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第30章 好色五人男と男女。
2 魚屋お八重。
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『すまなかった、あの家は金が有る、そう信じ込まされていたんだ。すまない、本当にお前の為を思い、すまなかった』
『失礼ですが、旦那さんは、本当に』
『あぁ、勿論ですとも、人を使って調べさせました。しかも、向こうから言って来たんです、どうか長女をくれないか、と』
『でしたら、何故』
『妾とは名ばかり、姉を支える為に行っただけで、まさか』
『ですが次女の方は妊娠していらっしゃる』
『お恥ずかしい事ですが、とある下男を好いての事で、産んだ後。ひっそりと抜け出し、その下男と一緒になる手筈、そうした事だったんです』
『ですが、娘さんは』
『元は、アレが幾ばくか気が触れ蔵へ、と。ですが子が出来れば落ち着くだろう、そうした手筈だったんです』
死因は煙によるもの。
火事で起こる煙による死、けれども火事の痕跡は無い。
そして、もし煙が上がっていたなら、近隣の者が慌てて何処かへと言う筈。
だが火事の報告も、それこそ物取りでも無い。
しかも毒物の類は使われていない、とされ。
誰もが、知らぬ間に煙を吸い込み、そのまま亡くなった。
不可解で奇っ怪な死は、お蔵入りとなり。
奥方を解放する事となった。
【アナタはもう】
《奥様の先が見付かるまで安心して他所で働けません、せめて落ち着かれるまで、お願いします》
『こう言ってくれているのだし、暫くお前は養生しなさい』
【はい】
そして、湯治に出た翌日の朝。
『すみませんが、再びご同行願えますか』
《一体、奥様が》
『兎に角、先ずはご同行下さい』
父も、亡くなってくれました。
何でも食後、突然に苦しみ。
そのまま。
私は、思わず嬉しくて笑ってしまいました。
「ふふふ、そうですか、ふふふふ」
お父様が言った事、考えていた事は本当かどうかは分かりません。
人を使って調べたそうですが、以前に役人がその者を調べたものの、行方知れず。
《奥様、お声が》
「あら本当、ふふ、ふふふ」
あんまりの事に、役人の方が医者を手配して下さいましたが。
私は、まぁ痩せ細ってはいますが、健康そのもの。
『こう、立て続けに申し訳無いのですが』
「構いません、ご協力させて頂きます」
お母様はすっかり弱り、家の事もままならない。
私が家の全てをお出しし、全て、改めてお調べ頂く事になりました。
『大変、申し上げ難いのですが』
「お聞かせ下さい、お願い致します」
『実は……』
妹は、悪辣でした。
自分が惚れた男に嫁ぐ為、家族も何も、全て騙していました。
お父様も何もかも、全て。
先ずは私の嫁ぎ先に、と。
そうお父様の耳に入れ。
家の下調べをする者を、買収しておりました。
『怖かったんです、関わった家の者が全て死んだと聞いて、怖かったんです』
そうして次に、惚れた男へ。
コレは、既に出ていた証拠だったそうですが、私の為にと敢えて伝えては下さらなかったそうで。
『ココで、もう』
「いえ、全て、教えて下さい」
結婚前から、妹と夫は通じていました。
そして妹の手記には、あまり顔が良くないからと、勉強を仕込まれていた私への嫉妬が綴られていました。
何故、どうして、私も出来るのにと。
そうしていつか、自身と同じ目に遭わせてやる、とも。
『妹さんは、そうしてご家族を騙し、単にアナタを苦しめる為だけに散財していた。と、思われます』
愚かな者を助長させ、金を使わせ。
「あの、妹が好いていたと言う、下男は」
『痕跡は全く、有りませんでした』
本当に、妹は私を苦しめたかっただけ。
まるで、その為だけに生まれたかの様に、蔵に閉じ込める事も何もかも妹が言った事なのだと。
「一体、あの子は何がしたかったのでしょう」
『分かりません、我々にも、分かりません』
けれど、私はもう蔵に居るワケでも、お父様の目が有るワケでも無い。
もう私は、好きに生きて良い。
そう思うと、不意に。
「ふふふ、生きている方の勝ち、ですね」
犯人に感謝しなければならない。
お父様の事も、何もかも。
「そうして結局、お蔵入り、だそうです」
《そして、この魚屋はこのままになった》
「はい」
《居ないよ、何もね》
「そんなに怖くなかったから、でしょうか?」
《いや、ココに霊は居ないよ》
「かなりの数が」
《煙を吸い込み、穏やかに亡くなったのだよね》
「はい、記録によれば」
《皆が皆、幸せだった。そしてしっかりと供養されたのだろうね、本当に何も居ないよ》
「ですけど、じゃあ」
《居るだろう、そう思うと何でも怖くなるけれど、ココには何も居ないよ》
「なら買っても」
《勿論、問題は無いよ》
「あぁ、成程。本当に居なくても、見逃しただけじゃないか、そう疑って結局は売れなかった」
《だろうね、何人かに見て貰った場所で、そうした事は多いそうだからね》
「よし信じよう、そう思いきれないもんですかね?」
《若しくは、嫌がらせが有ったか、その八百屋の娘さんの方も、もしかすれば調べてみた方が良いかも知れないね》
「あぁ、あんな風に育てた者の血縁ですもんね、せめてと嫌がらせに何かしているかも知れませんし」
《まぁ、杞憂で有ったなら、良い買い物になるだろうね。何にするんだい?》
「このまま先生の家になるか、寮にするんだそうです、人がかなり増えましたから」
《日当たりも良いのだし、きっと良い寮になるよ》
「そう見ると、良い場所なんですけどね」
《あぁ、そうだろう》
年の為にと、調べてみたんですが、その元魚屋お八重さんは既に亡くなっており。
使用人の男と結婚し、家を繁盛させ、子も3人と。
何の恨みも無く、とうに成仏されていそうだったのですが。
そのお孫さんが、実はどうやら家を抜け出し、偶に悪戯をしていたそうで。
「もう家からは出れぬ様にしているので、何も無いかと、と」
《ほう、何故、あの家に執着していたんだろうね》
「どうやら妹さんの生まれ変わりだ、と、そう思い込んでいるらっしゃる方だそうで」
《あぁ、可哀想に》
「本当に、早く良いお薬か何かが、世に出て来てくれると良いんですが」
《そうだね》
「今回も、ある種の空振りと言うか」
《まぁ、少し前は何か居たかも知れないけれど、祓われてしまったのかも知れない。そう思う方が、幾ばくか良いとは思わないかい》
「ですね」
許せない。
結局、お姉様は幸せになってしまった。
しかも、その血筋が私だなんて。
《お願い、もうすっかりマトモになったわ、だから》
「すいません、生憎と私は単なる使用人ですので、マトモかどうか分かりませんから。すみません、失礼致します」
途中までは、順調だった。
お姉様がすっかり壊れてしまう手前で、改心したフリをし、家を建て直させ。
また、少し苦労を掛けさせ。
そうやって、私より苦しめる筈が。
《お願い、クソっ、コレだから使用人は》
《アンタは、まだ、懲りてないのか》
《あら、何処の子、お名前は?》
《言っても分からないだろう、僕はお八重の新しい夫になった者ですよ》
《ダメよ、そうおかしなフリをしていると、私みたいになってしまうわよ》
《そうですね、あ、殺したのは僕です。蔵に以前から鍵なんて掛かって無かった、あの人は鎖で繋がれてたんですから、態々錠前までは必要無い。しかも、逃げ込む家も無いんですから、逃げ出す心配はしなかった》
《アンタ》
《魚屋で雇われていた通いの使用人、七兵衛です、以前はお世話になりました》
《あ、あの》
《あぁ、覚えていてくれましたか。小さかった僕を馬鹿にして、良く笑い者にしていましたよね》
《だからって》
《お八重さんに惚れてたので。掃除のついでに、床下に幾ばくか薬草を混ぜて火を付け、ゆっくりと夜中に燃え尽きる様に燻した》
《アンタ、アンタってヤツは》
《それから夜中に家を抜け出し、蔵に錠前をして、燃えカスは便所へ。それからは、知らぬ存ぜぬ》
《なん》
《あぁ、それからアンタの。凡庸で馬鹿で、思い込みが激しい阿呆な父親も、アンタの書いたモノを読ませてやったら死んだんだった》
《そんな、お父様まで。お父様は何も》
《お陰で、目出度く一緒になれました、ありがとうございます》
《アンタ、アンタのせいで!》
《ひっ、うわぁあああああああ》
『コラっ!近寄ったらダメだって言ったでしょう!』
《ごめんなさい、でも、私宅監置は良くないって、学校の先生が》
『それはマトモな方としか関わった事が無い方、そうした方の言葉は話半分に』
《ソイツは七兵衛よ!人殺し!人殺しなのよ!》
『ほら、分かったでしょう』
《でも、可哀想で》
《ソイツは悪人よ!七兵衛の生まれ変わり!人殺しの生まれ変わりなのよ!!》
『さ、もう分かったでしょう、また家に火を付けられては困るの。分かるわね?良いわね?』
《はい》
《ソイツの方が!よっぽど!》
『あんまり煩くするなら、食事を減らしますよ。全く、絶対に出してはダメですよ、物を壊したり火を付ける人なんですから』
《はい》
《人殺し!魚屋七兵衛の人殺しー!!》
『失礼ですが、旦那さんは、本当に』
『あぁ、勿論ですとも、人を使って調べさせました。しかも、向こうから言って来たんです、どうか長女をくれないか、と』
『でしたら、何故』
『妾とは名ばかり、姉を支える為に行っただけで、まさか』
『ですが次女の方は妊娠していらっしゃる』
『お恥ずかしい事ですが、とある下男を好いての事で、産んだ後。ひっそりと抜け出し、その下男と一緒になる手筈、そうした事だったんです』
『ですが、娘さんは』
『元は、アレが幾ばくか気が触れ蔵へ、と。ですが子が出来れば落ち着くだろう、そうした手筈だったんです』
死因は煙によるもの。
火事で起こる煙による死、けれども火事の痕跡は無い。
そして、もし煙が上がっていたなら、近隣の者が慌てて何処かへと言う筈。
だが火事の報告も、それこそ物取りでも無い。
しかも毒物の類は使われていない、とされ。
誰もが、知らぬ間に煙を吸い込み、そのまま亡くなった。
不可解で奇っ怪な死は、お蔵入りとなり。
奥方を解放する事となった。
【アナタはもう】
《奥様の先が見付かるまで安心して他所で働けません、せめて落ち着かれるまで、お願いします》
『こう言ってくれているのだし、暫くお前は養生しなさい』
【はい】
そして、湯治に出た翌日の朝。
『すみませんが、再びご同行願えますか』
《一体、奥様が》
『兎に角、先ずはご同行下さい』
父も、亡くなってくれました。
何でも食後、突然に苦しみ。
そのまま。
私は、思わず嬉しくて笑ってしまいました。
「ふふふ、そうですか、ふふふふ」
お父様が言った事、考えていた事は本当かどうかは分かりません。
人を使って調べたそうですが、以前に役人がその者を調べたものの、行方知れず。
《奥様、お声が》
「あら本当、ふふ、ふふふ」
あんまりの事に、役人の方が医者を手配して下さいましたが。
私は、まぁ痩せ細ってはいますが、健康そのもの。
『こう、立て続けに申し訳無いのですが』
「構いません、ご協力させて頂きます」
お母様はすっかり弱り、家の事もままならない。
私が家の全てをお出しし、全て、改めてお調べ頂く事になりました。
『大変、申し上げ難いのですが』
「お聞かせ下さい、お願い致します」
『実は……』
妹は、悪辣でした。
自分が惚れた男に嫁ぐ為、家族も何も、全て騙していました。
お父様も何もかも、全て。
先ずは私の嫁ぎ先に、と。
そうお父様の耳に入れ。
家の下調べをする者を、買収しておりました。
『怖かったんです、関わった家の者が全て死んだと聞いて、怖かったんです』
そうして次に、惚れた男へ。
コレは、既に出ていた証拠だったそうですが、私の為にと敢えて伝えては下さらなかったそうで。
『ココで、もう』
「いえ、全て、教えて下さい」
結婚前から、妹と夫は通じていました。
そして妹の手記には、あまり顔が良くないからと、勉強を仕込まれていた私への嫉妬が綴られていました。
何故、どうして、私も出来るのにと。
そうしていつか、自身と同じ目に遭わせてやる、とも。
『妹さんは、そうしてご家族を騙し、単にアナタを苦しめる為だけに散財していた。と、思われます』
愚かな者を助長させ、金を使わせ。
「あの、妹が好いていたと言う、下男は」
『痕跡は全く、有りませんでした』
本当に、妹は私を苦しめたかっただけ。
まるで、その為だけに生まれたかの様に、蔵に閉じ込める事も何もかも妹が言った事なのだと。
「一体、あの子は何がしたかったのでしょう」
『分かりません、我々にも、分かりません』
けれど、私はもう蔵に居るワケでも、お父様の目が有るワケでも無い。
もう私は、好きに生きて良い。
そう思うと、不意に。
「ふふふ、生きている方の勝ち、ですね」
犯人に感謝しなければならない。
お父様の事も、何もかも。
「そうして結局、お蔵入り、だそうです」
《そして、この魚屋はこのままになった》
「はい」
《居ないよ、何もね》
「そんなに怖くなかったから、でしょうか?」
《いや、ココに霊は居ないよ》
「かなりの数が」
《煙を吸い込み、穏やかに亡くなったのだよね》
「はい、記録によれば」
《皆が皆、幸せだった。そしてしっかりと供養されたのだろうね、本当に何も居ないよ》
「ですけど、じゃあ」
《居るだろう、そう思うと何でも怖くなるけれど、ココには何も居ないよ》
「なら買っても」
《勿論、問題は無いよ》
「あぁ、成程。本当に居なくても、見逃しただけじゃないか、そう疑って結局は売れなかった」
《だろうね、何人かに見て貰った場所で、そうした事は多いそうだからね》
「よし信じよう、そう思いきれないもんですかね?」
《若しくは、嫌がらせが有ったか、その八百屋の娘さんの方も、もしかすれば調べてみた方が良いかも知れないね》
「あぁ、あんな風に育てた者の血縁ですもんね、せめてと嫌がらせに何かしているかも知れませんし」
《まぁ、杞憂で有ったなら、良い買い物になるだろうね。何にするんだい?》
「このまま先生の家になるか、寮にするんだそうです、人がかなり増えましたから」
《日当たりも良いのだし、きっと良い寮になるよ》
「そう見ると、良い場所なんですけどね」
《あぁ、そうだろう》
年の為にと、調べてみたんですが、その元魚屋お八重さんは既に亡くなっており。
使用人の男と結婚し、家を繁盛させ、子も3人と。
何の恨みも無く、とうに成仏されていそうだったのですが。
そのお孫さんが、実はどうやら家を抜け出し、偶に悪戯をしていたそうで。
「もう家からは出れぬ様にしているので、何も無いかと、と」
《ほう、何故、あの家に執着していたんだろうね》
「どうやら妹さんの生まれ変わりだ、と、そう思い込んでいるらっしゃる方だそうで」
《あぁ、可哀想に》
「本当に、早く良いお薬か何かが、世に出て来てくれると良いんですが」
《そうだね》
「今回も、ある種の空振りと言うか」
《まぁ、少し前は何か居たかも知れないけれど、祓われてしまったのかも知れない。そう思う方が、幾ばくか良いとは思わないかい》
「ですね」
許せない。
結局、お姉様は幸せになってしまった。
しかも、その血筋が私だなんて。
《お願い、もうすっかりマトモになったわ、だから》
「すいません、生憎と私は単なる使用人ですので、マトモかどうか分かりませんから。すみません、失礼致します」
途中までは、順調だった。
お姉様がすっかり壊れてしまう手前で、改心したフリをし、家を建て直させ。
また、少し苦労を掛けさせ。
そうやって、私より苦しめる筈が。
《お願い、クソっ、コレだから使用人は》
《アンタは、まだ、懲りてないのか》
《あら、何処の子、お名前は?》
《言っても分からないだろう、僕はお八重の新しい夫になった者ですよ》
《ダメよ、そうおかしなフリをしていると、私みたいになってしまうわよ》
《そうですね、あ、殺したのは僕です。蔵に以前から鍵なんて掛かって無かった、あの人は鎖で繋がれてたんですから、態々錠前までは必要無い。しかも、逃げ込む家も無いんですから、逃げ出す心配はしなかった》
《アンタ》
《魚屋で雇われていた通いの使用人、七兵衛です、以前はお世話になりました》
《あ、あの》
《あぁ、覚えていてくれましたか。小さかった僕を馬鹿にして、良く笑い者にしていましたよね》
《だからって》
《お八重さんに惚れてたので。掃除のついでに、床下に幾ばくか薬草を混ぜて火を付け、ゆっくりと夜中に燃え尽きる様に燻した》
《アンタ、アンタってヤツは》
《それから夜中に家を抜け出し、蔵に錠前をして、燃えカスは便所へ。それからは、知らぬ存ぜぬ》
《なん》
《あぁ、それからアンタの。凡庸で馬鹿で、思い込みが激しい阿呆な父親も、アンタの書いたモノを読ませてやったら死んだんだった》
《そんな、お父様まで。お父様は何も》
《お陰で、目出度く一緒になれました、ありがとうございます》
《アンタ、アンタのせいで!》
《ひっ、うわぁあああああああ》
『コラっ!近寄ったらダメだって言ったでしょう!』
《ごめんなさい、でも、私宅監置は良くないって、学校の先生が》
『それはマトモな方としか関わった事が無い方、そうした方の言葉は話半分に』
《ソイツは七兵衛よ!人殺し!人殺しなのよ!》
『ほら、分かったでしょう』
《でも、可哀想で》
《ソイツは悪人よ!七兵衛の生まれ変わり!人殺しの生まれ変わりなのよ!!》
『さ、もう分かったでしょう、また家に火を付けられては困るの。分かるわね?良いわね?』
《はい》
《ソイツの方が!よっぽど!》
『あんまり煩くするなら、食事を減らしますよ。全く、絶対に出してはダメですよ、物を壊したり火を付ける人なんですから』
《はい》
《人殺し!魚屋七兵衛の人殺しー!!》
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