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第22章 機関と教授と担当。
2 都市伝説と悪魔。
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梓巫女とて、全てを知っているワケでも、全てを言えるワケでも無いんだが。
《意外と不便だから、かと》
「そうですかね?呼び出す手間暇は掛かるそうですけど、あまり場所を選びませんし、中には対価無しも居るんですよ?」
《先ずはそこです、殆どの対価は魂を奪われるか地獄に堕ちる。そして準備には精密さや専門性を必要としますし、どちらかと言えば他人任せとなってしまう》
『ソコは、生活水準の違いかもデース。悪魔に手を出すのは、一定以上の生活水準の者が定説デス、手間暇に余裕有りマスし。多分、民族性の違いも絡みマース』
《ですね、地方程、呪いに敏感ですし。都会は逆にあまり信じない、それらはどれだけの人に会うかどうかの違い、だと思います》
都会では大勢と関わるが、必ず関わる者は限られ、しかも避けようと思えば避けられる。
けれど地方は全体との関わりが強く、避けるには何かしらが必要となる。
「なら、地方で流行っても可笑しくないのでは?」
『ソコは単純に情報量と知識量の差デース、怪しい本、仕入れたら直ぐに広まりマス』
《例え都会で買ったとしても、都会に行った事自体は知られてしまいますし、家族にすら儀式を知られない様にするのは難しいかと》
「んー、それこそ魔法陣は貼り合わせた紙や布に、少しずつ書き込めば済みませんか?」
『ふふ、ソウ工夫出来る人、呪い実行しまセン』
《そうですね、大概は八方塞がりで、形振り構わず行う。逃げ出せない、どうしようも無くなってしまった結果が》
「呪い」
『確かに、ソノ背景も少し違いマースね。悪魔呼ぶのは、ドチラかと言えば欲張り、恨みや苦痛から手を出すとは少し違いマス』
「あぁ、合わせ鏡は命の危機から行う事では無いですもんね」
『元は欲張りサンを悪魔言いマス、そして欲張りサンに協力する者が悪魔、言われる事も含まれる様になりマシた』
《コチラで使役されるモノとは根本が違いますし、既に便利な呪術が存在していますから》
『広まりきっても、難しいでショウ、根付くまで100年は掛かりそうデス』
《命を対価にせず、分野別に叶えて頂ける神様達が居ますからね》
「そこですよね、逆に、広まり方にも違和感が有るんです。この話の怪異って、一周回って不便なんですよね」
神宮寺さんが言う通り、呪いや祟りを地方は特に怖がります。
逃げ場の無い、それこそ本拠地で呪いや祟りに遭ってしまったら、故郷を捨てなくてはならなくなってしまう。
なのに、どう甘く考えれば、扱いが不明な恐ろしいモノに手を出すのか。
確かに、追い詰められたなら手を出すかも知れませんが。
苦しめ、そう思うよりも先ず、死ねと思う筈。
なら、他にも手は有る筈。
『その根拠は、何処に有るのでショウ』
「外界との接触です」
全く他所と関わらないなら、その分、身内には厳しいんです。
甘く処断しようものなら、他の家まで甘くなる。
それでは規律が乱れ、果ては荒廃してしまう。
《そう賢い者が、偶々居なかった》
「なら伝承だけしっかり残っている、怪異が残っている事が不自然なんです」
呪いも怪異も元は同じモノだと考えているので。
もし、誰も知らない、あまりにも滑稽過ぎると思われてしまったなら。
《存在が否定され、果ては無視されてしまう》
「はい、要は歴史、ですね。既存の歴史とはあまりに乖離していると、そもそも、この国の歴史だと認識される事は難しくなってしまう」
《だからこそ、その過渡期かも知れないよ》
「なら、もう少し柔らかさ、柔軟性が有るべきだと思うんですよ」
古来から有るからこそ、決して形を変えない。
そうしたモノは意外と少ない。
人面牛、件ですら神戸に亜種が存在し、牛女として既に定着している。
ましてや古くから存在しているとしながらも、派生や亜種が無い段階で、この地に根付いたモノでは無い。
そう思ってしまう。
ですが、もし、あまりに超越していなければ受け入れてしまうとは思います。
『超越、デスか』
「例えば、ですが。お不動さんより強いだなんて、ココの神様を舐めてらっしゃるな、としか思えませんから」
そうした神様にすら、対処が難しい、だなんて事が本当に有るのだろうか。
なら、既に前例が有る筈だ、けれども存在はしていない。
そして、ましてや黄泉の国の方が、他者が死者を増やす事を本当に無視なさるのだろうか。
面識は無いですが、少なくとも、他者の行いを自分の算用に入れるとは思えない。
つまりは死者を増やす存在すら、邪魔な存在、かも知れない。
なら、排除は当然の事。
そうして実際に排除されているからこそ、強力な怨霊は滅多に現れず、未だにこの国は続いている。
《そうして結果的に、守る事に繋がっている、かも知れない》
「はい、守る意図が無いにせよ、国は死へ傾いてはいない。そして明記されていない約束事が必ず有る筈だ、でなければ、とっくに滅びている筈なんですから」
《片や1000人を滅ぼすと宣言し、片や1500人を産み出すと宣言した》
「コチラが提示した以上の数を相手が出したにも関わらず、追加の条件も無く、寿命の長さにも言及はしなかった。コレも国作りの宣言の1つであり、見定め続けてやろう、そうした宣言だと思うんです」
《良く言えば、自分は1000人までしか殺さない、そう宣言したも同然ですしね》
「幾人も、が例え1000人だったとしても、言った以上は覆さないのが我が国の神様だと思いますから」
『デスが、少し表現が難しいデス、庇護や加護と言うには少し違う感じしマース』
「ですね、寧ろ縄張り争いに於いて、偶々助かっただけ」
それでも、逆を言えば。
何かが居るからこそ、偶々でも助かる事が出来る。
ですけど都市伝説だろうモノには、そうしたより強力な神様の気配が無い。
『私が考エタ、最強の呪い、怪異ダー』
「ふふ、かも知れません、ですけど洗練さに欠けて厚みが中身に比例していないんですよね。特に全体を通しての均一さ、滑らかさに欠ける」
《そこは、担当や編集ならではの感覚かも知れませんね》
「と言うか、純粋に知識量かと、僕は良く考えないと都市伝説かどうかすら分かりません。ですが先生方は直ぐに分かるらしいんです、あぁ、アレは創作だろうねと」
『デスが、林檎君の精度は中々だと思いマース』
「こうして違和感が明確になったのは、神宮寺さんのお陰かも知れません。前までは、何だか違和感が有るな、程度で、言語化はかなり難しいものでしたから」
《なら、何か特別手当を頂かないといけませんね》
『オーゥ、谷中の鰻は最高デース、最早白焼きは神様の食べ物デス』
「では、ご相伴に預かりに伺いましょうか」
《ですね、邪気払いには御神酒も必要ですし》
『良く冷えた冷酒、アレはアムリタで変若水デース』
「では邪気を払い、生き返りに参りましょう」
時に噂は意図して流され、時に意図せず流れ出てしまう。
「コレだコレ、関東の変若水、酒々井の御神水」
『銘柄名も縁起が良い。暦の始まり、陰陽道で言う陽の陽、こりゃ溌剌にもなるワケだ』
《全くだ、こりゃ嫁さんには飲ませられねぇな、エラく若返られても困る困る》
秋茄子とキノエネのひやおろしは嫁に出すな。
そうした文言が通説になった頃、大元達は自らが発端で有ると認識する事も無く。
いつも通り、相変わらず美味い酒と肴と共に、今日も飲み屋の端で耳を欹てる。
「先生、昔は秋茄子だけでしたよね?」
『あぁ、この前は松茸も入れるかどうかで、エラく盛り上がっていた若者達が居た程だ。馴染が良いとなると話題となり、派生が生まれる、いや実に目出度い事だ。良い組み合わせは幾らでも流行るべきだからね』
「七輪に、香り色付く、茄子茸」
『傍らに、澄むひやおろし、秋の空』
《意外と不便だから、かと》
「そうですかね?呼び出す手間暇は掛かるそうですけど、あまり場所を選びませんし、中には対価無しも居るんですよ?」
《先ずはそこです、殆どの対価は魂を奪われるか地獄に堕ちる。そして準備には精密さや専門性を必要としますし、どちらかと言えば他人任せとなってしまう》
『ソコは、生活水準の違いかもデース。悪魔に手を出すのは、一定以上の生活水準の者が定説デス、手間暇に余裕有りマスし。多分、民族性の違いも絡みマース』
《ですね、地方程、呪いに敏感ですし。都会は逆にあまり信じない、それらはどれだけの人に会うかどうかの違い、だと思います》
都会では大勢と関わるが、必ず関わる者は限られ、しかも避けようと思えば避けられる。
けれど地方は全体との関わりが強く、避けるには何かしらが必要となる。
「なら、地方で流行っても可笑しくないのでは?」
『ソコは単純に情報量と知識量の差デース、怪しい本、仕入れたら直ぐに広まりマス』
《例え都会で買ったとしても、都会に行った事自体は知られてしまいますし、家族にすら儀式を知られない様にするのは難しいかと》
「んー、それこそ魔法陣は貼り合わせた紙や布に、少しずつ書き込めば済みませんか?」
『ふふ、ソウ工夫出来る人、呪い実行しまセン』
《そうですね、大概は八方塞がりで、形振り構わず行う。逃げ出せない、どうしようも無くなってしまった結果が》
「呪い」
『確かに、ソノ背景も少し違いマースね。悪魔呼ぶのは、ドチラかと言えば欲張り、恨みや苦痛から手を出すとは少し違いマス』
「あぁ、合わせ鏡は命の危機から行う事では無いですもんね」
『元は欲張りサンを悪魔言いマス、そして欲張りサンに協力する者が悪魔、言われる事も含まれる様になりマシた』
《コチラで使役されるモノとは根本が違いますし、既に便利な呪術が存在していますから》
『広まりきっても、難しいでショウ、根付くまで100年は掛かりそうデス』
《命を対価にせず、分野別に叶えて頂ける神様達が居ますからね》
「そこですよね、逆に、広まり方にも違和感が有るんです。この話の怪異って、一周回って不便なんですよね」
神宮寺さんが言う通り、呪いや祟りを地方は特に怖がります。
逃げ場の無い、それこそ本拠地で呪いや祟りに遭ってしまったら、故郷を捨てなくてはならなくなってしまう。
なのに、どう甘く考えれば、扱いが不明な恐ろしいモノに手を出すのか。
確かに、追い詰められたなら手を出すかも知れませんが。
苦しめ、そう思うよりも先ず、死ねと思う筈。
なら、他にも手は有る筈。
『その根拠は、何処に有るのでショウ』
「外界との接触です」
全く他所と関わらないなら、その分、身内には厳しいんです。
甘く処断しようものなら、他の家まで甘くなる。
それでは規律が乱れ、果ては荒廃してしまう。
《そう賢い者が、偶々居なかった》
「なら伝承だけしっかり残っている、怪異が残っている事が不自然なんです」
呪いも怪異も元は同じモノだと考えているので。
もし、誰も知らない、あまりにも滑稽過ぎると思われてしまったなら。
《存在が否定され、果ては無視されてしまう》
「はい、要は歴史、ですね。既存の歴史とはあまりに乖離していると、そもそも、この国の歴史だと認識される事は難しくなってしまう」
《だからこそ、その過渡期かも知れないよ》
「なら、もう少し柔らかさ、柔軟性が有るべきだと思うんですよ」
古来から有るからこそ、決して形を変えない。
そうしたモノは意外と少ない。
人面牛、件ですら神戸に亜種が存在し、牛女として既に定着している。
ましてや古くから存在しているとしながらも、派生や亜種が無い段階で、この地に根付いたモノでは無い。
そう思ってしまう。
ですが、もし、あまりに超越していなければ受け入れてしまうとは思います。
『超越、デスか』
「例えば、ですが。お不動さんより強いだなんて、ココの神様を舐めてらっしゃるな、としか思えませんから」
そうした神様にすら、対処が難しい、だなんて事が本当に有るのだろうか。
なら、既に前例が有る筈だ、けれども存在はしていない。
そして、ましてや黄泉の国の方が、他者が死者を増やす事を本当に無視なさるのだろうか。
面識は無いですが、少なくとも、他者の行いを自分の算用に入れるとは思えない。
つまりは死者を増やす存在すら、邪魔な存在、かも知れない。
なら、排除は当然の事。
そうして実際に排除されているからこそ、強力な怨霊は滅多に現れず、未だにこの国は続いている。
《そうして結果的に、守る事に繋がっている、かも知れない》
「はい、守る意図が無いにせよ、国は死へ傾いてはいない。そして明記されていない約束事が必ず有る筈だ、でなければ、とっくに滅びている筈なんですから」
《片や1000人を滅ぼすと宣言し、片や1500人を産み出すと宣言した》
「コチラが提示した以上の数を相手が出したにも関わらず、追加の条件も無く、寿命の長さにも言及はしなかった。コレも国作りの宣言の1つであり、見定め続けてやろう、そうした宣言だと思うんです」
《良く言えば、自分は1000人までしか殺さない、そう宣言したも同然ですしね》
「幾人も、が例え1000人だったとしても、言った以上は覆さないのが我が国の神様だと思いますから」
『デスが、少し表現が難しいデス、庇護や加護と言うには少し違う感じしマース』
「ですね、寧ろ縄張り争いに於いて、偶々助かっただけ」
それでも、逆を言えば。
何かが居るからこそ、偶々でも助かる事が出来る。
ですけど都市伝説だろうモノには、そうしたより強力な神様の気配が無い。
『私が考エタ、最強の呪い、怪異ダー』
「ふふ、かも知れません、ですけど洗練さに欠けて厚みが中身に比例していないんですよね。特に全体を通しての均一さ、滑らかさに欠ける」
《そこは、担当や編集ならではの感覚かも知れませんね》
「と言うか、純粋に知識量かと、僕は良く考えないと都市伝説かどうかすら分かりません。ですが先生方は直ぐに分かるらしいんです、あぁ、アレは創作だろうねと」
『デスが、林檎君の精度は中々だと思いマース』
「こうして違和感が明確になったのは、神宮寺さんのお陰かも知れません。前までは、何だか違和感が有るな、程度で、言語化はかなり難しいものでしたから」
《なら、何か特別手当を頂かないといけませんね》
『オーゥ、谷中の鰻は最高デース、最早白焼きは神様の食べ物デス』
「では、ご相伴に預かりに伺いましょうか」
《ですね、邪気払いには御神酒も必要ですし》
『良く冷えた冷酒、アレはアムリタで変若水デース』
「では邪気を払い、生き返りに参りましょう」
時に噂は意図して流され、時に意図せず流れ出てしまう。
「コレだコレ、関東の変若水、酒々井の御神水」
『銘柄名も縁起が良い。暦の始まり、陰陽道で言う陽の陽、こりゃ溌剌にもなるワケだ』
《全くだ、こりゃ嫁さんには飲ませられねぇな、エラく若返られても困る困る》
秋茄子とキノエネのひやおろしは嫁に出すな。
そうした文言が通説になった頃、大元達は自らが発端で有ると認識する事も無く。
いつも通り、相変わらず美味い酒と肴と共に、今日も飲み屋の端で耳を欹てる。
「先生、昔は秋茄子だけでしたよね?」
『あぁ、この前は松茸も入れるかどうかで、エラく盛り上がっていた若者達が居た程だ。馴染が良いとなると話題となり、派生が生まれる、いや実に目出度い事だ。良い組み合わせは幾らでも流行るべきだからね』
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