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第8章 初、袋とじ作品発行。
3 令息と子女達。
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《そ、本当に、和田鍋家の若旦那さんだったんですね》
「少しは疑ったんだね」
《それはまぁ、はい、世には詐欺師も居りますから》
「それに色男も、僕は遊び人かも知れない」
私、その噂を耳にしちまったんだよね。
しかも、絵描きの父親を持つ娘さんと連れ立ってたとか、やたら美人さんと居たとか。
《それは少し、困りますね》
「どう困るのかな」
《もし正妻なら、こんなに夜伽が上手いのもあの女のお陰なのか、とか。出掛けても、あの女とココへ来たのか、とか。気になってしまって、きっと、辛そうだなと》
近くに居るからね、捨てられたお妾さんの方だけど。
「もしかして知り合いに居るのかな」
《まぁ、知り合いと言うワケでも無いんですけど、近所で泣き暮らしてる方が居るので》
偶に母さんが話を聞きに行って、ついでに良い茶菓子を食べて帰って来るんだけど。
まぁ、妾は最終手段よね、本当。
「もし君が選ばなきゃならなくなったら、正妻か妾、どっちにする」
《正妻だ、と言いたいんですけど、学が無いので。高等部は卒業していないんです、母と2人で暮らしているので、それに。1科目だけが好きで、他は全くダメだったので、見合うかと問われると困りますので》
それでも、最悪はそこそこの相手を見繕ってくれたらな、と。
当然、本当の婚約者だって居るんだろう、そもそもコレは練習でフリなのだし。
「実は、俺には親が決めた婚約者が居る」
俺、って言いましたか。
《あぁ、ですよね》
「俺は割と本気で君と結婚したい」
コレは、試されてるんでしょうかねぇ。
《あー、あの、身の程を弁えるだけの》
「本気だ」
《いやー、私、そう大棚に》
「多少は調べさせて貰った、数学が得意だったろ」
おや、口調が。
《得意と言うか、好きは好きですけど》
「もっと数学だけを学ばせるなら、どうする」
《だけ、なら、でも稼がないと》
「去年のウチの帳簿、早く出来れば出来る程、金をやる。どうだ、やってみないか」
《ソロバン、有ります?》
「コレと、紙と鉛筆だ、帳簿に薄く書き込んでも良い」
《じゃあ、お言葉に甘えて》
お言葉に甘えて。
まさか、そんな言葉が彼女から出るとは思わなかった。
しかも本当に嬉しそうに金勘定しやがって、腕を捲ってパチパチと。
可愛いな、何とか正妻にしたいんだが。
説得材料が計算、だけじゃな。
いや、早いな。
コレで間違いが無いなら良いんだが。
「早いな」
《慣れですよ慣れ》
お、コイツも猫被りが解けてきたな。
可愛いヤツだな、商売は猫被ってナンボのもんだと番頭夫婦が言っていたんだ、やはりコレしか無いだろう。
「好きだ」
《っく、邪魔しないで下さい》
ちょっと耳元で囁いただけでコレだ。
しまったな、この前は無理をさせた。
何処で止めるかで貞操観念を確認したかったんだが、もう、コレで良いだろ。
また邪魔したいが、まだ良い返事が貰えて無いんだ。
それに調子に乗って食ってしまいそうだし、今日は大人しくするかな。
「で、どうだった兄さんの方は」
「食いたくなった」
「いや食うなって」
「まだ食って無い。ウチのウリは金勘定だ、しかも早くて正確、何より計算好きときてる」
「え、もうじゃあ紹介して破棄して貰いなよ」
「頭が回るんで保留にされてる、コレだけじゃ足りないだろうって」
「あー、しっかりしてる」
「そっちはどうなんだよ」
「ダメだった、止めなかったからね」
「許そうとしたのか、体を」
「はぁ、貞淑さは大前提なのにね」
「まさかな、婚前交渉を許そうとするのはダメだろう」
「僕だから、とは言ってたけど。僕の事を殆ど何も知らないのに、体を許そうとするのはね、ちょっと、無理だよね」
「すまんな、先に当たりを引いて」
「まだじゃないか、ちゃんとした返事を貰えるまでは、まだまだ分かんないよ」
「だな、ちょっと不安になってきた」
「何で」
「思いのほか、良い女で」
「はいはい、それならコッチの事を話す。途中で止めて、すまない、君が魅力的で暴走したんだ。けれど自分を大切にして欲しい、すまない、無かった事にして欲しい。って言ったのにさぁ」
「せめて思い出だけでも構いません、ってか」
「そんな、もし逆なら、記念に抱かれたがる男を相手にしたいのかね」
「どうせ私は誰にも愛されないのだし」
「じゃあ愛されるなら誰でも良いんだ」
「違う、アナタだから」
「身分を捨てて君と一緒になっても良いけど、育てて貰った分の恩は金で返す事になっているんだ、一緒に返済してくれる?多分子は望めない程だよ?」
「それでも一緒になりたいの」
「兄にだけ責務を押し付けられないよ、ごめんね、さようなら」
「全く、貞操を守るのは最低限だと思うんだがな」
「はぁ、問答だけで終わってくれたら、良かったんだけどね」
「つきまとい、か」
「手紙をくれるからしっかり返事してるんだけど、全く折れてくれないんだよね」
「俺達を見分けさせるか」
「あぁ、けどなぁ、そうなると婚約者にも試す事になるんだよね」
「俺のはアレだけど、お前のはさして問題無いだろ」
「まぁ、兄さんのアレは流石にどうかと思うけど。何かさ、こう、惹かれない」
「もう、ウリを言って貰えばどうだ。お前が気付かないだけで、良い武器を持っているかも知れない」
「例えば?」
「乳」
「バカ、中身だよ中身」
「猫被りしてるだけなら、剥がしてみれば良い、寧ろ剥がれた状態で話し合ってみれば良いだろ」
「そこにもグッときたんだ」
「おう」
まぁ、何となく上辺の付き合いしかしてこなかったし。
コレはコレでアリなのかも知れない。
「もし猫被りしてたなら、剥いだ状態で話し合ってみたいな」
女漁りをしているらしい婚約者が、急に会いたいと言って来て。
何かと思えば、本性が知りたい、と。
『それはコチラも同じなんですが』
「お、良いね」
『何で女漁りなんかしてるんですか』
「親が決めた事に従うだけで本当に良いのか、自分でも選ぶべきじゃないか、それと興味と知り合いの為」
『お知り合いの為、と言うのは』
「かなり相手の事に関わるから言えないんだけど、そこが切っ掛けでも有ったし、君の良い所が僕にはあまり見抜けなかった」
『まぁ、当たり障りの無い会話ばかりでしたから、仕方が無いかと』
「それに、出来るなら好かれたいしね、君が僕をあまり好んでなさそうだって言うのも有る」
『それは、お互い様かと』
「まぁ、そうだね」
破棄しようと思えば破棄出来る、それこそ親が決めた許嫁、と言うだけ。
お互いに近寄ろう、知ろうとはしなかった。
『男性は妾を持てますけど、女が持つ事は殆ど無い、ですから私は最後には選ばれないかも知れないと思っていました。アナタはどうでしたか?』
「ごめん、選ばれなくてもどっちでも良いと思ってた」
『一応、私が拒否する事は考えてくれていたんですね』
「そうだね、縁結びしないと家が立て直せないなら、だとしたら寧ろ断っていたね。それ程の状況になるって事は、またそうなるかも知れない、つまりはどうせ潰れるだろう。なら今潰れてしまえよ、子にまで背負わせるな、ってね」
『それはそう思います、アチコチからお金を借りた方がまだ良い、借金でもお金の繋がりは繋がりですから』
「そう恩を敢えて売る方法について、どう思う」
『相手によりますね、バカに売ると損になる事も有りますから』
「ごめんね、今までちゃんと話し合わなくて、意外にも君は良い女らしい」
『いえ、私も、そうでしたから』
「僕とヤれる?」
『や、ヤれるってそんな』
「僕にも君にも選ぶ権利が有る。あ、出来るかも、と思ったから聞いてみたんだよ。したくないなと思ったら破棄すべきだ、友人として繋がりを継続させる事だって出来るのだからね」
『他の、女性と』
「した事無いよ」
『本当ですか?』
「男には処女膜みたいなのが無いから証明が難しいけど、どうしたら童貞だって信じてくれるかな?」
『噂では、こう、裏筋が』
「アレは嘘だよ」
『あ、そうなんですね』
「上手い下手も、下手なフリすれば良いだけだろうし、どうしようか。君が逆ならどうする、咥えるのが上手で、君は処女でも男を知ってるんだなー!って疑われたらどうする?」
『それは、凄く困りますね』
「だよね」
こんなに話したの、初めてだわ。
『「あの」』
「あ、ごめん、どうぞ」
『もう少し、自分なりに調べて』
「ダメ、僕が教えるか一緒に調べたいんだけど」
『あ、え?何故ですか?』
「君に興味が湧いたから」
私も、と言うのは、少し腹立たしい気がしたので黙っておく事にしました。
私は、アナタとは違って、どちらかといえば言えば好ましいと思っていたんですから。
「少しは疑ったんだね」
《それはまぁ、はい、世には詐欺師も居りますから》
「それに色男も、僕は遊び人かも知れない」
私、その噂を耳にしちまったんだよね。
しかも、絵描きの父親を持つ娘さんと連れ立ってたとか、やたら美人さんと居たとか。
《それは少し、困りますね》
「どう困るのかな」
《もし正妻なら、こんなに夜伽が上手いのもあの女のお陰なのか、とか。出掛けても、あの女とココへ来たのか、とか。気になってしまって、きっと、辛そうだなと》
近くに居るからね、捨てられたお妾さんの方だけど。
「もしかして知り合いに居るのかな」
《まぁ、知り合いと言うワケでも無いんですけど、近所で泣き暮らしてる方が居るので》
偶に母さんが話を聞きに行って、ついでに良い茶菓子を食べて帰って来るんだけど。
まぁ、妾は最終手段よね、本当。
「もし君が選ばなきゃならなくなったら、正妻か妾、どっちにする」
《正妻だ、と言いたいんですけど、学が無いので。高等部は卒業していないんです、母と2人で暮らしているので、それに。1科目だけが好きで、他は全くダメだったので、見合うかと問われると困りますので》
それでも、最悪はそこそこの相手を見繕ってくれたらな、と。
当然、本当の婚約者だって居るんだろう、そもそもコレは練習でフリなのだし。
「実は、俺には親が決めた婚約者が居る」
俺、って言いましたか。
《あぁ、ですよね》
「俺は割と本気で君と結婚したい」
コレは、試されてるんでしょうかねぇ。
《あー、あの、身の程を弁えるだけの》
「本気だ」
《いやー、私、そう大棚に》
「多少は調べさせて貰った、数学が得意だったろ」
おや、口調が。
《得意と言うか、好きは好きですけど》
「もっと数学だけを学ばせるなら、どうする」
《だけ、なら、でも稼がないと》
「去年のウチの帳簿、早く出来れば出来る程、金をやる。どうだ、やってみないか」
《ソロバン、有ります?》
「コレと、紙と鉛筆だ、帳簿に薄く書き込んでも良い」
《じゃあ、お言葉に甘えて》
お言葉に甘えて。
まさか、そんな言葉が彼女から出るとは思わなかった。
しかも本当に嬉しそうに金勘定しやがって、腕を捲ってパチパチと。
可愛いな、何とか正妻にしたいんだが。
説得材料が計算、だけじゃな。
いや、早いな。
コレで間違いが無いなら良いんだが。
「早いな」
《慣れですよ慣れ》
お、コイツも猫被りが解けてきたな。
可愛いヤツだな、商売は猫被ってナンボのもんだと番頭夫婦が言っていたんだ、やはりコレしか無いだろう。
「好きだ」
《っく、邪魔しないで下さい》
ちょっと耳元で囁いただけでコレだ。
しまったな、この前は無理をさせた。
何処で止めるかで貞操観念を確認したかったんだが、もう、コレで良いだろ。
また邪魔したいが、まだ良い返事が貰えて無いんだ。
それに調子に乗って食ってしまいそうだし、今日は大人しくするかな。
「で、どうだった兄さんの方は」
「食いたくなった」
「いや食うなって」
「まだ食って無い。ウチのウリは金勘定だ、しかも早くて正確、何より計算好きときてる」
「え、もうじゃあ紹介して破棄して貰いなよ」
「頭が回るんで保留にされてる、コレだけじゃ足りないだろうって」
「あー、しっかりしてる」
「そっちはどうなんだよ」
「ダメだった、止めなかったからね」
「許そうとしたのか、体を」
「はぁ、貞淑さは大前提なのにね」
「まさかな、婚前交渉を許そうとするのはダメだろう」
「僕だから、とは言ってたけど。僕の事を殆ど何も知らないのに、体を許そうとするのはね、ちょっと、無理だよね」
「すまんな、先に当たりを引いて」
「まだじゃないか、ちゃんとした返事を貰えるまでは、まだまだ分かんないよ」
「だな、ちょっと不安になってきた」
「何で」
「思いのほか、良い女で」
「はいはい、それならコッチの事を話す。途中で止めて、すまない、君が魅力的で暴走したんだ。けれど自分を大切にして欲しい、すまない、無かった事にして欲しい。って言ったのにさぁ」
「せめて思い出だけでも構いません、ってか」
「そんな、もし逆なら、記念に抱かれたがる男を相手にしたいのかね」
「どうせ私は誰にも愛されないのだし」
「じゃあ愛されるなら誰でも良いんだ」
「違う、アナタだから」
「身分を捨てて君と一緒になっても良いけど、育てて貰った分の恩は金で返す事になっているんだ、一緒に返済してくれる?多分子は望めない程だよ?」
「それでも一緒になりたいの」
「兄にだけ責務を押し付けられないよ、ごめんね、さようなら」
「全く、貞操を守るのは最低限だと思うんだがな」
「はぁ、問答だけで終わってくれたら、良かったんだけどね」
「つきまとい、か」
「手紙をくれるからしっかり返事してるんだけど、全く折れてくれないんだよね」
「俺達を見分けさせるか」
「あぁ、けどなぁ、そうなると婚約者にも試す事になるんだよね」
「俺のはアレだけど、お前のはさして問題無いだろ」
「まぁ、兄さんのアレは流石にどうかと思うけど。何かさ、こう、惹かれない」
「もう、ウリを言って貰えばどうだ。お前が気付かないだけで、良い武器を持っているかも知れない」
「例えば?」
「乳」
「バカ、中身だよ中身」
「猫被りしてるだけなら、剥がしてみれば良い、寧ろ剥がれた状態で話し合ってみれば良いだろ」
「そこにもグッときたんだ」
「おう」
まぁ、何となく上辺の付き合いしかしてこなかったし。
コレはコレでアリなのかも知れない。
「もし猫被りしてたなら、剥いだ状態で話し合ってみたいな」
女漁りをしているらしい婚約者が、急に会いたいと言って来て。
何かと思えば、本性が知りたい、と。
『それはコチラも同じなんですが』
「お、良いね」
『何で女漁りなんかしてるんですか』
「親が決めた事に従うだけで本当に良いのか、自分でも選ぶべきじゃないか、それと興味と知り合いの為」
『お知り合いの為、と言うのは』
「かなり相手の事に関わるから言えないんだけど、そこが切っ掛けでも有ったし、君の良い所が僕にはあまり見抜けなかった」
『まぁ、当たり障りの無い会話ばかりでしたから、仕方が無いかと』
「それに、出来るなら好かれたいしね、君が僕をあまり好んでなさそうだって言うのも有る」
『それは、お互い様かと』
「まぁ、そうだね」
破棄しようと思えば破棄出来る、それこそ親が決めた許嫁、と言うだけ。
お互いに近寄ろう、知ろうとはしなかった。
『男性は妾を持てますけど、女が持つ事は殆ど無い、ですから私は最後には選ばれないかも知れないと思っていました。アナタはどうでしたか?』
「ごめん、選ばれなくてもどっちでも良いと思ってた」
『一応、私が拒否する事は考えてくれていたんですね』
「そうだね、縁結びしないと家が立て直せないなら、だとしたら寧ろ断っていたね。それ程の状況になるって事は、またそうなるかも知れない、つまりはどうせ潰れるだろう。なら今潰れてしまえよ、子にまで背負わせるな、ってね」
『それはそう思います、アチコチからお金を借りた方がまだ良い、借金でもお金の繋がりは繋がりですから』
「そう恩を敢えて売る方法について、どう思う」
『相手によりますね、バカに売ると損になる事も有りますから』
「ごめんね、今までちゃんと話し合わなくて、意外にも君は良い女らしい」
『いえ、私も、そうでしたから』
「僕とヤれる?」
『や、ヤれるってそんな』
「僕にも君にも選ぶ権利が有る。あ、出来るかも、と思ったから聞いてみたんだよ。したくないなと思ったら破棄すべきだ、友人として繋がりを継続させる事だって出来るのだからね」
『他の、女性と』
「した事無いよ」
『本当ですか?』
「男には処女膜みたいなのが無いから証明が難しいけど、どうしたら童貞だって信じてくれるかな?」
『噂では、こう、裏筋が』
「アレは嘘だよ」
『あ、そうなんですね』
「上手い下手も、下手なフリすれば良いだけだろうし、どうしようか。君が逆ならどうする、咥えるのが上手で、君は処女でも男を知ってるんだなー!って疑われたらどうする?」
『それは、凄く困りますね』
「だよね」
こんなに話したの、初めてだわ。
『「あの」』
「あ、ごめん、どうぞ」
『もう少し、自分なりに調べて』
「ダメ、僕が教えるか一緒に調べたいんだけど」
『あ、え?何故ですか?』
「君に興味が湧いたから」
私も、と言うのは、少し腹立たしい気がしたので黙っておく事にしました。
私は、アナタとは違って、どちらかといえば言えば好ましいと思っていたんですから。
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