ヴィティスターズ!

独身貴族

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ピノ・ブラン編

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短編 ピノ・ブラン編

《キャスト》
ピノ・ブラン
シャルドネ
ピノ・ムニエ
アナウンサー(アナ)

────────────────

》M:報道番組

アナ
「今日のゲストは、白の王子とも呼ばれる、最近人気急上昇中のモデル、ピノ・ブランさんです!」

ブラン(ニッコリ)
「よろしくね、マドモアゼルたち」

アナ
「さすがモデルとだけあって、装いも素敵ですね!」

ブラン
「メルシー。僕の最愛の兄、ピノ・グリが仕立ててくれたんだ。いいでしょ」

アナ
「とってもお似合いです! 今回、ヴィティス・ワイン・コンクールにて特別賞を頂いたそうですが、どうです、お気持ちは」

ブラン「んー、とても嬉しいです。兄とも話してました。やっと世界は、僕の素晴らしさに気づいてくれたんだ、ってね」

アナ
「パーカーポイントも高得点を叩き出したそうですね! 彼の今後の活躍に注目です」

アナ(楽しそうに)
「そしてそして! 一方で最優秀賞を獲得したシャルドネさん。お二人は似ているところもあって、比較されることもあるようですが、ピノ・ブランさんはシャルドネさんのことを、どう思っているのでしょうか?」

ブラン
「(一呼吸して)ええ、そうですね──シャルドネさんのことは、とても良いお手本にさせてもらってます。口がお上手なところとか、顔が広いところとか、僕にはないものをたくさんお持ちなので。良い意味でライバルといったところでしょうか。いつかは僕も最優秀賞をいただけるよう、精進していきますよ」

アナ
「良きライバル、ん~いいですね! 今後もお二人の活躍、楽しみにしていますよ! さて──」

》SE:  テレビを消す

シャルドネ
「ふん。あいつのどこが王子みたいだって? ただのクソガキじゃねえか」

***

タイトル
【シャルドネとピノ・ブラン】

シャルドネN
「ピノ・ブラン。ピノ・ノワールの弟であるヤツのことを紹介されたのは、いつだったか──あまりいい天気じゃない、週末のことだった」

***

ムニエ
「やあ、私の輝くアドニス! シャルドネくん! いいところに来てくれたね!」

シャルドネ
「なんですかー、ムニエっち。いつになく上機嫌だなー。これからヒョウでも降ってきちゃうんじゃないの?」

ムニエ
「んふふふふ。生憎ノワは不在だが、君に合わせたい人物が来ているんだ。──おいで、モン・フレール!」

》SE:  足音

ブラン
「初めまして、シャルドネさん。ピノ・ブランです」

シャルドネ
「まさか、ピノ家唯一の白品種の、ピノ・ブランか? 会いたいと思ってたんだよ! 初めまして、どーも!」

ブラン
「(乾いた笑い)ははっ。あなたのことは、よく噂に聞いていますよ」

シャルドネ(楽しそうに)
「俺のことを?」

ブラン
「はい。僕は、ずっと、あなたのことが…………(近づいて)大っ嫌いなんだクソ野郎」(親指を下へ向ける)

シャルドネ
「は、はあ……!?」

ブラン
「あんたがいる限り、僕は『シャルドネと比べて~』だの『シャルドネに匹敵する~』だの、いちいち比較されるんだよ。しょーじきムカつくね。顔なんか見たくなかった」

シャルドネ
「ちょっとちょっとォ……初対面でそこまで……」(遮られる)

ブラン(悪意を込めて)
「ノワお兄さまとどんな仲なのか知らないけれど、あんたの場所はここにはないんだよ。早くお家にお帰りください、そして2度とくんな、シャルドネおにーさん」

シャルドネ
「ちょちょちょ、ムニエちゃぁん!
オタクの弟、どーゆう教育してんの!? なんで俺ここまで言われなきゃなんねーの!?」

ブラン
「おい、我が兄だぞ! 敬語を使え敬語を!」

シャルドネ
「お前もな!! こっちは年上で先輩だぞ! 少しは敬え!」

ブラン
「やーだねー」

ムニエ
「こーら、私の可愛いキャベツちゃん。口の聞き方には気をつけなさいと、グリくんからも言われていただろう? ねっ?」

ブラン
「すみません、ムニエお兄さま。でもこいつの顔がクソムカつくので、つい」

シャルドネ
「兄には素直なのかよ……」

ムニエ
「聞かせておくれ、モン・フレール。一体シャルくんの何処がそんなに気に入らないのかい?」

ブラン
「シャルドネの何処がって? ははっ、あげたらキリがないですよ。まず、嫌い。なんか嫌い。すごく嫌い。意味もなく嫌い。大嫌い」

シャルドネ
「おいおいおい、理由になってねーよ!」

ブラン
「なんかうざいし。うちの兄たちにベタベタするし」

シャルドネ
「なんかってなあ……」

ムニエ
「こらこら。好き嫌いしちゃダメだって教えなかった?  モン・フレール」

ブラン
「僕はちゃんと公平に、平等に、全てのものを愛していますよ。ムニエお兄さま。……シャルドネを除いては」

シャルドネ
「なんで俺だけそんな扱いなんだよ!」

ブラン
「僕はね、唯一無二の存在なの。グリお兄さまも、ムニエお兄さまも、ピノ家は全員、芸術の頂点にして、最高傑作なの。なのに、いちいちアンタを引き合いに出されて比べられるの、すっごくムカつくんだよ。こんなキラキラチャラチャラしたヤツと、僕が似てるだなんて、冗談もほどほどにしてほしいよね。はぁーーー」

ムニエ
「先日のテレビのインタビューでは、シャルくんのことを、良き手本で、目標にしてるって言ってなかったかい?」

ブラン
「ええ。『こうならない』ためのいい手本として、勉強させてもらってますよ。いつかはこいつを蹴落として、その座に僕が座るためにね。だから、さっさと出ていってくれないかなあ、シャルドネおにーさん。ほら。ほら!」

シャルドネ
「おいおい、こんな今にも降りそうな天気の中、追い出すってのか? 偏屈なピノ・ノワールですら、もう少し優しくしてくれるぞ!」

ブラン
「五月蝿い。ブルゴーニュから出ていけ。そして根絶しろ」

シャルドネ
「なんだよ、もー! なんだよ、この嫌われようは! わかりましたよ、お前の前にはもう金輪際現れませーん! さよなら~!」

ムニエ
「あっ、ちょっと待ってくれ、シャルくん……! ブランくんも、言い過ぎだよ! 謝って……あ、待って、2人とも……頼むから仲良くしてくれ~!」

***

シャルドネ
「……ってことがあって、会わないようにしてたってのに、なんでよりによって、一緒に仕事しなきゃなんねーんだよ……はあぁ……」

♪足音

ブラン
「それはこっちのセリフだよね」

シャルドネ(身構える)
「ピ、ピノ・ブラン……」

ブラン
「あんたも僕の顔なんて見たくないでしょ。だからさっさと終わらせよう。足手纏いになんないでよね。ほら、行こう、おにーさま」

シャルドネ(帰れと言われなくて驚く)
「……お、おお」

ブラン
「なに? 別にあんたと仲良くしようなんて思ってないからね? グリお兄さまに念を押されたから仕方なく、協力してやるんだから。感謝しろよ」

シャルドネ
「あー、もー、ほんと可愛くねぇなコイツ……!」


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