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第13章 13の怪談。
十三塚。
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恩師が梓巫女として地方を回っていた頃、十三塚を作ってくれないか、との依頼が有り。
『先ずはそこから、ですか』
「はい」
『となると、相当大きな何かが有るなら、先ずは正直に仰って下さい』
「実は……」
毎月、何組かがこの村にやって来る。
少し先の有名な寺に参りに、時には街へ出る為に。
そして約半年前から、毎月誰か1人が必ず亡くなる事が続き、どうしたモノかと悩んでいたらしい。
その死に方は其々。
農作業での怪我から亡くなった者、旅の途中で胸を押さえ亡くなった者、熱を出しそのまま病死した者等々。
その前の年までは亡くなる事が有ったにしても、ココまで続く事は無かったそうで。
どうしたものかと隣村のお坊さんに相談してみると、厄払いの為にも、十三仏に倣い十三塚を建ててみてはどうかと。
恩師は様子見の為にも、恩師の恩師、師匠に文を書き居留する旨を伝え。
『では先ず、十三個の岩を見付けておいて下さい、大きさは出来るだけ揃えて。コチラは良い塩梅の場所が無いか見てみます』
「はい、ありがとうございます」
恩師は村長の家で世話になりながら、時に村人から話を聞きつつ、村の隅々まで見回った。
けれど悪いモノも特には居らず、疫病の気配も無い。
今回は不運が重なった、若しくは単に自分がココと何かしらの縁を持つ運だったのだろう、恩師はそう思ったらしい。
『どうですか、岩の塩梅は』
「この位の岩なら揃うんですが、大丈夫でしょうか」
『仏様は物の価値より信心かと、ただコチラもまだ見回りが済んでおりませんで。納得出来る大きさが見付かるなら、それに越した事は御座いませんし、もう少し互いに探してみましょうか』
「はい、ありがとうございます」
そうして半月経ち、岩も場所も決まり、後は運ぶだけとなった頃。
毎月村に来る行商人がいつもより早く到着し、挨拶をしたい、と。
《もしかすれば、私めのせいかも知れません、申し訳御座いませんでした》
その行商人が言うには、体調が悪くなった際、柴折様の祠を倒してしまったと。
柴折様と言えば、行逢神、ヒダル神等と呼ばれる山神の一種。
けれど恩師の目には、どう見ても赤子を抱く女の霊にしか見えなかった。
相当の恨みを抱いていながらも、何とか悪霊とはならず、辛うじて正気を保っている状態。
恩師は見慣れぬ状態に興味を引かれ、敢えて嘘に乗り様子を伺う事にした。
『あぁ、でしたらお手伝いをお願いします。ただ、アナタ1人でやらねばいけません、良いですね』
《はい、承知しました》
恩師はその日の夜、初めて死口を使う事にした。
新月の真っ暗な夜、小さな明かりを背に、自分の影と向き合い。
赤子を抱える女の霊を思い浮かべ、対話を試みた。
『お前さんは、どうしたいんだい』
《アレに死んで欲しい》
そう言うと影が立ち上がり、ゆっくりと恩師を飲み込んだ。
そこからは夢なのか、霊の記憶なのか。
兎に角、女の霊に何が有ったのかを悟ったらしい。
そして翌日、隣村の坊さんにも手伝いに来る様にと指示をし。
後は岩を立てるだけとなった。
『ココで全てを白状すれば、塚を建ても構わない。けれどアンタ達は、その前に、先ず言うべき事が有るんじゃないのかい』
恩師は村長、行商人、坊主を塚を立てる場所に並べそう言った。
けれど、悔いるどころか。
《何も出来無い女を食わせてやったんだ、俺達は何も悪くない》
行商人が主導し、売られた子女をこの村に置かせた。
内々に、その女を手籠めにする為に。
『そりゃアンタ達が囲って碌な事を教えず、年中抱き潰せば、何も出来無くて当たり前だろうに』
男達は、女には喜んで抱かれる様に躾けていた。
コレは良い事だ、お前は良い子だ、と。
そして幾ばくか飽きた男達は、その女を旅の者にも振る舞う様になった。
その事はいずれ村長の妻や娘の知る事となり、当然ながら良くは思わなかった。
女達はその女を匿い、教育や道徳を施し、罪悪感を植え付けた。
そして女は、自死した。
しかもご丁寧に事故死に見せ掛ける為、山神様に身を捧げれば罪が直ぐにも消えて無くなる、と教えた。
そうして山から転げ落ちさせ、瀕死になった所。
こんな事をしても罪は消せない、全てお前が悪いんだ、そう吐き捨て置き去りに。
女は野草や湧き水で13日は生き延びたが、14日目には。
それから毎月、その女を知っている者が亡くなっていった。
村長の妻、買った旅の者、村長の娘。
そうして村長、行商人に坊主を入れれば、頂戴13人が死ぬ事になる。
《俺達は殺して無い、手を挙げたりも》
『本当に馬鹿だね、娘にもそう躾ける気かい、色んな男に抱かれてこそだって』
《アレは孤児で》
『話を逸らすんじゃないよ、コレは大事な事なん』
恩師は、十三塚を建てる為の場所、山の入り口近くに来てからずっと全身が重かった。
それがひょいと軽くなった瞬間、散々な言い訳をしていた行商人の横で念仏を唱え続けていた坊主の首が、飛んだ。
《ひぃっ》
『アンタらを一応は救おうとしてるんだ、言うべき事を言えば、もしかすれば命が助かるかも知れないよ』
「俺は、あの子を愛し」
《ひいっ》
村長の首が飛び、残るは行商人だけとなってしまった。
『どうしても悪い事をした、とは思えないかね』
《ぉ、おっ、俺はっ》
行商人の首も飛んでしまったので、恩師は村長の息子を呼びに行き、再び戻って来たが。
「あぁ、3人で相談していたんだが、村と村の間に茶屋を作ろうと思ってな」
《お前に頼みたいんだ、嫁探しにも頂戴良いだろう》
3人は生き返っており、血溜まりすら消えていた。
けれども、明らかに中身が違う。
その事を黙ったまま、恩師は十三塚を作り終え、村を去ろうとした。
「もう少しすれば、ココはもう少し良くなる、また来なさい」
《伝えなさい》
明らかに、単なる人とは違う気配に。
『はい』
恩師は断れなかった、と。
けれども、そこから力も強くなり、人を随分と見抜ける様になったらしい。
そして恩師曰く、件の女は行逢神か山の神の嫁になったのか、他のモノの嫁になったのか。
死体が有る筈の場所には、白い野菊しか咲いていなかったそうで。
あんまり大きい事には関わりたく無い、そう思いながら、次の場所へと向かったそうです。
『先ずはそこから、ですか』
「はい」
『となると、相当大きな何かが有るなら、先ずは正直に仰って下さい』
「実は……」
毎月、何組かがこの村にやって来る。
少し先の有名な寺に参りに、時には街へ出る為に。
そして約半年前から、毎月誰か1人が必ず亡くなる事が続き、どうしたモノかと悩んでいたらしい。
その死に方は其々。
農作業での怪我から亡くなった者、旅の途中で胸を押さえ亡くなった者、熱を出しそのまま病死した者等々。
その前の年までは亡くなる事が有ったにしても、ココまで続く事は無かったそうで。
どうしたものかと隣村のお坊さんに相談してみると、厄払いの為にも、十三仏に倣い十三塚を建ててみてはどうかと。
恩師は様子見の為にも、恩師の恩師、師匠に文を書き居留する旨を伝え。
『では先ず、十三個の岩を見付けておいて下さい、大きさは出来るだけ揃えて。コチラは良い塩梅の場所が無いか見てみます』
「はい、ありがとうございます」
恩師は村長の家で世話になりながら、時に村人から話を聞きつつ、村の隅々まで見回った。
けれど悪いモノも特には居らず、疫病の気配も無い。
今回は不運が重なった、若しくは単に自分がココと何かしらの縁を持つ運だったのだろう、恩師はそう思ったらしい。
『どうですか、岩の塩梅は』
「この位の岩なら揃うんですが、大丈夫でしょうか」
『仏様は物の価値より信心かと、ただコチラもまだ見回りが済んでおりませんで。納得出来る大きさが見付かるなら、それに越した事は御座いませんし、もう少し互いに探してみましょうか』
「はい、ありがとうございます」
そうして半月経ち、岩も場所も決まり、後は運ぶだけとなった頃。
毎月村に来る行商人がいつもより早く到着し、挨拶をしたい、と。
《もしかすれば、私めのせいかも知れません、申し訳御座いませんでした》
その行商人が言うには、体調が悪くなった際、柴折様の祠を倒してしまったと。
柴折様と言えば、行逢神、ヒダル神等と呼ばれる山神の一種。
けれど恩師の目には、どう見ても赤子を抱く女の霊にしか見えなかった。
相当の恨みを抱いていながらも、何とか悪霊とはならず、辛うじて正気を保っている状態。
恩師は見慣れぬ状態に興味を引かれ、敢えて嘘に乗り様子を伺う事にした。
『あぁ、でしたらお手伝いをお願いします。ただ、アナタ1人でやらねばいけません、良いですね』
《はい、承知しました》
恩師はその日の夜、初めて死口を使う事にした。
新月の真っ暗な夜、小さな明かりを背に、自分の影と向き合い。
赤子を抱える女の霊を思い浮かべ、対話を試みた。
『お前さんは、どうしたいんだい』
《アレに死んで欲しい》
そう言うと影が立ち上がり、ゆっくりと恩師を飲み込んだ。
そこからは夢なのか、霊の記憶なのか。
兎に角、女の霊に何が有ったのかを悟ったらしい。
そして翌日、隣村の坊さんにも手伝いに来る様にと指示をし。
後は岩を立てるだけとなった。
『ココで全てを白状すれば、塚を建ても構わない。けれどアンタ達は、その前に、先ず言うべき事が有るんじゃないのかい』
恩師は村長、行商人、坊主を塚を立てる場所に並べそう言った。
けれど、悔いるどころか。
《何も出来無い女を食わせてやったんだ、俺達は何も悪くない》
行商人が主導し、売られた子女をこの村に置かせた。
内々に、その女を手籠めにする為に。
『そりゃアンタ達が囲って碌な事を教えず、年中抱き潰せば、何も出来無くて当たり前だろうに』
男達は、女には喜んで抱かれる様に躾けていた。
コレは良い事だ、お前は良い子だ、と。
そして幾ばくか飽きた男達は、その女を旅の者にも振る舞う様になった。
その事はいずれ村長の妻や娘の知る事となり、当然ながら良くは思わなかった。
女達はその女を匿い、教育や道徳を施し、罪悪感を植え付けた。
そして女は、自死した。
しかもご丁寧に事故死に見せ掛ける為、山神様に身を捧げれば罪が直ぐにも消えて無くなる、と教えた。
そうして山から転げ落ちさせ、瀕死になった所。
こんな事をしても罪は消せない、全てお前が悪いんだ、そう吐き捨て置き去りに。
女は野草や湧き水で13日は生き延びたが、14日目には。
それから毎月、その女を知っている者が亡くなっていった。
村長の妻、買った旅の者、村長の娘。
そうして村長、行商人に坊主を入れれば、頂戴13人が死ぬ事になる。
《俺達は殺して無い、手を挙げたりも》
『本当に馬鹿だね、娘にもそう躾ける気かい、色んな男に抱かれてこそだって』
《アレは孤児で》
『話を逸らすんじゃないよ、コレは大事な事なん』
恩師は、十三塚を建てる為の場所、山の入り口近くに来てからずっと全身が重かった。
それがひょいと軽くなった瞬間、散々な言い訳をしていた行商人の横で念仏を唱え続けていた坊主の首が、飛んだ。
《ひぃっ》
『アンタらを一応は救おうとしてるんだ、言うべき事を言えば、もしかすれば命が助かるかも知れないよ』
「俺は、あの子を愛し」
《ひいっ》
村長の首が飛び、残るは行商人だけとなってしまった。
『どうしても悪い事をした、とは思えないかね』
《ぉ、おっ、俺はっ》
行商人の首も飛んでしまったので、恩師は村長の息子を呼びに行き、再び戻って来たが。
「あぁ、3人で相談していたんだが、村と村の間に茶屋を作ろうと思ってな」
《お前に頼みたいんだ、嫁探しにも頂戴良いだろう》
3人は生き返っており、血溜まりすら消えていた。
けれども、明らかに中身が違う。
その事を黙ったまま、恩師は十三塚を作り終え、村を去ろうとした。
「もう少しすれば、ココはもう少し良くなる、また来なさい」
《伝えなさい》
明らかに、単なる人とは違う気配に。
『はい』
恩師は断れなかった、と。
けれども、そこから力も強くなり、人を随分と見抜ける様になったらしい。
そして恩師曰く、件の女は行逢神か山の神の嫁になったのか、他のモノの嫁になったのか。
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