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第22章 機関と教授と担当。
2 耳切り。
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『まぁ、はい、ずっと昔からの事です』
いつからか、そこまでは分かりませんが。
祖父母の代には既に有りました、昔も今も変わらず、ずっとです。
『ソレを嫌がる子供ハ』
『そりゃ痛いでしょうから、特に後が痛いそうで、なので秋の終わりにやるんです。傷が膿まない様に、涼しくて乾いた日、秋分の良い頃合いに』
『手順ヲ書いた紙や何かは、有りマスか?』
『いえ、無いですね。そも切る事が無い年も有りますけど、殆どやっていますから』
『神社やお寺サンに、何か本や、記録は無いデショウか』
『自分らはコレが当たり前ですから、何故だとか、いつからだとか。そう詳しい事はさっぱりですけど、有るには有るかと、偶に虫干しを手伝いますから』
「では、神主さんや住職さんはどちらに?」
『あぁ、ええと、地図でしたね。ちょっとお待ち下さいね』
国の制度が変わり、市区町村は自身の村の地図を提出する事になり、国に一応は地図が有るそうなんですが。
その市区町村のお役所に行かないと手に入りませんし、しかも他所者となるともう。
ですので、地元の方に近隣の詳しい地図を入手して頂いてから、村を回る事に。
「僕、こうした取材旅行は初めてなんですけど、何処もこんな風に伝承があやふやなんですか?」
『ソウですねー、基本は口伝デス、何か残っていても形を変えている事が多いデースね』
《そうですね、時には全く原型を留めていない場合も有りますから、もしそのままなら非常に珍しいかと》
『デースねー、稀有デスね稀有』
「それは逆に、どんな意味が裏に有るんですか?」
『ドウゾー、神宮寺さーん』
《相当、厄介な場合が殆どです》
「どう?」
《厳格で力の強い神霊を祀っている、または》
『抑エテいる、荒神信仰や御霊信仰デースね』
《そして耳切りに関しても。綾子と書いてアヤツコ、額に✕か犬と鍋炭で書き、神の庇護に有るとする。その綾子と似ているかと》
『オーゥ、それデース。そう印を付け、お参りとかに行くんだそうデース』
「何故、犬なんですか?」
『腹帯は戌の日に貰いに行くデース』
《多産や成長を願っての事だそうですけど、その更に根っことなると、どうなんでしょうね》
『あー、私の説は』
『アンタらー!何処の誰だねー!』
「すみませーん!キヌエさんのご紹介で来ましたー」
『あー!早く上がってきんしゃーい!雨が来るでよー!』
そうしてお邪魔させて頂くと、数分もしないウチに。
「わぁ、助かりました、ありがとうございます」
『ねー、本当に、急に曇りになったもんで外見たら。見た事も無いのが居て、すまんね』
『民俗学者、伝承とか集めてマース、小泉言いマース』
『ココの名かね』
『ハーイ』
『ならココの人だね』
『ハーイ』
『良い返事だ。で、何だい』
『耳切りの事デース、切るマデはいきませんが、似た風習はアチコチ有りマス。でも切るのは珍しいデース』
『そうかね、前髪を落とすんと一緒だと思うけどね』
『オーゥ、成程』
『あぁ、それこそ臍の緒も切るだろう、アレと同じさね』
『ツマーリ、悪運や何かと縁を切る、デスか?』
『そうそう、この子はこの世のもんなんです、ですからどうか連れて行かないでくれって事さね』
『ソウした事とか、書いた紙や本、有りマースか?』
『あぁ、はいはい、待ってておくれね』
小泉先生は、聞き上手でらっしゃって。
更に色々と伺い。
『アリがとうございマース、まだまだ不勉強デースので、また尋ねに来ても大丈夫デースか?』
『あぁ構わないよ、ただ今日はアンタらが来るだろうって事で居ただけなんだ、以降は夕方頃だと助かるね。ほら、畑もやってるもんだから』
『オーゥ失礼しまシタ、以降は夕方頃にしマース』
『良いの良いの、どうせもう知った顔ばかりで飽きてたんだ、いつでも来ておくれ』
『ハーイ、ありがとうございマース』
そして次はお寺さんへ向かったんですが、耳の遠い方で。
「はぁ、大変でしたね、お疲れ様でした」
『イエイエ、楽しかったデース、やはり現地での採集は最高デースね』
《採集、ですか》
『ハーイ、民俗学、あまり知らナーイデスか?』
《はい、不勉強ですみません》
『イエイエ、似た違う畑ダー、そうお伺いしてマース』
《あぁ、しがない占い師の様なモノですよ、相当で無ければ見えませんから》
『オゥ、忘れてマーシた、アナタ有った神についてデース』
《あぁ、もしかして子供の頃の、円卓での事ですか》
『ハーイ、アレは多分、北欧のトリックスターかと思いマース』
「えーっと、ココで言う、スサノヲ的な事でしょうか?」
『オーイエスっ、そうデース、神霊が混ざり合った不思議な存在デース。そして、いずれハ最高位になる、そうした前段階の様な存在デハと思いマス』
「あー、えーっと、オーディン、でしたっけ」
『イエッス、そこも似てマース。スサノヲ神を嵐だと言う方も居マースが、私は竜巻と雷だと思ってマース』
「と言いますと?」
『アマテラス神が襲いに来たと勘違いスル、そして暴れられ天の岩戸に隠レール。雷鳴が響き、落ち、竜巻で田畑が荒れれば当然デース』
「あぁ、成程」
『ハーイ、オーディンも雷デース。デスが二分し、悪い面が強調されたモノが、件のトリックスターだと思いマス』
「やはり、名を言うのは躊躇われますか?」
『デース、関わりたく無いデス、何か不意な問題は困りマース』
《その、彼は》
『オーゥ、変身も出来るんデース、女にも化けマース』
「あぁ、そこも似てますね、スサノヲ神はクシナダヒメに変身していますから」
『デショーウ』
《それで》
「神々ですら、関わる事に辟易する様な。そこも似てますね」
『デショーウ。デースので、あまりに名を呼びたくはナーイので、彼にしておきまショウ』
「その彼は神々を暴き、監禁されるんですが、最後には一致団結し世を救うんですよ」
『物知りさんデース、飴ちゃんあげまショーウ』
「ありがとうございます。とまぁ、破天荒な方で、片方にしてみれば悪神であり善神。そうした性質を持っている方、だろう、と言う事ですよね?」
『ハーイ、悪運がスゴーイ、ツヨーイ感じしマース』
《まぁ、あの場を無事に切り抜けていますから》
『もし本当なら、デースね』
「えっ」
『ふっふっふっ、冗談デース、可愛いデースね本当に。ぷぷぷ』
「もー」
《林檎君、僕を少し疑ったんですか?》
「いや、と言うか、一体何処に嘘が有るのかなと」
《つまりは少し疑ったんですね、残念です》
「違いますってば、もー」
《冗談ですよ、林檎君は捻じ曲がる様な性根が無いのは、良く分かっていますし》
『絵に描いた真珠、オゥ間違えマーシた、純真です。真珠の様に純真デス』
「褒めてます?」
『褒めてマース、真っ白な真珠は神様への捧げ物デース、良い性格してマース』
《確かに良い性格はしてますね》
「もー、僕の事は置いておきます。今回、今日の収穫は、如何でしたか」
『関東の言葉、上手過ぎマース』
《確かに、他の村人は違うのかも知れませんが、割合が多過ぎる様に思いますね》
「そう、まぁ、確かにそうかも知れませんが」
『そして神社仏閣、その両方ハ稀、稀有デース』
《林檎君、車を借りた時を思い出してみて下さい》
「確かに、もっと訛りに引っ張られていましたけど」
《ココに特に観光名所も無い、なら外部の者は滅多に来ない》
『ただ、出稼ぎ行く方多いと、こうなるカモ知れマセン。そうした時期にナルト、少数で村を回す、後は外に行きマース』
「あ、そうなると耳切りの事は広まる、筈ですけど」
『イーエ、そうでもないデス。女性はあまり耳出しマセン』
「あ、確かに」
《しかも女性が出稼ぎに行く場合は、集団で向かう事が多いんですよ、規律もですけど安全の為に》
『デースね、そうなるとまた不思議デス。その集団で耳切りの事は不思議がらレテしまうヨ、ソウ伝わっていないのが不思議なんデース』
「成程」
《いずれにしろ、もしかすれば、ココには他にも不思議な風習や決まりが有るかも知れないので》
『マーダマーダ、結論は出マセーンね』
「分かりました、では僕もそうした事も含め、傍観していますね」
『是非是非、頼みマースね』
《では、そろそろ休みましょうか》
『エー、こうした場合、恋の話スルのでは?』
《異性が居る場合は》
「しないですね」
『ォーゥ、おやすみなさいマース』
「はい、おやすみなさい」
《おやすみなさい》
いつからか、そこまでは分かりませんが。
祖父母の代には既に有りました、昔も今も変わらず、ずっとです。
『ソレを嫌がる子供ハ』
『そりゃ痛いでしょうから、特に後が痛いそうで、なので秋の終わりにやるんです。傷が膿まない様に、涼しくて乾いた日、秋分の良い頃合いに』
『手順ヲ書いた紙や何かは、有りマスか?』
『いえ、無いですね。そも切る事が無い年も有りますけど、殆どやっていますから』
『神社やお寺サンに、何か本や、記録は無いデショウか』
『自分らはコレが当たり前ですから、何故だとか、いつからだとか。そう詳しい事はさっぱりですけど、有るには有るかと、偶に虫干しを手伝いますから』
「では、神主さんや住職さんはどちらに?」
『あぁ、ええと、地図でしたね。ちょっとお待ち下さいね』
国の制度が変わり、市区町村は自身の村の地図を提出する事になり、国に一応は地図が有るそうなんですが。
その市区町村のお役所に行かないと手に入りませんし、しかも他所者となるともう。
ですので、地元の方に近隣の詳しい地図を入手して頂いてから、村を回る事に。
「僕、こうした取材旅行は初めてなんですけど、何処もこんな風に伝承があやふやなんですか?」
『ソウですねー、基本は口伝デス、何か残っていても形を変えている事が多いデースね』
《そうですね、時には全く原型を留めていない場合も有りますから、もしそのままなら非常に珍しいかと》
『デースねー、稀有デスね稀有』
「それは逆に、どんな意味が裏に有るんですか?」
『ドウゾー、神宮寺さーん』
《相当、厄介な場合が殆どです》
「どう?」
《厳格で力の強い神霊を祀っている、または》
『抑エテいる、荒神信仰や御霊信仰デースね』
《そして耳切りに関しても。綾子と書いてアヤツコ、額に✕か犬と鍋炭で書き、神の庇護に有るとする。その綾子と似ているかと》
『オーゥ、それデース。そう印を付け、お参りとかに行くんだそうデース』
「何故、犬なんですか?」
『腹帯は戌の日に貰いに行くデース』
《多産や成長を願っての事だそうですけど、その更に根っことなると、どうなんでしょうね》
『あー、私の説は』
『アンタらー!何処の誰だねー!』
「すみませーん!キヌエさんのご紹介で来ましたー」
『あー!早く上がってきんしゃーい!雨が来るでよー!』
そうしてお邪魔させて頂くと、数分もしないウチに。
「わぁ、助かりました、ありがとうございます」
『ねー、本当に、急に曇りになったもんで外見たら。見た事も無いのが居て、すまんね』
『民俗学者、伝承とか集めてマース、小泉言いマース』
『ココの名かね』
『ハーイ』
『ならココの人だね』
『ハーイ』
『良い返事だ。で、何だい』
『耳切りの事デース、切るマデはいきませんが、似た風習はアチコチ有りマス。でも切るのは珍しいデース』
『そうかね、前髪を落とすんと一緒だと思うけどね』
『オーゥ、成程』
『あぁ、それこそ臍の緒も切るだろう、アレと同じさね』
『ツマーリ、悪運や何かと縁を切る、デスか?』
『そうそう、この子はこの世のもんなんです、ですからどうか連れて行かないでくれって事さね』
『ソウした事とか、書いた紙や本、有りマースか?』
『あぁ、はいはい、待ってておくれね』
小泉先生は、聞き上手でらっしゃって。
更に色々と伺い。
『アリがとうございマース、まだまだ不勉強デースので、また尋ねに来ても大丈夫デースか?』
『あぁ構わないよ、ただ今日はアンタらが来るだろうって事で居ただけなんだ、以降は夕方頃だと助かるね。ほら、畑もやってるもんだから』
『オーゥ失礼しまシタ、以降は夕方頃にしマース』
『良いの良いの、どうせもう知った顔ばかりで飽きてたんだ、いつでも来ておくれ』
『ハーイ、ありがとうございマース』
そして次はお寺さんへ向かったんですが、耳の遠い方で。
「はぁ、大変でしたね、お疲れ様でした」
『イエイエ、楽しかったデース、やはり現地での採集は最高デースね』
《採集、ですか》
『ハーイ、民俗学、あまり知らナーイデスか?』
《はい、不勉強ですみません》
『イエイエ、似た違う畑ダー、そうお伺いしてマース』
《あぁ、しがない占い師の様なモノですよ、相当で無ければ見えませんから》
『オゥ、忘れてマーシた、アナタ有った神についてデース』
《あぁ、もしかして子供の頃の、円卓での事ですか》
『ハーイ、アレは多分、北欧のトリックスターかと思いマース』
「えーっと、ココで言う、スサノヲ的な事でしょうか?」
『オーイエスっ、そうデース、神霊が混ざり合った不思議な存在デース。そして、いずれハ最高位になる、そうした前段階の様な存在デハと思いマス』
「あー、えーっと、オーディン、でしたっけ」
『イエッス、そこも似てマース。スサノヲ神を嵐だと言う方も居マースが、私は竜巻と雷だと思ってマース』
「と言いますと?」
『アマテラス神が襲いに来たと勘違いスル、そして暴れられ天の岩戸に隠レール。雷鳴が響き、落ち、竜巻で田畑が荒れれば当然デース』
「あぁ、成程」
『ハーイ、オーディンも雷デース。デスが二分し、悪い面が強調されたモノが、件のトリックスターだと思いマス』
「やはり、名を言うのは躊躇われますか?」
『デース、関わりたく無いデス、何か不意な問題は困りマース』
《その、彼は》
『オーゥ、変身も出来るんデース、女にも化けマース』
「あぁ、そこも似てますね、スサノヲ神はクシナダヒメに変身していますから」
『デショーウ』
《それで》
「神々ですら、関わる事に辟易する様な。そこも似てますね」
『デショーウ。デースので、あまりに名を呼びたくはナーイので、彼にしておきまショウ』
「その彼は神々を暴き、監禁されるんですが、最後には一致団結し世を救うんですよ」
『物知りさんデース、飴ちゃんあげまショーウ』
「ありがとうございます。とまぁ、破天荒な方で、片方にしてみれば悪神であり善神。そうした性質を持っている方、だろう、と言う事ですよね?」
『ハーイ、悪運がスゴーイ、ツヨーイ感じしマース』
《まぁ、あの場を無事に切り抜けていますから》
『もし本当なら、デースね』
「えっ」
『ふっふっふっ、冗談デース、可愛いデースね本当に。ぷぷぷ』
「もー」
《林檎君、僕を少し疑ったんですか?》
「いや、と言うか、一体何処に嘘が有るのかなと」
《つまりは少し疑ったんですね、残念です》
「違いますってば、もー」
《冗談ですよ、林檎君は捻じ曲がる様な性根が無いのは、良く分かっていますし》
『絵に描いた真珠、オゥ間違えマーシた、純真です。真珠の様に純真デス』
「褒めてます?」
『褒めてマース、真っ白な真珠は神様への捧げ物デース、良い性格してマース』
《確かに良い性格はしてますね》
「もー、僕の事は置いておきます。今回、今日の収穫は、如何でしたか」
『関東の言葉、上手過ぎマース』
《確かに、他の村人は違うのかも知れませんが、割合が多過ぎる様に思いますね》
「そう、まぁ、確かにそうかも知れませんが」
『そして神社仏閣、その両方ハ稀、稀有デース』
《林檎君、車を借りた時を思い出してみて下さい》
「確かに、もっと訛りに引っ張られていましたけど」
《ココに特に観光名所も無い、なら外部の者は滅多に来ない》
『ただ、出稼ぎ行く方多いと、こうなるカモ知れマセン。そうした時期にナルト、少数で村を回す、後は外に行きマース』
「あ、そうなると耳切りの事は広まる、筈ですけど」
『イーエ、そうでもないデス。女性はあまり耳出しマセン』
「あ、確かに」
《しかも女性が出稼ぎに行く場合は、集団で向かう事が多いんですよ、規律もですけど安全の為に》
『デースね、そうなるとまた不思議デス。その集団で耳切りの事は不思議がらレテしまうヨ、ソウ伝わっていないのが不思議なんデース』
「成程」
《いずれにしろ、もしかすれば、ココには他にも不思議な風習や決まりが有るかも知れないので》
『マーダマーダ、結論は出マセーンね』
「分かりました、では僕もそうした事も含め、傍観していますね」
『是非是非、頼みマースね』
《では、そろそろ休みましょうか》
『エー、こうした場合、恋の話スルのでは?』
《異性が居る場合は》
「しないですね」
『ォーゥ、おやすみなさいマース』
「はい、おやすみなさい」
《おやすみなさい》
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