君の様子を見て欲しいんだ。初めて俺が蘇生させた、もしかすれば何か不具合が有るかも知れない」

『分かりました、では彼を診てから、ご報告させて頂きますね』
「あぁ、彼はこの部屋に遠藤君と居る、頼んだ」

『はい』

 気まずい。
 佐藤君の妻アニスに会うのは、コレが初めてで、一体何を話せば。

《アニス、今回はどうでしたか?》
「クソでしたねぇ、なので既に殺処分決定済みなので、もうこの世には居ませんよ」
「もう居ないのか」

《アニスは死霊使いですから》
「はい、強制成仏ですね」

「君達は、知り合いなんだろうか」
《姉の子です》
「もう居ませんけどね」

「何故、式に」
「サトウが遠慮したので私も遠慮させて頂きました、杞憂を招いてはメリッサ叔母さんにも迷惑でしょうから」
《式の後にお祝いの品を届けてくれたのはアニスですので、ご心配無く》

「そうか、すまない」
「いえいえ、寧ろまだまだ不安定なサトウの為でも有りますから」

「あぁ、そうか、未だに立ち直れないのか」
「いえ、寧ろ闇落ちに傾いてるので、まぁコレはコレでアリかと。可愛いので」

 ダークエルフに見えるんだが、どうしても巨人族にしか見えない。
 確かに、この巨体にしてみれば、佐藤君は可愛いのかも知れないが。

『お待たせしました、大丈夫ですよ鈴木さん、傷跡すら有りませんし接合も完璧ですから』
「あぁ、だが、魂の定着等はどうなんだろうか」
「あ、そこは私ですかね、大丈夫です。ココからでも分かるので見ましたが、体から魂が離れそうな感じもしませんから、大丈夫ですよ」

「そうか、ありがとう」

『あの、お聞きになりましたか、アニスの事』
「あぁ、どうやら遠い親戚になったらしいな」

『すみませ、ご不快かも知れませんが』
「いや、君の蘇生のお陰でレオン君を救えたんだ、気にしないでくれ」
「ほらスズキ様は優しく賢い方なんですから、アナタが気にしてばかりでは逆に気が咎めるとは思いませんか?」

『すみません、ありがとうございます』

「食事でも、どうだろうか」

「それは今度で、少し用事が有りますので、ね?」
『はい、ありがとうございます』
《では、改めてお誘い申し上げます。お疲れ様でした》

「はい、お疲れ様でしたー」

 明らかに嘘、だったんだが。
 一先ずは2人を家に転移させ。

「何故、嘘を」
《サトウ様のお覚悟が、まだでしょうから》

「あぁ、そうか、アニスさんは、良い人なんだな」
《はい、ですがアニスで大丈夫ですよ、サトウ様と同じ年だそうですから》

「アレで、か」
《はい、恵体の人間とのハーフですから》

「巨人族じゃないのか」
《流石に巨人族の相手は、無理かと、姉は小さかったので》

「あぁ」
《元々奔放な方でしたし、寿命でしたのでご心配無く》

「あぁ、そうなのか」
《はい》

 ダークエルフにも、色々と居るのだな。



「食べて、欲しいんです、美食さんに」

 私にも春が来た、とか思えないんですよね。
 だって見た目、少年ですよ?

 しかもカニバリズムの逆の性指向をお持ちで。

《いや私、もう人肉には満足したので結構なんですが》
「ご自分の肉を食したそうですけど、エルフはもしかしたら違うかも知れませんよ?」

《エルフ》
「はい」

 髪を上げると、長い耳が現れましたが。
 確かダークエルフと同じ長命で、単に生息地域が。

《あの、北欧からココまで来たんですか?》
「はい、ドリアードが僕にピッタリな人が居るからって起こしたので、はい、来ました」

 樹の精霊さん、何をしてるんですかね。
 まだまだ平和からは程遠い、寧ろダンジョンによって不安定さが増したとも言える世に出すなんて。

《ご厚意は有り難いんですが、まだ平和じゃないですし、別に肉を食べなくても私は死なないので》
「せめて味見でもしてみませんか?」

《その、別に吸血鬼では無いので》
「他の体液です、唾液とか涙とか」

 変態さんでらっしゃるんでしょうか、彼。

 いや、本当に男の子なのかすら怪しいんですけど。
 取り敢えず、渡辺さん、ですかね。

《正常、ね》
《コレで》
「何が好きか、全て統一されてたら多様化って無いに等しいと思うんですよね」

《ほら、思考は正常、ただ指向は。まぁ、人其々だし、合法だし、食べちゃえば?》
《無責任バカ年増、何を言い出しますか、それ色欲のする事ですよ?》
「年増?お若く見えますよ?」

《ありがとうお坊ちゃん》
「あ、僕の名前はミーミルです、宜しくお願いしますね」
《馴染もうとしないで貰えます?ご両親が悲しみますよ?》

「もう居ないので大丈夫です」
《ぉう》
《念の為に聞くけど、樹に戻れるのかしら》

「はい、北に戻れば、でも戻るには力が無いので暫くは無理ですね、全て使い切ってしまったので」
《あ、どうやって来たんです?》

「風に乗って来ました」
《寒そう》

「はい、なので保護する魔法等で魔素を限界まで消費したので、暫くお世話にならせて下さい」
《残念、ウチには転移魔法が使える者が居るので早々にお引き取りを》
《処女じゃあるまいし食べちゃえば良いのに》

《私は美食であって色欲じゃ》
《食べて快楽を得てるんならこの子を食べたら快楽が得られるかも知れない、しかも食べられて喜ぶ子なら、相互利益が完璧。何でそんなに躊躇うのか、そう、会議をしましょう》

《えー》



 森さんに春が来た、と言うべきなのかどうか。

「本当に、20年は生きているんだろうか」
「はい、と言うかソチラの言う現代社会なる場所では、身体の成長が遅いからと言って恋も性も得てはいけないんでしょうか。容姿が未成年だからと言って、虐げられるのが自由、差別の無い世界なんでしょうか」

『その知識は、どう得てるんだろ?』
「確かに気になるが、開示して貰えるんだろうか」
「はい、ドリアードの、所謂精霊のネットワークで全て共有されていますので。はい、知ろうとすれば知れます、無意識に選べますので、無闇に流れ込んで来る事は無いのでご心配無く」

「メリッサは、知っているんだろうか」
《そう聞いてはおりますが、私は休眠状態を経ていませんので》
「多分、頑張れば魔王様も出来ると思いますよ、と言うか誰もが本来は出来る筈なんです。精霊に嫌われてさえいなければ」

「遠藤君」
『噂、それこそ都市伝説だとばかり』
「ですね、僕らが眠っているのが樹の中だとバレたら再び狩られてしまいますから」

「まだ、俺達の知らない事が」
「あ、ダンジョンについても幾ばくかの情報は有るんですが、交換とさせて下さい」
《あー、狡い、って言うかどんだけ私に食べられたいの?》

「それこそ骨の髄まで」
『って言うか、もしかして性的な意味も含んでる?』

「はい、勿論」

「良かったな、森さん」
《もー、そういうのは興味無いのにぃ》
「そこも大丈夫ですよ、そうした気持ちを補える体液を保有していますから」

「それはつまり」
『体液が、媚薬なんですか?』
「はい、僕の称号は誘惑者テンプシーです、元はドリアードとのハーフですから」
《『あぁ、成程』》

「なので、僕が大罪の色欲になろうかと、魔王様の補佐をし、同時に同族の加護も得たいので」

《そんなの、断れないじゃん》
「大丈夫です、絶対に後悔はさせませんから」

「だが、お試し期間は設けさせてやって欲しい、大罪や保護については即時実行するが。森さんが受け入れるには、時間や覚悟が必要な筈だ」
「はい、ありがとうございます」

 俺としては、妥協案を示したつもりだったんだが。
 森さんが困る事になるとは。

《まーた、そんな違法薬物で得た情愛に》
「本物になるかどうかは以降の行いだと思いますけど、そんなに情愛が怖いですか?」

《だーかーら、だからって自分の血を使ったブラッドソーセージ食わせるのは》
「あぁ、そう言う事か」

《もー、だけじゃないんですってば、口を付けたコップから始まって、寝てる間にキスしたり》
「初めてが夢見心地のままなのは残念でしたけど、凄い可愛かったですよ」

《違う、要らない、可愛いとか求めて無い》

「と言うか、合意無しは」
「合意は貰いましたよ、ちゃんとモリさんからい」
《あー、あー、魔王様にそう言う事は聞かせないでってばー》

「良いじゃないですか、もう既に何度か」
「ミーミル君、もう少し、控えた方が良いと思うんだが」
《そうだそうだ、控えい》

「分かりました」

 俺は、真の変態について理解していなかった。
 そして誘惑者テンプシーのスキルについても、もう少し考えるべきだったかも知れない。

 いや、深く考えるべきだった。

「ミーミル」
「すみません、体内で濃縮されると汗が揮発しただけでも、媚薬効果が出ちゃって」
《もー、それ絶対に分かってやりましたよね?敢えて》

「魔王様なら、もしかしたら効かないかな、と」
「ガッツリ効いたお陰でメリッサが妊娠したが」
《ありがとうございます、ミーミル》
《そこは良いとは、思いますけどぉ》

 称号、大罪・色欲のスキルと誘惑者テンプシーのスキルとが相乗効果を発揮し、領地が空前のベビーラッシュになる事に。
 ただ、戦力や防衛力が削がれる事にも繋がる緊急事態でもあった。

 だが幸いにも佐藤君や伊藤君達は諸外国に監視に行っていた為、被害は無かったらしいが。

 遠藤君の家が、再び子宝に恵まれる事になり。
 ウチも、メリッサが妊娠したのは良いんだが。

「確かに残念ですね、僕とモリさんに出来なかったのは」
《だって生理前だもん、無理に決まってるじゃん》

「どうしても無理なら、残念だがミーミル君を北へ返す、ただ加護は変わらず続けるが。森さんは、何がダメなんだろうか」

《食べるのが本当に最優先だから、悪阻とかで食べれなくなるのも無理だし、食べ物かミーミルなら食べ物の方が大事だし》
「つまり、嫌では無いんだろうか」

《食べる邪魔されたらキレる、嫌になるし、誰が1番大事かって言ったら魔王様で。だから、順位ってなると凄い下だけど、嫌な事を、無許可で発情させたり食べる邪魔をしなければ、どうでも良い》

「コレでも、君は傍に居たいんだろうか」
「はい、僕が好きなので、僕の体液さえ摂取してくれたら満足ですし。時間は沢山有りますから」

「だが今回の様な事は慎んで欲しい、全員が全員、一気に妊娠ともなれば大きなリスクが生まれる」
「はい、すみませんでした、もうしません」
《反省しろ反省、ちゃんと抜けバカ》

「でもだって、誰にも食べて貰えない料理を作るって虚しくないですか?」
《それは、分かるけど、でもだからって》
「保存を、冷凍しておくのは、どうだろうか」

「それと、もう少し、少量で我慢します。一応、耐性は付いてきてるので」
《ほらもう実質毒じゃん》

「でも依存性は無いですし、それこそ砂糖よりマシな筈ですからね?」
《砂糖は脳の栄養だけど媚薬なんてただの毒じゃんか》

「でも愉し」
《だー、言うな言うなバカ、恥を知れ恥を》

「はいはい、すみませんでした」

 多分だが、ミーミルにはサドの気が有るな。

《ある種の、庇護欲なのだと思います》

「庇護欲で血を、あぁ、母乳も元は血液か」
《はい、情愛故に与えたくなる、そうした事なのかと》

「だが、いや、言い方によっては、精子を摂取させたいとも思うわけだしな」
《スズキ様も、そう思っての事なのでしょうか》

「いや、出したいと思って出すだけだが、その物の言い方も情緒が無いな」
《エルフやドリアードには詩の才が有るとも聞きますし、自然とそうした物の言い方になっているだけ、かも知れませんね》

「だが本当に肉を食わせそうで怖いんだが」
《そこは既に、食べてらっしゃるかと》

「あぁ、性的な意味でだけなら、いや、もう深く考えるのは止めておこう、後はもう2人の事だ」
《移送は完了しましたし、はい》

 塔のダンジョンを攻略した後、暫く新しいダンジョンは出現しなかったんだが。
 他国でも制覇の噂が聞こえて来た頃、新しいダンジョンが森に出現した。

 その入口は非常に奇異で、同一方向にうねった樹が生え、正しい道を通らなければ入口まで戻されてしまう。
 だからこそ、エルフやダークエルフの眠る樹をダンジョンへと植え替えたんだが。

 何処かで見た事が有る気がする。
 あの奇異な樹を、何処かで。



「そうか、ココだったか」

「あぁ、鈴木さん」
「桜木、さんか」

「あぁ、コレは気にしないで、ココでは容姿も自由だから」
「あぁ」

「そっち、何か有った?」
「この景色が、向こうにも出来たんだ」

「出来た」
「ダンジョンが新しく出来たんだ、色々と」

「ダンジョン」
「あぁ、そっちには無いのか」

「無い、大変そうだね」
「まぁ、だが結界は張って有るから問題は無い、裏切らなければ」

「あぁ、人か」
「警備を任せていた者がな、欲望に流され侵入し、厄介な称号を得てしまった」

「ほう」
「暗殺者」

「あー、便利そう」
「ダンジョンでは微妙だったな、寧ろ護衛をさせて丁度良い程度だ」

「あー、やっぱ対人用のスキルなんだ」
「だな。そっちはいつ、なんだ?」

「2020年以降」
「あぁ、俺が来たのとそう変わらないんだな」

「らしいね」

「ココは、穏やかだな」
「安全地帯だからね。渡辺さんに聞いてみると良いよ、どう言う意味か」

「渡辺さんや、他の者を呼ぶのは、構わないんだろうか」
「構わないけど、そこにワシが現れるとは限らない」

「そうか」
「願えば叶うよ、じゃあね」

「あぁ」

『全く、人見知りですまんの』
「いや、何を話して良いのか、分からないのは俺も同じだ」

『知りたければ尋ねれば良かろう?』

「尋ねて良いものかどうか」
《ぉお、鈴木さんだ、やっぱり鈴木さんの内情風景ってこんなに穏やかなんだ、成程》

「渡辺さん、ココはドリームランドだ」
《へー、でもなぁ、あんまり夢を見ない方だから、覚えてられるかな》
『気持ち次第じゃよね』

《誰》
『シバッカルじゃよ、ココの守り神じゃ』

《クトゥルフ》
『じゃがお主は女じゃ、間違ってもワシが害する事は無いで安心せい』

《混沌とか宇宙的恐怖、そうした神話なんじゃ?》
『全てがカオスではカオスとは呼べんじゃろ、平坦有ってこその山や谷、正常と異常が有ってこそじゃろ』

《論理的》
『まぁ、全てがそうとは限らんが、そんなものお主らの所の神もそうじゃろ。何じゃあの馬の死体をバラ撒くとか、まさに狂気じゃろ』
「まぁ、確かに。あぁ、そう言えば聞きたい事が有ったんだが」

《ほう?》
「ココは安全地帯だ、意味は渡辺さんに尋ねてみろ、と」

《あぁ、愛着についてだね。親が安全地帯の役割を担ってこそ子供は探索に、成程ね、ココがそうなんだ》
『じゃの』

《親が安全地帯だと思えなければ、子供は冒険や探索をしない、しっかりと安定した地盤は大切だって事だよ》

「あぁ、ココがそうなのか」
《その彼女の原風景なのか、今の心情なのかは分からないけれど、少なくともクトゥルフや魔王とは関わりが無さそうだよね》

「あぁ、温泉郷もな」
《あ、そうそう、どんだけ同じか見たかったんだ》
『ふむ、案内してやるかの』

 ココの次元は多次元なのか過去なのか、そう気になるのは、まだまだ先じゃろか。
 それとも、覚めてから、か。
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